西村健の一覧
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ユーザーレビュー
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2023.02,21
福岡県大牟田市を舞台にした大河ミステリの力作である。
まず、大河ドラマの要件となるキャラクターそれぞれの深みがある部分が良い。
ヒトの弱さ、「オンナ」の生き物としての力強さが描きぬかれている。
そして、人はヒカッしゃんであれ、主人公であれ、江崎のおっちゃんであれ、「生きている」
...続きを読むのではなく、「生かされている」のだ。
私はこの歳になってもまだそれが体得できていないよな、口先だけだなぁとしみじみ感じている。
最後にミステリとしても上等!犯人、さらにそこからのもうひとひねり。参りました。
Posted by ブクログ
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2020年の本作執筆時点から「四半世紀前」となる1995年を振り返っている。作中の出来事は、大半が1995年に起こっている事ということになる。
本作の中心視点人物、主人公は雑誌等の各種媒体に記事を寄稿するフリーライター、フリー雑誌記者を生業としている男、古毛冴樹(こもさえき)である。本作は一貫してこ
...続きを読むの古毛の目線で綴られている。
物語は2020年9月の或る日、古毛が取材活動をしている場面から起こる。
古毛は所謂「JKビジネス」に関する取材をしていた。取材をしていて思い出したのは、25年前の1月「神戸へ向かうのだ…」という想いを胸に、当時の取材活動で高校生に会ったという日だった。
1995年1月17日の早朝に阪神大震災が発生した。早朝の事態で連絡を受けて、普段は余りしなかった早起きをした。
直ぐにも神戸へ向かおうとも考えた古毛であったが、当時の主な仕事場であった大手出版社の月刊誌編集部で相談した結果、同じ出版社の週刊誌の関係者と3人で翌朝一番に出発するということになった。そして事前にその日の予定ということにしていた活動の一環で高校生に会っていたのだった。
やがて古毛は神戸に乗込んだ。「月刊誌ならでは」という視点の記事を綴るべく活動に勤しんだ。そうした中、夕刻に未だ燃えている住宅も視える場所に佇めば、同じ様子をじっと眺めている若い女性が居たことに気付いた。女性の様子を視ていると、名状し悪いような、決然としたモノを奥に秘めたような強い目線が強い印象を与えた。アフガニスタンの戦場で、決然と戦いの渦に飛び込もうとしていた少年が見せた目線というようなモノを古毛は想起した。
そんな出来事を経て、古毛は或る事件を偶々知る。古毛自身が佇んで視ていた住宅街で発見された男性の遺体の中に、建物の倒壊で受けたダメージや火災によるダメージが死因ではなく、刃物で刺されていたらしいモノが在ったというのだ。震災後の対応で警察は非常に繁忙ではあったのだが、それでも捜査員達がこの件を調べていることも判った。
古毛はこの事件に興味を抱いた。そして殺害されてしまったらしい男性は「評判が悪い男」で、嘗ては高利貸しであったが、何時の間にか借金が嵩んでしまっていて、他方で働いて収入を得ているでもなく、妻には暴力を振るうような人物であったという。妻は何時の間にか出て行ってしまい、娘は高校を中退して風俗営業で働いていたという。更に、その所在が不明になってしまった娘というのが、古毛が見掛けて強い印象を受けた若い女性であるらしいのだ。
こんな出来事が在ったが、1995年は「驚くような出来事」が続発した。かの「オウム真理教」の問題も在った。古毛は記者活動を展開し続けるのだが、そういう中で神戸での強い印象を受けた出会いの件はどうなって行くのか?
という物語だ…
作者は「フリーの雑誌記者」というような仕事を経験されているらしく、加えて1995年頃はそういう活動の中に在ったようだ。そうした中での御自身の見聞や経験、周辺から聞き及んだこと等が本作には非常に多く反映されているのだと思う。「雑誌の取材の現場」というディーテールが丹念に重ねられる中で、作中の世界がリアリティーを帯びて構築されている。読んでいると「1995年の世界」に引き込まれて行く、連れ戻されるというような気もしてしまう。
震災、オウム、沖縄の米兵による犯罪、大蔵省の接待問題等々と色々と驚くことが続発していた1995年だった。「戦後50年」という中、「50年が何だった?」と社会が揺れていたかもしれない。そして年の終盤には<ウィンドウズ95>が登場してもいる。
本作は「雑誌記者が取材中に見掛けた人物に纏わる事件」という“ミステリー”を軸としながらも、「揺れた“戦後50年”」を、「その時点から四半世紀」という中で振り返るかのような、「単純にミステリーを紐解く」では足りない「迫るモノ」が在る作品であると思った。
先日、偶々少し若い人と言葉を交わしたが、思えばこの「阪神大震災」の頃やそれ以降に生まれた人達が既に20歳代半ばに差し掛かって、社会の中で活躍している。自身は「阪神大震災」の頃、テレビニュースを視ながら窓の外を視て、雪が降り頻っていた様子に気付き「冬に災害で建物から閉め出されるようなことになれば?大変だ…」と何となく思っていたことを漠然と憶えている。
「揺れた“戦後50年”」であった1995年は、或いは「様々な問題意識や変化」が顕在化し始めたような頃でもあったということに、本作を読んで強く思い至った。或いは本作は「幅広い世代に薦められる」という、なかなかの力作だと思う。
Posted by ブクログ
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西村健『バスを待つ男』実業之日本社文庫。
トラベルミステリーと安楽椅子探偵の融合という珍しい仕掛の連作短編である。主人公は70歳の元刑事とその妻で、最後まで2人の名前は明かされない。様々なミステリーが描かれるが謎解きは明解で、この殺伐とした時代に思わずほっこりする短編ばかりが並び、非常に面白い。是
...続きを読む非とも読むべき作品である。
定年を迎え、特に趣味も無く日常を過ごしていた70歳になる元刑事が見付けたのはシルバーパスを利用しての都バスの小さな旅。旅先で出会う様々な日常のミステリー。しかし、謎を解くのは、いつも元刑事の妻というのだから面白い。
『第一章 バスを待つ男』。元刑事が不審に感じたバス停に佇む男性の目的は……
『第二章 母子の狐』。王子の稲荷に佇むお狐様に掛けられた白い前掛けの謎……
『第三章 うそと裏切り』。元刑事が出会った家電量販店を徘徊する中学生が抱える悩みとは……
『第四章 迷宮霊園』。元刑事がバスの中で偶然出会った、かつての同僚。かつての同僚の言葉のままに多摩霊園の目当ての墓を探すが……
『第五章 居残りサベージ』。品川に居残り、ひたすらみたらし団子を食べ歩く、アメリカの大学生クリス・サベージの謎……
『第六章 鬼のいる街』。既に解決した連続殺人鬼事件。犯人は何故、目撃者の女性に手を掛けず、踵を返したのか……
『第七章 花違い』。女子高生の家に毎朝届けられる1輪の花の謎は……
『第八章 長い旅』。元刑事が現役の頃、迷宮入りした三鷹駅近くで起きた殺人事件……
『終章』。最後に泣いた。泣かされた。
本体価格700円
★★★★★
Posted by ブクログ
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評価は5.
内容(BOOKデーターベース)
三池炭鉱を舞台に描かれた熱き人間ドラマ。地元の警察官・猿渡鉄男は、「名刑事」だった父の死の謎を追い続けていた。時代は、昭和から平成へ。斜陽化する炭鉱の街、必死に生き抜く人々、時代を反映した数奇な事件。すべてが折り重なって解明された、父親殺しの真相とは?第
...続きを読む33回吉川英治文学新人賞受賞作。
長編だからこそゆっくりと分かってくる主人公の人間性。最後はほんのりと暖かくなる良い話だった。犯人はとても分かりやすくミステリーと言うより人の暖かみが伝わる人間模様の物語であった。
Posted by ブクログ
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評価は5.
内容(BOOKデーターベース)
昭和三十八年。福岡県の三池炭鉱で大規模な爆発事故が起きた夜に、一人の警察官が殺された。その息子・猿渡鉄男は、やがて父と同じく地元の警察官となり、事件の行方を追い始める。労働争議や炭塵爆発事故の下、懸命に生きる三池の人々と、「戦後の昭和」ならではの事件を描
...続きを読むいた、社会派大河ミステリー。
Posted by ブクログ
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