西村健のレビュー一覧

  • 地の底のヤマ(下)

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    2023.02,21
    福岡県大牟田市を舞台にした大河ミステリの力作である。
    まず、大河ドラマの要件となるキャラクターそれぞれの深みがある部分が良い。
    ヒトの弱さ、「オンナ」の生き物としての力強さが描きぬかれている。
    そして、人はヒカッしゃんであれ、主人公であれ、江崎のおっちゃんであれ、「生きている」のではなく、「生かされている」のだ。
    私はこの歳になってもまだそれが体得できていないよな、口先だけだなぁとしみじみ感じている。
    最後にミステリとしても上等!犯人、さらにそこからのもうひとひねり。参りました。

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    2023年02月22日
  • バスを待つ男

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    西村健『バスを待つ男』実業之日本社文庫。

    トラベルミステリーと安楽椅子探偵の融合という珍しい仕掛の連作短編である。主人公は70歳の元刑事とその妻で、最後まで2人の名前は明かされない。様々なミステリーが描かれるが謎解きは明解で、この殺伐とした時代に思わずほっこりする短編ばかりが並び、非常に面白い。是非とも読むべき作品である。

    定年を迎え、特に趣味も無く日常を過ごしていた70歳になる元刑事が見付けたのはシルバーパスを利用しての都バスの小さな旅。旅先で出会う様々な日常のミステリー。しかし、謎を解くのは、いつも元刑事の妻というのだから面白い。

    『第一章 バスを待つ男』。元刑事が不審に感じたバス停

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    2020年04月23日
  • 地の底のヤマ(下)

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    ネタバレ

    評価は5.

    内容(BOOKデーターベース)
    三池炭鉱を舞台に描かれた熱き人間ドラマ。地元の警察官・猿渡鉄男は、「名刑事」だった父の死の謎を追い続けていた。時代は、昭和から平成へ。斜陽化する炭鉱の街、必死に生き抜く人々、時代を反映した数奇な事件。すべてが折り重なって解明された、父親殺しの真相とは?第33回吉川英治文学新人賞受賞作。

    長編だからこそゆっくりと分かってくる主人公の人間性。最後はほんのりと暖かくなる良い話だった。犯人はとても分かりやすくミステリーと言うより人の暖かみが伝わる人間模様の物語であった。

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    2018年02月08日
  • 地の底のヤマ(上)

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    ネタバレ

    評価は5.

    内容(BOOKデーターベース)
    昭和三十八年。福岡県の三池炭鉱で大規模な爆発事故が起きた夜に、一人の警察官が殺された。その息子・猿渡鉄男は、やがて父と同じく地元の警察官となり、事件の行方を追い始める。労働争議や炭塵爆発事故の下、懸命に生きる三池の人々と、「戦後の昭和」ならではの事件を描いた、社会派大河ミステリー。

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    2018年01月31日
  • 残火

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    どこかで著者は高倉健さんの熱狂的なファンだと読んだ記憶があるのですが、任侠映画の中の健さんが、2000年代まで生き残ったらこうなるだろうな、という武骨で切れのある男の物語、カッコいいですね。ある種の古さというか、任侠映画を今、見たときに、昭和だなと思う感じを含めて、そういう著者の愛する世界観がそのまま描きこまれているように思いました。

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    2015年11月01日
  • 地の底のヤマ(下)

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    殆どの人は、心の中に表と裏というものを持っていると思う。表が良くて裏が悪い、ということではない。表とは、他人に見える、或いは見せてもよい自分。そしては裏とは、他人には見えない、或いは見せない、ある意味では本当の自分の心。本書はある警官が多くの人間関係を通して、様々は人々の心の裏に迫っていくという物語だ。人の本当の想いを、かくも意外なものなのか、と思わせる表現力が巧みだと感じた。

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    2015年01月11日
  • 劫火(4) 激突

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    いよいよ一同が集まって、テロリスト達とその黒幕相手に戦いを始めます。
    長いわりにあっさりという気もするし、圧巻だったとも思える。

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    2010年09月22日
  • 笑い犬

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    メガバンクの支店長・芳賀は、ある日突然上層部に裏切られて、刑務所に入れられてしまう。会社をかばって沈黙を守り、精神的に追い詰められた芳賀は、自分も知らないうちに笑っていた。その「笑み」が、卑怯で狡猾な「勝ち組」をおののかせる―刑務所小説と企業人小説と家族小説を、革新的に融合した力作。




    世の中には関わらないほうがいいようなときも多々あるのでしょうね。。。

    そして、意味がないというか必ず何かがあるときにはそこに理由があったりするものです。
    真実やその理由を理解することができればきっと自分にとってプラスに働くことも多いような気がします。。。

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    2010年04月28日
  • 東京路線バス 文豪・もののけ巡り旅(小学館新書)

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    都バスを乗り継いで、各テーマに沿ったセルフスタンプラリーをするような小さな旅。街の見え方が変わる面白さがあった。

    これから大通りを走る際はバス停や行き先が気になってしまうだろう。時には積極的に都バスに飛び乗ってみたい。乗り放題の旅に出てみようかな。さあ、どう乗り継ぐかを考えてみよう。業10系統の路線バスは必須で。

    この本の中で引用されていた荒俣宏先生監修の作品も読んでみようと思う。トリビアの泉に出てた人、帝都物語を書いた人だったと知らなかった。「夏への扉」を並行して読んでいたのだが、予期せぬところでSF被りを果たした。本書の中でも行き当たりばったりの良さが書かれているが、本の外でも良い偶然

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    2025年08月17日
  • 激震

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    地下鉄サリン事件や阪神淡路大震災、八王子スーパーナンペイ事件、米兵による小学生婦女暴行、ウィンドウズ95発売など、歴史の転換期であった1995年。雑誌記者の視点からこの年の出来事を取材するノンフィクション的小説。これらの取材を進める中で、ある事件の真相にも迫るミステリー的要素も。
    オウム真理教と阪神淡路大震災が主として描かれている。ポケットベルやエンコーなど、世相を表すものがちりばめられており、ノスタルジックな気分に浸るとともに、その年の出来事が現代にどうつながっているか、その意味を考える機会となった。

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    2025年08月06日
  • 光陰の刃(下)

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     中盤以降で日召サイドの物語の雰囲気がガラリと変わり、革命家として扇動していく姿には心ならずもカリスマ性が感じられた。決して共感はできないが、革命のために無関係な被害を出してはいけないという信念と冷静な態度が魅力を放っていたのだろう。下巻に関しては
    團パートよりも日召パートの方が興味深かった。この2人に加え、富士隈、山海駒吉の4人の視点が回転していく終盤は、結末は分かっているのに先を追いたくなる緊張感と疾走感があり、作者の技量を感じた。
     驚いたのは、彼らテロリストが皆恩赦で、太平洋戦争後も生き続けたこと。團目線では酷いバッドエンドと言えるかもしれない。

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    2025年04月26日
  • 光陰の刃(上)

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     團琢磨一福岡に生まれ、三池炭坑の工業、ひいては近代日本工業の基礎を築いた三井物産総師。この男を描いた本作を読まなかったこと、炭抗の町で生まれた私としては恥ずべき思いに駆られた。
     物語は幼少期~青年期のアメリカ時代、出立期の三池時代を描き、彼の熱意と何よりも誠実さが周囲を巻き込み成功を遂げていくのが心地良い。
     本作のもう1つの特徴は團を暗殺する井上日召を並行して描いている点。正直こちらの話になると、一気に頁をめくる手が止まる。汚く意地悪な男への嫌悪が拭いきれない。あえて対照的に描くことで團をより魅了的にしているとも言えなくないが。この二項対立がどう終着するかは下巻の注目ポイントである。

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    2025年03月18日
  • 激震

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    西村健『激震』講談社文庫。

    ミステリー色を感じさせながら、阪神淡路大震災、地下鉄サリン事件、新型コロナウイルス感染禍などの大事件に揺れながらも、エンコーやJKビジネスなどモラルの低下に喘ぐ日本社会の現実を描いたような変わった作品であった。

    明確な結末は描かれず、日本の行く末に不安を投げかけるようなエンディングはまさに日本の今を見せられているようにも思う。


    年明け早々に阪神地方を襲った大地震に衝撃を受け、被災地に駆けつけたヴィジュアル月刊誌『Sight』記者の古毛冴樹は、その凄まじい惨状に言葉を失う。神戸でも火災被害の激しかった長田地区で、焼け跡に佇む若い女と遭遇する。夕方の光を背にこち

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    2025年01月06日
  • 目撃

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    え〜、えー、エー!
    しばらくは、背後が気になって仕方がなさそう。
    利用しているつもりが、されていて、幾重にも絡み合う思惑。

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    2023年09月30日
  • 東京路線バス 文豪・もののけ巡り旅(小学館新書)

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    都バス愛に満ち溢れた都内の小さな旅。ICカードでお手軽な一日乗車券を駆使して作家や小説ゆかりの地を巡る。

    ブログからWeb記事そして単行本となったからか、筆者の作品とは異なり肩の力を抜いた記述が冴え渡る。身近な地、身近な交通機関であってもテーマがあるとこんなにも魅力的な旅になることが、実に新鮮。

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    2023年09月06日
  • 地の底のヤマ(下)

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    長いなあ
    しかし読みごたえがあった
    舞台となる大牟田は私もよく知る街
    とにかく引き込まれた

    どちらかというと、苦手とする作家である
    西村健は、綿密な取材に基づく細かいディテールの上に、荒唐無稽な物語を乗せる人という印象である
    その事実と虚像が嚙み合っていないと感じてしまうのが常で、感情移入ができなかったのだ。
    しかし、この作品は別格
    見事に描き切ったといっていいだろう
    ラストは泣けて仕方なかった
    国産エンタメの代表作といってもよいだろう

    佐々木譲さんの傑作と似すぎてるところがあるが、これくらいは勘弁してやろう(笑)

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    2022年02月26日
  • 目撃

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    夫 戸田昭伸と離婚調停中の奈津美は検針員の仕事をしているが、殺人事件のあったお宅も訪れていたことから、何者かに監視されているのを感じていた.警察に相談し穂積亮右からアドバイスを受ける.穂積は"見立て屋"と称され、個人行動を黙認されており、彼なりの捜査を続行する.殺人現場の様子から犯人の冷静さを見立てた穂積は衛生服に注目し、個人での購入者を調べる.雑誌記者の諏訪部武貞の行動も調べ、大きな事件後に空き巣事件が発生していた事例を数件見つけた.諏訪部とボイスチェンジャーを使う男との接触も関知しており、昭伸が会社の古い保養施設の管理を担当していることも突き止めた.幼稚園に通う奈津美の

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    2022年02月12日
  • 目撃

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    西村健『目撃』講談社文庫。

    長編警察ミステリー小説。

    後半の予想外の怒濤の展開は凄いが、前半が間延びし過ぎかな。女性は強し!

    離婚調停中で電力会社の検針員を勤めながら、幼稚園児の娘を育てる戸田奈津実は、彼女が検針を担当する閑静な住宅地でストーカー立て籠り事件と強盗殺人事件が相次いで発生した直後から背後に何者かの視線を感じるようになる。堪りかねた奈津美は警察に赴き、刑事の穂積亮右に相談する。

    『見立て屋』と呼ばれる一匹狼の刑事・穂積は掟破りの手段で捜査を進めるが、辿り着いた事件の真相とは……

    定価1,078円
    ★★★★

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    2021年05月27日
  • ヤマの疾風

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    教訓は立派だが、ある意味根本的に解釈が違っていると感じるところもあった。ただ、その生き様は友ならどんなことがあろうが助けようとする心意気だ。そこを否定することは出来ない。

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    2018年11月13日
  • 地の底のヤマ(下)

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    5月-2。4.0点。
    現代に向かっていく下巻。大牟田の衰退が顕著に。
    本人も、密漁捜査をしながら、父の殺人事件の真相を追う。
    思ってもみなかった父親の別の貌。

    上下巻で1,400頁と、読み応え有り。
    ラストは救いがあって良かった。面白かった。

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    2018年05月08日