講談社文芸文庫ダメ人間私小説といえば葛西善蔵、嘉村礒多、そしてこの川崎長太郎である。
奇しくも「か」から名前が始まるこの三人の作品が書店で近くに並んでいることを考えると恐ろしい偶然を感じる。
誰だって己の芸術に可能性があるのならば貧しい魚屋家業など継ぎたくはないのだ。
いや可能性はなくとも魚屋
...続きを読むよりも芸術を選ぶ。
それがダメ人間なのだ。
生き様こそ芸術の根幹をなす(こともある)。
この作品集では他二人の「か」ダメ作家と比べて老境に入ってからのダメぶりに特徴があるように思う。
いい歳こいて実家の物置小屋に住んで腹が減っては母屋の台所で盗み食いをし、金に余裕があれば赤線に行く。
俺もこういう歳の重ね方をしたいものだ。
若き日の瑞々しいダメさはトリを飾る「徳田秋声の周囲」くらいで少し文体も違うので、この作品集の中では少し毛色の違う作品といえるか。
やはり昔のダメ私小説は面白い。
昨夏に復刊した文庫もあるのでその辺も攻めてみたい作家。
ただ講談社文芸文庫三大「か」ダメ私小説家ではやはり葛西善蔵が頭一つ抜けているように思うし若い鮮烈さが足りないような気がするので、星は4つ。