無料マンガ・ラノベなど、豊富なラインナップで201万冊以上配信中!
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。
Posted by ブクログ
エスノグラフィとは何か。
まったく知らない状態でも、この新書一冊読めば、概要をつかむことができる。
エスノグラフィの本を紹介しながら、説明がなされているが、その本の内容も興味深い。ふつうの読み物としても充分楽しめる。マクロの視点ではなく、ミクロの視点で書かれた文章には、一般的な読み物からは知りえないことが書かれているからだ。
たとえば、『ストリート・コーナー・ソサイエティ』 (ウィリアム・ホワイト/著)(原著1943年)という本には、ボストンのギャング団が、優等生気取りの若者集団「カレッジ・ボーイズ」とボウリングという形式を借りた戦いを頻繁に行っていたという記述があるという。その事実だけでも興味をひかれるが、注目すべきは、ボウリングと社会的地位が密接につながっていること。それに、ヤジの応酬が鍵になっているところである。本書では詳細までは書かれていないが、面白いというのはわかり、こういうのがエスノグラフィだとわかるようになっている。
文章や構成は、親切・丁寧に書かれている。その一例を挙げよう。各章の初めに、ポイントが説明されている。そして章の終わりには、まとめがある。
ビジネス書も同じ構成になっていることは少なくない。
ビジネス書との違いは、まとめだけ読んでもわからないという点にある。本文を読んだ人だけが、わかるまとめ方なのである。このほうが、学習効果を実感することができる。
著者がはじめにで掲げた以下のポイントが、最終的には理解できるように作られている。
エスノグラフィは、経験科学の中でもフィールド科学に収まるものであり、なかでも(1)不可量のものに注目し記述するアプローチである。不可量のものの記述とは、具体的には(2)生活を書くことによって進められる。そして生活を書くために調査者は、フィールドで流れている(3)時間に参与することが必要になる。こうしておこなわれたフィールド調査は、関連文献を(4)対比的に読むことで着眼点が定まっていく。そうしてできあがった(5)事例の記述を通して、特定の主題(「貧困」「身体」など)についての洗練された説明へと結実させる。(p25、p265)
このまとめが理解できる人は、エスノグラフィの入門者ではないので読まなくても良さそうだ。
Posted by ブクログ
既知の知識が多くはあったが、改めてエスノグラフィーの基礎がわかりやすく解説されていてよかった。
「質的社会調査の方法」では、文献の活用の仕方の部分の記述が物足りなかったように思うので、具体的にどのように文献と往復するのかが示されていたのは参考になった。
やはり、私が人生で一番したいことは、中国でエスノグラフィを書くこと、中国でどっぷり参与観察をして「政府こわい」「貧富の差がすごい」「ハイテク発展もすごい」じゃないもっとリアリティのある中国人民の生活を活写することなのだなと、改めて思った。
読みながら考えてたけど、中国社会を描いた優れたエスノグラフィはあんまりないんじゃないか。
「チョンキンマンション〜」は香港だしタンザニア商人だし、田原さんの中国農村の話は面白いけどがっつり生活を描いたエスノグラフィというのとは少し異なる気がするし(直感でそう思うけどどう違うのかな?生活じゃなく選挙、政治参加というところを切り取ってるからかな?)、「最後の猿回し」は大変大変面白いのだけど、私的には猿回しの一行という中国社会の極端に外側にいる人たちより、もう少しだけ「ふつう」の人の内実を捉えてみたいという気がする。
改めてそれに気づき、言語化できた点においても本書の功は大きい。今私の人生はそれとは全く関係ないことをしているけど、長い人生でいつかやり遂げたく、文献をこつこつ読み続けようと思う。
「優れたエスノグラフィを書くには、優れたエスノグラフィを読むこと」というのはシンプルだけどいいアドバイスだ。
Posted by ブクログ
石岡丈昇「エスノグラフィ入門」(ちくま新書)
著者はフィリピンのスラム街のボクシングジムで10年以上関与観察をしている。エスノグラフィ(ethnography:民族誌)はもともと文化人類学の用語だが、社会学者がシカゴのスラム社会を描くのに使って以来、社会学領域でも使われるようになったとのこと。統計を駆使する定量的な社会分析に対して、対象とする社会に深く入り込んで長期に観察・調査することで人々の生活のありようを描き出すことが目標。
著者は、自らもボクシングジムに入門し、練習を共にすることで、はじめてボクサーたちの行動の意味が理解できたという。
Posted by ブクログ
本書の冒頭に近い部分に、「エスノグラフィとは何か」についてが書かれている。
【引用】
エスノグラフィは、経験科学の中でもフィールド科学に収まるものであり、なかでも①不可量のものに注目し記述するアプローチである。不可量のものの記述とは、具体的には②生活を書くことによって進められる。そして生活を書くために調査者は、フィールドで流れている③時間に参与することが必要になる。こうしておこなわれたフィールド調査は、関連文献を④対比的に読むことで着眼点が定まっていく。そうしてできあがった⑤事例の記述を通して、特定の主題(「貧困」「身体」など)についての洗練させた説明へと結実させる。
【引用終わり】
これだけを読んでも、なかなか分かりにくいと思うが、本書は、上記の中身を順番に説明していく構成で成立していて、最後まで読むと、上記で説明されている内容が、それなりに理解できるような仕掛けとなっている。
私は修士1年生で、修了までに修士論文を書く必要がある。修士論文を書くための、自分なりのテーマアイデアにまつわる勉強も大事なのであるが、それをどうやって書くのか(広い概念として。テーマをどうやって決めるか、どうやって関連事項を調べていくのか、それを論文の形にどうやって落としていくのか、等)についても、色々な本を読んでいる。その方法論の一つとして、この「エスノグラフィ」というものが紹介されていて興味を持ち、読んでみたもの。
エスノグラフィというものが、上記のように、順を追って説明されており分かりやすいし、読み物としても面白い。また、エスノグラフィの代表的な作品も本書中に紹介されており、それらを含め、もう少しエスノグラフィというものについて、追いかけてみようと思わせてくれた本であった。
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。
ビジネス・実用
ビジネス・実用