1992年、元FBI捜査官のマリー・ミッチェルが自分の双子の息子たちに語る手記という形で進行する物語。
黒人としてニューヨークに生まれ、警察官の父と、別離してしまった母親。いつも勇敢に自分を守ってくれた姉のエレーヌ。今は二人の息子と暮らしているが、そこを正体不明の暴漢に襲われ、身の危険を感じてフラン
...続きを読むスにいる母親の元に息子たちとともに身を隠す。
1960年代から70年代、80年代と手記の話は時代を行き来する。
自分の少女時代、慕った姉がCIAに入って諜報活動にかかわるようになることを知り、自分もFBIに入るものの白人・男性が上位の世界において、才能がありながら不遇な状態がつづく。
そこから話は80年代の実在するアフリカの小国ブルキナファソの指導者だったトマ・サンカラに接近する指示をマリーが受ける話へとなっていく。
トマ・サンカラは若くしてクーデータによりブルキナファソの大統領となるが、軍人、公務員の給与を削減し、一方で国民の教育やワクチン接種などに注力して識字率や乳児死亡率を下げるなどの政策を実行し、国民の絶大的な支持をうけた。国連で演説をするためにニューヨークを訪れるが、アメリカの黒人の間でも人気は高かった。
しかし、そのサンカラの政策は親社会主義、反米国帝国主義であったがために、当時の米国の諜報機関から妨害工作を受けていて、その中にマリーも巻き込まれていくという物語だ。
女性黒人スパイを主人公としたスパイ・スリラー小説であり、人種差別や性差別に対して或る種の諦めも感じつつ反抗していく女性の物語でもある。
淡々と自分の行動を語る中で、時折二人の息子に向ける愛情表現が切ない。
ちなみに、本書はバラク・オバマ元大統領が毎年発表する読書リストの2019年のリストに取り上げられている。