小説・文芸 - 集英社文庫作品一覧

  • メコン・黄金水道をゆく
    3.5
    「メコンの旅は贅沢だった。自然と人間のからんだ地球規模的な歴史の絵巻物をかいま見たようなときめきがふんだんにあった」(あとがきより)。インドシナ半島を縦断するアジア第三番目の大河、メコン。45日間、4500キロ。ラオスでの濃厚ビールを皮切りに、カンボジア、ベトナム、そして南シナ海へ。たくましく力強く大河に生きる人々を追いかけてずんずんくだった、シーナ待望の写真紀行。ラオス、カンボジア、ベトナム──。豊饒の大河とともに生きるいのちを追って濁流4500キロ!
  • メッタ斬りの歌
    4.0
    「ああ、もうメッタ斬りに斬って斬って斬りまくりたいわねぇ」気配り、礼儀、人の世話を旨とする、健全な家庭婦人光代さんの近頃の口癖はこれである。自宅で貸間を始めて20年。不倫女子大生、浮気妻、軟弱男性。今や間借人はこんな輩ばかり。ケチでガンコなうるさいばあさんと人に酷評されながらも、他人にも自分にも「誠実」なババタリアンの奮闘物語。ユーモア長編。
  • 愛逢い月
    4.0
    甘く切ない恋の至福のときは短くて、頂点を極めたあとには、ただ、執着と妄想に満ちた永い時間が続くだけ……。かつての恋人と共に、死者の世界を永遠にさまよう甘美な地獄を幻想的な筆致で描く「38階の黄泉の国」。出ていった男を待ち暮らす寂しい女の危うい心理を追う「ピジョン・ブラッド」など、恋と、恋の残滓の中にひそむ、恐怖とサスペンスとミステリーを描く愛の終わりの物語全6編。
  • めまい
    3.7
    「私、きれいになりたいの」ある夜、美容外科クリニックを開業した庸子のもとを訪れたのは、高校時代に苛めぬいた吉江だった(「きれい」)。恋人の話を楽しげにする章吾。ずっと愛してきたのに、彼は私を親しい友人としか見てくれない(「誰にも渡さない」)。女が男を心から愛したとき、行き着く果てはどこなのか。愛と背中合わせの狂気、その恐怖と哀しみを描く10人の女たちの物語。
  • MEMORY
    3.8
    葬儀店のひとり娘に産まれた森野、そして文房具店の息子である神田。同じ商店街で幼馴染みとしてふたりは育った。中学三年のとき、森野が教師に怪我を負わせて学校に来なくなった。事件の真相はどうだったのか。ふたりと関わった人たちの眼差しを通じて、次第に明らかになる。ふたりの間に流れた時間、共有した想い出、すれ違った思い……。大切な記憶と素敵な未来を優しく包みこんだ珠玉の連作集。
  • メルカトルと美袋のための殺人
    3.8
    推理作家の美袋三条は、知人の別荘で出会った佑美子に刹那的に恋をする。しかし彼女は間もなく死体で発見され、美袋が第一容疑者とされてしまった! 事件に巻き込まれやすい美袋と、「解決できない事件など存在しない」と豪語する魔性の名探偵・メルカトル鮎が挑む巧緻な謎の数々。脱出不能な密室殺人から、関係者全員にアリバイが成立する不可能犯罪まで――奇才が放つ、衝撃本格推理集。
  • もう一つ別の生き方
    -
    ただ愛するだけでは、本当の幸せを掴むことは出来ない。ただ結婚するだけでは、何の発見も進歩もない。ただ生きるだけでは自分を失ってしまう。日常の暮らし の中での出来事を基に、いかに愛し、いかに生き、いかなる目的を持つかを、主婦、教師、エッセイストの三役をこなす著者が心優しく提言する好エッセイ。
  • 燃える怒濤 真珠湾 1941・12・8
    -
    日本の興廃をかけたこの一戦──旗艦・赤城に上がるZ旗。必中の信念を胸に、荒波をけって進む空母から、零戦、艦爆、雷撃機など第一次攻撃隊183機がハワイへ向けて飛び立ってゆく。だが、アメリカは奇襲を知っていた。歴史の壮大なドラマの幕開けとなった真珠湾奇襲作戦の前夜から、運命の一日の全貌を、実在した日本人スパイを主人公に、日米両国の膨大な資料を駆使して活写する一大ドキュメンタリー傑作長編。
  • 目撃者ご一報下さい
    4.7
    夫を轢き逃げ事件でうしなった妻が新聞にだした「目撃者ご一報下さい」の広告には、どんなトリックが仕組まれていたのか? 夫の重大な秘密を知った妻の殺意を巧みな構成で描いた表題作。ほか、電話、高速道路、ビデオテープをつかった意表をつくトリックの面白さを満載した傑作10編を収録。
  • 黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い
    4.3
    落選また落選! 供託金没収! それでもくじけずに再挑戦! 選挙の魔力に取り憑かれた泡沫候補(=無頼系独立候補)たちの「独自の戦い」を追い続けた20年間の記録。第一章では今、日本で最も有名な「無頼系独立候補」、スマイル党総裁・マック赤坂への10年に及ぶ密着取材報告。第二章では公職選挙法の問題、大手メディアの姿勢など、“平等”な選挙が行なわれない理由と、それに対して著者が実践したアイデアを。第三章では2016年東京都知事選挙における「主要3候補以外の18候補」の戦いをレポート。第15回開高健ノンフィクション賞受賞作。
  • もしもし、還る。
    3.4
    異様な暑さに目を覚ますと、「僕」は砂漠にいた。そこへ突如降ってきたのは、ごくごくありふれた電話ボックスだった。――いったいなぜ? 混乱したまま電話ボックスに入り、助けを求めて119番に電話をかける。だが、そこで手にした真実はあまりにも不可解で……。過去と現在が交錯する悪夢のような世界から、「僕」は無事に生還することができるのか。ミステリアスな傑作長編。
  • 門司・下関 逃亡海峡(十津川警部シリーズ)
    -
    大学講師の篠塚昭夫は、留学生のアン・ミカと浮気をしている。それに気づいた妻は、夫と無理心中をしようと部屋に火をつけ焼身自殺。だが、遺体から睡眠薬が検出され、夫に疑惑が……。十津川警部に容疑の目を向けられた篠塚は、葬儀の途中で姿を消し、愛人と逃亡を図る。警察の追跡を巧みにかわす二人を追い詰める十津川警部たち。決死の逃避行の果て掴んだ驚愕の愛! 長編旅情ミステリー。
  • もっとトマトで美食同源!
    -
    脂肪燃焼成分に注目が集まるトマト。イタリア在住26年超、一日一食トマト料理を欠かさず、二十代体型を維持する著者が、トマトの魅力と威力に迫る。美白・美肌にトマトが有効と言われる根拠は? さらに、トマトにまつわるカゴメ社員達の体験談、ケチャップやジュース利用の簡単レシピなども紹介。トマトを積極的に生活にとりいれると、肌や体にごほうびが! これぞ、トマトを知りつくす一冊。
  • ものいふ髑髏
    3.5
    金貸しを営む銭法師の喜久五郎という男が墓所の近くを歩いていると、衣の裾にしゃべる髑髏が食いついてきた。その口車に乗り大儲けを企てるが、恐るべき復讐に遭い……(「ものいふ髑髏」)ほか、登山事故の入院先で体験した奇妙な出来事や、暴漢に襲われた男が垣間見る悪夢など、平安朝物語から日常に潜む恐怖や不思議現象まで、怖くて妖しい物語10編を収録。
  • ものがたり風土記
    -
    古代からの伝説、民話、童話、近・現代の小説まで……日本各地に「ものがたり」の舞台を訪ねてパワフルに“現場検証”。歴史に埋もれたそれらの「ものがたり」の成立の謎や、作家の思い、登場人物の実像に思いを馳せる。滋賀、鹿児島、新潟、東京――旅するうちに、思索は海外の文学にも及び、『ギリシャ神話』や『グリム童話』、ミステリーの名作なども登場。知的興奮と発見に満ちた、極上の紀行エッセイ。
  • モノ欲しい女
    -
    ビューラー、マニキュア、ハンカチ、スリッパ、アルバムなど、女の日常生活をいろどるこまこま、ちまちました愛すべきモノ。たいした金額ではないけれど、欲しい、こだわる、いとおしい。それは、いずれゴミになるかもしれないモノなのだけど……。なぜ欲しくなってしまうのか(女だから)、なぜこだわるのか(女だから)、モノに潜む女の心理を(著者自身を含めて)キビシク鋭く解析するエッセイ、絶好調。
  • 模範郷
    5.0
    1950年代、6歳から10歳まで台湾にいた「ぼく」。日・米・中・台の会話が交錯する旧日本人街「模範郷」。そこは間違いなく「ぼく」の故郷であり、根源であった。何語にも拠らない記憶の中の風景が変わり果てたことを直視したくない「ぼく」は、帰郷を拒んでいた。だが知人の手紙を機に半世紀ぶりにかつての家を探しに行くことを決意する。越境文学の醍醐味が凝縮された一冊。第68回読売文学賞受賞作。
  • モビィ・ドール
    4.0
    東京から南へ二百二十キロ。太平洋に浮かぶ巌倉島は、イルカの棲む島として知られている。平和なこの小島で、動物行動学者・比嘉涼子は環境保護NPOの一員として、イルカの生態調査に従事していた。だがその平穏な日々は、突然出現したシャチの群に破られる。島のイルカたちを救うために、一頭のシャチ=モビィ・ドールへの追跡が始まった……。海に生きる生命を鮮やかに描く海洋小説の傑作。
  • ももこのまんねん日記
    3.4
    息子とゲームをしたり、事務所のスタッフとカラオケをしたり、ふつか酔いになったり。平凡な楽しみを味わいつつも、必ず妙なことが起こるのが、さくら流。新しくチャレンジしたいことは特になし、いつもの暮らしが無事にできればいい。願うことは世界平和。地味だけれど、コツコツ幸せを追求する日常は、みんなが心地よく生活するための貴重なヒントになるはず。『ももこのまんねん日記』シリーズ3冊分を合本! 日々を楽しむ天才、さくらももこの「巣ごもり」絵日記。
  • ももこのよりぬき絵日記 1
    3.8
    ※この商品はタブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。 「この日記を書いていた頃は息子が5~8才ぐらいでホントに小さくて可愛らしかったなぁ…といろんな場面を思い出し、つないでいた手の温もりが蘇りました。」運動会の話や絵本を作ったことなど、ほのぼのとした母としての子育て。おなじみ父ヒロシのことから、長島監督やビートたけしさんのことまで。アーティストとしての驚きの体験など、クスッと笑えて、しみじみ楽しい絵日記シリーズ第1弾。
  • 桃山ビート・トライブ
    4.0
    時は安土桃山。運命的に出会った四人の若者が一座を結成した。驚くべき速さで三味線を弾きこなす藤次郎。出雲のお国一座の笛役者・小平太。信長の従者だった黒人の太鼓叩き・弥介。べらぼうに喧嘩の強い天性の舞姫・ちほ。型破りな芸で熱狂的に民衆に迎えられた彼らは、やがて、庶民への支配を強める秀吉に立ち向かうことに――。エネルギッシュで爽快な、第20回小説すばる新人賞受賞作。
  • 相剋の森
    3.9
    1~2巻825円 (税込)
    「山は半分殺してちょうどいい――」現代の狩人であるマタギを取材していた編集者・美佐子は動物写真家の吉本から教えられたその言葉に衝撃を受ける。山を殺すとは何を意味するのか? 人間はなぜ他の生き物を殺すのか? 果たして自然との真の共生とは可能なのか――。直木賞・山本賞受賞作『邂逅の森』に連なる「森」シリーズの第一弾。大自然と対峙する人間たちを描いて感動を呼ぶ傑作長編。
  • 森のなかのママ
    4.0
    画家だったパパの突然の死から五年。浮き世離れしたママと、美術館に改装した家で暮らす大学生のいずみ。離れの間借り人、渋い老人の伏見に恋しているが、伏見はじめ美術館に出入りする男たちはみなママに夢中だ。ある日、放映されたパパのドキュメンタリー番組に、パパの愛人が出演していた……。なにが起ころうと否応なしに続いていく人生と渡り合うために、ママがとった意外な行動とは――。
  • 森まゆみと読む 林芙美子「放浪記」
    5.0
    昭和初期。自由を求め奔放に生きたひとりの女性の日記が出版されベストセラーとなった。それは林芙美子の「放浪記」。いま広く読み継がれている版は、後世の手が多く入り「成功者の自伝」と化していると指摘する森まゆみが、改造社版「原・放浪記」の生き生きとした魅力を紹介する。各章に鑑賞が入り、時代背景や芙美子の生涯についての解説も収録。林芙美子を知ろうとするならまず手に取るべき一冊。
  • もろびとの空 三木城合戦記
    4.0
    東播磨の大名、別所家の本城である三木城。当主の長治は織田信長に反旗を翻すも、織田勢を率いる羽柴秀吉に攻められ、村人を巻き込んだ過酷な籠城戦が始まる。飢えに苦しむ領民は、究極の選択へと追い込まれ……。米十俵のために握った薙刀で、家族を守るため、戦う覚悟を決める娘。「死に損ない」と罵られ、次こそ死のうと敵を斬り続ける武士。「女らしさ」の呪縛に悩みながら、女武者組の先頭に立って陣頭指揮を執る別所家の妻。華々しい合戦絵巻の裏側に存在した、名もなき人びとのひたむきな生の物語。
  • MONSTERZ
    4.3
    見た者全てを思い通りに操る力を持つ男と、唯一操られない男。二人の運命が交差したとき、生死を分ける壮絶な事件が起こる──。主演・藤原竜也、山田孝之で映画化の傑作サスペンス。
  • MOMENT
    4.2
    死ぬ前にひとつ願いが叶うとしたら……。病院でバイトをする大学生の「僕」。ある末期患者の願いを叶えた事から、彼の元には患者たちの最後の願いが寄せられるようになる。恋心、家族への愛、死に対する恐怖、そして癒えることのない深い悲しみ。願いに込められた命の真実に彼の心は揺れ動く。ひとは人生の終わりに誰を想い、何を願うのか。そこにある小さいけれど確かな希望――。静かに胸を打つ物語。
  • やあ おげんきですか
    -
    高校創立者として名高い聖ド・ラ・サール、孟母三遷の教えの孟子の母、そしてあの美空ひばり等、時代を画した天才たちはいかにして生まれたのか? 教育界の大巨人たちがはじめて“語る”その教育法。お母さんに学生さん、そして教育関係者必携必読抱腹絶倒「ひさし版教育読本」。
  • 焼きそばうえだ
    3.8
    「植田さん、会社を辞めて、バリでヤキソバ屋でも開いたほうが幸せかもね」の一言からすべては始まった。さくらさんを始めとする「男子の会」のメンバーは動揺する植田さんを伴い、ホントにバリへ! 焼きそばの研究や、物件交渉、睡眠不足での看板作りなど思ってもみなかった数々の難題に立ち向かう! 現地での奇跡の出会いもあり、事態は好転するかにも思えたが──。ジョーダンみたいな本当の話。
  • やきもの師
    -
    やきものに人生を賭け、腕一本で陶芸界に挑戦する姉弟が、罵声と嘲笑の歳月からやがて栄光を浴びるまでの苦闘に満ちた日々を精細にたどる表題作他、中年を迎えた子供のない共働き夫婦の愛憎の機微を淡々とした筆法で描く「夫婦茶碗」、女手一人で老舗の履物店を切り回す京女のつつましい恋を、古都を背景に色彩豊かに写す「女人高野」など、平岩文学の野心作集。
  • 屋久島ジュウソウ
    3.5
    ゆるゆる・和気藹々・のんびり楽しいグループ旅行のつもりで屋久島を訪れたモリエト一行。ところが、待っていたのは九州最高峰への登山だった! 急勾配に泣き、杉に癒され、脳内麻薬でハイになる。初心者チームが挑むいきあたりばったりトレッキングと、海外でキレた瞬間や忘れられない味など、世界中を巡って出会ったエピソード14本の詰め合わせ。旅気分満載のエッセイ集。
  • 約束の地で
    3.3
    捨てたはずの故郷に戻り、父が大金を持っているとの噂に踊らされた男。呆けて我がまま放題の母と猫の世話に煮詰まっていく女。売りつけられたスクーターに乗り、愛犬と骨を掘り出してばらまく少年。好きな女の先輩を安物の車に乗せて旅立ったプー太郎。夫のDVに苦しめられ、死んだチワワの骨を抱え岬に立つ女。北海道の風土に閉ざされた人間の闇をえぐる全5話。新境地を拓いた傑作揃いの短篇集。
  • 約束 村山由佳の絵のない絵本
    3.9
    自分たちにできないことは何もないと信じていたあのころ。ケンカをしても、いたずらして怒られても、ただ一緒にいるだけで楽しかった……。子どもに読ませたい物語を大人になったいま、読んでみると、深いところで切なく心に響く。打算なくつきあっていた友だち、当たり前のように思っていた親からの愛情。自分の中にあった真っ白な心。村山由佳が子どもむけに発表した三篇の絵本を文字だけで再構成。
  • 櫓太鼓がきこえる
    4.3
    17歳の篤は高校を中退し、親との関係が悪化する中、現実から逃げ出すように叔父の勧めで相撲部屋に呼出見習いとして入門。関取はいないし弟子も少ない弱小部屋の朝霧部屋で力士たちと暮らすことになる。ベテラン呼出の進さんに教えを乞うが、引っ込み思案の篤は本番で四股名を間違えて呼ぶなど、しくじってばかり。焦りや葛藤を覚えながらも、日々土俵で声を張り、少しずつ成長していく。第33回小説すばる新人賞受賞作。選考委員を唸らせた、知られざる角界の裏方「呼出」に光を当てる、新しい相撲小説!
  • 焼け跡の高校教師
    3.5
    戦後占領下の沖縄。大学を中退し米軍諜報機関の翻訳作業についた私は、仕事に倦んで教師へと職を変えた。赴任先は、校舎も教科書もない高校。だが、日本の影響を受けないここで、国語ではなく“文学”を教えたい。自分の創作戯曲を生徒達に演じさせようと考える。物はないが、もう戦争はないという開放感に満ち溢れた時代の少年少女と教師を描く。著者が自分の一番輝いていた時と回想する自伝的小説。
  • 優しい秘密 おいしいコーヒーのいれ方 VIII
    3.8
    「かれんと付き合ってるって本当?」花村のおばさんから聞かれ、とっさに否定してしまった勝利。誰も傷つけたくなくて、ふたりの関係を守りたくて、ずっと秘密にしてきた。それが間違いだったのか。勝利へ思いをよせる星野りつ子の存在も、かれんには言えなくて。後ろめたいから言えない。言えないからますます後ろめたい。秘密は増殖する。悩み多きシリーズ第8弾。
  • やさしく殺して
    3.3
    角丸真理子は父の反対を押し切って、屋敷芳樹と結婚した。小野和人という恋人をふっての決断だった。しかし、新婚生活のスタートとともに地獄ははじまった。言葉の暴力――それも叱責や罵倒ではなく、やさしい皮肉。真理子の神経を柔らかく包み込むように、夫の言葉が鼓膜から脳髄へと侵入していく。精神の限界に到達した真理子は、ついに決断した。「やさしく殺して……」。
  • 優しさと哀しさと
    -
    【渡辺淳一文学賞創設記念電子化!】国立帝国病院長・神野博士が倒れ、兵藤医長を始め倉本医師ら総力を挙げて診察にあたった。結果は「肺癌(ルンゲン・カルチノーム)」。内科学界の重鎮である博士に、真実を告げるべきか否か、兵藤と倉本は激論をたたかわした結果……。生と死の狭間に立つ人間の偽りのない姿と、診断の宣告を強いられて苦悩する医師たちを描く表題作ほか四篇を収録。
  • 宿無し弘文 スティーブ・ジョブズの禅僧
    -
    「スティーブは、十日に一度は真夜中までうちにいたわ」と元妻は語った。スティーブ・ジョブズ「生涯の師」で、iPhoneやiPodなどの革新的製品の設計思想にヒントを与えた日本人僧侶・乙川弘文。「日本曹洞宗の明日を担う」とまで期待された彼は、なぜ故郷を捨て、アメリカに渡ったのか? 「あんなに優れた禅僧はいない」と激賞する人がいる一方、「女にだらしない、酒浸りの男だった」と批判する人もいる。そして、スイス山奥での突然の死。“禅道無宿”、自ら願って地獄に堕ちた彼は高僧か? 破戒僧か? 関係者の証言から不可解なその死の謎に迫る渾身のノンフィクション。
  • 家鳴り
    3.9
    妻が際限なく太っていく─。失業中の健志を尻目に、趣味で始めた手芸が世間の注目を集め、人気アーティストとなった治美。夫婦の関係が微妙に変化するなか、ストレスとプレッシャーで弱った妻のために健志が作り始めた料理は、次第に手が込み、その量を増やして…(「家鳴り」)。些細な出来事をきっかけに、突如として膨れ上がる暴力と恐怖を描いたホラー短篇集。表題作を含む7篇を収録。
  • 野蛮な読書
    3.8
    【第28回講談社エッセイ賞受賞作】“本の海”めがけてざぶんと飛び込み、泳ぎだす。手にした一冊に始まり、次から次へと思いがけず繋がっていく本の世界。時間や場所を問わず、興味の趣くままに読み進めた全103冊、読書の真髄と快楽を余すことなく綴った一冊。食や暮らしの分野で人気の著者初の読書エッセイ。時を忘れて読む楽しさや幼い頃の記憶を呼び起こし、「読みたい」欲をかきたてる。
  • 山嵐
    3.8
    時は明治期。会津の地から、ひとりの若者が上京してきた。五尺に満たない小兵ながら、その才能を講道館創始者・嘉納治五郎に見出された彼は、柔道の修行を始める。独自の技「山嵐」を編み出し、講道館四天王のひとりに数え上げられるほどになるが、かねてから夢を馳せていた大陸への渡航を決意する。『姿三四郎』のモデルとなった天才柔術家・西郷四郎の壮烈なる半生。
  • 山背郷
    3.8
    「山背」とは初夏の東北地方に吹く冷たい風のことをいう。その山背が渡る大地で様々な厳しい営みを続け、誇り高く生きる男たち。マタギ、漁師、川船乗り、潜水夫……。大自然と共生し、時に対峙しながら、愛する家族のために闘う彼らの肖像を鮮やかに描き、現代人が忘れかけた「生」の豊饒さと力強さを謳う九編の物語。作家の原点が凝縮された傑作短編集。
  • 闇の左大臣 石上朝臣麻呂
    4.5
    天智天皇、天武天皇の時代を通じ、物部連麻呂は最下級役人だった。壬申の乱では大友皇子の側に立ったこともあり出世は望めなかった。しかし天武の没後、石上の氏族名に変わり、持統天皇、元明天皇の時代には徐々に位は上がっていった。和銅元年(西暦七〇八年)には、臣下の最高位である正二位左大臣にまで上りつめた。なぜ麻呂はそこまで出世できたのか。闇の部分に迫る古代史長編小説。著者絶筆。
  • 闇の女王
    -
    日本屈指の大富豪・天羽賀脩一郎は、破産に近い大浪費の末、失踪した。真相究明にのりだした堀井は、無差別殺傷を狙うテロ集団と享楽のみを追う“深海クラブ”の抗争に巻き込まれたが、脩一郎とクラブの関係を探り当て、謎のベールをはがす機会を得た……。鬼才・半村良が流麗な筆致で描くSFファンタジー長編。
  • 闇の戦場
    -
    気温42度。湿度95パーセント。ジャングル。行軍。ただひたすら歩き続ける彼らは「足」と呼ばれる歩兵小隊だ。分隊長の軍曹、黒人兵ハニー・ビー、日系三世のキューシュー、新兵ウェンズディ、インディアンの血をひくダンシング・ベア、異様に大きな鼻の持ち主ノーズ・マン。一つの時空間を共有した6人それぞれの視点から、「戦場」という闇の環に閉じ込められた若者たちの運命を描く連作。戦争シミュレーション小説。
  • 闇の大納言(土御門クロニクル)
    -
    時は平安、天喜元年。京の都の闇にまぎれて、美しい女たちが惨殺され、その体の一部を切り取られるという怪事件が相次いでいた。はたして封印されていた邪悪な闇の力が動き出したのか? 謎を探る若き陰陽師・土御門狼明は、愛する倫子姫を救うために、邪法によって屍から生み出された怪物・闇の大納言と陰陽道の術を尽くした壮絶な死闘をくりひろげる――。王朝ホラーの傑作。
  • 闇の刃
    -
    小森幸人は組織から足を洗い、堅気の運送店を営んでいた。ある日、親父さんと慕う内海泰造が何者かに拉致された。事件の背後には、利権を巡る欲望や組織の大物の謀略が絡んでいることを知る。続いて姐さんの京子までも敵の手に渡ってしまう。義理人情に縛られた愚直ともいえる男の血が怒りに燃える。壮絶な復讐劇が開始された。会心の長編ハード・バイオレンス。
  • 闇夜の底で踊れ
    3.7
    【第31回小説すばる新人賞受賞作】35歳、無職、パチンコ依存症の伊達。ある日、大勝ちした勢いで訪れたソープランドで出会った詩織に恋心を抱き、入れ込むようになる。やがて所持金が底をつき、闇金業者から借りた金を踏み倒して襲撃を受ける伊達だったが、その窮地を救ったのはかつての兄貴分、関川組の山本だった。その後、山本との奇妙な共生生活を続けながら、詩織に一層のめり込んでいく伊達。一方、関川組の組長引退をきっかけにした内紛が抗争へと発展し、関川組周辺にきな臭い空気が立ち込める。伊達の秘められた過去、そして山本が伊達の前に現れた本当の理由が明かされるとき、事態は思いもよらぬ方向へと転がり進んでゆく――。19歳でデビューした、新進気鋭の作家が放つ大阪ノワール。
  • 病む月
    3.8
    美人で金持ちで傲慢で、あの女は昔からいやな女だった。その女の美しい夫を寝取った“私”は…(「いやな女」)。年に一度の逢瀬には、必ず新調した着物を着る“私”。その日だけは、特別の存在になるのだから(「雪おんな」)。月が満ちては欠けるように、女もまた変化する。おもての顔の裏に別の顔を隠しもって。金沢を舞台に、せつないほどに“女”に満ちた10人10話。
  • やめられない ギャンブル地獄からの生還
    4.7
    日本は世界屈指のギャンブル大国だ。パチンコ・スロット、競馬、競輪、競艇、そしてカジノ…ギャンブル症者は、国内推定320万人と目されている。親の貯金や年金、自宅がなくなってもやめられず、さらに借金が増え続けるというギャンブル依存。いかに地獄から這いあがるのか。文庫化に際し、カジノの危険性など最新情報を大幅加筆。現役精神科医の著者が、全国民に警鐘を鳴らす緊急レポート!
  • やめるときも、すこやかなるときも
    3.9
    大切な人の死を忘れられない男と、恋の仕方を知らない女。欠けた心を抱えたふたりが出会い、お互いを知らないまま、少しずつ歩み寄っていく道のり。変化し続ける人生のなかで、他者と共に生きることの温かみに触れる長編小説。
  • 遺言未満、
    4.0
    お骨でできた仏像、人とのつながりの希薄さが生む孤独死の問題、ハイテクを組み合わせた最新葬祭業界の実情……。作家、ときどき写真家がカメラを抱えて迷い込んだ“エンディングノート”をめぐる17の旅。「死とその周辺」がテーマの取材は、かつて経験した九死に一生の出来事、異国で出合った変わった葬送、鬼籍に入った友人たちの思い出などと重なり、やがて真剣に「自分の仕舞い方」と向き合うことになる。そしてシーナが見出した新たな命の風景とは? 巻末に朋友、北上次郎の死についての想いを書いた「さらば友よ~文庫版のためのあとがき」を収録。
  • 勇気ある言葉
    4.3
    溢れんばかりのユーモア、該博なる知識の所有者・狐狸庵山人が、古今東西、森羅万象の名言、格言に、自由奔放、縦横無尽、手当り次第に挑戦。迷える心、鬱屈した精神、卑属な心情をものの見事に解き放つ。笑いと諷刺のうちに人生の諸相を皮肉る、おかしなおかしなエッセイ集。
  • 誘鬼燈
    -
    青森で新婚の幸せに浸る千秋の家に男がやってきた。復縁を迫る男は、逆上して千秋を刺殺。第一発見者の夫は、捜査員に妻の過去をほとんど知らないと語った。同夜、岩手で殺人があった。被害者はトラック運転手。二つの事件に繋がりはあるのか? トラックの運行記録に残された空白の20分の意味するもの、そして新妻の忌まわしい過去とは。捜査陣の執念が結びつける点と線──。長編推理サスペンス。
  • 勇者の証明
    -
    昭和20年、戦時下断末魔の日本。凄まじいいじめ、自由を奪われた4人の少年は、お化け屋敷と称ばれる洋館を探検中、ドイツ人の瀕死の母親から娘を長崎まで送り届けてほしいと遺言される。およそ不可能な遺託に応えて4人は理不尽な時代への勇気を証明するため、少女を送り届けることに。広島を通過、長崎を躱し、千キロ以上の難旅を越え……。輝く壮大な青春ロード・ノベル。
  • 幽霊物語 上
    4.5
    1~2巻440円 (税込)
    霧深い夜の高速道路で交通事故に遭った青年社長・山岡重治はなんと突然“幽霊”になってしまった。あっという間の自分の死が信じられず戸惑う山岡の前に、夜道で暴漢に殺された幽霊少女・郁子があらわれた。たちまち親しくなった二人は、それぞれの家庭をのぞきに行くことになった。盛大な葬儀が営まれる山岡邸には、社長のポストをめぐる陰謀の臭い。郁子の家では娘殺しの犯人を追う父親が殺されていた!
  • 雪男は向こうからやって来た
    3.7
    ヒマラヤ山中に棲むという謎の雪男、その捜索に情熱を燃やす人たちがいる。新聞記者の著者は、退社を機に雪男捜索隊への参加を誘われ、2008年夏に現地へと向かった。謎の二足歩行動物を遠望したという隊員の話や、かつて撮影された雪男の足跡は何を意味するのか。初めは半信半疑だった著者も次第にその存在に魅了されていく。果たして本当に雪男はいるのか。第31回新田次郎文学賞受賞作。
  • 雪と心臓
    3.0
    クリスマスの夜。猛スピードで暴走する車を二台のパトカーが猛追していた。時は二時間ほど前に遡る。その男は、偶然、火事の現場に遭遇する。家の外で助けを求める母親。二階の窓からは泣き叫ぶ娘の姿が。すると男は燃え盛る家の中へと飛び込んだ。それから五分足らず。男は胸に十歳の少女をしっかりと抱きかかえて出てきた。だが、その男は少女を母親に手渡さず、車に乗せてそのまま逃走した。なぜ男は英雄から一転、誘拐犯になったのか。そこにはある男女の双子を巡る二十余年の物語があった。事件の真相に秘められた温もりと寂しさに、あなたはきっと焦がれ、涙する。心に触れる傑作青春ミステリ。
  • 雪の朝
    -
    日米通商条約締結による違勅の罪、安政の大獄による水戸浪士の暗躍――。死の翳りのただよう中で、大老井伊直弼の脳裏をよぎるもの、それは束の間の愛に燃えた、たか女の面影だった……。庶流から身を起こし、経倫の才をかわれ幕府の最高権力者となった直弼の、若き日の彦根藩主時代の悲恋を描く表題作ほか、香気あふれる珠玉作四編を収録。
  • 雪燃え
    5.0
    茶道・綾小路流の若宗匠との出会いは、薄幸な萩乃の運命を大きく変えた。天性の美貌と才智を武器に、数かずの男性遍歴をかさね、野望は次第にふくらんでゆく……。嘘と虚栄の渦巻く茶の湯の世界を舞台に、艱難辛苦の末、ついに家元の後見人にまで昇りつめた一女性の哀歓を、流麗なタッチで綴る長編力作。
  • 花のさくら通り
    4.2
    倒産寸前のユニバーサル広告社。コピーライターの杉山を始め個性豊かな面々で乗り切ってきたが、ついにオフィスを都心から、“さくら通り商店街”に移転。ここは、少子化やスーパー進出で寂れたシャッター通りだ。「さくら祭り」のチラシを頼まれた杉山たちは、商店街活性化に力を注ぐが……。年代も事情も違う店主たちを相手に奮闘する涙と笑いのまちづくり&お仕事小説。ユニバーサル広告社シリーズ第3弾。
  • オロロ畑でつかまえて
    3.5
    1~2巻495~605円 (税込)
    【第10回小説すばる新人賞受賞作】人口わずか三百人。主な産物はカンピョウ、ヘラチョンペ、オロロ豆。超過疎化にあえぐ日本の秘境・大牛郡牛穴村が、村の起死回生を賭けて立ち上がった! ところが手を組んだ相手は倒産寸前のプロダクション、ユニバーサル広告社。この最弱タッグによる、やぶれかぶれの村おこし大作戦『牛穴村 新発売キャンペーン』が、今始まる――。ユーモア小説の傑作。
  • 指輪の重さ
    -
    弁護士の瀬尾恭介は、美しい生花師匠の高見沢三保に魅せられ、密な関係を持った。そんな折、傷害事件を起こした若者の弁護を引き受けたが、事件が明らかになるにつれて三保の意外な正体を知る(表題作)。他に「朝焼けに揺れて」「金曜日のミストレス」など、結婚生活になんらかの破綻を生じた夫婦の揺れ動く微妙な心理、葛藤を描いた危険でミステリアスな物語を収録。
  • 夢顔さんによろしく(上) 最後の貴公子・近衛文隆の生涯
    4.0
    【第13回柴田錬三郎賞受賞作】「夢顔さんによろしく」――遠くシベリアの収容所から届く謎に満ちた手紙。送り主は名門近衛家の嫡男、文隆。アメリカ留学で華やかな青春を過ごし、上海で美しき中国人女性との恋に燃えた青年貴族。彼は日中戦争を終結させるべく必死の和平工作に臨むのだが、やがて過酷な運命に巻き込まれ……。知られざる貴公子の生涯を描くノンフィクション・ノベルの最高傑作。
  • ゆめぐに影法師
    -
    ガンで死んだ作家のキョーコ、交通事故死した通訳のヨーコ。二人の美人ユーレイが、生前果たせなかったアメリカへの旅へ。ヴァージニア、ニューヨーク、アルバカーキ、ニューイングランド、デンバーなど。それぞれの街の光、風、匂いを感じながら、若い二人が引き起こす愉快な出来事とは……。著者の新境地を拓くファンタスティックな物語。
  • 夢と闇の果て
    3.5
    東嶽島と呼ばれる南海の島に、ひとつの伝説があった。宇宙の意志を受け、物語として語り伝える若者たちの伝説だ。しかし悠久の歴史の中に、いつしか彼らの存在は消えてしまったかのように思えた。ところが、泡の中から生じる生命のように、今ここに遠い彼方の意志を受け継ぐ若者たちが再び姿を現わした――。SF界の鬼才がイマージュの極致で描く傑作大ロマン。
  • 夢のあとさき おいしいコーヒーのいれ方 X
    4.0
    大人気の「おいしいコーヒーのいれ方シリーズ」第一シーズンの完結編。遠距離恋愛を始めた、かれんと勝利のふたり。最初はうまくいっていたが、やがてかれんと連絡が全く取れなくなってしまう。気持ちまで離れてしまったのではないか。僕がそばにいなくても平気なのではないか。部活でのスランプからも抜け出せずに焦る勝利は、とうとう激情のままに、かれんを深く傷つけてしまい…。ふたりの恋はどこへたどりつくのか――。切なく胸をしめつける…。
  • 夢の島
    4.2
    長年、音信不通だった父が亡くなった。若手のフリーカメラマン・絹田信一が、唯一の遺品として受け取った、父が描いた絵。その絵が示すものとは? 無限の富を産み出すという「遺産」を巡って、人々は策謀を巡らす。現在でも古びない、大沢在昌初期ミステリーの傑作!
  • 夢の続き
    -
    日活映画の素晴らしい共演者たちと『キューポラのある街』への深い思い。原点となったラジオとの縁。『動乱』から『北のカナリアたち』へと続く北の大地での映画出演。ラグビー、乗馬、水泳など趣味のスポーツ。原爆詩朗読に込めた平和への祈り。先輩たちとの交流。手紙の思い出。母のかたみをはじめとする大切なきものがたり――。時代の風を受けながら、トップを走り続ける女優の今を綴るフォトエッセイ集。
  • 夢のなかの魚屋の地図
    4.2
    書けないときに思い出す、小説家だった父の「とにかく二時間、机の前に座ってみろ」という言葉。「誰よりも美しい妻」だった母。古本屋である夫との、驚きと嘆息に満ちた結婚生活。友人たち、食べることへの情熱、家事をしながら聞く音楽、ストーリーを考えながらする家事、仕事部屋に忍び込んでくる愛する猫。そして、書きつづけることへの決意……。直木賞作家・井上荒野の軌跡を知る、初のエッセイ集。
  • 夢は荒れ地を
    4.0
    カンボジアに派遣され、そのまま行方不明になった自衛官。彼はなぜ、妻子を捨ててまでこの地に留まることを選んだのか。足跡を追う同僚が直面したのは、人身売買、汚職がはびこる腐敗しきった社会だった――。政府に抗い新たな村の建設を目指す元クメール・ルージュ大尉。独力で学校建設を進める日本人。彼らの闘いを通し、カンボジアの昏き深淵を覗く冒険巨編。第22回日本冒険小説協会大賞受賞作。
  • 夢みる妹たち
    5.0
    長女涼子。ひとりっ子の舞とともに別居生活を始めたばかり。舞を名門幼稚園に通わせるためで夫と離婚する訳じゃない。次女美雪。大学受験を控えて上京。独り住いの義兄の家に居候中。ただならぬ恋の予感を感じている。そして三女由香。オテンバな高校受験生。不思議な恋人ができたようだ。美しい三人の姉妹をめぐる恋模様が次々と波瀾を呼び奇妙な事件が巻き起こる。家族と愛とサスペンスの物語。
  • 夢見るころはすぎない
    3.9
    退屈でなんにもないと思ってた。でも本当は、きらきらと輝くかけがえのない日々だった――。空振り続きの高校生活で、最後の学園祭に一発逆転のときめきを期待する女子高生。「一生処女でいようね」と誓ったオタク仲間の足抜けに、動揺する女子大生。理想と現実のギャップにもだえる、一途でキュートな女の子たちの青春6編。あのころのあなたが、きっとここに見つかる。(『「処女同盟」第三号』改題)
  • ゆめ結び むすめ髪結い夢暦
    4.0
    代々八丁堀与力をつとめる浅岡家の娘・卯野は、髪を結うことが大好きで、きれいなものに目がない。武家の娘らしくないと母や周囲にたしなめられながらも、新しい髪型を試したり、町ゆく女たちの髪を眺めるのが何よりの楽しみだ。だがある日、当主である兄が、付け火の濡れ衣を着せられ……。運命に翻弄されながらも「好き」を力に変えて懸命に生きる少女の物語。
  • ゆらゆら橋から
    3.5
    健司の通う小学校に、東京から美しい先生が赴任してくる。昔の恋人を引きずる彼女に健司は心を奪われて――(「ゆらゆら橋」)。中学に入った健司は結核の少女に恋をした。だが彼女は感染を心配し、近づかせてくれない。やがて容態が急変し…(「林檎色の血」)。大人の女性への憧れ、身を焦がす嫉妬、そして永遠の別れ。少年期から熟年期まで、ひとりの男性が人生で出会った切ない恋を描く連作短編集。
  • 百合中毒
    NEW
    3.3
    イタリア人の若い女と恋仲になり、家族を捨てて出ていった父親が、妻と娘夫婦が経営する八ヶ岳の麓の園芸店へ25年ぶりに戻ってきた。イタリア人の彼女は一人で帰国してしまったという。が、娘たちは大人になり、妻にはすでに恋人がいた。次女の遥は「許さないから。絶対に。出てってよ。早く出てって!」と叫び、長女の真希は「大恋愛して出ていったのなら、二度と戻ってこないのが筋ではないのか」と苛立つ。妻・歌子の恋人は夜ごと彼女からの電話を待つ。そして歌子は思い出す。夫との出会いの場所に咲き乱れていた花のことを…。家族とは。夫婦とは。七人の男女の目線から愛を問い直す意欲作。
  • 許されざる者 上
    4.2
    【第51回毎日芸術賞受賞作】紀伊半島は熊野川の河口に位置する街、森宮。医者の槇隆光は貧しい者から治療費を取らないことから親しみを込めて“毒取ル先生”と呼ばれていた。ときは1903年、豊かな自然のなかで暮らす槇たちの周りには鉄道敷設や遊郭設置などの問題が起こり、一方で日露戦争開戦の足音がすぐそこに迫っていた――。歴史上の人物に材を取り、当時の情勢と熊野の人々を瑞々しく描いた第51回毎日芸術賞受賞作。
  • 宵山万華鏡
    3.8
    祇園宵山の京都で、誘い込まれた妖しい迷宮。夏までの期間限定サークル「祇園祭司令部」に集まった学生たち。変人ぞろいの彼らが用意した大舞台、いったい何をたくらんでいるのか?(「宵山劇場」)。「祇園祭宵山法度」で現行犯逮捕。連れ去られた藤田の地獄めぐりがはじまった……(「宵山金魚」)。吃驚仰天の新世界! 6つの物語が交錯し妖しくつながっていく連作中篇集。
  • 洋子さんの本棚
    3.8
    同郷で同世代で名前も同じ。小説家・小川洋子とエッセイスト・平松洋子。踏みしめてきた数々の「踊り場」を振り返れば、そこにはいつも本があった――。ふたりはこんな本でできている。アンネ、ドイル、ケストナー、増井和子、タブッキ、白洲正子、倉橋由美子、深沢七郎、藤沢周平……。お二人が古今東西の名作を入り口に、本と人生を読みほどき、楽しく語り尽くした、滋味あふれる対話集。
  • 妖説忠臣蔵
    3.0
    大義のために血盟を誓った3人の武士の中に、ひとりの裏切り者が。疑心暗鬼となった彼らのひとりが殺されひとりは自決し、事件は解決したかに見えたが……。仇討ち遂行のためには手段を選ばぬ大石内蔵助の冷酷さを描く「殺人蔵」ほか、おなじみ忠臣蔵を彩る人物たちの意外なエピソード。
  • 腰痛探検家
    4.0
    他人の行かないところへ行き、他人のしないことをする、が信条の辺境作家。なんと腰痛に! 地獄からの生還を期して地図なき旅が始まった。カリスマ治療師からも見放され、難病の可能性まで急浮上。画期的な運動療法で自力更生ルートを選んだり、はたまた獣医や心療内科の扉も叩き……。腰痛という未知の世界に迷い込み、腰痛治療という密林で悪戦苦闘。とことん腰痛と向き合った、前代未聞の体験記。
  • 妖婦の伝説
    -
    役者と謀って男を毒殺し、「夜嵐」の異名をとった原田きぬ、古着屋を殺し、大金を奪った高橋お伝、大逆事件で幸徳秋水らと共に逮捕された菅野すが子。毒婦、悪女、妖婦などと決めつけられた美貌の女たち。本当に彼女たちが悪かったのか? 偏見に立ち向かい、文明開化期の影の部分を鮮やかに浮かび上がらせる連作。
  • 楊令伝 一 玄旗の章
    4.2
    梁山泊陥落から三年。「替天行道」の旗を胸に秘めた同志たちは全土に散って、再起の秋を待っていた。史進、呼延灼、張清は叛徒として局地戦を続け、李俊は太湖の周りに船団を組織して威をはっていた。燕青率いる闇塩の道、戴宗率いる通信の網はいまだ健在。加えて、呉用は梁山泊の底から、軍資金となる銀塊をひきあげさせた。いっぽう、官の闇の組織、青蓮寺の梁山泊の残党狩りは熾烈を極めた。しかし、ついに、元梁山泊勢の希望の星、青面獣・楊志の遺児、楊令が、帰還した。
  • 汚れつちまつた悲しみに… 中原中也詩集【語注付】
    3.8
    吐く息のひとつひとつが詩になる! 鋭すぎる感覚と簡潔な表現で、優れた作品を発表しながら、三十歳の若さで世を去った中原中也。その永遠の名詩を紹介する。
  • 吉沢久子100歳のおいしい台所
    -
    大正7年東京深川生まれの著者は、好奇心旺盛で食べることが大好きな少女だった。自立心が強く15歳で就職し独立。タイプライターと速記を学ぶと仕事が広がり、著名人達と貴重な出会いを得る。物のない戦時下では、知恵と工夫で料理を考え出した。結婚後、家事評論家となり、四季折々の暮らしを大切にしながら、合理的な生活改善を提案している。戦前戦後を生き抜いた百年長寿の台所の秘密を大公開!
  • 吉原螢珠天神
    5.0
    将軍家の元お庭番の許へ届いたのは井伊直弼暗殺の依頼だった。しかし井伊公は幽界の家康が乗り移った玉の命で動く、不思議な黒衣の集団に守られていた。元お庭番の活躍を描く表題作のほか、朝鮮で覚えたキムチの味が忘れられない剣術使いの、すべてを捨てて漬物作りに熱中する「辛うござる」など3編。卓抜した着想が光る鬼才の初の幻想時代小説集。
  • 寄席品川清洲亭
    3.5
    時は幕末、ペリー来航の直後の品川宿。落語好きが高じ寄席の開業を思い立った大工の棟梁・秀八。腕はいいが、けんかっ早い。駆け落ちして一緒になったおえいは団子屋を切り盛りするいい女房だ。芸人の確保に苦労するも、寄席の建物は順調に出来上がってきていた。そんな中、突然お城の公方さまが――。秀八の清洲亭は無事柿落しができるのか? 笑いあり涙あり、人情たっぷりの時代小説、開幕!
  • 与太郎侍
    -
    1~2巻671~715円 (税込)
    「世の中ってのは、なんだかざわざわしていて、いけないなあ」箱根の山奥で育った青年・古鷹恵太郎は、お人好しでちょっと天然。しかし、危険を顧みずに人を助け、貧しい者にはなけなしの金を与えることから“与太郎”と呼ばれていた。一緒に暮らす祖父が亡くなり、江戸に向かって旅に出ると、怪しげな者たちから命を狙われ……。人は斬らぬが、悪は糺す! お惚けキャラの“イノセント”侍が江戸で起こる争いを無邪気に解決! ほのぼのニューヒーローが大活躍!
  • 世にも奇妙なマラソン大会
    4.1
    サハラ砂漠でマラソン!? ある深夜、ネットでサハラ・マラソンなるサイトを見つけた著者。酔った勢いで主催者に参加希望のメールを送ったところ、あっさりと参加を認める返信がきた。開催まではたった二週間あまり。15キロ以上は走ったこともないランニング初心者の闘いがいま始まる――。表題作のほか、「謎のペルシア商人」など著者の“間違う力”が炸裂する超絶ノンフィクション作品集。
  • 嫁の遺言
    4.5
    朝の満員電車、ほんの一瞬、僕の手の外側を包み込むように握ってから、すっと離れた冷たい手。「死んだ嫁の手や」。生きているとき、いつも手助けしてくれた手。二度目はエレベーターの中で声が聞こえた。「間違いない。嫁が来たんや」。結婚して間もなく癌でこの世を去った彼女が幽霊になっても伝えたかったこととは(表題作)。街の片隅に暮らす、夫婦、親子、カップルなど、不器用でただ一途に生きていくことしかできない七人の物語。泣けて笑えて、読むと優しい気持ちになれる――。感動作の名手・カトゲンが贈る“大人のおとぎ話”。
  • 夜

    3.5
    「また、来るよ」そう言い残して父は女を作って家を出て行った。父親の「男」としての一面を垣間見て、戸惑いを覚える加那子だったが、次第にその存在は遠くなっていった。そんなある日、父危篤の報せが届き――(「暮色」)。女の視点から男を捉え、浮気、略奪、同性愛などの様々な愛の形に秘められた、男の存在の曖昧さを浮き彫りにした、著者の新境地。男と女の不条理を描く五つの物語。
  • 夜が傷つけた
    -
    弁護士・谷がかつて愛した洋子の夫・藤井久夫が屍体となって発見された。何者かが車で撥ね飛ばした上、もう一度轢くという念の入れようだ。そして洋子が姿を消した。義弟の和夫は谷に調査を依頼してきた。谷は元刑事の杉田に協力を求め、事件の陰に隠された巨悪に立ち向かう。あの傑作『眠りなき夜』のパート2。
  • よるねこ
    3.3
    深夜の寄宿舎を徘徊し、出会った者の魂を奪うという巨大な青い猫の噂。どこにでもある「学校の怪談」のはずだったが、母は女学生時代にその猫を見たことがあるのだという…。平穏な日常に潜み、ふいにその姿をのぞかせる恐怖。その本質を描く、著者初のホラー短編集。一度読んだら一生夢に出てくる、そんな物語が詰まっています。本当の怖さを知りたい人だけ、読んでください。
  • 夜の挨拶
    -
    出生の秘密と、忌まわしい強姦事件から男に対する憎悪と、性の喜びを失った神立麻由加は、大学を中退して夜の世界に飛び込んだ。翳りのある美貌と才能を発揮して彼女はナンバーワンのホステスにのし上がる。そんなとき同僚のホステス、仲間圭子の死に疑惑を抱き、燃えぬ肉体を武器に事件の真相に追う……。虚飾に彩られた夜の世界の表裏を暴きながら、女性の哀しい性(さが)を流麗な筆致で描く異色サスペンス。
  • 夜の朝顔
    3.8
    クラスメイトは6年間一緒。刺激のない田舎に住む小学生のセンリだが、気になることは山積みだ。身体の弱い妹への戸惑い。いじめられっ子への苛立ちと後ろめたさ。好きな男の子の話題で盛り上がる女子の輪に入れない自分。そして悔しさの中、初めて自覚した恋心――。子どもだって単純じゃない。思春期の入り口に至る少女の成長過程を繊細にすくいあげた、懐かしく、胸の痛みを誘う物語。
  • 夜の触手
    -
    〈ヘッドライトの光が広い野を掃いて渡ったが、村に沿った、この道までは届かなかった。ただ、ひろ子の眼だけが光を映して輝いた。三郎がその眼を、横眼で見ていると、ひろ子が向き直って「そんな見かたをしちゃ、好きになっちゃうじゃないの」と言った。その時、三郎の一生はきまったのである〉倖せに包まれた三郎の日は束の間、ひろ子は水死体で発見された。『事件』で推理作家協会賞受賞の著者が、緊迫のサスペンスで描く推理長編。
  • 夜の探偵
    -
    出所したばかりの元興信所の調査員・矢代に仕事の依頼がきた。デビュー間がないというのに人気急上昇中の新人歌手の過去を暴けというもので、写真で見るその売れっ子歌手は、矢代が惚れこんでいて、現在失踪中の浩子にそっくりだった。その上依頼人の弁護士は何の手がかりも与えてくれない…。プロダクション側は秘密を隠そうと必死だった。
  • 夜の寝覚め
    3.9
    結婚10年目、小夜子は初めて恋を知った。それから15年。夫の友人との秘密の恋が、結ばれることもないまま終ろうとしている。行き着く果ての見えない愛を描く「たんぽぽ」。真夜中に父と睦み合う叔母の姿を目撃して30年。秘めたる思いを胸に抱いたまま、今、その叔母の命が尽きようとしている。表題作「夜の寝覚め」。人生の残り時間を数えはじめる季節を迎えた6人の女たち。寄る辺なき恋の短編集。
  • 夜よ おまえは
    -
    カメラマンの高村は菊地に5万ペセタの貸しがあった。日本の雑誌の依頼でスペインの農村地帯を撮影旅行した時、現地スタッフだった菊地は、10万のギャラの半分しか払わなかった。残りのギャラをもらうべくセビリアのホテルを訪ねた高村に、菊地は“アメラダのマキに会え!”のメッセージを残していた。マキは日本人娼婦だったが、ふたりは何者かに狙われ、必死の逃亡を続ける……。スペインの闇をさまよう男と女の愛と意地。叙情溢れるハードボイルド!

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