あらすじ
「ひとりの人間の、人生の語り」が生活史です。この本は、生活史を聞いて原稿を書き、冊子にまとめて作品とするための手引きとして書かれています。沖縄で二五年にわたって聞き取り調査をしてきた著者が、生活史の美しさ・おもしろさから、そのむずかしさ・暴力性まで、これまでの考えをまとめた一冊です。
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Posted by ブクログ
著者の本は何冊か読んでいるが、著者がどのようにして著作を作っているのか、人の話、生活史を聞くことがどのようなことなのかを種明かしした本である。話を聞くのは誰にでもできることだが、誰にでもできないことである。「他者を安易に理解することの暴力」、これを常に念頭に置いて話を聞かないといけない。職業柄、同じようなことをしているが、改めて身が引き締まる思いだった。あと細かい録音技術の変遷などマニアックな話ではあるが歴史が感じられて興味深く読めた。
Posted by ブクログ
岸政彦「生活史の方法」(ちくま新書)
ほぼ同時期にでた佐藤信「オーラル・ヒストリー入門」と一緒に読むと面白い。岸政彦のこの本では、市井の人へのヒヤリングから生活史を描いてきた著者の私小説的な面を含んだネタばらしとなっている。
どうやってアポを取るか、場所はどう選ぶか、手土産はいるのか、ヒヤリングや後々の出版の同意をどうとるか、ヒヤリング中にどの程度口をはさむか、録音や録画の機材をどう選ぶかなど、体験にもとづいて記されている。
ヒヤリング中の注意点としては、口火は切る必要があるがその後の展開は相手に任せる、一点に集中せず、積極的に受動的になること、相手が陳腐に思える一般論をしゃべっていてもさえぎらないことが重要だと。またヒヤリング後の整理では、歴史的事実の年号くらいは修正するが、それ以外は「読みやすいようにスムーズに話を整理」するのでなく、もともとの語り口、言いよどみもなるべき残すようにすべきと。
聞き取り全体については、聞き取る行為自体が相手への暴力となる場合もあることに注意すべきと。また社会学者は地域の共同体を礼賛しがちであるが、共同体から超然としている人、嫌でも共同体の中で生きざるを得ないひと、共同体から排除されがちな人と、個人によって立場はまちまちなことに留意すべきと。
著者らが実際に聞き取りを行った生活史の著書の紹介(理論的な本は除く)
・同化と他者化ー戦後沖縄の本土就職者たち ナカニシヤ出版 (2013)
・街の人生 勁草書房 (2014)
・地元を生きる 沖縄的共同性の社会学 ナカニシヤ出版 (2020)
・東京の生活史 筑摩書房 (2021)
・沖縄の生活史 みすず書房 (2023)
・大阪の生活史 筑摩書房 (2923)
Posted by ブクログ
社会学と医学は似ているとおもう(そう言えるほど社会学を知らないが)
量的調査はEBMと、質的調査はcase reportと
問診の際、患者が自らの身体や病歴について語るのを聞く、その背景にもう少し踏み込みたくなった