【感想・ネタバレ】資本主義は私たちをなぜ幸せにしないのかのレビュー

あらすじ

なぜ経済が発展しても私たちは豊かになれないのか。それは、資本主義が私たちの生活や自然といった存立基盤を餌に成長する巨大なシステムだからである。資本主義そのものが問題である以上、「グリーン資本主義」や、表面的な格差是正などは目くらましにすぎず、根本的な解決策にはなりえない。破局から逃れる道はただ一つ、資本主義自体を拒絶することなのだ――。世界的政治学者が「共喰い資本主義」の実態を暴く話題作。(解説・白井聡)

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匿名

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資本主義を純粋に経済のシステムとして捉えるのではなく、社会全体に権力を行使するシステムとして、拡張して捉えなおすことの必要性を本書は何度も説いている。その例として、資本主義社会システムに埋め込められた人種差別、女性差別(女性にケア労働を押し付ける)、自然破壊、国家権力の溶解を挙げる。これらの領域の問題はしばしば資本主義とは無関係なものとして認知されているが、資本主義社会システムがその根本原因となっている、と本書は述べる。資本主義はそれらに依存することで、問題を引き起こしつつも、それらとの関係を否認する。
著者は社会主義を鍛え直して、現在の資本主義へのオルタナティブとして提示せんとするが、著者も述べる通り、まだそれは素描の段階を出ない。

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2024年12月03日

Posted by ブクログ

「資本主義の本質を制度化された社会秩序と捉えるとき、経済的なものと政治的なものとを分離することは、秩序のなかの政治的な範囲を著しく制限してしまう。社会生活の多くの面を『市場』の支配に(実際は大企業に)委譲することで、資本主義はそれらの多くの面に向かって、民主的な意思決定、集団行動、公的支配は“立ち入り禁止”だと宣言した。この決定は、集団的に意思決定する私たちの能力を奪い取る。(中略)それゆえ、資本に備わった構造によって、資本主義は基本的に反民主主義だ。」(P.208)

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2024年07月18日

Posted by ブクログ

題名の通り、資本主義はなぜ私たちを幸せにしないかを歴史的、構造的に明らかにし、それを乗り越えるには難しいが、社会主義社会を作るしかないということである。一気に変えることは出来ない。まず、ケアの復権、自然保護、民主的な自治である。また社会変革のプロセスを民主化していくことである。米国の学者が著したものであるが、現代の日本に当てはまることばかりで、現状についての理解が深まると同時に今は大きな変化の時代であることも確信した。

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2023年12月14日

Posted by ブクログ

資本主義を経済だけでなく、社会ととらえて、問題を提起していた。「人種差別に依拠した収奪」「ケア労働の過小評価」「地球温暖化に代表される自然環境の破壊」「国家権力を骨抜きにする反民主主義」などに分けて、テーマ別に深掘りしていた。どんな社会関係を築いて、集団的に生産した社会的余剰をどのように使いたいのか、自然や将来世代とどんな関係を持ちたいのか、資本家任せではなく、私たち自身で決定したいと思った。

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2024年10月05日

Posted by ブクログ

文章は観念的で長い。くどい。もっと簡潔にお願いしたい。
段落の頭尾に簡潔な文章があるので、それでなんとか付いていける。
けど、資本主義が乗り越えるべき壁だということはよく伝わってきた。大変そうだけど、革命といっていいだろう大きな話だろうけど、血も流れるんだろうな、とも思うけれど。そうなるんだろうね。

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2024年07月14日

Posted by ブクログ

タイトルほどには分かりやすくない本文だけど(こっちの理解力不足が原因)、こうした論考が増えてきたのは嬉しい。
明らかに現在の社会システムは、行き詰まっている。もっと皆んなが幸せになれる社会システムが探究されていい。それこそが社会科学の役割だと思ってる。

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2024年03月15日

Posted by ブクログ

題名は好奇心を誘うもので手に取るも、新書ながらページ数も多ければ語り口も質実で重い。(翻訳に不足は感じない)

読み終えるのに骨が折れるが、読後感としてはおおよその議論は章立てを振り返ればなんとなく頭によぎるものが残ったように思う。

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2023年12月02日

Posted by ブクログ

現代社会がどう成り立って来たのかを、整理して示してくれるという意味では読み応えがあるが論文が元になっている事もあり政治的な事以外具体的な固有名詞なしで事象を明示している事、翻訳が今ひとつ分かりにくいので作者の意図が伝わりづらい事を除けば、大きな課題を解決して社会システムを少しづつ変えていかなくてはならない事を気づかせてくれる意味では有益であると思う。

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2024年10月13日

Posted by ブクログ

翻訳がイマイチで読みづらい。
とはいえ、「『共働き』は、社会的再生産を阻害する金融資本主義の申し子である」という趣旨の主張に、膝を打った。
「女性が輝く社会!」とのたまい、女性を賃金労働力化することを国を挙げて手放しで称揚する我が国の痛ましさ。
「共働きが当たり前!」なのは、社会が(経済的にも文化的にも)貧しくなっているという、恥ずかしいことなのだ。

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2024年08月30日

Posted by ブクログ

この本を読んで、資本主義の新たな側面を知り、人種、社会、自然、公権力との複雑な絡み合いが目から鱗だった。著者の生態的社会主義への提案が特に興味深く、資本主義の限界を超える新しい視角を提供してくれた。読むのは大変だったが、その価値は大きいと感じた。

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2024年02月06日

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