藤枝静男のレビュー一覧

  • 田紳有楽 空気頭
    血とコメディ。水木しげる先生のマンガを想起しました。或いはブルーズロックであるとか。攻撃的でありながら自嘲的であり、外在化した鏡のなかの己、人型としての己、を、鏡の外から見詰めている感覚。人間悪も人間善もごくフラットに並べて、千里眼で透き通る結晶の花と化させている、そんな感覚。ブルーズのライトモチー...続きを読む
  • 田紳有楽 空気頭

    自身の読書体験の中で5本の指に入る衝撃と感銘だった。
    『田紳有楽』は異質な物語手法に陶器への深い愛情と知見、ブッディズムが合わさり他には無いぶっ飛び作品になっている。
    特に『空気頭』は静閑な私小説的世界に、鋭いナイフの様な一言や衝撃的なフックが混ざり合う天下無双の作品。読後はしばらく考えが纏まらず...続きを読む
  • 悲しいだけ 欣求浄土

    硬い文に突如入るビビッドな色彩やユーモア、スピリチュアルが面白い。
    無機質な悲しみが入り込んでくる独特な作品世界で、読後に虚ろで不思議なしこりが残る。
    オーケンや中上健次にも通じる私小説的小説で、かなり好み。
  • 田紳有楽 空気頭
    何というか呆気にとられてしまった。現実と妄想がこんな絡み方をするなんて。冒頭に筆者の断り書きがあるけれど、そんなもの消し飛んでしまった。ただ、奥様の闘病の様子が凄まじく、胸が痛む。医者ならではの冷静で緻密な描写だからこそ、静かで冷たい悲しみがひたひたと染みてくるようだ。
  • 田紳有楽 空気頭
    【田紳有楽】
    骨董屋の部屋を訪れた男が、自己流処世術を語り庭の池に飛び込むところから物語は始まる。
    男は池に沈められている朝鮮生まれの抹茶茶碗の柿の蔕(ヘタ)。地下水脈を通って出歩いたり人に化けたりしている。
    池の中には偽物陶器たちが埋められ、五十六億年後の弥勒説法の成仏永世を得るまでなんとかうまい...続きを読む
  • 悲しいだけ 欣求浄土
    息をひそめて、自分の呼吸音に耳を澄ます。静かに人生を見つめるとこうなるのかな、と思わせられた作品群。
  • 田紳有楽 空気頭
    田紳有楽はとにかく素晴らしい。
    池に放られた茶碗は妖怪の様でいて人間臭い。
    静物である筈の彼らは皆うるさい。
    どれがイカモノでどれが本物なのかがわからなくなる。
    それは空気頭にも同じことが言える。
    著者自身の創作のスタンスもそうなんだろうか。
    空想と現実が混同していく様子は、一体何が偽物で何が本当な...続きを読む
  • 田紳有楽 空気頭
    どんぶりやら湯飲みやらが己の私利私欲のままに動き回ってます。
    最後、話が広がりすぎて笑った。
    空気頭を読んで、私小説の面白さに気付いた(遅い)。
  • 田紳有楽 空気頭
    なんだもー意味わかんない。完読するのしんどかった。最後まで分からない。この小説の世界がつかめない。でも愛しい中毒だ。
  • 悲しいだけ 欣求浄土
    「一家団欒」「悲しいだけ」が一番すき。欣求浄土の方はまだ若干自嘲気味というか、笑えるところもあったけど(ポルノ映画のくだりとかとにかくスケベなことばっか考えてるのとか)、悲しいだけはマジで悲しいだけだな…
    一見だらりとした文章かと思いきや無駄がなく整っている感じ、清潔な古民家みたい。
    年老いて死が見...続きを読む
  • 田紳有楽 空気頭
    私小説を書く作家だけど、すごぐ変な本ですよ、と教えてもらって勢いで購入した本。
    田紳有楽は、冒頭、話の脈絡がまったくつかめなくて、???の連続。
    難しそうな本だと構えて読み始めたのに、これはSFか、ファンタジーなのか、おもしろいではないか!と新鮮だった。

    部屋に戻るといきなり白シャツを着た男がいて...続きを読む
  • 田紳有楽 空気頭
    焼き物になりたいという願望を持つ弥勒菩薩の主人公、その主人公が買った焼き物を池に沈め、その沈められた焼き物が生き物としての特性を獲得して己のルーツを語る「田紳有楽」、私小説「空気頭」の二編いり。

    風景描写の美しさに圧倒された。そんなにたくさん書かれているわけじゃないんだけど、田紳有楽の一ページ目は...続きを読む
  • 田紳有楽 空気頭
    田紳有楽は愉快な話だと思った。それに対し、空気頭は重い話だったように思う。空気頭では、『私』が自分の内面を理解しながらも、それに抗おうと必死な様が印象的だった。田紳有楽では、柿の蔕や滓見白が並外れた(飛行術や変身の術といった)目立つ能力を持っていたのに、グイ呑みは少々地味だったように感じた。個人的に...続きを読む
  • 田紳有楽 空気頭
    不思議な世界です。田神有楽はどこか祭典的なはじけっぷりがあります。アニミズム?というか。本気なのか冗談なのか、ニヤリとさせられました。空気頭は何だか暗くてびっくりしました。私小説ってこんな感じなんでしょうね…。
  • 藤枝静男随筆集
    まさか藤枝氏の作品が新刊で書店に並ぶとは思っていなかった。
    発売したというだけで、ただただ嬉しい。

    内容は主に回顧録となっていて少年期から本多、平野両氏との出会い、そして小説家として(なんとか)確立するまでが描かれている。
    この回顧録は掲載された文芸誌や時期が様々なので重複している箇所も所々ある。...続きを読む
  • 田紳有楽 空気頭
    川上弘美の本に出てきたので読んでみたら、面白かった。
    焼き物が主人公でいろいろな冒険をする話。下手な人間よりも人間臭い焼き物たちのやりとりが笑える。
  • 田紳有楽 空気頭
    下界に降りて来た弥勒菩薩が自分の金玉洗ってると、地蔵がやって来て「あれ?久しぶりじゃん!」的な事言うの最高!
    善哉、善哉。
  • 田紳有楽 空気頭
    町田康みたい! というのが最初の感想。逆か。そして噂には聞いていたが、茶碗と金魚の●場面はすごい。このわけの分からなさ、でもそれこそが●の真実かも〜
  • 田紳有楽 空気頭
    イリュージョンとはこういうことか。
    著者はお医者さんだったとのこと。
    輪廻転生、生死のエッセンスが濃いのは職業によるものかどうなのか。
    これから長く付き合っていきたい本。