西村健のレビュー一覧
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ネタバレこの方は初読。最近ゴールデン街由来の本を読むことが多くて、
たどり着きました。
どうもデビュー作らしいんですが、とんでもない才能ですね。
バーの主人と謎の美女、反社組織との巻き込まれ戦い。
この辺は非常によくある設定だけど、
区長が新宿区の独立国化を目論むとか、
2対30で重火器で殺しまくるとか、結構、とんでもないストーリー。
文体やリズムもこの人独自のものでワクワクする。
「二十年を経た夫婦仲のような」枯れすすきとか、
笑える比喩も続出。ノリツッコミもうまいし。
残念なのは魅力的なサブキャラが、
意外と出番なく終わってしまうこと。
主人公の親父さんとか。530ページもあるのに、
もう少し見たかった。続編とかあるのかしら。
とにかく、後半ほとんどフルスピードで
駆け抜けます。ぶち切ります。
もうひとつの不満は、オダケンと梨花のラブシーンがないこと。
いいところまでいったのに…
講談社文庫 530 ページ -
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西村健『バスを待つ男』実業之日本社文庫。
トラベルミステリーと安楽椅子探偵の融合という珍しい仕掛の連作短編である。主人公は70歳の元刑事とその妻で、最後まで2人の名前は明かされない。様々なミステリーが描かれるが謎解きは明解で、この殺伐とした時代に思わずほっこりする短編ばかりが並び、非常に面白い。是非とも読むべき作品である。
定年を迎え、特に趣味も無く日常を過ごしていた70歳になる元刑事が見付けたのはシルバーパスを利用しての都バスの小さな旅。旅先で出会う様々な日常のミステリー。しかし、謎を解くのは、いつも元刑事の妻というのだから面白い。
『第一章 バスを待つ男』。元刑事が不審に感じたバス停に佇む男性の目的は……
『第二章 母子の狐』。王子の稲荷に佇むお狐様に掛けられた白い前掛けの謎……
『第三章 うそと裏切り』。元刑事が出会った家電量販店を徘徊する中学生が抱える悩みとは……
『第四章 迷宮霊園』。元刑事がバスの中で偶然出会った、かつての同僚。かつての同僚の言葉のままに多摩霊園の目当ての墓を探すが……
『第五章 居残りサベージ』。品川に居残り、ひたすらみたらし団子を食べ歩く、アメリカの大学生クリス・サベージの謎……
『第六章 鬼のいる街』。既に解決した連続殺人鬼事件。犯人は何故、目撃者の女性に手を掛けず、踵を返したのか……
『第七章 花違い』。女子高生の家に毎朝届けられる1輪の花の謎は……
『第八章 長い旅』。元刑事が現役の頃、迷宮入りした三鷹駅近くで起きた殺人事件……
『終章』。最後に泣いた。泣かされた。
本体価格700円
★★★★★ -
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上巻から下巻にかけては團琢磨が成功の上で堂々とした財界人になり次第に雲の上になっていく中で、一方の井上日召は大分迷走気味。跳ねっ返りのやんちゃな子が満州に渡りスパイまがいのことをしている間はなかなか面白い。そんな井上がある和尚に出会ったことで題目を唱えながらの瞑想を始めた頃から何やら怪しくなる。日蓮宗ってのはそういうパワーはあるんだな…本人にとっては世の真理を見つけたということなんだろうが、そこは宗教カルトっぽい思想を元に故郷に戻った後は本当にカルト的存在になってしまう。四郎という名は医師の父によって昭に改名され、奇跡を願ってやってくる病気の人を治したりしているうちに、助言も受けて日召に。井上日召になった彼のもとには次第に困窮者を憂う青年将校を始めとした若者たちが集うようになり、現在の政治家、財界人を一人一殺していかねばならないという過激思想が根付いていく。其の挙句に弟子たちが為したのが、昭和7年のテロ事件の数々。浜口雄幸暗殺未遂(その後死去するが)、蔵相井上準之助暗殺、そして團琢磨の暗殺と。ちなみに515事件での犬養毅の暗殺も日召の弟子の仕業。彼らはマスコミによって血盟団と名付けられて一連のテロは血盟団事件として今に名を継がれている。当然ながら捕まった日召は無期懲役を受けながらも数年で恩赦を受け、なんと後の首相となる近衛文麿に近くなり、戦後も右翼団体を設立、90歳まで生きるという…えぇえという人生を送ることになる。
ここまで書いてもうストーリーはほとんど頭にないな‥。でも日召の思想の変遷プロセスがよく描かれてはいるものの、全く、本当に全く共感できないためになかなか辛い。團琢磨殺すなよ…なんなんだお前らは、と思ってしまう。しかも史実的にも彼らを殺した連中は戦後に日召と合流し、右翼的思想の柱体ともなり、政治家たちの黒幕的存在でもあったという。なんなんだ一体。左翼も共感できないが、右翼団体ってのはこんな腐った連中がもとになっていたんだなと呆れるしか無い。
と、そんな知らない政治史/思想史/経済史を知ることが出来たのは素晴らしかった。 -
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西村健『最期の旅』実業之日本社文庫。
『バスに集う人々』を改題、文庫化。
シリーズ第3弾。毎回スタイルが変わるので、果たしてシリーズと言って良いのか正直言ってよく解らない。
まず最初に疑問なのだが、主人公の奥さんには炭野まふるというフルネームが与えられているにも関わらず、主人公に炭野という苗字しか与えられていないことが不思議だ。
スタイルについてだが、シリーズ第1弾の『バスを待つ男』では主人公には炭野という苗字すら与えられず、元刑事がバス旅という趣味を見付け、様々な事件の謎を家庭に持ち帰ると奥さんがその謎を解き明かすという内容だったのだが、第2弾の『バスに誘う男』では、初めて元刑事に炭野という名前が与えられのは良いのだが、主人公が路線バス旅のコーディネーターに代わり、炭野夫妻は謎解きを行う脇役に回ってしまうのだ。
そして、今回も炭野夫妻が一応の主人公のような扱いではあるのだが、語り手は章ごとに代わり、炭野夫妻は直接的には登場せず、裏方として謎解きする知恵袋のような安楽椅子探偵を演じている。
『第一章 芝浜不動産』。作中にも紹介されているが、落語の芝浜のような人情噺。
再開発が進む大都会。昔の景観は失われていく。自分も過去に出張で田町や品川にはよく行った。品川駅前からバスで大井の倉庫街にもよく足を運んだものだ。その品川の駅前が行く度にどんどん開発が進み、以前は吉野家くらいしか無かったのに何時の間にかお洒落な街に変わっていたことに驚いた。
元不動産屋の吉住が息子の雄也を伴い、路線バスに乗り、田町、品川から芝浜の辺りで何やら不動産物件を確認する。その帰り道、雄也とたまたま入った居酒屋で相席になった男性と楽しく談笑するが、吉住と雄也が眠っているうちにお代を済ませ、雄也の鞄に不動産登記の権利書を入れて、立ち去ったのだ。
困った吉住はバス旅仲間の元刑事の炭野に相談する。立ちどころに謎を解き明かすのは勿論、炭野の奥さんであった。
『第二章 津軽を跳ぶ男』。今や新幹線が北海道までつながり、青森も通過点の1つとなってしまった。自分は北海道に4度行ったが、2度は東北本線で青森に行き、青函連絡船に乗った。後2度は仙台空港から新千歳空港まで飛行機を利用した。つまりはまだ新幹線で北海道まで行ったことが無いのだ。いつか、新幹線で北海道まで行ってみたいところだ。
さて、本作。翔太、行弘、球人の3人が新幹線で青森に旅行に行く、現地では不便なローカル線や路線バスを利用し、観光地を巡るのだが、行く先々にまるで先回りでもしているかのように同じ男が姿を見せる。
同じ電車やバスに乗っていた訳ではないのに、3度も別な場所に現れたことが気に掛かり、炭野夫妻に電話で相談すると驚きの真相が待っていた。
『第三章 回り回って……』。第2弾で主人公を務めた路線バス旅コーディネーターも登場。普通に炭野夫妻を主人公にして謎解きをしてもらった方が面白いと思うのに。何時も人を介して謎解きが始まるのでどうにもまどろっこしい。
路線バス旅コーディネーターの須賀田の紹介で長部さんという女性と知り合った垣園。若くない2人は路線バスに乗ってデートする。そんな時、垣園は長部さんから飼犬が最近、公園に行くとくるくる回るという相談がある。相談は須賀田を介して炭野夫妻へ……
『第四章 聖と俗』。珍しく炭野夫妻が直接的に登場する。最近は様々な詐欺が流行っている。用心に越したことはない。
主人公は元警察官の郡司。やはり路線バスに乗るのを楽しみにし、勿論、炭野は友人で元不動産屋の吉住も知人のようだ。ある日、郡司が後輩の元警察官の枝波士と会い、相談を持ち掛けられる。
『第五章 幻惑の女』。主人公は未亡人の小寺ねね。珍しく炭野夫妻の謎解きは無く、主人公の小寺ねねが謎の真相を探り当てる。
小寺ねねが、炭野、吉住、郡司、須賀田の路線バス好きのメンバーと路線バスに乗り、千住の旧宿場町を巡っていると、夫が死ぬ間際に部下と話していた『みづなマリコ』という女性の名前を思い出す。
『第六章 お化けの正体』。今回も炭野夫妻の出番は無し。このシリーズは巻頭の登場人物リストに名前の無い人物がいきなり語り手となったり、謎解き役が主人公の炭野夫妻でなかったり、語り手が途中まで何者か解らなかったりと全くパターンが読めない。
須賀田により路線バス旅好きになった乙川が友人で暗渠好きの藤倉と路線バスと暗渠巡りを楽しむ。その途中、目にしたお化けジャングルジムと両面が入口の二世代住宅の謎にそれぞれの推理を展開する。
『第七章 追い掛けて、博多』。冒頭に描かれる高級魚のアラは一度だけ鍋で食べたことがある。当時、行き付けの居酒屋で数人の会食をお願いしたら、鍋が出て来た。また、タラ鍋かと皆が敬遠していた時、たまたま自分が食べてみるとタラの柔らかい身とは違い、しっかりした歯応えのある美味い味に驚いた。店主に聞いたら、間違えて仕入れの中にアラが一本混じっていたとの話で、得をした気分になったことがある。
『第二章 津軽を跳ぶ男』と似たよう話である。
元公安の飛崎が東京で須賀田に路線バス旅をコーディネートしてもらったことから、移住先の博多で東京から遊びに来る知人のために博多版の路線バス旅を検討する。妻とバス路線を巡っていると行く先々に同じ男が現れることが気になる。飛崎は元刑事の炭野に相談すると炭野の奥さんのが1つの仮説について話す。
『第八章 最期の旅』。表題作であるが、改めて見ると不穏なタイトルであることに気付く。誰の最期の旅なのか。これまで断片的に描かれていた伏線が全てつながる。
元警察の郡司、その後輩の枝波士、先輩の炭野、元不動産屋の吉住、路線バス旅コーディネーターの須賀田というフルメンバーが炭野の家で奥さんのまふると未亡人の小寺の手料理を堪能する。その中で出て来た話題が思わぬ方向へと向かう。
『終章』。『第八章 最期の旅』の解決編。驚愕の真相と悲しい幕切れ。まさかこういう深刻な結末が用意されていたなど全く知らずに読んでいた。
定価990円
★★★★ -
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都バスを乗り継いで、各テーマに沿ったセルフスタンプラリーをするような小さな旅。街の見え方が変わる面白さがあった。
これから大通りを走る際はバス停や行き先が気になってしまうだろう。時には積極的に都バスに飛び乗ってみたい。乗り放題の旅に出てみようかな。さあ、どう乗り継ぐかを考えてみよう。業10系統の路線バスは必須で。
この本の中で引用されていた荒俣宏先生監修の作品も読んでみようと思う。トリビアの泉に出てた人、帝都物語を書いた人だったと知らなかった。「夏への扉」を並行して読んでいたのだが、予期せぬところでSF被りを果たした。本書の中でも行き当たりばったりの良さが書かれているが、本の外でも良い偶然が起きていた。 -
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中盤以降で日召サイドの物語の雰囲気がガラリと変わり、革命家として扇動していく姿には心ならずもカリスマ性が感じられた。決して共感はできないが、革命のために無関係な被害を出してはいけないという信念と冷静な態度が魅力を放っていたのだろう。下巻に関しては
團パートよりも日召パートの方が興味深かった。この2人に加え、富士隈、山海駒吉の4人の視点が回転していく終盤は、結末は分かっているのに先を追いたくなる緊張感と疾走感があり、作者の技量を感じた。
驚いたのは、彼らテロリストが皆恩赦で、太平洋戦争後も生き続けたこと。團目線では酷いバッドエンドと言えるかもしれない。 -
Posted by ブクログ
團琢磨一福岡に生まれ、三池炭坑の工業、ひいては近代日本工業の基礎を築いた三井物産総師。この男を描いた本作を読まなかったこと、炭抗の町で生まれた私としては恥ずべき思いに駆られた。
物語は幼少期~青年期のアメリカ時代、出立期の三池時代を描き、彼の熱意と何よりも誠実さが周囲を巻き込み成功を遂げていくのが心地良い。
本作のもう1つの特徴は團を暗殺する井上日召を並行して描いている点。正直こちらの話になると、一気に頁をめくる手が止まる。汚く意地悪な男への嫌悪が拭いきれない。あえて対照的に描くことで團をより魅了的にしているとも言えなくないが。この二項対立がどう終着するかは下巻の注目ポイントである。 -
Posted by ブクログ
西村健『激震』講談社文庫。
ミステリー色を感じさせながら、阪神淡路大震災、地下鉄サリン事件、新型コロナウイルス感染禍などの大事件に揺れながらも、エンコーやJKビジネスなどモラルの低下に喘ぐ日本社会の現実を描いたような変わった作品であった。
明確な結末は描かれず、日本の行く末に不安を投げかけるようなエンディングはまさに日本の今を見せられているようにも思う。
年明け早々に阪神地方を襲った大地震に衝撃を受け、被災地に駆けつけたヴィジュアル月刊誌『Sight』記者の古毛冴樹は、その凄まじい惨状に言葉を失う。神戸でも火災被害の激しかった長田地区で、焼け跡に佇む若い女と遭遇する。夕方の光を背にこちらを振り向いたときの眼はかつてアフガニスタンの戦場で出会った少年兵とそっくりだった。そして、彼女が立ち去った後で見付かった男性の変死体。
本体価格1,000円
★★★★ -
Posted by ブクログ
夫 戸田昭伸と離婚調停中の奈津美は検針員の仕事をしているが、殺人事件のあったお宅も訪れていたことから、何者かに監視されているのを感じていた.警察に相談し穂積亮右からアドバイスを受ける.穂積は"見立て屋"と称され、個人行動を黙認されており、彼なりの捜査を続行する.殺人現場の様子から犯人の冷静さを見立てた穂積は衛生服に注目し、個人での購入者を調べる.雑誌記者の諏訪部武貞の行動も調べ、大きな事件後に空き巣事件が発生していた事例を数件見つけた.諏訪部とボイスチェンジャーを使う男との接触も関知しており、昭伸が会社の古い保養施設の管理を担当していることも突き止めた.幼稚園に通う奈津美の娘 満里奈が昭伸に連れ去られたことでストーリーが急展開する.意外な人物が中心になっていることが最後の最後で判明するが、全体が411ページでからくりが判明するのが404ページからだ.楽しめる構成だと感じた.