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ブラッディ・カンザス
グルリエ、フリーマントル、シャーペンの三家族がカンザスのコー・ヴァレーにやってきたのは、1855年のことだった。それ以来、三つの一族は隣人として生活してきた。ある時は奴隷解放に抗う者たちの襲撃を受け、またある時は疫病や旱魃といった大自然の猛威にさらされながらも、大地とともに、愛憎を紡ぎながら。歳月が過ぎ、フリーマントル家の屋敷は当主を失って無人になった。シャーペン、グルリエの両家は信教をめぐって対立を続ける。そして、激動の現代において、農場を営む人々といえども、世界と無縁ではいられない。親子の断絶、男女平等、イラク戦争、マスコミ、インターネット……フリーマントル屋敷にニューヨークから新しい住人が引っ越してきたことをきっかけに、人びとの生活に巨大な波紋が起きてゆく……。V・I・ウォーショースキー・シリーズの著者が自らの故郷を舞台に、現代社会でのさまざまな問題を折りこみ、大地に生きようとする人々を重厚かつ華麗に描く野心作。 -
なぜではなく、どんなふうに
大学で政治学とグローバリゼーションを講じながら子育てをするイタリア系女性ブルーナは、自立心が強く進歩的だ。しかし医師でもある夫もその両親も保守的で差別と偏見に満ちている。両親に逆らえない夫、性同一性障害の幼い息子……。仕事と家庭の板挟みに苦しむブルーナの人生が教え子のムスリム青年の出現で覆る。そして彼の突然のISISへの出立。人種差別、性差別、移民問題……分断化が進む現代アメリカ社会で生きる彼女の人生が、今を生きる私たちすべての人生に重なり、訴えかけてくる。本書は著者のデビュー作で、イタリアの著名なジャーナリスト(イタリアの表現の自由・報道の自由のシンボル的存在で、『死都ゴモラ』や『コカイン ゼロゼロゼロ』といったノンフィクションで日本でも知られる)ロベルト・サヴィアーノ監修のフィクション&ノンフィクションのシリーズ「弾薬庫(ムニツィオーニ)」叢書の第一弾として刊行された作品である。 -
各務原・名古屋・国立
老小説家の父親の出生地、岐阜県各務原市での講演という体で小説は書き始められる。その講演では岐阜近辺出身の文人が次々に召喚され、文化的磁場としての岐阜について語られるかと思いきや、認知症が進行していく妻とのやり取りの場面が挿入される。老小説家が関心を持って接してきた遠い過去からごく最近までの文学者たちの言葉と、日常生活を営むことが困難になりつつある妻の言葉が折り重なるように記されつづけたその奥からぼんやりと見えてくるのは、齢八十代半ばに至り健康体とはいえない老小説家が、どうしようもなく疲労しつつも生きて書くことの闘いをやめようとしない姿である。 -
澁澤龍彦の思考
澁澤の「書く=読む」という行為には、「(仏語の)純粋言語を日本語に よって救い出す」(ベンヤミン「翻訳者の使命」)という運動が働いている。 そのとき、澁澤という「私(わたくし)」性はどこにあるのだろうか。 澁澤の「書く=読む」という行為は「純粋言語」を救出するとともに、 澁澤という「私」性が消滅するのではないかというのが、 筆者が考える澁澤におけるエクリチュール化した「私」の意味である。 このエクリチュール化した「私」は、消滅するとともに 翻訳行為と同様、他者の「純粋言語」にまとわりつく「純粋思考」をも かぎりなくとりこんでいく。 そして最後には、澁澤の博覧強記の「書く=読む」という行為は、 澁澤の「私」性が消滅して、エクリチュールに他者、評者(筆者)まで をもまきこんでいく。 究極的にそこに浮上する澁澤の「思考」とはなにか……それを逐語訳的に 翻訳・抽出していくのが本書の眼目なのである。 【目次】 (第1章)サドの自然 (第2章)『夢の宇宙誌』玩具・天使・アンドロギュノス・世界の終り (第3章)『エロスの解剖』 (第4章)『胡桃の中の世界』 -
我々の星のハルキ・ムラカミ文学
ハルキ・ムラカミの文章はいかにして日本から世界=惑星の隅々まで届くのか。 村上春樹は、日本を舞台に日本語で描かれた作品を、日本から世界へ向けて発信し続けている。その意味では「日本のローカルな」作家ではなく、かといって「米国発のグローバルな」作家でもない。この「惑星的思考」ともいうべき村上春樹の世界観を、国内外の村上春樹/ハルキ・ムラカミ研究者が共に検証する珠玉の論考の集成。 【目次】 はじめに「日本」の村上と「惑星」のムラカミ ◉翻訳◉ 第1章 ヨーロッパに浮かぶ二つの月 第2章 村上春樹『国境の南、太陽の西』の新旧ドイツ語訳 第3章 一九八五年の「相棒」とは誰だったのか ◉歴史/物語(hi/story)◉ 第4章 『海辺のカフカ』における時空 第5章 村上春樹作品にみる「神話的思考」と物語の構造 ◉海外作家◉ 第6章 『羊をめぐる冒険』をめぐるゴールド・ラッシュの点と線 第7章 ここは僕の場所でもない ◉紀行◉ 第8章 村上春樹の紀行文と小説における相互影響について 第9章 『ノルウェイの森』誕生の地 ローマ・トレコリレジデンス探訪記 第10章 『海辺のカフカ』を歩く ◉村上春樹関係年譜◉ おわりに 加藤典洋「的思考」と村上/ムラカミ批評の未来 -
シン・論 おたくとアヴァンギャルド
庵野秀明の「シン・」シリーズは、「おたく」の歴史を踏まえた自覚的な「つくり直し」である。その方法と美学の出自を探る、挑発的芸術論。 戦後の「おたく」表現のフェティシズムや美学の出自は、戦時下に狂い咲いたアヴァンギャルドが、戦後、政治的にウォッシュされたものであるというのがぼくの一貫した主張だが、「シン・」シリーズは、 その美学や方法を「正しく」運用し直し、戦後おたく表現を「修正」する試みなのだ。成田亨ウルトラマンの初期デザインの採用などその際たるものだろう。しかし、それは「特撮」とか「アニメ」とか 戦後のジャンルに必ずしも閉じたものでなく、もう少し広い。その「広さ」が重要だ。 (「あとがき」より) ※本データには、図版・注釈への双方向リンクは含まれません。 -
あさのあつこ 白兎 全4冊合本版
ホテルで行きずりの女を殺してしまった吉行は、車で逃げる雨の山中で少年と幼女の二人連れに出会う。和子という幼女の家に帰る途中だという。近くまで乗せることになった車内で、和子の無邪気な話を聞きながら、ふと吉行は自分の過去を振り返る。夜の闇が迫り、ひどい疲労感に襲われた吉行は親子と偽り宿をとる。穏やかな夕食と温泉。まるで本当の親子のようだ。そう独り言ちる吉行が目にしたのは、和子の首に残る、一筋の赤い線だった(『緋色の稜線』)。他に『藤色の記憶』『藍の夜明け』『白磁の薔薇』と、シリーズすべてが収録。謎の少年「白兎」の時を超えた旅路の中で描かれる、男と女の運命のほころび。物語の名手が紡ぐ大人のサスペンス・ミステリ―、シリーズ4作合本で、一気読み! ※本電子書籍は『緋色の稜線』『藤色の記憶』『藍の夜明け』『白磁の薔薇』全4冊を1冊にまとめた合本版です。 -
「坂の上の雲」もうひとつの読み方
原作のストーリーを追いながら、厖大な資料を駆使して、その背後にある数多くの新事実を発掘!司馬遼太郎の名作『坂の上の雲』をさらに面白くする著者渾身の作! (※本書は2009/11/1に発売し、2022/2/10に電子化をいたしました) -
新編 志樹逸馬詩集
曲った手で 水をすくう こぼれても こぼれても みたされる水の はげしさに いつも なみなみと 生命の水は手の中にある 指は曲っていても 天をさすには少しの不自由も感じない (「曲った手で」) 大きな困難の中にあって、生きることの喜びと光を求め続け、言葉を紡ぎ続けた伝説の詩人。 キリスト教信仰に裏打ちされたひたむきで純粋なことばたち。長く入手困難だった詩作品が、ついによみがえる。 これまでに刊行された二冊の詩集『志樹逸馬詩集』(方向社、1960年)、『島の四季』(編集工房ノア、1984年)に収録された全詩に加え、遺稿ノートから未公刊の詩を選んで編む。 付録の投げ込み栞(若松英輔、込山志保子執筆、8ページ)を電子版では巻末に収録しました。 【もくじ】 詩集『島の四季』 詩集『志樹逸馬詩集』 未公刊詩選 解説(若松英輔) 年譜(込山志保子) 栞(若松英輔、込山志保子) -
昏い水
知的で辛辣、自由を重んじ、七十代のいまも仕事のため遠方まで車を走らせるフランチェスカ、病床にあるどこか憎めない元夫、高級老人ホームで悠々自適の女友だち、恋人を突然亡くした息子が身を寄せるカナリア諸島のゲイの老カップル……。いかにも英国的なユーモアをちりばめながら、人生の終盤を生きる人々を描く長篇小説。 -
ビリー・リンの永遠の一日
イラク戦争のさなか、一時帰国して戦意昂揚のためのショーに駆り出された兵士たち。過酷な戦場の現実と、政治やメディアの滑稽な狂騒の、その途方もない隔絶。テロや戦争の絶えない現代アメリカの姿を、若き兵士の視点から描く傑作長篇。全米批評家協会賞受賞。 -
夜の歌
サンデー毎日に連載された「夜の歌」の単行本化。まとめるにあたり大幅な加筆修正を行う。 本作品は、著者の咽頭がんが再発し、がんの穿孔による大量出血の危機が迫るなかで書き始められ、自らの人生と表現を集大成する「白鳥の歌」の重みを持つとなっている。 3つの時制からなる。病の進行におびえる現在と、著者が歌謡曲の作詩家として栄華を誇った70年代の芸能界と、著者の原体験とも言える満州での戦争と引き揚げの体験と。著者は『赤い月』などでは触れなかった、満州での人倫に背く自らの体験――自分が生き抜くために、他の日本人を犠牲にしたことなど――をも徹底して暴きながら、愛と官能に溢れた歌謡曲の名曲たちが、悪夢のような満州体験から生まれたものであることを初めて明らかにしていく。 70年代の芸能界における著者と安井かずみとの秘められた恋愛もこれまで語られたことがなく、本書のわかりやすい話題性になるだろう。 物語は、著者がレコード大賞二冠受賞の快挙をなしとげたまさにその時に、戦争の落とし子とでも言うべき極端な逸脱者である兄が、莫大な借金を著者に負わせるところで終幕を迎える。著者の戦後の華麗な日々にも、満州の不気味な闇が延々と続いていたのである。 -
父 水上勉
日本の近代文学史上、稀代の私小説作家として知られ、数々のベストセラーを生み出した水上勉の生涯を、実子である無言館館主が書き下ろす、注目の力作。戦前、小説家になることを志し、福井から上京した水上は、食うや食わずの状態で転職を重ねながら、やがてある女性と同棲、彼女は一子を設ける。いろいろな事情で父母は幼な子を他家に養子に出すことになるのだが、その子が著者だったことは、これまで水上の『冬の光景』などに詳しい。一方戦後三十余年を経て、著者は「父」と奇跡の再会を果たす。二十年もかけて実父を捜し歩いた記録はNHKの連続テレビドラマで放映されたこともあり、感動的な物語としてよく知られるところとなっている。早い話、父母から捨てられた形ではあったが、その後著者は「父」を許すどころか、敬意をもって接することとなる。本書は〈わたしは父親の真実を知りたいという欲求におそわれる。その「人」に惹かれる。何とかして、その「人」を知りたいと思う〉という著者の強い意欲がもたらしたもので、丹念な資料収集や作品の精読はもとより、何よりも「父」との対話を通じて、評伝を超えた評伝としての姿を見せている。 -
合本 季節風(春)(夏)(秋)(冬)【文春e-Books】
重松清の傑作短篇集「季節風」シリーズ全4巻が1冊に! (春):古いひな人形が、記憶の中の春とともに、母の面影を思い起こさせる「めぐりびな」、子どもが生まれたばかりの共働きの若い夫婦が直面した葛藤と、その後の日々を鮮やかに描き出した「ツバメ記念日」など、美しい四季と移りゆくひとの心をテーマにした短篇集「季節風」シリーズの春篇。別れと出会いに胸震わせる、春の物語12篇を収録。 (夏):転校が決まった“相棒”と自転車で海へ向かう少年たちの冒険「僕たちのミシシッピ・リバー」、野球部最後の試合でラストバッターになった輝夫と、引退後も練習に出続ける控え選手だった渡瀬、2人の夏「終わりの後の始まりの前に」など、美しい四季と移りゆくひとの心をテーマにした短篇集「季節風」シリーズの夏篇。まぶしい季節に大切な人を想う、夏の物語12篇を収録。 (秋):同窓会で久しぶりに再会した中年5人が始めた秘密基地の集まりに、1人が息子を連れてきたいと言い出した……「秘密基地に午後七時」、男の子と、離婚する両親との最後の外食を描いた「少しだけ欠けた月」など、美しい四季と移りゆくひとの心をテーマにした短篇集「季節風」シリーズの秋篇。ひと恋しい季節にそっと寄り添うような、秋の物語12篇を収録。 (冬):出産のために離れて暮らす母親のことを想う5歳の女の子の素敵なクリスマスを描いた「サンタ・エクスプレス」ほか、<ひとの“想い”を信じていなければ、小説は書けない気がする>という著者が、普通の人々の小さくて大きな世界を季節ごとに描き出す短篇集「季節風」シリーズの冬篇。寒い季節を暖かくしてくれる、冬の物語12篇を収録。 -
真珠王の娘
1944年10月、英国首相チャーチルから帝國真珠ロンドン支店の早川正臣に真珠の胸飾り「ハナグルマ」が手渡された。かつてパリ万博にも出品された品の修復依頼だった。「君の祖国は、あと一年ももたない」と言われながらも日本に戻り、正臣が向かったのは、ハナグルマを唯一修復できる水野家だった。 水野美冬は真珠職人の母と二人暮らし。学徒勤労動員で浜松にある挺身工場に出発する前夜、母から重大な話を聞かされる。早世した父は実の父ではなく、本当の父は「真珠王」と呼ばれる帝國真珠の創業者・藤堂高清だという……。 時代の波に翻弄されながらも美冬は自らの運命を切り開いていく。 -
ヘルドッグスシリーズ【3冊合本版】『ヘルドッグス 地獄の犬たち』『煉獄の獅子たち』『天国の修羅たち』
関東最大の暴力団・東鞘会で頭角を現す兼高昭吾は密命を帯びた潜入捜査官だった! 彼が追う、警視庁を揺るがす重大機密とは。そして死と隣り合わせの兼高の運命は? 『ヘルドッグス 地獄の犬たち』 東鞘会の跡目争いは熾烈を極めていた。現会長の実子・氏家勝一は、子分の織内に台頭著しい会長代理の暗殺を命じる。一方、ヤクザを憎む警視庁の我妻は東鞘会壊滅に乗り出していた……。『煉獄の獅子たち』 裏社会に精通している老ジャーナリストが何者かによって殺害された。警視庁捜査一課の神野真里亜は、捜査のなかで驚愕の真実に気付く。映画原作「ヘルドッグス」シリーズ、圧巻の完結作! 『天国の修羅たち』 警察小説を超えた問題作! 映画原作「ヘルドッグス」を含む慟哭のクライムサーガ全3冊を一気読み! ※本書は2020年7月刊行の『ヘルドッグス 地獄の犬たち』(角川文庫)、2022年6月刊行の『煉獄の獅子たち』(角川文庫)、2022年8月刊行の『天国の修羅たち』の3冊を収録した合本形式での配信となります。 -
いまの音 むかしの音
卓抜な論理と感覚が、20世紀芸術の本質を明らかにする。幸福な音楽とは何か? 幸福な音とは何か? ――ピカソは、芸術とは何かをさがしまわることではなくて、何かに出会うことだといった。そうして出会った音が何か自分にとって特別なもの、特別な意味を持っているものと感じた時、その人は音楽家になるのである。決してその逆ではない。音楽についての情報を頭につめこんだ音楽家には、その出会いが困難なものになる。……昔の音をなつかしく思うのは事実である。私が音楽を選んだのはその音によってである。それがいま失われようとしているのは何故か。……私はただ昔をなつかしんでいるわけにはゆかないのである。 -
語るに足る、ささやかな人生
そこに住んでいる人以外は誰も知らないようなアメリカのスモールタウンを巡る、極上のトラベローグ。 ーそこに住んでいる人以外は誰も知らないようなごく小さな町“スモールタウン”だけをつないで全米を横断する旅に出た。そこで出会った町の人々は、誰もが人生の主人公だった。語るべき内容と信念を人生に持ち、それでいて声の大きな人物はひとりもいなかった。大きな成功よりも小さな平和を、虚栄よりも確実な幸福を、町の住民に自分が役立つ誇りを、彼らは心から望んでいるように見えた。ー 駒沢敏器の名著、待望の復刊! 【目次】 はじめに スモールタウンへようこそ 第一章 夕闇のドライヴイン・シアター|サウスダコタ州ウイナー 第二章 神に見離された場所|サウスダコタ州ウォール 第三章 幽霊の棲む館|ニューヨーク州スプリングヴィル 第四章 温もりの夜の中へ|ウィスコンシン州ダーリントン 第五章 芝生の暴力|イリノイ州ディクソン 第六章 警察に届いた電話|ミネソタ州ウェセカ 第七章 最も素晴らしいスモールタウン|インディアナ州モーガンタウン 第八章 青いトマトのフライ|ミシシッピ州ベルゾーニ 第九章 谷あいの寂しい音|アーカンソー州 マウンテン・ビュー 第十章 ホテル・ブルックリン|アイオワ州ブルックリン 第十一章 赤い荒野のロディオ|テキサス州アンソン 第十二章 夕陽に輝くネオン|ニューメキシコ州ギャラップ 第十三章 さようなら、スモールタウン|アリゾナ州セリグマン↓カリフォルニア州パームスプリングス おわりに 語るに足る、ささやかな人生 解説 【著者】 駒沢敏器 1961年東京都生まれ。雑誌『SWITCH』の編集者を経て、作家・翻訳家に。主な著書は、小説に『人生は彼女の腹筋』(小学館)、『夜はもう明けている』(角川書店)、ノンフィクションに『地球を抱いて眠る』(NHK出版/小学館文庫)、『地球を抱いて眠る』(小学館文庫)、『アメリカのパイを買って帰ろう』(日本経済新聞出版)、翻訳に『空から光が降りてくる』(著:ジェイ・マキナニー/講談社)、『魔空の森 ヘックスウッド』(著:ダイアナ・ウィン・ジョーンズ/小学館)など。2012年逝去。 -
ラフカディオ・ハーンの耳、語る女たち 声のざわめき
ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)、聲[こえ]の旅人、その作品と生涯へ読者を招待する。渾身のハーン論を一挙集成し、大幅に加筆&集成した「大増補&改訂新版」。たくさんの絵図・写真も掲載する。 ギリシャ、アイルランド、米国、マルチニークをめぐり歩き、1890年に、40歳を前にしてラフカディオ・ハーンは来日した。 盲目の女性芸能民の三味線、行商人の下駄のひびき、大黒舞[だいこくまい]の踊りと歌、道ゆく笛の音……。富国強兵に突き進む近代化のなかで「雑音」として切り捨てられた口承文芸の調べ、民衆の暮らしの音が、ざわめきとなってハーンの耳を圧倒する。 シンシナーティやマルチニークでの濃厚な声もまた、潮騒のようにハーンに押し寄せる。「海の声は…たくさんの声がかもしだすざわめき」なのである。 このざわめきを聴き取るために、ハーンが小泉セツに怪談を語らせるさい、彼女にこう求めた――「ただあなたの話、あなたの言葉、あなたの考でなければ、いけません」。セツのそばで耳の孔をおしひろげながら、彼は「小泉八雲」となった。 凍てつく息を男の顔にふきかける「雪おんな」。耳をひきちぎられる琵琶弾きの盲僧「芳一[ほういち]」。変わり果てた故郷の姿に絶望する「浦島[うらしま]」。 小泉セツ、女たち、病者、獣、死者がざわめく声に、ハーンは耳の奥で、何かを聞いたのだ。 【目次】 【Ⅰ】ハーンの耳 序 文字の王国/大黒舞/ざわめく本妙寺/門づけ体験/ハーメルンの笛吹き/耳なし芳一 考 【Ⅱ】ハーンと女たち 語る女の系譜 「女の記憶」という名の図書館 【Ⅲ】ハーンと文字 文字所有者の優位から文字の優位ヘ:カフカ・ハーン・アルトー 盲者と文芸:ハーンからアルトーへ 【Ⅳ】宿命の女 「おしどり」とマゾヒズム 怪談 浦島太郎 【Ⅴ】ハーンと世紀末 ラフカディオ・ハーンの世紀末:黄禍論を越えて ハーンを交えて議論してみたいこと 【著者】 西成彦 西成彦 1955年生。立命館大学名誉教授。専攻はポーランド文学、比較文学。他の著書として、『森のゲリラ 宮澤賢治』(平凡社ライブラリー版 2004)、『ターミナルライフ 終末期の風景』(作品社 2011)、『胸さわぎの鴎外』(人文書院 2013)、『外地巡礼――「越境的」日本語文学論』(みすず書房 2018)、『多言語的なアメリカ 移動文学論 Ⅲ』(作品社 2024)ほか。また訳書として、ショレム・アレイヘム『牛乳屋テヴィエ』(岩波文庫 2012)ほか。 -
ジェーンの物語 伝説のフェミニスト中絶サービス地下組織
妊娠して困ってない? <ジェーン>に電話して! 中絶が違法だった半世紀前の米国シカゴ。女たちが女たちを助けようと立ち上がった違法の地下組織「ジェーン」。安全な中絶手術を求め駆け込んだ女性たちの数は推定1万1000人。激動の歴史を赤裸々に描いた衝撃的なノンフィクション。 「願っていたのは、この歴史を読むすべての人が私たちの中に自分自身を見いだし、「私もこうしていたかもしれない」と思ってくれること」(本文より) 【目次】 日本の読者のみなさんへ はじめに ヴィンテージ・ブックス版(二〇二二) プロローグ 第1章 第2章 第3章 第4章 第5章 第6章 第7章 第8章 第9章 第10章 第11章 第12章 第13章 第14章 第15章 第16章 第17章 第18章 第19章 第20章 第21章 第22章 第23章 第24章 第25章 第26章 第27章 エピローグ 謝辞 訳者あとがき 参考文献 【著者】 ローラ・カプラン 米シカゴの伝説のフェミニスト中絶サービス地下組織「ジェーン」のメンバーで、シカゴのエマ・ゴールドマン女性健康センターの創設メンバー。ナショナル・ウィメンズ・ヘルス・ネットワークの理事を務めていたこともあり、様々なコミュニティー・プロジェクトに携わっている。 塚原久美 中絶問題研究家、公認心理師、臨床心理士、中絶ケアカウンセラー。著書『日本の中絶』、『中絶技術とリプロダクティヴ・ライツ』(勁草書房:山川菊栄賞、ジェンダー法学会西尾学術賞)、訳書『中絶がわかる本』など。日本人のリプロの環境を改善することがライフワーク。 -
エマ
『レオン』『ニキータ』等 世界的名優ジャン・レノ 衝撃のデビュー小説 異国情緒溢れる中東を舞台に、サスペンス、ロマンス、アクションが織りなす ハリウッド映画さながらのエンターテインメント超大作 地元フランス・ブルターニュで療法士として働くエマ・モルヴァンは、会社からの要請に応じオマーンで新たに建てられる豪華リラクゼーション施設のインストラクターとして当地に滞在することになった。故郷と親友、また愛猫と離れることに寂しさと不安はあったが、想像を超える好待遇と、母親が目の前で喪った傷と決別する覚悟、オマーンで会うことになる男を想う気持ちからの決断であった。男は施設のオーナーであり、絶大な権力を持つ副首相の子息でもある。互いにひかれあうが、ある日、男を探れとフランス情報機関に命令される。いわく国際問題に発展しかねない大事が起こる可能性があり、そのカギである男を動かせるのはエマしかいないと。思いがけず巻き込まれたエマだったが、大胆な度胸と能力で道を切り拓いていく。