あらすじ
福岡藩士の子として生まれた團(だん)琢磨(たくま)は、明治初期の米国MIT留学で鉱山学を修め、苦難の末に三井三池炭鉱の基礎を築く。群馬の山村に生まれ、悩み深き青春時代を過ごした井上四郎(日召(にっしょう))は、新天地を求めて満州に渡る。まるで光と影のような二つの熱い魂が、「近代日本の悲劇」を引き起こすまで──。
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Posted by ブクログ
團琢磨一福岡に生まれ、三池炭坑の工業、ひいては近代日本工業の基礎を築いた三井物産総師。この男を描いた本作を読まなかったこと、炭抗の町で生まれた私としては恥ずべき思いに駆られた。
物語は幼少期~青年期のアメリカ時代、出立期の三池時代を描き、彼の熱意と何よりも誠実さが周囲を巻き込み成功を遂げていくのが心地良い。
本作のもう1つの特徴は團を暗殺する井上日召を並行して描いている点。正直こちらの話になると、一気に頁をめくる手が止まる。汚く意地悪な男への嫌悪が拭いきれない。あえて対照的に描くことで團をより魅了的にしているとも言えなくないが。この二項対立がどう終着するかは下巻の注目ポイントである。