社会学 - 筑摩書房作品一覧

  • 沖縄社会論 ――周縁と暴力
    NEW
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    暴走族のパシリにはじまり、沖縄で調査を続けた。 『ヤンキーと地元』を書いた伝説のフィールドワーカーによる遺稿集。 2024年12月9日に急逝した、社会学者・打越正行さんの遺稿集を一周忌に合わせて刊行。 『ヤンキーと地元』(2019年3月刊、2024年11月ちくま文庫化)で打越さんは、沖縄の暴走族の「しーじゃ・うっとう(先輩・後輩)」関係などをもとに、建設業で生きるリスク層の生活を描かれました。地元の人間でも調査できない領域にパシリとして入っていった著者の本は、ナイチャーの書いたものとして驚きをもって迎えられ、第六回沖縄書店大賞沖縄部門大賞を受賞するなど高い評価を得ました。 本書は打越さんの遺した、パシリ論、沖縄社会論、暴力論の3部からなり、石岡丈昇、上原健太郎、上間陽子、岸政彦各氏の解説を付す。 === 根本はあくまでも「社会学者」だった。 暴力の真ん中で、生活をともにするような調査をしながら、 打越は優しい男だった。 ――岸政彦 みんなが打越くんの仕事を超えていく。 そこに自分の仕事を重ねながら、連なりながら。 ――上間陽子 ===
  • 生活史の方法 ――人生を聞いて書く
    3.5
    「ひとりの人間の、人生の語り」が生活史です。この本は、生活史を聞いて原稿を書き、冊子にまとめて作品とするための手引きとして書かれています。沖縄で二五年にわたって聞き取り調査をしてきた著者が、生活史の美しさ・おもしろさから、そのむずかしさ・暴力性まで、これまでの考えをまとめた一冊です。
  • 人間関係を半分降りる 増補版 ――気楽なつながりの作り方
    4.2
    人間は醜い。だから少し離れてつながろう! 大ベストセラー『完全自殺マニュアル』の著者が、悲痛な体験から生きづらさの最終的な解決法=優しい人間関係の作り方を伝授する。友人、家族、恋人。人生で何より人間関係に悩んだ著者が血を流すように自らの体験を元に考え抜き、発見した、解放感のある具体的な解決策。文庫化にあたりその後の状況を増補した。 解説 鴻上尚史
  • オーラル・ヒストリー入門
    4.0
    オーラル・ヒストリーと一言でいっても、実際の現場で行われている行為はさまざまだ。本書は、「話し手の口述によること」「共有可能にしようとしていること」「話し手が歴史的事実を語り残そうとしていること」の三点を実現するための具体的な手順を示したうえで、それぞれの実践における困難と実践を紹介する。聞き取りの初心者にも、経験者にもおすすめのガイドブックである。
  • 自己決定の落とし穴
    4.0
    自分のことは、自分で決める――。本来善しとされるはずなのに、どこか疲れるのはなぜ? そもそも自分で決めるってそんなによいものなのか。他人の決めたことにはどこまで踏み込んでよいのか。「自己決定」をめぐるこの社会の自縄自縛をときほぐす。 【目次】第一章 自分で決めることに息苦しさを感じてしまう……個人化が進む一方で責任を求められる社会/第二章 決定に対する責任の所在……集団と個人の決定をめぐる責任の論理/第三章 決定を回避する私たち……選ばずに済ませるためのエビデンスと合理性/第四章 自分で決めたことに追いかけられる私たち……こうありたいと望んだ「自分らしさ」に囚われる/第五章 決めたことへの介入は「余計なお世話」?……一人になる決定を尊重するか、孤独・孤立を問題視するか/第六章 緩やかに決められる社会へ……決められない・誤ってしまう「弱さ」を受け入れるには
  • 自己への物語論的接近 ――家族療法から社会学へ
    4.5
    「自己」とはどのように形成され、どうすれば変えられるのだろうか。実はそれは、私たちが自分自身について「物語る」ことで産み出されているのだ。そして物語がエピソードの選択・配列を伴う限り、そこからはみ出してしまうものも存在する。自己物語はそうした「語り得ないもの」(例えばトラウマ的体験)を巧妙に隠しているのであり、この隠蔽を解除する方向へと物語を書き換えることで、異なった自己を産み出すことも可能になる──。物語論を治療に用いた家族療法(物語療法)から、社会学的自己論は何を学べるか。〈物語〉をキー概念に自己の生成・変容をあざやかに読みといた刺激的論考集。
  • 日本の社会保障
    -
    私たちはいつ、病気で働けなくなったり、障害を負ったり、会社が倒産して仕事を失ったりするかわからない。個人の努力ではどうしようもない場面に遭遇した時にも健康で文化的な最低限度の生活が維持できるように憲法の生存権を保障する仕組みが社会保障だ。自分の力や家族や地域での支えあいではどうにもならないことが多いからこそ、この仕組みが必要である。では、法律と運用はどうなっているか。生活保護、年金、医療、公衆衛生、介護保険と高齢者福祉、労災保険と雇用保険、子育て支援、障害者福祉、社会保障財源としての消費税など、その仕組みと財政の最新事情から課題まで網羅する一冊。
  • 復帰50年の沖縄世論
    -
    沖縄では、米軍基地に対する態度と、自身のナショナル・アイデンティティの位置づけが結びつくような状況がある。2022年9月、両者の複雑な関係を明らかにするために行われた世論調査は、沖縄県民3800人を対象とし、1000人以上から回答を得た大規模なものになった。本書は、その結果から見えてきたものを示す。
  • 新しいリベラル ――大規模調査から見えてきた「隠れた多数派」
    4.0
    実は日本には「新しいリベラル」と言いうる人々が存在することが、7000人を対象とする社会調査から浮かび上がってきた。この人たちが求めるのは、私たちの「成長」をサポートする政治だ。「新しいリベラル」は最多数派を占めるのに、これまで見落とされてきたのはなぜか? 「従来型リベラル」や保守層など他の社会集団と比較しながら、「新しいリベラル」が日本政治に与えるインパクトと可能性を示す。「新しいリベラル」の実像と可能性を明らかにした、初めての書!
  • 猫社会学、はじめます ――どうして猫は私たちにとって特別な存在となったのか?
    4.0
    猫と人との関係が最も深まったのが現代。なぜ猫は可愛いのか、「猫島」とは何かなど、五つの視点から分析。「猫と人間の未来」のための全く新しい学問の誕生!
  • 日本人の思考 ――ニッポンの大学教育から習性を読みとく
    3.7
    私たちは知らない間にある思考の型に嵌ってしまってはいないだろうか。多くのものが大学進学する現状において、そこでの教育は日本人の思考に多大な影響を与えている。しかし、大学教育では翻訳学問に依拠したため、言葉のズレが放置され、概念がゆらぎ、適切に考えることを教えられていない。そのため蔓延したエセ演繹型思考、キャッチアップ思考、カタカナ語の氾濫、とはどういったものか。その背景を探っていく。
  • 社会は「私」をどうかたちづくるのか
    3.3
    なぜ「私」は、今のような「私」であるのだろうか? 他者との関係性からより広い社会的状況までに影響を受け、「私」という存在は複雑にかたちづくられている。社会学のさまざまな観点からその成り立ちについて考え、「私」と社会をめぐる風通しをよくする手がかりを示す。 【目次】第1章 数字でみる「私」/第2章 他者と「私」/第3章 現代社会における「私」/第4章 つくられる「私」/第5章 語られる「私」
  • 「東大卒」の研究 ――データからみる学歴エリート
    3.9
    学力格差や体験格差が深刻化する日本の教育。そんな中、入試難易度や威信という点においてトップに君臨しつづける東京大学に進学するのはどんな人たちなのか。学歴エリートはどこからきてどこへ行くのか。中高一貫男子校出身者の多さや地方女性の少なさの実態、親の学歴、家庭環境や文化経験、卒業後の職業・年収・役職、結婚や子育て、そして社会意識や価値観まで。東大卒業生を対象に行われた大規模な独自調査のデータから明かされる、学歴エリートの生態と格差社会のリアル。 【独自調査から徹底検証! データから読みとく学歴エリートの実態】こんなに多い!中間一貫男子校出身者/幼少時の読者や文化経験は?/地方女性という困難/親の学歴はどう影響している?/就職・年収・役職/「東大女性は結婚できない」は本当?/学歴エリートの偏った社会意識……
  • 増補 アルコホリズムの社会学 ――アディクションと近代
    4.7
    ひとはなぜアルコホリズム(アルコール依存)に陥るのだろうか。原因を「意志の弱さ」に求めていては何も解決しない。自分の意志ではどうにもできないと認めることが回復への第一歩となるのだ。そこから見えてくるのは、「自らの意志で欲求をコントロールする主体」という、近代社会の理想的人間像である。アディクション(依存症)とは、そうした近代的あり方の綻びが露呈したものに他ならない。だとすれば、回復への道は近代合理主義が切り捨ててきたものの中にこそ見出し得る──。ベイトソンやギデンズの思想に依拠しつつ、アディクションを社会学的に解明した先駆的名著。
  • 貧困とは何か ――「健康で文化的な最低限度の生活」という難問
    4.0
    貧困とは「お金がないこと」だと思っている人は多い。では生きていくための最低限のお金さえあれば貧困ではないのか? 貧困の定義は実は時代ごとに課題にぶつかり、形を変えてきた。貧困層を劣った人間と見なす優生思想、男女差別を前提とした家族主義、子どもを救うに値する/しないに選別する投資の論理、貧困を努力の問題に還元する自己責任論……。気鋭の研究者が、「貧困」概念をめぐる議論と問題点を整理し、「貧困」が今もなくならないのはなぜかという根本的な問いに対峙する。
  • 都市社会学講義 ――シカゴ学派からモビリティーズ・スタディーズへ
    -
    都市社会学とはどんな学問か。絶えず変調しつづける現代世界において、なおも都市という場に注目する意味とは何だろうか。20世紀初頭の「衝撃都市」シカゴに花開いた古典的な都市社会学やその批判者であるニュー・アーバン・ソシオロジー、世界経済の緊密化とともに台頭する空間論や移動論的転回。そこで何が問われ、何が見落とされてきたか。長年、都市社会学やコミュニティ研究を主導し、モビリティーズ・スタディーズの導入に尽力してきた著者が都市/都市社会学の軌跡をたどり、その現状と可能性を問う。
  • よりみち部落問題
    3.6
    私は被差別部落に生まれた。自らの出自を考えずに自由に生きることこそが、部落問題の解決ではないか。そう考える著者がたどりついた地平は――。被差別部落のみならず、あらゆる差別を考える一冊。たまたま被差別部落に生まれたために、部落問題についてあれこれ思い悩んだ半世紀。記者として取材した差別、共同体の過去・現在・未来、今こそ語りあかす。
  • 個性幻想 ――教育的価値の歴史社会学
    5.0
    なぜ「個性」は人々を惹きつける社会的テーマとなったのか。日本社会は「個性」にどんな理想=幻想を思い描いてきたのか。大正期に教育的価値として「個性」が浮上し最初のブームが起こったあと、1980年代に再ブームが到来。『窓ぎわのトットちゃん』のヒットもあり、臨時教育審議会で「個性化教育」路線が推進される。そして社会的価値として定着したこの言葉は、現在も「障害も個性」のような言説によって論争のタネであり続けている。日本の公教育の歩みに即しつつ、「個性」概念の来歴を振り返る。
  • フィールドワークってなんだろう
    4.0
    どんな場所、どんな相手、どんな関係であっても、他者と向き合ううえで大事なこと。自分の半径五メートルから飛び出し、はじめて目にするに世界に飛び込んでみよう。考え方がひっくり返り、社会の見え方が変わるはず。じっくりしっかり話を聞くコツもわかります。 【目次】第1章 ユニークな研究――キャラを立てるには/第2章 一つの例から全体を問いなおす―ブラックスワンを探せ!/第3章 図と地の反転――幽霊と死者に聞く/第4章 なぜ少数を扱うのか――俯瞰する観察眼/第5章 自分のよって立つ足場を壊す――時間と空間を歪ます/第6章 探究する感覚を磨く――自分への再教育/第7章 弱い人の声に耳をすます――世界の開き方/第8章 心地よい社会からの脱出――二重の世界を生きる
  • 社会保障のどこが問題か ――「勤労の義務」という呪縛
    4.0
    病気やケガをしたとき、出産や育児、そして介護が必要になったときの生活を保障する社会保険。働けなくなったときや老後の生活を支える年金制度。毎月の給料から天引きされているものの、いざというとき自分がどの給付を受けられるのかわかりにくく、申請するのもどこか後ろめたい。日本の社会保障はなぜこんなにも使いづらいのか。複雑に分立した制度の歴史から、この国の根底に渦巻く「働かざる者食うべからず」の精神を問い、誰もが等しく保障される社会のしくみを考える。
  • 社会学への招待
    4.0
    社会学は、社会を研究対象とする学問だ。だが、そこで言われる「社会」とは、私たちの「日常」とイコールではない。それどころか、ときに日常は、より本質的な社会問題や社会構造を隠蔽し、見えにくくしてしまう。逆に言えば、社会の根本問題は一見「当たり前」に思える物事にこそひそんでいるのであり、それをあえて疑い、執拗に探究することが重要となる。社会学とは、そうした探究を通じて社会の成り立ちを明らかにし、その構成単位である人間主体のありようをも解明しようとする試みにほかならない―。世界中で長年使われてきた、アメリカ社会学の泰斗による大定番の入門書!
  • 価値の社会学
    4.0
    本書は、価値に関する一般理論と、その理論を手がかりにした日本社会の分析から構成される。西洋近代に「価値」を認め発展してきた日本社会。一方は価値の首尾一貫性に、他方は外部の価値にコミットしつつ効率的に採用する態度によって特徴づけられる。ここにある差異の考察を通し、戦前以降、日本社会が経験した価値体系の変動はどのようなものとしてあらわれてくるのか―。著者が展望する新たな規範は、日本文化と西洋文化という二項対立の乗り越えまでを射程に入れる。日本が生んだ画期的な批判的社会理論であり、戦後日本社会論の白眉。
  • 翻訳をジェンダーする
    4.0
    翻訳小説の女性達は原文以上に「女らしい」言葉で訳されていることがあります。翻訳と社会とわたし達の密接な関係を読みとき、性差別をなくすための翻訳、社会に抗する翻訳の可能性を探る一冊。
  • エスノグラフィ入門
    4.4
    生活を書く、それがエスノグラフィの特徴です。そして、もっとも良質なエスノグラフィの成果は、苦しみとともに生きる人びとが直面している世界を表し出すところに宿るものです。もともと人類学で発展したこの手法は、シカゴ学派を拠点に、社会学の分野でも広がっていきました。本書では、5つのキーワードに沿って、そのおもしろさを解説していきます。予備知識はいりません。ぜひ、その魅力を体感してください。
  • 中国共産党vsフェミニズム
    4.0
    中国に女権主義(フェミニズム)ブームがやってきた。「なぜこの社会は不公正で不条理なのか」。自らの境遇に不満を募らせる女性たちの問いに、女権主義が答えを与えたからだ。「天の半分を支える」といわれてきた中国の女性だが、建国以来、中国共産党最高指導部にその姿はない。改革開放政策は男女格差を広げ、出産や結婚から女性は遠ざかる。女性への暴力や人身売買の報道もあとを絶たない。女権主義を手に入れた女性たちに対し、政権は神経をとがらせる。MeToo運動の最中に現地取材をした中国特派員が見た抵抗と弾圧の最前線。
  • バトラー入門
    4.2
    現代のジェンダーとセクシュアリティ研究の方向性を決定づけたとされるジュディス・バトラーの主著『ジェンダー・トラブル』は、その難解さでも名高い。実は、バトラーの理論を理解する鍵は、当時のフェミニストやセクシュアル・マイノリティが置かれていた現場――社会と歴史と思想の文脈にある。クィア理論って何? ブッチ/フェムやドラァグ論はどこから来たの? パフォーマティブってつまりどういうこと? バトラーの主著『ジェンダー・トラブル』を時代ごと理解する。
  • マンガでたのしく! 国会議員という仕事
    4.3
    マンガ家から国会議員に転身して2年。議員の働き方や、法律ができるまでの過程など、政治の世界に飛び込んではじめてわかったことをマンガ「国会にっき」とともに解説します! ・委員会や党内審議って何? ・国会がないときはお休み? ・秘書や官僚はどんな存在? \「国会」を内側から解説/
  • 社会学をはじめる ――複雑さを生きる技法
    4.0
    社会学は、みんなにとって大事なことについて、しっかりしたデータにもとづいて考え、それを表現する営みです。 ・自殺を少なくするにはどうすればいいだろうか? ・どうしたら、みんなにとって居心地のよい職場ができるだろうか? ・災害からの復興って、何がゴールなのだろうか? 社会学は、たとえばこんな問題に取り組んできました。さあ、次はあなたの番です。この社会の複雑な問題をなんとかしたいと思ったら、社会学があなたの力になります。
  • 町内会 ――コミュニティからみる日本近代
    3.9
    加入率低下や担い手の高齢化により、存続の危機に瀕する町内会。回覧板、清掃、祭り、防災活動など、活動は多岐にわたる。そもそも参加は任意であるはずなのに全戸加入が原則とされてきた、このふしぎな住民組織はいつどのようにして生まれたのか。それは共助の伝統か、それとも行政権力の統治技術か。明治地方自治制、大衆民主化の時代から戦中・戦後まで、コミュニティの歴史を繙くことで、この国の成り立ちがみえてくる。問題の本質をとらえ、再生の手がかりを探るための必読書。
  • 女は見えない
    3.0
    1巻1,870円 (税込)
    七海なな、前田敦子、Dr.ハインリッヒ、丸サ進行、愛子内親王。愛が消費と常に癒着する。そのシステムの中で、人はよく生きることができるのか。すばるクリティーク賞を受賞した新鋭のデビュー批評集。
  • 結婚の社会学
    4.4
    結婚をめぐる常識は、日々変化しています。事実婚、ステップファミリー、同性パートナーシップ、選択的シングルなど、一対の男女による結婚→出産というモデルではとらえきれない家族のかたちがたくさんあるのです。この本では、国際比較、歴史的比較、理論という三つの視点から、結婚というものを解き明かしていきます。当たり前を疑ってみることで、「ふつうの結婚」「ふつうの家族」という考え方を相対化できるはずです。
  • 他者といる技法 ――コミュニケーションの社会学
    4.3
    わたしたちが日々意識せずにおこなう「他者といる技法」。そのすばらしさや正しさだけでなく、苦しみや悪も含めて、できるかぎり透明に描くにはどうしたらよいか──。思いやりとかげぐち、親と子のコミュニケーション、「外国人」の語られ方、マナーを守ることといった様々な技法から浮かび上がるのは、〈承認と葛藤の体系としての社会〉と〈私〉との間の、複雑な相互関係だ。ときに危険で不気味な存在にもなる他者とともにいる、そうした社会と私自身を問いつづけるための、数々の道具を提供する書。
  • 言葉を失ったあとで
    4.5
    「聞く」の実際。アディクション・DVの第一人者と、沖縄で社会調査を続ける教育学者。それぞれの来歴から被害/加害をめぐる理解の仕方まで、とことん具体的に語りあった対談集。
  • 原理運動の研究
    3.5
    安倍元総理銃撃事件を契機に注目を集めた統一教会。日本での活動の歴史は60年以上もさかのぼる。1970年代には統一教会の影響下にあった原理研究会が全国の大学で組織活動を広げ、大きな社会問題となった。強引な勧誘、募金、集団生活……。それは家族も巻き込んで多くの悲劇を生んだ。本書はいち早く原理運動に警鐘を鳴らし、社会に衝撃を与えた歴史的名著といえる。
  • ニッポンの数字 ――「危機」と「希望」を考える
    3.3
    縮みゆくこの国を待ち受ける未来は暗いのか? 社会を考えるための論点各々を、数字をベースに考えると、「危機」と「希望」の両面が見えてくる。この国の未来の姿とは? 「人口・社会」「経済」「環境問題」「防衛・安全保障」「AI、そしてロボット」「最新医療」 考えるべき論点それぞれを数字で整理すると「危機」と「希望」の両面が見えてくる ・男性の60.4%が非正規労働者/・2005年生まれの女性の最大42%が生涯子どもを持たない/・殺人事件の検挙率は101%(2021年)/・再生可能エネルギーで賄える電力量のポテンシャルは、2020年度国内発電量の2.6倍超/・2100年までに、夏が1年の半分近く、冬は2カ月以下に?
  • 商店街の復権 ――歩いて楽しめるコミュニティ空間
    3.7
    商店街は過去の遺物ではなく、新たな動きが見え始めている。若い世代がカフェやコワーキングスペースなどコミュニティの拠点として商店街に関心を向け、クルマで買い物に行くのが難しい高齢世代が商店街に足を向ける流れも出てきた。コミュニティ空間としての「ウォーカブル・シティ(歩いて楽しめる街)」を求める動きも各地で起こりつつある。商店街のもつ新たな意味や価値に注目し、国際比較の視点や、まちづくり・交通など公共政策の観点も盛り込み、幅広い叡智を結集。未来の商店街のありようと、再生に向けた具体策を提起する。
  • 学校に染まるな! ――バカとルールの無限増殖
    4.4
    (1)学校には、人類の叡智や希望が詰まっている。でも巧妙な出来レースも仕組まれている。さまざまな教育現場を見てきたプロが教える、学校をサバイブする方法。 (2)ルールやべき論で子どもたちを縛り、思考停止した大衆を社会に送り出すクソみたいな装置という面が学校にはある。思考停止した大衆はルールを求める。ルールはひとをますますバカにし、バカはさらにルールを求める。バカとルールの無限増殖ループだ。 (3)学校は、すごい。でも、すべてが出来レースだ――。プロが教える、学校をサバイブする方法。 【目次】第一章 なぜ勉強しなくちゃいけないの?/第一章 なぜ勉強しなくちゃいけないの?/第二章 時代は変わってもひとは変わらない/第三章 出来レースだらけの競争社会第四章 なぜ大人は髪型や服装にうるさいのか?/第五章 「いい学校」より「面白い学校」を探せ/第六章 青春の舞台としての学校/第七章 「理想の学校」なんていらない
  • 「いいね!」を集めるワードセンス
    3.8
    会話の中で、イヤなことを言われた時、気まずい雰囲気になった時などの切り返し方には、その人のセンス、人間性が現れる。嫌味にならない、あるいは場の雰囲気をこわさない、共感を集める言葉の選び方、言い換え術を学ぼう。雑談の中でも、あるいはSNSでも、ちょっとした一言で印象は大きく変わる。芸人や有名人、映画のタイトル、CMのコピー、文学作品等に学んだり、クイズを解いたりすることで、自然にワードセンスを磨いていける。
  • 人間関係ってどういう関係?
    4.0
    「本当の友だちだと思ってたのに」「ただの知り合いです」「恋人と友人って何が違うの?」「親子はこうでなければならない」……身近な関係に悩むのはなぜ? 家族、恋人、友人――いちばんすぐそばにあり、実はいちばんつかみどころのない「身近な関係」。切り捨てることも、手放しに肯定することも難しいその関係は私たちをいつだって悩ませる……。人と人のつながりをいちから捉えなおすことで、息苦しさとさみしさの狭間に立ち位置を見つける本。 【目次】まえがき/序章 まえがき その二/第1章 身近な関係とはどんなものか/第2章 身近な関係はどんなものでないか/第3章 タテとヨコ/第4章 共同と相補/第5章 パターンをかけあわせる/第6章 身近な関係のウチとソト/第7章 あらためて、身近な関係は必要か/結びに代えて――人は変わる、関係も変わる/あとがき
  • 妻に稼がれる夫のジレンマ ――共働き夫婦の性別役割意識をめぐって
    3.8
    共働きが一般化し、女性の社会進出が進んだ現在、妻のキャリアを優先する家族が現れ始めた。バリバリ稼ぐ妻を支えるため、仕事を離れて主夫となり、子育てをメインで担う夫たち。収入が下がり、社会的な立場が不安定になったとき、彼らの胸の内に去来するものとは――。駐在員の夫として海外で暮らす「駐夫(ちゅうおっと)」と、キャリアを重ねる妻を持つ夫たち12人にインタビュー。稼ぐ力と男らしさを巡る葛藤と、自らの決断を活かして新たなキャリアを切り開く新時代の夫の姿が見えてくる。
  • 虐殺のスイッチ ――一人すら殺せない人が、なぜ多くの人を殺せるのか?
    4.6
    ナチスのホロコースト、クメール・ルージュの大量殺戮、関東大震災の朝鮮人虐殺、インドネシア政権による虐殺、ルワンダ・フツ族のツチ族虐殺……、歴史を、世界を見渡すと、虐殺事件は繰り返し起き、あふれている。なぜごく普通の善良な市民が、同じように普通の人をいとも簡単に殺すのか、しかも大量に。キーになるのは、集団と同調圧力。集団が熱狂し変異して起きる虐殺のメカニズムを考える。
  • だから知ってほしい「宗教2世」問題
    5.0
    いまも、多くの「宗教2世」が悩み苦しんでいる。何が問題で、どうすればいいのか? ジャーナリスト、研究者、弁護士ら専門家と当事者たち計40名以上が寄稿。この問題の解決へ向けて、総力を挙げて取り組んだ、全国民必読の書!
  • 歪な愛の倫理 ――〈第三者〉は暴力関係にどう応じるべきか
    5.0
    DV(ドメスティック・バイオレンス)に代表される、暴力関係から逃れられないひとには、実際、何が起きているのか。問題系を前提とした〈当事者〉ではなく、特定の個人に注目した〈当人〉の語りから議論を始めたとき、〈第三者〉は、どのようにして応答することができるのか。本書は、「なぜ暴力関係から逃れられないのか」という問いへの通説的な見解に対して、再考を迫る。あるべきかたちに回収されない異なるエートスを探求する、刺激的な論考。 【目次】まえがき 親密な関係に生じる暴力を問う――〈当人〉と〈第三者〉のあいだの亀裂/第1章 なぜ暴力関係から逃れないのか【通説編】――専門家らによる見解/1 加害者から離れたがらない被害者たち/2 専門家らによる代表的な回答/第2章 なぜ暴力関係から逃れないのか【異端編】――語られる歪な愛/1 分離以外の解決策の必要性――「離れたくない」/2 〈当人〉の言葉の真正性――「私は相手のことをよく知っている」/3 依存がもたらす救済――「依存によって生きのびられる」/4 欲望される暴力や支配――「私はマゾヒストである」/第3章 分離とは異なる解決策――DVと修復的正義/1 加害者との関係性切断を拒絶する被害者/2 DVにおける修復的正義の実践「サークル・オブ・ピース」/3 DVに修復的正義を適用することへの批判/4 日本の現状と今後/第4章 暴力的な存在と社会的排除――トルーディ事件を考える/1 トルーディ事件/2 トルーディの真正性/第5章 生きのびるためのアディクション――自己治療・自傷・自殺/1 自己治療仮説/2 日本における「生きのびるためのアディクション」/3 見えなくなっていく死(者)/第6章 介入と治療からの自由/1 〈第三者〉にできること:ドラマ『ラスト・フレンズ』から考える/2 自傷他害とパターナリズム
  • 増補 戦う姫、働く少女
    5.0
    ポップカルチャーには現代女性の働きかたが反映されている――。異性愛と家父長制を否定した『アナと雪の女王』や、アイデンティティの労働がいかなるものかを示した『魔女の宅急便』、「無賃家事労働」の問題をラブコメにおとしこんだドラマである『逃げるは恥だが役に立つ』など、数々の映画やドラマを縦横無尽、クリアに論じた文芸批評を大幅増補・改訂して文庫化。
  • ルールはそもそもなんのためにあるのか
    3.4
    フランスのアナーキスト、ピエール・ジョセフ・プルードンは言った、「法律は、金持ちにとっては蜘蛛の巣。政府にとっては漁網、人民にとってはいくら身をよじっても脱けられない罠」だと。まさに今の日本の状況そのものじゃないか! 【目次】第1章 ルールは何のために生まれたのか…さまざまな局面に則して多様なルールが作られた/第2章 ルールとして成り立つ必須条件…人は自分が損をしてでも公平さを求める/第3章 フェアプレーの精神…ルールに反してなければいいのか?/第4章 時代に応じて変わるべきルールもある…いつまで異性同士の結婚にこだわる?/第5章 復讐するは誰にあり?…世界が滅ぼうとも刑は執行されねばならない/第6章 なぜ人々は立ち止まらないのか…利己的な人々が自ずと社会秩序を作る/第7章 こんなルールは嫌だ!…中途半端なルールは混乱を生む/第8章 民主主義は公正じゃない…多数決は根拠のない偏見までも温存する
  • 安楽死が合法の国で起こっていること
    3.8
    日本にも、終末期の人や重度障害者への思いやりとして安楽死を合法化しようという声がある一方、医療費削減という目的を公言してはばからない政治家やインフルエンサーがいる。「死の自己決定権」が認められるとどうなるのか。「安楽死先進国」の実状をみれば、シミュレートできる。各国で安楽死者は増加の一途、拡大していく対象者像、合法化後に緩和される手続き要件、安楽死を「日常化」していく医療現場、安楽死を「偽装」する医師、「無益」として一方的に中止される生命維持……などに加え、世界的なコロナ禍で医師と家族が抱えた葛藤や日本の実状を紹介する。
  • たったひとつの「真実」なんてない ――メディアは何を伝えているのか?
    3.9
    メディアはすべて、事実と嘘の境界線上にある。それをまず知ろう。ニュースや新聞は間違えないという思い込みは捨てよう。でも嘘ばかりというのは間違い。私たちに不可欠となっているメディアを正しく使う方法とは?
  • 資本主義の〈その先〉へ
    -
    1巻2,420円 (税込)
    「終わり」が語られながらも、“その先”が見えてこない資本主義。資本主義の概念を大幅に刷新し、“その先”へ行くための原理を示した決定的論考! 異なる世界の可能性。
  • ケアしケアされ、生きていく
    4.1
    他人に迷惑をかけていい!!★ケアは弱者のための特別な営みではない。社会の抑圧や呪縛から抜けだして、自分のありのままを大切にするような、お互いがケアしケアされるそんな社会を目指そう!★ 〈著者からひと言〉この本は、ケアから逃げてきた私が、ケアと出会い直すことによって見えてきた世界を、みなさんにも馴染みがある3つの視点から考えてきた本です。1つめは20歳の大学生の世界です。私は大学生を20年近く定点観測してきました。その上で、今の学生が「他人に迷惑をかけてはいけない憲法」に縛られて、生きづらさを抱えているように思えます。それは一体どういうことなのか、を考えてみました。2つめは6歳の子どもの世界です。私の娘は今、6歳なのですが、「迷惑をかけまくって」楽しく生きています。安心して迷惑をかけられる環境で、のびのび生きています。でも、ちゃんとしなさい、と叱り続けると、そのうち親や教師を忖度する大学生になるのではないか、と心配しています。なぜ、のびのびした子どもが、その十数年後には「他人に迷惑をかけてはいけない」と縮こまる大学生になるのか? その背景を考えるうえで、3つめの世界、「昭和98年的世界」を生きる48歳の私の世界を考えています。昭和が終わって30年以上経っても、日本社会の基本的なOSは昭和時代のままです。理不尽な労働環境でもがまんする、抑圧的環境に「どうせ」「しゃあない」と諦める。それが、女性の管理職や政治家比率が低く、イノベーションが生まれにくい「失われた30年」の背景にあると私は考えています。そして、この世界は「ケアレス」な世界です。この閉塞感をこえるためには、日本社会がケア中心の社会に変われるか、が問われています。能力主義や男性中心主義の呪縛の外にある世界です。それは、共に思い合う関係性が重視されるし、そのためには自分自身の「唯一無二性」とも出会い直す必要があります。そんなの無理だよ!と理性の悲観主義に陥らず、ではどうやったらケア中心世界は可能なのか、について、できる一つの可能性を模索したのが、本書です。中高生にも読んでもらえるよう、わかりやすい文体を目指しました。よかったら、読んでモヤモヤしてくださると、嬉しいです。 竹端寛■【目次】 第一章 ケア? 自分には関係ないよ!/一 「迷惑をかけるな憲法」/他人に迷惑をかけてはならない/都合のいい子!?/大人から学んだ「いい子」/二 しんどいと言えない/意見を表明する権利/他人の顔色をうかがう/苦しいことと苦しみ/三 自分自身を取り戻す/ゼミで涙を流す学生/ペラペラしない他者/ about-ness からwith-nessへ/四 面倒な中に豊かさがある/ケア不在を超えるために/自分の魂に迷惑をかける?/第二章 ケアって何だろう?/一 確かに面倒なのだけれど/めっちゃ可愛く、めっちゃややこしい/存在をぶつける/意見表明の主体としての子ども/一方的にケアされる存在ではない!/二 自分へのケアと他人へのケア/子どもの「開かれ」/自分の人生へのリミッター/忖度の危機/作られた悪循環/偽解決を超えるために/三 他者へのケアの前に/支援か支配か?/関係性のダンス/同調圧力に異を唱える/誰へのケア?/四 互いが気にかけあう/自分へのケア/共に思いやること/ with-ness で生活を回す/何を見ようとしてこなかったのか/第三章 ケアが奪われている世界/一 ケアのないわたし/ケアレスとはなにか/同調圧力と「空気を読む」/自己責任とわきまえ/ケアレスな社会/二 「昭和九八年」的世界/労働ファースト/最も眠れていない国/頑張れば報われる、の呪い/前時代の大成功、ゆえに/三 標準化・規格化の「大成功」の陰で/昭和の成功を支えたもの/銀行型教育システムへの囚われ/「正解」幻想/昭和的価値観の限界/四 ケアの自己責任化を超えて/「発達」の「障害」?/置き去りにしてきたケア世界/自分が学んだことはこれなのか!/「ちゃんと」のリミッターを外す/第四章 生産性至上主義の社会からケア中心の社会へ/一 生産性とケア/誰のための、何のための効率?/男性中心主義の外にある世界/能力主義の呪縛/「生産離脱者」の排除/二 責任の共有化で楽になる/依存先を増やす/関係性に基づくケア/懲罰ではなくエンパワーする責任/切り分けるのではなく、分かち合う責任/三 共に思い合う関係性/中核的感情欲求と向き合う/生き様の理解と支援/迷惑をかけるな、より大切なもの/他者の他者性に気づくこと/四 ケア中心の社会へ/己の唯一無二性とも出会い直す/魂の脱植民地化/葛藤を共に味わい社会化する/できる一つの方法論
  • ルポ 高学歴発達障害
    3.6
    「ケアレスミスが多い」「人間関係がうまくいかない」――生活や仕事上で問題を抱える「大人の発達障害」が注目を集めて久しい。実はその中に「高学歴でありながら、発達障害を抱えている人」が少なからず存在する。「エリート」のイメージと「障害」の実情の狭間で理解が得られず、周囲と自分を比べては落ち込み、アイデンティティの葛藤を抱える……。当事者、大学教員、精神科医、支援団体への取材を通じて、発達障害が取りざたされる背景にある「異質であること」「非効率的であること」に不寛容な社会の姿を浮かび上がらせる。
  • 世界リスク社会論 ──テロ、戦争、自然破壊
    3.3
    現代社会が生み出したリスクは、われわれの世界をどう変えたのか? 国境を無効化してしまうテロリズムの遍在と、それに対抗して形成される「対テロ連合」という諸国家間の結束。環境破壊や核の脅威をもたらす一国家の決断に対する、国を超えた草の根レベルの運動の勝利。リスクはグローバル化を促進し、内外、上下、あらゆる角度から「国家」という枠組みを掘り崩して、近代社会の根本原理に見直しを迫っている。このリスクにいま、いかなる危機と可能性が秘められているのか。現代ドイツを代表する社会学者が鋭く切り込む。『危険社会』の著者によるもっともわかりやすくコンパクトな入門書。
  • はじめてのフェミニズム
    3.7
    女性にはどんな権利が必要? 「女の仕事」はどう生まれた? 多様で複雑なフェミニズムの論点を、多様で複雑なまま、でもわかりやすく伝えます。
  • 社会学の考え方〔第2版〕
    4.0
    日常世界はどのように構成されているのか。日々変化する現代社会をどう読み解くべきか。――本書は、碩学と若手の二人の社会学者が、そのような根源的な問いに正面から挑んだ作品である。読者は、本書を通じて、社会学の基礎的な概念を学ぶとともに、現代社会学の最前線の議論を知ることができる。読者がうながされるのは、“社会学的思考”の実践である。それは、わたしたちの生の多様性と可能性について、開かれた姿勢をとることにほかならない。定評ある教科書の第2版新訳。文庫オリジナル。
  • 病が分断するアメリカ ――公衆衛生と「自由」のジレンマ
    -
    コロナ禍のアメリカでは、迅速な疫学調査とワクチン開発がなされたにもかかわらず、多くの死者が出た。ワクチン接種に当初から反対が根強く、マスク着用では国が分断された。アメリカの公衆衛生が抱える深刻なジレンマ――国民の健康と自由な活動という二律背反の価値のどちらを優先するかをめぐって、どんな論争があったのか。20世紀初頭以来の公衆衛生史を繙きつつ、社会格差・地域格差・人種格差などによって分断されているアメリカの諸問題を追究する。
  • 資本主義は私たちをなぜ幸せにしないのか
    4.0
    なぜ経済が発展しても私たちは豊かになれないのか。それは、資本主義が私たちの生活や自然といった存立基盤を餌に成長する巨大なシステムだからである。資本主義そのものが問題である以上、「グリーン資本主義」や、表面的な格差是正などは目くらましにすぎず、根本的な解決策にはなりえない。破局から逃れる道はただ一つ、資本主義自体を拒絶することなのだ――。世界的政治学者が「共喰い資本主義」の実態を暴く話題作。(解説・白井聡)
  • メディアの生成 ――アメリカ・ラジオの動態史
    -
    メディアの近未来を予測するとき、ラジオの歴史から学ぶことは多い。20世紀が幕を開けた頃、電波を用いたコミュニケーション領域=無線は、最新のニュー・メディアだった。そこから徐々にラジオ放送が産業として編成され、マス・メディアとして確立し、日々絶え間なく放送される番組が人々の生活文化を形成していくことになる。本書は20世紀初頭から半ばまでのアメリカにおけるラジオの動向を通じ、メディアが経験した地殻変動や、近代社会における文化の諸相に迫る。インターネット登場前夜に書かれた名著に、新章を増補した待望の文庫版。
  • 生きていく絵 ──アートが人を〈癒す〉とき
    4.0
    精神科病院・平川病院にひらかれた“造形教室”。ここでは心を病んだ人たちが、アートを通じて、自らを癒し、自らを支える活動をしている。絵を描くことで生きのび、描かれた絵に生かされている――。4人の作家の作品と人生をつぶさに見つめ、“生”のありかたを考え、“生きにくさ”の根源を照らしだす。こうした思索のなかで“癒し”の可能性をさぐる希望の書。
  • 良い死/唯の生
    -
    「病で死ぬとしてもその時までしたいことをし、楽をするのがよい」と考える著者が、安楽死・尊厳死を「良い死」とする思考を批判的に検討。病を得、あるいは老衰のため身体や思考をうまく働かせられない人に、生きる価値がないと思わせてしまう現代社会。「留保なしの生存」を妨げる種々の規範や価値が埋め込まれているこの社会を、「生きたいなら生きられる」社会へと変えていくには何が必要か。「良い死」を追い求めるのはやめ、「唯の生」でよいではないかと呼びかける。単行本『良い死』に、単行本『唯の生』の第5章~第7章を加えて文庫本とした決定版。
  • 嫌な気持ちになったら、どうする? ──ネガティブとの向き合い方
    4.1
    ちょっとした不安から、誰かへの激しい怒りまで、ネガティブな気持ちになることは誰にでもあります。そうした気持ちの特徴や性質を知れば、今より上手に、対処できるようになるでしょう!
  • 自分の仕事をつくる
    4.3
    仕事とはなにか。「いい仕事」はどこから生まれるのか。仕事を「自分の仕事」にするためにはなにが必要か。八木保を、柳宗理を、ヨーガン・レールを、パタゴニア社を、ルヴァンを、象設計集団を、さまざまな「いい仕事」の現場を訪ねた貴重な記録。働き方が多様になってきた時代、迷ったら立ち戻りたい働き方のバイブル。文庫化にあたり10年後のインタビューを2本追加。
  • 暗闇のなかの希望 ──語られない歴史、手つかずの可能性
    5.0
    2003年、イラク戦争が始まった時期に、「希望を擁護する」ために本書は書かれた。あの時代は過ぎ去ったが、あらたな戦争が生じ、破壊的な気候変動が到来している。絶望と冷笑主義が残りつづける現代に、希望をもつことはいかに可能なのか。「希望は光を浴びた舞台の真ん中ではなく、周縁の暗がりにある」(本文より)。2016年に改訂され、直接行動と思想を往還する現代の名著を文庫化。
  • 戦後空間史 ──都市・建築・人間
    4.0
    冷戦、高度経済成長、持家社会、革新自治体、バブル経済、アジア戦後賠償、農地の宅地化、東日本大震災……終戦から21世紀の現在まで、戦後の日本の都市・近郊空間はさまざまな出来事を経験し、大きく変容してきた。本書では、その戦後のあゆみを建築や都市の研究者が、社会や世界情勢、歴史的事件を含めて多角的に検討する。変質しながらも生き続ける戦後を思考する画期的試み。
  • 敗戦と戦後のあいだで ──遅れて帰りし者たち
    4.0
    敗戦後、歴史的力により戦地から本国への帰還が遅れてしまった人びとがいる。復興から経済発展へのパラダイムが形成されつつあるなか、拭いがたい違和感や齟齬をかかえ、彼らは戦後という時間をいかに生きたのか。五味川純平、石原吉郎、横井庄一、小野田寛郎、中村輝夫……。本書は複数の周縁的・両義的存在の歩みを丹念に読み解き、もうひとつの歴史を描きだす試みである。戦後日本社会を構成する条件とは何か、いま一度根本から問う。
  • よみがえる田園都市国家 ──大平正芳、E・ハワード、柳田国男の構想
    5.0
    1980年に当時の大平正芳首相のもと、当代一流の知を結集してつくられた「田園都市国家構想」。それは人間的で文化的な国家を目指すすぐれた長期的国家ビジョンであった。その構想の原点となったエベネザー・ハワードの田園都市構想、それを発展させた農政学者・柳田国男による知られざる日本独自の分権的田園都市構想を検証。大平構想にあった家庭や地域コミュニティ、自然や文化の回復、そして国家と都市、地方が調和して発展するというビジョンを21世紀に再生させる試み。
  • 敗者としての東京 ──巨大都市の「隠れた地層」を読む
    4.2
    富と人口が集中し、世界最大規模を誇る都市、東京。だがこの都市は、少なくとも三度、占領されてきた。1590年の家康、1868年の薩長連合軍、1945年の米軍によってである。凹凸をなすこの都市の地形と結びつきながら、過去の「敗者たち」の記憶は、歴史的な地層をなしてきた。縄文の古代から現代までを視野に入れ、地球史的視座と家族史的視座とを往還しながら、江戸=東京に伏在する「敗者たち」の記憶の水脈を探り当て、「勝者」であり続けようとする令和の東京とは異なる可能性を探究した、比類なき「江戸=東京」論!
  • どうして男はそうなんだろうか会議 ──いろいろ語り合って見えてきた「これからの男」のこと
    4.1
    非モテの苦しみ、マウント合戦、マチズモ、男同士のケアの不在……。どうして男はそうなんだろう? 6人のゲストと語り合って見えてきた、男の今とこれから。
  • 村の社会学 ──日本の伝統的な人づきあいに学ぶ
    4.0
    日本の村々は、長い歴史のなかで工夫に工夫を重ね、それぞれの風土に根ざした独自の生活パターンと人づきあいのあり方をかたちづくってきた。そのしくみや特徴をつぶさに観察してみると、村を閉鎖的で前近代的なものとみなすステレオタイプこそ、むしろ古びたものにみえてくる。コミュニティの危機が叫ばれる今日、その伝統を見つめなおすことは私たちに多くの示唆を与えてくれるのだ。日本の村に息づくさまざまな工夫をたどり、そのコミュニティの知恵を未来に活かす必読書。
  • モダンガール論 ──欲望史観で読む女子の二〇世紀
    -
    1巻880円 (税込)
    「女の子には出世の道が二つある。立派な職業人になることと、立派な家庭人になること」(はじめに)。社長になるか社長夫人になるか。それが問題だ。……明治・大正・昭和と、モダンガールたちは夢の実現に向けて、おじさんたちの揶揄にも耐えて、ずっと悩み、かつ頑張ってきた。当時の資料から見えてくる女子のホンネをベースに語られる、日本近現代女性百年史の試み。
  • 小さなまちの奇跡の図書館
    4.0
    鹿児島県指宿市のさびれつつあった図書館を日本で最も注目を集める施設にしたのはいちユーザーに過ぎなかった地元女性たちだった。人々を繋ぐ奇跡の図書館ができるまでの物語。
  • 陸軍将校の教育社会史(上) ──立身出世と天皇制
    5.0
    天皇制イデオロギーの「内面化」が、戦時体制を積極的に担う陸軍将校を生み出したというのは真実か。本書は、膨大な史料を緻密に分析することを通じて、これまで前提とされてきた言説を鮮やかに覆していく。戦前・戦中の陸軍将校たちは、「滅私奉公」に代表されるような従来のイメージとは異なり、むしろ世俗的な出世欲をもつ存在だった。秩序への積極的な同化こそが、陸軍将校を生んだ。上巻には、「序論 課題と枠組み」から「第2部 陸士・陸幼の教育」第2章までを収録する。第19回サントリー学芸賞受賞作、待望の文庫化。
  • 社会分業論
    -
    近代社会はいかにして誕生したのか、社会はどのように分化・発展していくのか。そもそも人類はなぜ社会を必要としたのか──。これら難問を解く手がかりが「分業」である。分業の進展が商品生産を飛躍的に向上させ、資本主義の発展に大きく寄与したことはいうまでもない。だがそれ以上に、分業は新たなかたちで人々を結びつけ社会の礎としての役割を果たしてきた。「機械的連帯から有機的連帯へ」というテーゼとともに語られる本書は、ヴェーバー『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』と双璧をなす社会学の原点として高く評価されている。デュルケーム畢生の大著を、定評ある名訳で送る。
  • 基地はなぜ沖縄でなければいけないのか
    4.0
    沖縄への米軍基地の集中が続く。日本における同基地の面積の7割強がこの地にある。米兵による事件、米軍機などによる騒音被害は沖縄の社会・経済に深刻な影響を与え、選挙を通じて示される沖縄の民意は、基地の集中を拒絶している。にもかかわらず、長きにわたり解決策を見出せずにいる。そもそもなぜ、沖縄に基地が集中し、それが続くのか。その経緯を明らかにし、地理的な必然とも、安全保障をめぐる戦略上の必然とも言い切れないことを示す。その上で、基地問題の「解決」へと一歩を踏み出すための選択肢を提示した決定的な書!
  • ルポ 動物園
    4.0
    2008年に著者は、日本各地の動物園・水族館にいる、動物と動物に関わるひとびとを訪ねる連載をスタートさせる。「動物園とは動物を収集・飼育・展示する施設である」この定義から導かれる、動物園の持つ原罪とは何か。動物園のメディアとしての特性は何か。動物を擬人化してもいいのか。飼育係は、どのように動物と関わるのか。共同通信の記者が全国をまわって考えた、動物園の過去、現在、そして未来。
  • 闘う図書館 ──アメリカのライブラリアンシップ
    -
    格差の拡大に直面する現代社会において、図書館はいかなる役割を担っているのか。「無料貸本屋」と揶揄されるイメージとは異なり、移民受け入れや崩壊するコミュニティの再生、オバマケアの窓口、デジタル化の最前線と、様々な場面で民主主義の根幹を支える拠点となってきた。予算をめぐってトランプ政権と対立するなど数々の危機を乗り越え、理念と現実の狭間でもがくアメリカ図書館界の知られざる奮闘を活写する。
  • なめらかな社会とその敵 ──PICSY・分人民主主義・構成的社会契約論
    3.9
    来たるべき300年後の社会を実行可能な形で構想した画期的試論、ついに文庫化! この複雑な世界を複雑なまま生きることはいかにして可能か――。これが本書の中心にある問いだ。生命の起源から説き起こし、膜と核の問題が社会制度と地続きであることが、最初に示される。社会の〈なめらかさ〉とは、膜の機能を弱め、諸物が連続的なつながりをなすネットワークへと開いていくことにほかならない。それは、情報技術の支援の下、貨幣・投票・法・軍事というコアシステムの変革によって実現される。近代のメジャーバージョンアップだ。巻末には、原著刊行後に顕在化した問題を俯瞰する新論考を付し、本書の現代性と可能性をあらためて照射する。
  • 鬼滅の社会学 ――家族愛・武士道から〈侠の精神〉の復権まで
    4.0
    『鬼滅の刃』(吾峠呼世晴)が訴えかける問いを総ざらい。分断が進む現代社会において多くの人の心をつかみ熱くさせた物語は、人間の弱さ、家族の絆、仇討ちの是非、自己犠牲のあり方……生きるうえでぶつかる数々の課題に目を背けることなく正面から向き合い、胸に刺さる言葉で描き出す。古今東西の作品と思想を総動員しながら、本作が包含する現代人が取り戻すべき重要な価値観〈俠の精神〉に迫る。
  • 日本の中絶
    3.7
    昨今、中絶をめぐる議論が続いている。経口中絶薬の承認から配偶者同意要件まで、具体的にこの問題をどうとらえればいいのか。かつて戦後日本は「中絶天国」と呼ばれた。その後、世界が中絶の権利を人権として認める流れにあるなか、日本では女性差別的イデオロギーが社会に影を落としている。中絶問題の研究家が、歴史的経緯をひもとき、今後の展望を示す。
  • 自治体と大学 ――少子化時代の生き残り策
    4.0
    大学が近くにあることは、自治体にとって地域活性の起爆剤になり得る。高校生が地元で文系・理系だけでなく、看護、芸術といった特色ある教育を受けたり、病院など大学付属機関も誘致できるかもしれない。……とはいえ、地方大学の開学には、国公私立いずれの場合も、財政的な負担が大きい。卒業生が地域に残るかも不透明。これまでに撤退した大学も全国では少なくない。人口減少によってどちらも縮小が予測される自治体と大学。その関係史を紐解き、両者の望ましい協働、今後のゆくえをさぐる。
  • ニュー・ダッド ──あたらしい時代のあたらしいおっさん
    4.0
    1巻1,760円 (税込)
    「おっさん=古いもの、いまの社会の悪しき土台を作ったもの」とみなされる今日この頃。それならいま「おっさん」はどこへ行くべきなのか? 国内外のポップカルチャーをヒントに、「あたらしいおっさん=ニュー・ダッド」たちの姿を見つめるエッセイ。ドラマ『ストレンジャー・シングス』、 映画『20センチュリー・ウーマン』、ブルース・スプリングスティーンやボン・イヴェールといったミュージシャン、 ゲーム『Detroit: Become Human』、漫画『クッキングパパ』といったカルチャーの中のニュー・ダッドたちから、一般人のパパ系インスタグラマー、プリキュア好きのオタクまで。
  • 新編 おんなの戦後史
    3.5
    フェミニズムを知るために必読。女性史研究先駆者の代表作を新編集。底辺の視点からの女性民衆史。「おんなの戦後史」の項では戦時中に女性たちが進んで戦争協力をしてしまったことを起点とし、戦後婦人運動、70年代ウーマン・リブの出現等。他の項では、古代の母権考から、米騒動、婦人労働者等について。平塚らいてうらの人物伝も。96歳著者の書き下ろしも収録。
  • 人間関係を半分降りる ――気楽なつながりの作り方
    4.3
    1巻1,430円 (税込)
    人間は醜い。だから少し離れてつながろう! 友人、家族、恋人。大ベストセラー『完全自殺マニュアル』の著者が、悲痛な体験から生きづらさの最終的な解決法=優しい人間関係の作り方を伝授する。鶴見済が生きづらさの問題について20年ぶりに書き下ろした解決法。
  • 建築家の解体
    4.3
    『建築の解体』の刊行から五〇年弱、後期近代の時代にあって、安藤忠雄や隈研吾に代表される従来の建築家のイメージは、見直しを迫られている。ブルデューの理論を用いて、建築家という職業がつくられていくプロセスを描写するとともに、解体していく建築家像の軌跡をたどる。フィールドワークの知見を盛り込み、「街場の建築家」という今後の可能性を最後に示す。
  • 女教師たちの世界一周 ――小公女セーラからブラック・フェミニズムまで
    4.0
    『小公女』に登場するミンチン先生といえば、意地悪で醜い独身女。女教師に対してこんな冷たい眼差しが注がれていた19世紀イギリスで、男子校に引けを取らない教育を行う、教師養成のための女子校が誕生した。女教師は女教師を育て、やがて活躍の場を求めてイギリス本国を飛び出していく。インドやカナダ、アフリカ、そして西インド諸島――。大英帝国にイギリス式女子教育を広める冒険の旅は、各地に何を残したのか。その旅路の果てに、知られざる「ブラック女教師」の物語が立ち現れる。
  • 資本主義・デモクラシー・エコロジー ――危機の時代の「突破口」を求めて
    4.0
    自由民主主義体制は20世紀半ば以降、大枠としては機能してきたが、いまや多くの自由主義諸国で、代表制や複数政党制の機能不全が指摘されるようになっている。新自由主義が世界経済を席巻するようになるにつれ、格差社会化も進行している。地球環境の危機も深刻化している今、これら喫緊に課題とどう向き合うかを巨視的な枠組みから考究し、隘路からの脱出の方途を探った渾身の書である。
  • だからフェイクにだまされる ──進化心理学から読み解く
    3.6
    「フェイクニュース」が、社会に只ならぬ影響を与えるようになって久しい。コロナ禍でも、誤情報が人々を攪乱している。本書では進化心理学を基にフェイクニュース、ひいては人と情報を取り巻く遺伝的・文化的背景を解き明かす。これにより、人々が「なぜだまされてしまうのか」「なぜ広めてしまうのか」が理解できるはずだ。そのうえで個人の情報リテラシー力強化による努力だけではなく、社会的な制度や取り組みが必要とされる背景にも触れる。
  • 東アジアの農村 ──農村社会学に見る東北と東南
    -
    度重なる天災や戦乱、あるいは植民地支配を経験しながら、地を耕し、コミュニティを形成し、生産と生活を続けてきた東北・東南アジアの農村。それぞれの文化や暮らしの違いはどこからくるのか? 日本、中国、韓国から、台湾、ベトナム、タイ、ラオス、インドネシアに至るまで――。人びとと大地の営み、農をめぐる統治と支配の歴史に深く分け入り、広大な大陸の原風景を一望する。第一人者による東アジア農村社会学の総括。
  • 天皇・コロナ・ポピュリズム ──昭和史から見る現代日本
    3.5
    コロナ禍の現代日本は、昭和の戦争へ向かった時代に酷似している。メディアの発展と普通選挙の実施でポピュリズム政治が横行。議会制民主主義への懐疑が広まり、天皇をシンボルとしたポピュリズム、民衆による下からの突き上げが起こり、日米戦に突入していく。なぜ天皇は利用されてしまったのか。強制力の弱い名ばかりの国家総動員体制は、いかにして天皇をシンボルとする社会の同調圧力、下からの突き上げで動かされたか。歴史を教訓に、我々はいま何をすべきかを問いなおす。
  • 辺野古入門
    4.6
    普天間基地移設問題の最前線としての名護市辺野古――。しかし、そこには地域の歴史があり暮らしがある。キャンプ・シュワブとどのような関係にあるのか、普天間基地移設の候補地としてなぜ辺野古が浮上したのか、「条件つき受け入れ容認」とはいったい何を意味するのか。二〇年にわたり現地でフィールドワークを続ける社会学者が、親愛の情を込めて描く、辺野古を知ってもらうための初めの一冊。
  • ルポ 女性用風俗
    4.8
    女性の社会進出が進む中、男女ともに未婚率が上がり、性交未経験の割合も増加している。そして女性たちの性のありようも多様化している。「30歳になって処女は重かった」と語る女性会社員、DVに悩みセックスレスの既婚女性、SMに魅了される女性、ストリップに号泣する若い女性たち。利用する女性たちだけでなく、サービスを提供する店や人々への取材を通して、性に対する多種多様な欲望や風俗に通う動機を探り、女性たちが求めているもの、そして手にしたものは何だったのかを探る。
  • 進駐軍向け特殊慰安所RAA
    3.5
    終戦からわずか3日後の1945年8月18日、内務省警保局から全国の知事に秘密の指示が発せられた。それは、進駐軍向けの性的な慰安所を速やかに設けよという指令だった。副総理が要請し、のちに総理大臣となる池田勇人主税局長が口利きして資金を調達したと伝えられる特殊慰安所RAA。日本人客は入れないその場所で働いていたのは誰だったか。RAAが閉鎖され、街に出た女性たちが国民から疎まれることになったわけとは。占領下にあった敗戦国、その裏側史を活写する。
  • 日本水商売協会 ──コロナ禍の「夜の街」を支えて
    4.0
    2020年4月9日。日本水商売協会代表理事の甲賀香織は、銀座や歌舞伎町のクラブ経営者らと共に、自民党本部を訪れた。新型コロナウイルス感染症対策として行われる様々な助成から、接待飲食業──水商売を除外する方針に抗議するためだ。「水商売が一般企業と同様に、ビジネスとして認められるようにしたい」「働く女性たちが色眼鏡で見られないようにしたい」こんな思いで設立された日本水商売協会が、思わぬ形で注目された瞬間だった。コロナ禍で明らかになった差別から、成長産業としての魅力まで、知られざる水商売の世界を描く。
  • パンデミック監視社会
    3.0
    今回のパンデミックは、データ分析や機械学習が興隆する監視資本主義の時代に生じた、未曾有の事態である――。猛威をふるうウイルスに対処するため監視技術が広範に活用され、監視によるデータ収集や人々の行動追跡・制御は、ときに権威主義と共鳴しつつも、驚くほどスムーズに受け入れられていった。パンデミックは私たちの世界をどう変えたのか。「コロナ前」に戻ることは本当に可能なのか。監視研究の世界的権威が、新型コロナウイルスがもたらした真の脅威に迫る。
  • 全国水平社 1922-1942 ――差別と解放の苦悩
    -
    全国水平社が創立されてから、2022年で100周年を迎える。その存在は20年間であったが、近代日本社会に存在する部落差別からの解放を、部落民自らが求めて結成した画期的な社会運動団体である。戦時体制下に組織は消滅するが、苦悩に満ちたその軌跡は、自由と平等を願う私たちに多くの教訓を与えてくれるはずである。
  • PTA モヤモヤの正体 ──役員決めから会費、「親も知らない問題」まで
    5.0
    子どものいる親の多くが経験するPTA。保護者間の交流などプラス面もある一方で、「?」なことも少なくない。「入退会は自由」が原則なのに、そうなっていないPTAが大半だ。個別の事情が考慮されないまま、「一人一役」などの仕組みで決められる係。そして上部団体へとその一部が「上納」されるPTA会費。各地のPTAやその上部団体で使途不明金が見つかったこともある。学校単位のPTAから、それらを束ねる「日P」まで、PTAの「モヤモヤ」に多角的に迫った渾身のドキュメント。すべての保護者、学校関係者、必読の書!
  • 中央線がなかったら 見えてくる東京の古層
    3.3
    「中央線がもしなかったら?」そう考えて街を見てみれば、そこにはいつもと違った景色が現れる。中野、高円寺、阿佐ヶ谷、国分寺・府中、日野……沿線の街を地形、水、古道、神社、商店街に注目して歩けば、古代・中世が見えてくる! 鉄道中心の視点を脱し、土地を見る目を養う「まち歩き」最高の入門書。地形がよくわかるカラーマップ付。近年の中央線沿線の変化をめぐる対談も新たに収録。
  • 「人それぞれ」がさみしい ――「やさしく・冷たい」人間関係を考える
    3.9
    人づきあいをしなくても回る社会ができあがっていった中で、不安定なつながりを維持するべく変化したコミュニケーション、それでも「人それぞれ」では片付けられない問題、引き起こされる分断と対立を見ていくとともに、「人それぞれ」のその先を模索する。
  • 政策起業家 ――「普通のあなた」が社会のルールを変える方法
    4.6
    「政策起業家」とは、民の立場で社会のルールや制度を変え、時には新たな法律まで作ることができる人だ。人口減少の日本社会は既存のルールを変える必要があるが、官僚や政治家にはできていない。著者は「フローレンスの病児保育」「おうち保育園」「障害児保育園ヘレン」などを次々に立ち上げ社会を変えてきた。その悪戦苦闘ぶりをオープンにし、これまで政官に閉じていたルールメイキングを、「普通の人」ができるようになる社会にしていきたい。
  • 暴走するポピュリズム
    4.0
    世界的に長い歴史と波を持つ運動であるポピュリズムは、いかにして日本に現れたのか。世界のポピュリズムの流れとの比較から、1990年代の「改革派首長」(橋本大二郎、北川正恭、田中康夫ら)や小泉改革などに現代日本のポピュリズムの淵源を求め、「橋下劇場」「小池劇場」と呼ばれる「劇場型政治家」が地方政治に現れた政治力学を分析。今後日本でも国政レベルでポピュリズム政党が台頭する可能性があるのか、そうなった場合の危険性や対処法をリベラル・デモクラシー擁護の観点から幅広く論じる。
  • 東京五輪の大罪 ──政府・電通・メディア・IOC
    4.7
    世界的パンデミックのなか、東京五輪・パラリンピックが強行された。1年延期されたものの新型コロナの猛威は止まる所をしらず医療体制は逼迫。再延期や中止を求める声も高まるなかでの開催だった。しかし、政府が望む支持率のアップにはつながらず、国民軽視、あからさまな既得権益層の利益優先の姿勢が明らかになった。さらにこの華やかな祭典を動かしてきた巨大広告会社「電通」による、世論誘導やメディア支配も浮き彫りになった。本書はこの問題を長年追ってきた第一人者による東京オリンピック総括である。
  • コロナ政策の費用対効果
    3.0
    人と人との接触を完全に断てばコロナウイルスに感染しないが、それでは経済・社会・生活の基盤が崩壊する。それらの維持と感染源との遮断、医療体制の整備といった政策を総合的に組み立てていくにはどうすればよいか。PCR検査、緊急事態宣言、医療提供、給付金や休業補償などをめぐるコロナ政策の費用対効果を数量的に分析。より効果的に人々の命を救い、経済の犠牲を少なくする方法があったかどうかを検討し、多岐にわたる政策の当否を検証。今後あるべき政策を提言する。

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