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新人・野間宏、戦後日本に颯爽と登場――初期作品6篇収録のオリジナル作品集
1946年、すべてを失い混乱の極みにある敗戦後の日本に、野間宏が「暗い絵」を携え衝撃的に登場――第一次戦後派として、その第一歩を記す。戦場で戦争を体験し、根本的に存在を揺さぶられた人間が、戦後の時間をいかに生きられるかを問う「顔の中の赤い月」。ほかに「残像」「崩解感覚」「第三十六号」「哀れな歓楽」を収録する、実験精神に満ちた初期短篇集。
――草もなく木もなく実りもなく吹きすさぶ雪風が荒涼として吹き過ぎる。はるか高い丘の辺りは雲にかくれた黒い日に焦げ、暗く輝く地平線をつけた大地のところどころに黒い漏斗形の穴がぽつりぽつりと開いている。その穴の口の辺りは生命の過度に充ちた唇のような光沢を放ち、堆い土饅頭の真中に開いているその穴が、繰り返される、鈍重で淫らな触感を待ち受けて、まるで軟体動物に属する生きもののように幾つも大地に口を開けている。
Posted by ブクログ 2011年07月17日
野間宏。真空地帯があまりに面白くて、デビュー作の暗い絵がどうしても読みたくって読みました。
「暗い絵」「顔の中の赤い月」「残像」「崩壊感覚」「第三十六号」「哀れな歓声」の六編を収録。
デビュー作である「暗い絵」は正直よくわからなくて、でも、ブリューゲルの絵についての冒頭の長々とした記述が異様なも...続きを読む
Posted by ブクログ 2022年01月08日
野間宏の初期の短編集。
巻末の年表を確認すると収録作は終戦直後1946年に発表された『暗い絵』から、一番遅い『崩壊感覚』でも1948年3月で、氏の代表作である『真空地帯』より前に書かれた作品のみになっています。
野間宏といえば本書収録の「暗い絵」と長編の「真空地帯」くらいしか知らなかったので、個人...続きを読む
Posted by ブクログ 2012年06月05日
戦中、戦後の暗い日本、暗い思考を描いた作品。
「暗い絵」は解説に書かれてある通り、限定的な時代・場所を舞台としているので、時代背景などよく分からず、閉塞感だけは感じられました。
「顔の中の赤い月」はパートナーを失った男女の物語。男は失ってからはじめてその大事さがわかり、女は得た瞬間から失った後も大事...続きを読む
Posted by ブクログ 2013年04月05日
「暗い絵」――
ブリューゲルの絵の描写が印象的だ。
草もなく木もなく実りもなく
吹きすさぶ雪嵐が荒涼として吹きすぎる。
はるか高い丘のあたりは雪にかくれた黒い日に焦げ、
暗く輝く地平線をつけた大地のところどころに
黒い漏斗形の穴がぽつりぽつり開いている……。
野間宏の卓越した筆致力。
この描写...続きを読む
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