軽いめまい

軽いめまい

2,189円 (税込)

10pt

4.5

郊外の住宅地にある築七年の中古マンションで、夏実は夫と小三と幼稚園児二人の息子と暮らしている。専業主婦の暮らしに何といって不満もなく、不自由があるわけでもない。けれど蛇口から流れる水を眺めているときなどに覚える、放心に似ためまい――。
1990年代の東京。「中産階級」の変わることのない日常? 2023年にポリー・バートンによって英訳され、ニューヨークタイムズやアトランティック誌で書評されるなど話題となった。
生活という日常を瑞々しく、シニカルに描いた傑作中編小説。


ケイト・ザンブレノ
「あまりに退屈で売春を始める主婦たちの話が気の利いた挿話として登場するように、たとえばブニュエルの、たとえばゴダールの、たとえばシャンタル・アケルマンの、売春する主婦たちについてのあらゆる映画への目配せがこの小説には見られるのだが、ただしこの小説の中では何も起こらず、退屈そのものがポイントで、じゃがいもの皮はただ剥かれ、皿はただ洗われ、けれど時々、ほんの時折、家事にまつわる瞑想的な瞬間、クラクラするような、あるいはぼうっとするような感覚がふと訪れることがあり、たとえば洗い物をしているとき、蛇口から紐のように絶え間なく流れ出す水や、流れていく水のきらめきに心を奪われてしまう、それこそがポリー・バートンによって「軽いめまい(ルビ:マイルド・ヴァーティゴ)」と訳出された感覚で、この言葉は小説の八番目のセクションのタイトルにもなっている。」
「解説」より

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軽いめまい のユーザーレビュー

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    Posted by ブクログ

    やっぱ金井は凄い。中産階級の専業主婦の具体に支配された平坦な思考を美しく言語化し、めまいという映画論へと結びつける。これが『家庭画報』に連載されていたのもすごいし、英語版の解説を読んでも生活の問題が万国共通であることが伺える。ところどころで金井節の毒舌が光る。

    0
    2025年04月05日

    Posted by ブクログ

    金井美恵子作品に触れるのは初。
    2023年にポリー・バートンによって英訳されてからニューヨーク・タイムズやアトランティック誌に書評され話題になった。
    自分も手に取ろうとは思っていなかったのだが帯の文章で、引き合いに出されている映画監督にシャンタル・アケルマンの名前があり興味が湧いた。
    読んでみると確

    0
    2025年03月25日

    Posted by ブクログ

    最近まで金井美恵子と言う名前は聞いたことが無かった。
    海外で評価が高く、ノーベル賞の候補に名前が有り、気になって初めて読みました。

    大きな出来事などは起きず、主婦の日常を描いている。
    読み進んでいると、だんだん面白くなってきました。

    ただ、正直ノーベル賞候補になっているのは良くわからないですね。

    0
    2025年11月30日

    Posted by ブクログ

    ずっと家にいて家のことをするというのは、究極は全く何もしないでいることもできるし、しようと思えば際限なくやることは出てきて、その曖昧さや途方もなさ、時間があるようでないような、ないようであるような「目まい」に思わず呆けてしまうあの感覚は実感としてわかる、と思った。

    本当に何気ない日常が淡々と描かれ

    0
    2025年06月20日

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