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濃やかな愛情と明晰な目がとらえた人間・太宰治――太宰治は、文字通り文学のために生まれ、文学のために育ち、文学のために生きた「文学の寵児」だった。彼から文学を取り除くと、そこには嬰児のようなおとなが途方に暮れて立ちつくす姿があった。戦中戦後の10年間、妻であった著者が、共に暮らした日々のさま、友人知人との交流、疎開した青森の思い出など、豊富なエピソードで綴る回想記。淡々とした文にも人間太宰の赤裸な姿が躍如とする好著。
◎「これは、凄い本に出会ったものであります。質も量も。明晰さも、たしかさも、怖ろしさも。科学者の随筆みたいな、美しい揺るぎのない日本語で、太宰治は凝視され、記憶され、保存される。この著者が、昭和の初期に、太宰の妻であり、ともに暮らし、子をなして、日々会話し、身の回りの世話をし、親戚や食卓や経済を共有していたかと思うと、トカトントン。そこらの男の何十倍も聡明だった女の記録であり、記録をよそおった文学であります。」<伊藤比呂美「解説」より>
※本書は、『回想の太宰治』(昭和58年6月 講談社文庫刊)を底本としましたが、「アヤの懐旧談」を削除し、『増補改訂版 回想の太宰治』(平成9年8月 人文書院刊)より、「蔵の前の渡り廊下」「南台寺」「父のこと、兄のこと」「『水中の友』」の4篇を収録しました。
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Posted by ブクログ
妻・美知子さんが書く太宰のこと、生活のこと、故郷のこと。ポツリポツリと思い出し書きしている感じが目の前で話を聞いてるようで良かった。
美知子さんは太宰の才能に心底惚れていたんだなぁ。
夫を手伝うことに誇りを持っていたように思う。
逡巡した題が"惜別"と決まるところ、美知子さんが"人間失格"の四文字を初めて目にするところは痺れた。
女っぽさを持ち合わせた太宰に対して彼女はとても男性的かと思う。文の端々にバッサリと太宰を斬るような表現があって面白かった。雪の中7キロも歩いたり(当時はそんなの大したことなかったのかもしれないけれど…でも太宰は呆れてたね笑)、2人の往復書簡を"お守りにしよう"と紅白の紐で結んだもの…うわー!太宰ってやっぱキザー!と鳥肌立つそれをイライラしてる時に思わず燃やしちゃったとか笑
とてもサッパリしている人で好感が持てる。
とても相性の良い、仲の良いご夫婦だったんだと思う。美知子さんの器の大きさの上に成り立ってはいるものの、2人のバランスが良い。太宰が亡くならなければ何だかんだおしどり夫婦として添い遂げていたんだろう。
太宰の死後、"もう一字も新しく原稿用紙に書かれた字を読むことはできない"と思いながら原稿整理をする場面にホロリとした。
Posted by ブクログ
太宰が死ぬ前の10年を配偶者として過ごした人の書いたものを集めた本。すごいどっしりとした感じの文章を書く人だなぁ、というのが一番の印象。夫が死のうが何だろうが、決して揺らがない盤石さと言うか冷静さというか。心中しちゃった山崎富江さんの日記もずいぶん前に読んだけれど、あの人はもっと、この先どうやって生きていこうかって悩んでる感じだったのと対照的。
太宰が実家のことを自慢に思っていたこととか、終戦前後に一家で疎開している間のことを割と楽しんでいたらしいこととか(もっと肩身の狭い思いをしてたのかと思ってた)、太宰は人を待たせるのが嫌いで原稿を落としたことがなかったとか、意外な話も色々と。
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