映画・音楽批評家であり、「おっさん」好きのゲイである著者が、近年、鼻つまみ者になりがちな「おっさん」という存在を、海外や国内、3次元や2次元の様々な「おっさん」たちを通して語り、捉え直すエッセイ集。
“知性”、“他者へのいたわり”、“自他の尊厳”や“多様性”。そういった堅苦しかったり、小難しかったり
...続きを読むすることが、イケてる「おっさん」たちに託されて軽やかに、ユーモアたっぷりに語られている。
あとがきで「いい男列伝」と書かれているように、本書に出てくるのは基本的にパーフェクトな中年男性なのだけれど、何度か紹介される作者の彼氏についてのエピソードは、対照的に毎回完璧ではなくて笑いを誘う。
それだけでなく、そのおかげで、このエッセイ集が「おっさん」たちへの“完璧であれ”というプレッシャーと化さずに済んでいるのかもしれない。「おっさん」たちを責めるものではなく、自他それぞれのしょうがなさを見つめ合いながら、何かを新しく考えようとする姿勢が、これらのエッセイとコラムの間に見える気がする。
フェミニズムやポリコレといった言葉に気後れしてしまうひとにこそ読んでほしくなるような、より良い未来への可能性を少しだけ身近に感じられる本。