藤枝静男のレビュー一覧

  • 痩我慢の説

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    ホナミといふむすめ
     作家の藤枝静夫の芥川賞候補作「痩我慢の説」の漫画化(そのときに受賞したのは石原慎太郎の「太陽の季節」)。

     原作付きだけど、多分にこの漫画家の作家性が出てをり、作者の脚色は効果を挙げて、藤枝静夫の幻想性がまざった独特の味となってゐる。

     第一にホナミといふ姪が天真爛漫、魅力的で、印象が際立つ。なんだか憎めないあかるさだ。加へて藤枝静夫とおぼしい人物とその妻の偏屈さが、これからの時代性を示唆して悪くない。

     あとがきで作者が藤枝静夫の作品を紹介してゐて、そのなかに大江健三郎の『取り替え子』のはなしが出てくる。私は好感をいだいた。次作が気になる漫画家だと感じた。

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    2024年08月31日
  • 田紳有楽 空気頭

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    血とコメディ。水木しげる先生のマンガを想起しました。或いはブルーズロックであるとか。攻撃的でありながら自嘲的であり、外在化した鏡のなかの己、人型としての己、を、鏡の外から見詰めている感覚。人間悪も人間善もごくフラットに並べて、千里眼で透き通る結晶の花と化させている、そんな感覚。ブルーズのライトモチーフとして、悪魔との出遭いがありますが、それは人間を外在化させるためのガジェットなのだろうな、と、空気頭と田紳有楽を読み、思いました。

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    2023年05月14日
  • 悲しいだけ 欣求浄土

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    硬い文に突如入るビビッドな色彩やユーモア、スピリチュアルが面白い。
    無機質な悲しみが入り込んでくる独特な作品世界で、読後に虚ろで不思議なしこりが残る。
    オーケンや中上健次にも通じる私小説的小説で、かなり好み。

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    2022年09月09日
  • 田紳有楽 空気頭

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    自身の読書体験の中で5本の指に入る衝撃と感銘だった。
    『田紳有楽』は異質な物語手法に陶器への深い愛情と知見、ブッディズムが合わさり他には無いぶっ飛び作品になっている。
    特に『空気頭』は静閑な私小説的世界に、鋭いナイフの様な一言や衝撃的なフックが混ざり合う天下無双の作品。読後はしばらく考えが纏まらず飲み込みに時間を要した。

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    2022年09月09日
  • 田紳有楽 空気頭

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    何というか呆気にとられてしまった。現実と妄想がこんな絡み方をするなんて。冒頭に筆者の断り書きがあるけれど、そんなもの消し飛んでしまった。ただ、奥様の闘病の様子が凄まじく、胸が痛む。医者ならではの冷静で緻密な描写だからこそ、静かで冷たい悲しみがひたひたと染みてくるようだ。

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    2019年07月10日
  • 田紳有楽 空気頭

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    【田紳有楽】
    骨董屋の部屋を訪れた男が、自己流処世術を語り庭の池に飛び込むところから物語は始まる。
    男は池に沈められている朝鮮生まれの抹茶茶碗の柿の蔕(ヘタ)。地下水脈を通って出歩いたり人に化けたりしている。
    池の中には偽物陶器たちが埋められ、五十六億年後の弥勒説法の成仏永世を得るまでなんとかうまいことやりたいなあなどと思っている。
    志野筒型グイ呑みは色気漂う金魚のC子との間に生命を超えた情欲を持ち卵を産卵させ、
    モンゴルから来た丼鉢の丹波は触手を出して空を飛んだり柿の蔕と出し抜きあったり。

    こんな物資を所有する人間たちだってただもんじゃない。自称『永生の運命を担ってこの世に出生し、釈迦の遺

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    2016年08月15日
  • 悲しいだけ 欣求浄土

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    息をひそめて、自分の呼吸音に耳を澄ます。静かに人生を見つめるとこうなるのかな、と思わせられた作品群。

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    2011年06月07日
  • 田紳有楽 空気頭

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    田紳有楽はとにかく素晴らしい。
    池に放られた茶碗は妖怪の様でいて人間臭い。
    静物である筈の彼らは皆うるさい。
    どれがイカモノでどれが本物なのかがわからなくなる。
    それは空気頭にも同じことが言える。
    著者自身の創作のスタンスもそうなんだろうか。
    空想と現実が混同していく様子は、一体何が偽物で何が本当なのかが判らない。
    しかし空想も現実と平行線上にあって、空想もまた現実なのだ。

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    2011年01月25日
  • 田紳有楽 空気頭

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    どんぶりやら湯飲みやらが己の私利私欲のままに動き回ってます。
    最後、話が広がりすぎて笑った。
    空気頭を読んで、私小説の面白さに気付いた(遅い)。

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    2009年10月04日
  • 田紳有楽 空気頭

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    なんだもー意味わかんない。完読するのしんどかった。最後まで分からない。この小説の世界がつかめない。でも愛しい中毒だ。

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    2009年10月04日
  • 痩我慢の説

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    家出した少女が獣医師になるため勉学に励む。それに付き合う医師の物語。この漫画は文学的だ。エンタメ性はそこまで無いし分かりやすい結末でもない。だが、鋭い人物描写や淡々とした日常にある真理は読者に何かを訴えてくるだろう。文学が好きな方におすすめの漫画です。

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    2025年04月16日
  • 田紳有楽 空気頭

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    ☆4.5 法螺も法螺、大法螺吹きの大大ペテン師
     先刻承知のうへで読んでみたが、やはり噂に違はぬトンデモ小説で、突き抜けてゐる。ドグラ・マグラよりすごい。阿呆を超えて、糞真面目な馬鹿をやってゐる。金魚と陶器の恋もあれば、陶器が人間に変身する魔法もある。チベットの鳥葬の身の上話に飛んだかと思ふと、阿闍梨ケ池の主の正体の話になり、便所にもぐったり唐突すぎて笑ってしまった。主人公が転換する構成がうまく、莫迦莫迦しくて笑けてくる。ただし、自然の情景描写は至極退屈である。
     谷崎潤一郎賞を受賞した。谷崎は「ハッサン・カンの妖術」などの幻想小説を書いたので、ふさはしい受賞だと思った。

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    2024年08月04日
  • 悲しいだけ 欣求浄土

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    「一家団欒」「悲しいだけ」が一番すき。欣求浄土の方はまだ若干自嘲気味というか、笑えるところもあったけど(ポルノ映画のくだりとかとにかくスケベなことばっか考えてるのとか)、悲しいだけはマジで悲しいだけだな…
    一見だらりとした文章かと思いきや無駄がなく整っている感じ、清潔な古民家みたい。
    年老いて死が見えてくる様子を、だんだんふわふわしてくる、みたいに言っていたのがめちゃくちゃ印象的だった。その感じ私知ってる、と思った。積極的選択ではないけれどじわじわと死んでゆく感じ、今まで言語化できなかったけど確かにこれなんだよな。
    藤枝静男、『田紳有楽・空気頭』しか読んでないのだけれどなんだかよく分からないの

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    2017年12月21日
  • 田紳有楽 空気頭

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    私小説を書く作家だけど、すごぐ変な本ですよ、と教えてもらって勢いで購入した本。
    田紳有楽は、冒頭、話の脈絡がまったくつかめなくて、???の連続。
    難しそうな本だと構えて読み始めたのに、これはSFか、ファンタジーなのか、おもしろいではないか!と新鮮だった。

    部屋に戻るといきなり白シャツを着た男がいて、ひとしきり講釈をたれたら、池にボチャンと飛び込んでしまったりする。あと出目金と器の間に子どもが産まれたりもする。なんじゃそりゃ。

    なんだかリズムが楽しくなる文章で、音読してみたくなるところあり。


    空気頭は、転じてまさに、現実。なのにどことなく靄がかった世界の話のような気もしてしまうのはなんで

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    2013年04月05日
  • 田紳有楽 空気頭

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    焼き物になりたいという願望を持つ弥勒菩薩の主人公、その主人公が買った焼き物を池に沈め、その沈められた焼き物が生き物としての特性を獲得して己のルーツを語る「田紳有楽」、私小説「空気頭」の二編いり。

    風景描写の美しさに圧倒された。そんなにたくさん書かれているわけじゃないんだけど、田紳有楽の一ページ目は本当に美しいと思う。

    「空気頭」は中間、そのばかばかしさとまともに向き合うしかない空虚感というかそういうものが染みます。

    巻末の作家紹介がすごくよかった。書かない文学修行。かっこいいな藤枝静男。他の作品も買おう。

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    2012年07月12日
  • 田紳有楽 空気頭

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    ネタバレ

    田紳有楽は愉快な話だと思った。それに対し、空気頭は重い話だったように思う。空気頭では、『私』が自分の内面を理解しながらも、それに抗おうと必死な様が印象的だった。田紳有楽では、柿の蔕や滓見白が並外れた(飛行術や変身の術といった)目立つ能力を持っていたのに、グイ呑みは少々地味だったように感じた。個人的には弥勒菩薩の立ち位置が一番良かったかもしれない。

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    2012年03月26日
  • 田紳有楽 空気頭

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    不思議な世界です。田神有楽はどこか祭典的なはじけっぷりがあります。アニミズム?というか。本気なのか冗談なのか、ニヤリとさせられました。空気頭は何だか暗くてびっくりしました。私小説ってこんな感じなんでしょうね…。

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    2011年11月24日
  • 藤枝静男随筆集

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    ネタバレ

    まさか藤枝氏の作品が新刊で書店に並ぶとは思っていなかった。
    発売したというだけで、ただただ嬉しい。

    内容は主に回顧録となっていて少年期から本多、平野両氏との出会い、そして小説家として(なんとか)確立するまでが描かれている。
    この回顧録は掲載された文芸誌や時期が様々なので重複している箇所も所々ある。
    しかし藤枝氏の経歴をこの様に俯瞰して見たことがなかったので大変面白かった。

    後半になると趣味の骨董や韓国旅行記が描かれている。
    このあたりから過去の思い出話ではなく現在の藤枝氏が現在感じるものをありのままに書く私小説になっていく。
    特に骨董話は読んでいて退屈した。
    品物の描写が仔細にわたるものの

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    2011年02月19日
  • 田紳有楽 空気頭

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    川上弘美の本に出てきたので読んでみたら、面白かった。
    焼き物が主人公でいろいろな冒険をする話。下手な人間よりも人間臭い焼き物たちのやりとりが笑える。

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    2010年02月23日
  • 痩我慢の説

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    「このマンガを読め2025」の1位ということで、早速読んでみた。昭和の忘れ去られようとしている名作掌編を漫画で甦らせた作品。
    こういう漫画たくさん出るといいなと思う。

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    2025年01月19日