資本主義は私たちをなぜ幸せにしないのか

資本主義は私たちをなぜ幸せにしないのか

ビジネス・実用
1,177円 (税込)

5pt

なぜ経済が発展しても私たちは豊かになれないのか。それは、資本主義が私たちの生活や自然といった存立基盤を餌に成長する巨大なシステムだからである。資本主義そのものが問題である以上、「グリーン資本主義」や、表面的な格差是正などは目くらましにすぎず、根本的な解決策にはなりえない。破局から逃れる道はただ一つ、資本主義自体を拒絶することなのだ――。世界的政治学者が「共喰い資本主義」の実態を暴く話題作。(解説・白井聡)

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資本主義は私たちをなぜ幸せにしないのか のユーザーレビュー

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感情タグBEST3

    Posted by ブクログ

    本書は、資本主義の矛盾点を指摘し、新たなる社会システムへと移行することを促す。
    まずフレイザーは、資本主義を単なる経済システムとして捉えることは不完全な視点であり、それだけでは見落としてしまう資本主義の問題があるという。そこで、資本主義を、「制度化された社会秩序」として拡張して捉え、「資本主義経済」ではなく、「資本主義社会」と定義する。この視座に立って確認できることは、資本主義は経済的な条件のみならず、他にも四つの「非経済的な」条件の上で成り立っていることだ。そして、そうした条件があるからこそ、資本主義社会は、非経済的な現象に対しても強い影響力を持っている。その四つの「非経済的な」条件とは、収奪/搾取の分離、経済的生産/社会的再生産の分離、自然/人間の分離、経済/政体の分離だ。つまり、資本主義は、カラーラインを境界に人種的弱者から「収奪」し、「社会的再生産」を低価値に位置付けて社会的弱者に結びつけて現場を疲弊させ、「自然」をその自己回復能力を頼みに荒らし、経済と「政体」を切り離し、公的権力を疎かにし、余剰など社会形成の問題を資本が決定し、民主的決定ができなくなっている。すなわち、資本主義は自身が強大に振る舞うために、これら「非経済的な」条件を犠牲にしているのだ。そしてフレイザーは、こうした条件が資本主義自身の存立の条件として成り立っているのにも関わらず、資本主義自らがそれらを侵害し、不安定化させている点であり、資本主義社会を共食いの象徴として「ウロボロス」に例え、資本主義の自滅的性質、矛盾的・不安定な性質を指摘していることも注目だ。
    しかし、のちに新たな社会システムとして構想される「社会主義」に対して、それが具体的にどのようなものになるかはナンシー・フレイザー自身まだ考え中のようだ。資本主義の抱える矛盾点に対応できそうなものとして、社会主義を挙げるのはいいが、それがどこまで通用するかの構想はさほどされていない。しかしフレイザー自身、社会主義としての構想の正解が見つかっていないのは自覚しており、そして本書の主眼はおそらく資本主義の矛盾点に対する抗議のはずなので、そこまで問い詰める必要もない。
    これら四つの条件は、それぞれ2章、3章、4章、5章で詳述・考察されている。そして、それを踏まえて、6章では新しい「制度化された社会秩序」として、資本主義の概念同様に拡張された「社会主義」について構想している。

    「資本主義の本質を理解する上で第一級の文献である」と宣伝される本書は、まさしくその価値がある本だと思った。新自由主義など、現代資本主義について多少の知識があるとかなり読みやすいだろう。また、本書は資本主義を、もっぱら「経済体制」として見るのでなく、「社会秩序」として捉えることを大前提とし、それがいかに「非経済的な」ものから成り立っているかについて鮮やかに暴き出している。その本書に一貫している論理構成から、ナンシー・フレイザーが現代の思想家として目されるだけの人物であると思った。また、ナンシー・フレイザーは名前ばかりよく聞くので今回を機に熟読できたのは良かった。ただ、その丁寧すぎる手腕のせいか、2章、3章、4章、5章で、どの段階の資本主義社会でもそれが言える、ということを示すために、四つの資本主義の段階を時系列的に展開し、いちいち説明しているところを読むのは少々面倒だった。本書的には必要なんだろうが、読者的にはそこはあまり面白くなかった。

    0
    2026年01月18日

    匿名

    購入済み

    資本主義を純粋に経済のシステムとして捉えるのではなく、社会全体に権力を行使するシステムとして、拡張して捉えなおすことの必要性を本書は何度も説いている。その例として、資本主義社会システムに埋め込められた人種差別、女性差別(女性にケア労働を押し付ける)、自然破壊、国家権力の溶解を挙げる。これらの領域の問題はしばしば資本主義とは無関係なものとして認知されているが、資本主義社会システムがその根本原因となっている、と本書は述べる。資本主義はそれらに依存することで、問題を引き起こしつつも、それらとの関係を否認する。
    著者は社会主義を鍛え直して、現在の資本主義へのオルタナティブとして提示せんとするが、著者も述べる通り、まだそれは素描の段階を出ない。

    0
    2024年12月03日

    Posted by ブクログ

    「資本主義の本質を制度化された社会秩序と捉えるとき、経済的なものと政治的なものとを分離することは、秩序のなかの政治的な範囲を著しく制限してしまう。社会生活の多くの面を『市場』の支配に(実際は大企業に)委譲することで、資本主義はそれらの多くの面に向かって、民主的な意思決定、集団行動、公的支配は“立ち入り禁止”だと宣言した。この決定は、集団的に意思決定する私たちの能力を奪い取る。(中略)それゆえ、資本に備わった構造によって、資本主義は基本的に反民主主義だ。」(P.208)

    0
    2024年07月18日

    Posted by ブクログ

    題名の通り、資本主義はなぜ私たちを幸せにしないかを歴史的、構造的に明らかにし、それを乗り越えるには難しいが、社会主義社会を作るしかないということである。一気に変えることは出来ない。まず、ケアの復権、自然保護、民主的な自治である。また社会変革のプロセスを民主化していくことである。米国の学者が著したものであるが、現代の日本に当てはまることばかりで、現状についての理解が深まると同時に今は大きな変化の時代であることも確信した。

    0
    2023年12月14日

    Posted by ブクログ

    新自由主義のもとにあらゆるものが商品化され、生きていくのに最低限必要なことやものさえ手に入らない人が増え、富裕層はますます富むという現在の社会を見て、資本主義は持続可能な経済システムではないという認識はあったが、そもそも単なる経済システムだけの話ではなく、資本主義は社会システムなのだという説明がとても腑に落ちた。
    資本主義はあらゆるものを商品にするだけではなく、その外側に商品化すらされないものがあり、それらが自然やケア労働や政治であり、資本主義にとって必要不可欠な存在であるがゆえに、価値が高くては困るから意図的に過小評価して搾取や収奪可能にしているのだという説明は自分にとっては新たな学びだった。(エッセンシャルワーカーと呼ばれる仕事の多くが資本主義社会を成り立たせるために不可欠なのにも関わらず、低賃金のままにされているという状態もこれによって説明できる) このままの状態を放置すると、資本主義に不可欠なものが壊されてしまい、それにより資本主義自体も成り立たなくなるという、自らを貪るウロボロスに例える描写がとてもわかりやすく、なぜ資本主義は持続可能ではないのか、ということがとてもよく理解できた。

    0
    2026年10月03日

    Posted by ブクログ

    資本主義を経済だけでなく、社会ととらえて、問題を提起していた。「人種差別に依拠した収奪」「ケア労働の過小評価」「地球温暖化に代表される自然環境の破壊」「国家権力を骨抜きにする反民主主義」などに分けて、テーマ別に深掘りしていた。どんな社会関係を築いて、集団的に生産した社会的余剰をどのように使いたいのか、自然や将来世代とどんな関係を持ちたいのか、資本家任せではなく、私たち自身で決定したいと思った。

    0
    2024年10月05日

    Posted by ブクログ

    文章は観念的で長い。くどい。もっと簡潔にお願いしたい。
    段落の頭尾に簡潔な文章があるので、それでなんとか付いていける。
    けど、資本主義が乗り越えるべき壁だということはよく伝わってきた。大変そうだけど、革命といっていいだろう大きな話だろうけど、血も流れるんだろうな、とも思うけれど。そうなるんだろうね。

    0
    2024年07月14日

    Posted by ブクログ

    タイトルほどには分かりやすくない本文だけど(こっちの理解力不足が原因)、こうした論考が増えてきたのは嬉しい。
    明らかに現在の社会システムは、行き詰まっている。もっと皆んなが幸せになれる社会システムが探究されていい。それこそが社会科学の役割だと思ってる。

    0
    2024年03月15日

    Posted by ブクログ

    題名は好奇心を誘うもので手に取るも、新書ながらページ数も多ければ語り口も質実で重い。(翻訳に不足は感じない)

    読み終えるのに骨が折れるが、読後感としてはおおよその議論は章立てを振り返ればなんとなく頭によぎるものが残ったように思う。

    0
    2023年12月02日

    Posted by ブクログ

    現代社会がどう成り立って来たのかを、整理して示してくれるという意味では読み応えがあるが論文が元になっている事もあり政治的な事以外具体的な固有名詞なしで事象を明示している事、翻訳が今ひとつ分かりにくいので作者の意図が伝わりづらい事を除けば、大きな課題を解決して社会システムを少しづつ変えていかなくてはならない事を気づかせてくれる意味では有益であると思う。

    0
    2024年10月13日

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