川崎長太郎のレビュー一覧

  • 抹香町 路傍

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    究極の私小説家と言われる長太郎の作品を初めて読んだ。長太郎の身の回り半径5mに起きた出来事が題材という感じなので、確かに”究極”の私小説なのだが、私小説と言われると違和感があった。それが、作品全体の”即物的”な乾いた感覚であることに思い当たった。いわゆる私小説的な情緒、情感といったところは無い。
    作品より長太郎自身が気になってしまうのも事実。軍国的時代と資本主義的な生産活動に背を向けた、一人アナーキスト活動と思えてならない。
    つげ義春の「無能の人」「ねじ式」を思い出した。
    長太郎に関わった周りの人も小説の題材とされてしまい、困ったんではないかと思います。

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    2025年01月09日
  • もぐら随筆

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    時系列が前後するので、川崎長太郎のいくつかの作品を読んでから読むのがいいと思う本。
    どこか、阿部昭と根っこが似ている、そんな気もするが(文体は全然違う、何か根本が、というところ。)軍人の父が見た戦前戦後が、阿部昭には何か…何といっていいか分からないけれど、そこに何か夜があるんだけれど、川崎長太郎はそこの差がない。淡々と、自分の人生を歩いた印象だ。一応小笠原に行ったけれど、川崎長太郎には国家のことや世間のことは文章に記すほどの影響や思うことはなかったのだろう。
    でもだからこそ、一個人の人生の流れを見せつけられて、ゆっくり死んでいく感触が脳に残った。

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    2017年12月27日
  • P+D BOOKS 浮草

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    後日談の視点が交代してくれていてよかった。貧しさは骨がらみのようなもの、たる台詞が胸に残る。泣き笑いの果て揺れるひかり見つめるような寂しさ、めくる人生のアルバム。

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    2024年08月06日
  • 抹香町 路傍

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    基本的に繰り返しという意味ではハルキさんと同であるはずなのに川長さんは何故にこれほど読ませるのか。私小説ならではの味わいと限界を示してくれた。

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    2024年06月03日
  • 鳳仙花

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    つげから流れて川長初読。私小説には良いイマアジュを持ち合わせてはいなかったが思うところあり楽しめた。予想では何を読んでもこれ以上これ以下にならず倦む可能性ありだがしばらく読むつもり。Sとこいつの話をしたかった。

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    2024年05月28日
  • 抹香町 路傍

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    川崎長太郎を初めて読みました。
    徳田秋声、宇野浩二の流れを汲むとは知らなんだけど、この流れは西村賢太にも続いていると思う。

    年老いた頃の作品も多くあり、過去の回想も交えながらも、静かに時間を眺める視線は読んでいて安心感をすらおぼえる。

    芥川や太宰とは違い、長々と生き抜く。それは見方によっては退屈であるかもしれないが、それはそれで凄みのある生き様が独特の語りで聞かせる。

    印象に残るのは、「ふっつ・とみうら」「日没前」「墓まいり」

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    2024年01月22日
  • 抹香町 路傍

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    主人公は文学に憧れて家業を放り出して上京するが食えずに生家に戻り、実家からほど近い海岸にある漁師が網などを保管する物置を住処に寝起きする50過ぎのダメ男。

    定職もなく妻もなく、物置小屋をねぐらに、ビール箱を机に私小説や匿名批評などを書き送って暮らしをたてる、負け組、駄目男の日常を綴った私小説を集めた短編集「抹香町/路傍」の紹介。

    「抹香町」に収められた短編はどれも貧しく、愚かしくて虚しい川崎長太郎自身の私生活が綴られている。

    どの短編も、生きることの虚しさ、人間が織りなすの面倒くさい柵、将来に対する不安と諦観が漂い、ポジティブな材料は何一つないが、不思議と絶望感も無い。

    主人公は、自ら

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    2018年01月11日
  • 鳳仙花

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    つげ義春の本に出てきた作家で、作品が気になって一冊買ったらはまった。

    なんかもう、死んじゃうんじゃないか、どこかその辺の道で、倒れてそのまま息絶えるんじゃないかとはらはらしながら読む。私小説なので、山も谷もない。人生の、「どうにもうまくいかないけれど、流れてはいく」、そんな小説。

    どこかいつも死が潜んでいて、何かうすら寒さを覚える。若い時に読んでも分からない、首を傾げてちょっとため息をつくような。「私」の不甲斐なさと、それでも何のかんのと歩いていく、その背中に、人が生きるということの輪郭が見えた気がした。

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    2017年09月06日
  • 抹香町 路傍

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    講談社文芸文庫ダメ人間私小説といえば葛西善蔵、嘉村礒多、そしてこの川崎長太郎である。
    奇しくも「か」から名前が始まるこの三人の作品が書店で近くに並んでいることを考えると恐ろしい偶然を感じる。
    誰だって己の芸術に可能性があるのならば貧しい魚屋家業など継ぎたくはないのだ。
    いや可能性はなくとも魚屋よりも芸術を選ぶ。
    それがダメ人間なのだ。
    生き様こそ芸術の根幹をなす(こともある)。
    この作品集では他二人の「か」ダメ作家と比べて老境に入ってからのダメぶりに特徴があるように思う。
    いい歳こいて実家の物置小屋に住んで腹が減っては母屋の台所で盗み食いをし、金に余裕があれば赤線に行く。
    俺も

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    2012年03月22日
  • 抹香町 路傍

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    ネタバレ

    つげ義春が「貧困旅行記」所収の「大原・富浦」で、「ふっつ・とみうら」に言及していたので知った作家。
    その後、西村賢太界隈でも見聞きして気になっていた。
    確かにそのふたりがラブコールを送るだけある。
    文体も面白くて、わざと助詞を飛ばす砕けた表現。
    「根が云々」に似た言い回しも一冊の中で数回登場した。
    構成がどうこうではなく、尻切れトンボだったり、それがまたいい抒情を出していたり。
    徹底することで生まれる味。
    で、いま個人的映画祭をしている小津安二郎と、芸者を巡って張り合っていた、というのも面白情報。

    ■父の死
    たった4ページ。父の死の床で遺言を聞く。魚屋を次男に継がせろと言われた、長男私。親の

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    2025年06月02日
  • 鳳仙花

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    小田原の魚屋の息子として生まれたが文学への夢を捨てきれず、家督を弟に譲って上京するも小説家として成功できずに郷里に戻る男の前半生と、売れない老残の作家と娼婦との交遊。時に、前に進むような生き生きとした日々では無く、こうした日常を放蕩するかの如くやり過ごす諧謔的な私小説を読みたくなる。西村賢太だったか、つげ義春だったか、忘れてしまったが、いずれかを経由して川崎長太郎に行き着いた。

    こうした私小説は私にとって、どんな風にしても生きていられる、という拠り所のようなものかもしれない。川崎の作品はしばしば「地べたを這うような低い視点」を帯びた文学と評される。

    本作は、川崎長太郎が通った私娼窟で馴染み

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    2024年06月25日
  • もぐら随筆

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    まあ、読んでて特段面白いものではないですねぇ…つげ義春先生の漫画に出てきた作家さんですから読んでみたものの…うーん…といった感じ。

    ヽ(・ω・)/ズコー

    この著者の小説も読んでみたんですけれども、まさに私小説!といった感じでユーモアだとかまあ、面白みはあまり無いのでした…社畜死ね!!

    ヽ(・ω・)/ズコー

    それが私小説だ!と言われれば何も言えないのですが…けれどもまあ、著者は僕が生まれた年に死んだらしいのでまあ、”昔の人”なわけですよね。当時の日本の風俗とかについて大いに語っていて、そこは興味深く読めました。

    あとはまあ…特に記述するべきことはないですねぇ…さようなら。

    ヽ(・

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    2018年09月01日
  • 抹香町 路傍

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    しっかりしろよーと言いたくなる作者の、私小説。
    でもついつい読んでしまうのはなんでだろう。好きなんだろうなぁ、この時間の流れが。

    劇的な何かが起こるわけでもない。
    きっとみんな、こうした人生を送っている。

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    2017年09月11日
  • 鳳仙花

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    もう一人の自分と我慢比べをしていて、永遠に勝ち負けの無い生き方をしているように感じました。
    這いつくばりながら生きていると思いながら読みつ進むうちに、主人公の感覚は漂うような生き方をしているのかなと思え、当時の社会を主人公というフィルターを通して見せてもらえている感じがしました。

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    2015年08月13日