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Posted by ブクログ
読み切れてよかった。
社会学のひとつである生活史のことをこんなにまとめて伝えてくれる本はきっとないです。
特に学問としてではなく、何となくの日常でも、人間観察や、友だち・同僚に色んな質問をよくするような性格の人にもあたたかい内容でした。
自分自身は、自分の親や友だちや同僚に聞きたいけど生活史を聞くにはハードルが高いな、と。でも本当の始まりでもあるんだよなぁ、と。少し前は社会学・生活史の分野に興味があって、本気で目指そうかなっていうのを一瞬だけ思ったけど、とてつもない覚悟と執念がいるんだろうなと思います。自分の考えが浅はかで恥ずかしくもありますが、岸さんと直接お話がしてみたいです。
Posted by ブクログ
本書は、「生活史」を聞き取り、書き、それを公にすることについての「問題集」である。私が本書を誰かに勧めるとしたらそのように紹介すると思う。この本は、ノウハウを示したマニュアルやレシピのような本ではない。「生活史」作成を巡って直面する問題の「解答」を示してくれる本でもない。(解答のない)「問題」集であり、そう読まれるべき本たのではないか、と思う。
もちろん本書は、『東京の生活史』『大阪の生活史』の監修者であり、同プロジェクトを率いてきた岸政彦氏による『生活史の方法』というタイトルの本であり、本書のベースには、市民とともに「生活史」プロジェクトをすすめてきた著者がその具体的なプロセスのなかで、何をどのように考え判断してきたかが開示されている。
でもそれは、あくまで、岸さんが直面したその状況のなかで考えたことなのであり、「生活史」を聞くこと、書くこと、そしてそれをPublishすることにおいて考えるべきことのほとんどは、個別具体的なプロジェクトの文脈のなかで、聞き手が誰であり、語り手がだれであるのか、という具体的な状況のなかで、ひとりひとりが考えていくしかないし、そうあるべきなのだ。
私自身が、まさにこれから、市民とともに人々のライフストーリーを集めるプロジェクトを始めようと思っていたところだったので、本書がこのタイミングで発刊されたことそれ自体がありがたかった。
いろいろなことが、考えられることすらないまま通り過ぎ去られてしまうことが多いなか、「生活史」を聞き書くことにおいて考えるべき「問題」を明らかにしてくれていること。それ自体が、本書のなによりもの価値なのだと思う。
Posted by ブクログ
今年一冊目。年末に読んだ村田紗耶香の世界99がものすごくヘビーだったので、少し軽めの読み口のものをと思い手に取った。
著者がXにあげておられるワンちゃんとの生活の写真が穏やかでいい感じに力が抜けているのが好きで、前からこの人の本を読んでみたいなと思っていた。
読み始めは、まだ世界99で没入していた荒涼とした世界観の中で異様なハイ状態だったのだけれど、著者の落ち着いた、そして遠慮がちに感じる声色の文体が優しく、人間を哀しいどうしようもない存在としてそのまま引き受けるような世界に少しずつ戻って来ることができた。
本書は生活史の書き方の仔細な指南書なのだけど、生活史を書く予定がない私にも、とても意味のある内容だった。
メディアに載る声はすでに社会の中で力もお金もある人の声が圧倒的で、そうではない小さな存在の声との非対称に抗う一つの可能性を持つのが生活史なのだなと思う。
聞き取りをする相手に出会うのが難しい、社会にはいろんな割れ目、裂け目があって、通常人は自分とよく似た環境の人の間だけで暮らしている、ということが書かれていて、頭ではわかっていたことが、実感を伴って理解できてとても良かった。
P186
生活史の語りというものは、聞いていてとても感動します。それはほんとうにしみじみと興味深くて美しい。いつも強く心を動かされます。切実で深刻で、悲しく、さみしい。
ここを読んで、何かジーンとして泣いてしまった。慰められたような気がした。
p288にあった他者の合理性についても、本当に落ちついて背景の違う相手の論理、合理性を理解しようと試みることがとても大事だなと思う。
荒れ狂うSNS上での応酬、分断に途方に暮れた気持ちになるばかりの最近なので、こんなふうにお互いに落ち着いて相手の話を聞くことができたなら、少しはいい方に向かうのでは、と思った。
Posted by ブクログ
岸政彦「生活史の方法」(ちくま新書)
ほぼ同時期にでた佐藤信「オーラル・ヒストリー入門」と一緒に読むと面白い。岸政彦のこの本では、市井の人へのヒヤリングから生活史を描いてきた著者の私小説的な面を含んだネタばらしとなっている。
どうやってアポを取るか、場所はどう選ぶか、手土産はいるのか、ヒヤリングや後々の出版の同意をどうとるか、ヒヤリング中にどの程度口をはさむか、録音や録画の機材をどう選ぶかなど、体験にもとづいて記されている。
ヒヤリング中の注意点としては、口火は切る必要があるがその後の展開は相手に任せる、一点に集中せず、積極的に受動的になること、相手が陳腐に思える一般論をしゃべっていてもさえぎらないことが重要だと。またヒヤリング後の整理では、歴史的事実の年号くらいは修正するが、それ以外は「読みやすいようにスムーズに話を整理」するのでなく、もともとの語り口、言いよどみもなるべき残すようにすべきと。
聞き取り全体については、聞き取る行為自体が相手への暴力となる場合もあることに注意すべきと。また社会学者は地域の共同体を礼賛しがちであるが、共同体から超然としている人、嫌でも共同体の中で生きざるを得ないひと、共同体から排除されがちな人と、個人によって立場はまちまちなことに留意すべきと。
著者らが実際に聞き取りを行った生活史の著書の紹介(理論的な本は除く)
・同化と他者化ー戦後沖縄の本土就職者たち ナカニシヤ出版 (2013)
・街の人生 勁草書房 (2014)
・地元を生きる 沖縄的共同性の社会学 ナカニシヤ出版 (2020)
・東京の生活史 筑摩書房 (2021)
・沖縄の生活史 みすず書房 (2023)
・大阪の生活史 筑摩書房 (2923)
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