【感想・ネタバレ】最期の旅のレビュー

あらすじ

消えたフィッシング詐欺常習犯、
都会の片隅で死んだ身許不明の男、
未解決事件を元刑事が追う……
人間(ヒューマン)ミステリーの傑作!

都会の片隅で死んだ男の
知られざる過去……

新宿区四谷周辺に、かつて鮫河橋と呼ばれた場所がある。
この近くの公園で事件が。
死体は丸焦げで、身許不明。
焼死ではなく、別の原因で死んだ後、火をつけられたらしい。
捜査は難航、未解決事件のまま今に至る。
警視庁生活安全部サイバー犯罪対策課に
所属していた元刑事が、事件について語りだすと……。
ヒューマンミステリーの極北。
圧巻のラスト!
(『バスに集う人々』改題)
解説/村上貴史

【目次】
第一章 芝浜不動産
第二章 津軽を翔ぶ男
第三章 回り回って……
第四章 聖と俗
第五章 幻惑の女
第六章 お化けの正体
第七章 追い掛けて、博多
第八章 最期の旅
終章
解説─旅はいよいよ終点へ 村上貴史

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Posted by ブクログ

西村健『最期の旅』実業之日本社文庫。

『バスに集う人々』を改題、文庫化。

シリーズ第3弾。毎回スタイルが変わるので、果たしてシリーズと言って良いのか正直言ってよく解らない。

まず最初に疑問なのだが、主人公の奥さんには炭野まふるというフルネームが与えられているにも関わらず、主人公に炭野という苗字しか与えられていないことが不思議だ。

スタイルについてだが、シリーズ第1弾の『バスを待つ男』では主人公には炭野という苗字すら与えられず、元刑事がバス旅という趣味を見付け、様々な事件の謎を家庭に持ち帰ると奥さんがその謎を解き明かすという内容だったのだが、第2弾の『バスに誘う男』では、初めて元刑事に炭野という名前が与えられのは良いのだが、主人公が路線バス旅のコーディネーターに代わり、炭野夫妻は謎解きを行う脇役に回ってしまうのだ。

そして、今回も炭野夫妻が一応の主人公のような扱いではあるのだが、語り手は章ごとに代わり、炭野夫妻は直接的には登場せず、裏方として謎解きする知恵袋のような安楽椅子探偵を演じている。


『第一章 芝浜不動産』。作中にも紹介されているが、落語の芝浜のような人情噺。

再開発が進む大都会。昔の景観は失われていく。自分も過去に出張で田町や品川にはよく行った。品川駅前からバスで大井の倉庫街にもよく足を運んだものだ。その品川の駅前が行く度にどんどん開発が進み、以前は吉野家くらいしか無かったのに何時の間にかお洒落な街に変わっていたことに驚いた。

元不動産屋の吉住が息子の雄也を伴い、路線バスに乗り、田町、品川から芝浜の辺りで何やら不動産物件を確認する。その帰り道、雄也とたまたま入った居酒屋で相席になった男性と楽しく談笑するが、吉住と雄也が眠っているうちにお代を済ませ、雄也の鞄に不動産登記の権利書を入れて、立ち去ったのだ。

困った吉住はバス旅仲間の元刑事の炭野に相談する。立ちどころに謎を解き明かすのは勿論、炭野の奥さんであった。

『第二章 津軽を跳ぶ男』。今や新幹線が北海道までつながり、青森も通過点の1つとなってしまった。自分は北海道に4度行ったが、2度は東北本線で青森に行き、青函連絡船に乗った。後2度は仙台空港から新千歳空港まで飛行機を利用した。つまりはまだ新幹線で北海道まで行ったことが無いのだ。いつか、新幹線で北海道まで行ってみたいところだ。

さて、本作。翔太、行弘、球人の3人が新幹線で青森に旅行に行く、現地では不便なローカル線や路線バスを利用し、観光地を巡るのだが、行く先々にまるで先回りでもしているかのように同じ男が姿を見せる。

同じ電車やバスに乗っていた訳ではないのに、3度も別な場所に現れたことが気に掛かり、炭野夫妻に電話で相談すると驚きの真相が待っていた。

『第三章 回り回って……』。第2弾で主人公を務めた路線バス旅コーディネーターも登場。普通に炭野夫妻を主人公にして謎解きをしてもらった方が面白いと思うのに。何時も人を介して謎解きが始まるのでどうにもまどろっこしい。

路線バス旅コーディネーターの須賀田の紹介で長部さんという女性と知り合った垣園。若くない2人は路線バスに乗ってデートする。そんな時、垣園は長部さんから飼犬が最近、公園に行くとくるくる回るという相談がある。相談は須賀田を介して炭野夫妻へ……

『第四章 聖と俗』。珍しく炭野夫妻が直接的に登場する。最近は様々な詐欺が流行っている。用心に越したことはない。

主人公は元警察官の郡司。やはり路線バスに乗るのを楽しみにし、勿論、炭野は友人で元不動産屋の吉住も知人のようだ。ある日、郡司が後輩の元警察官の枝波士と会い、相談を持ち掛けられる。

『第五章 幻惑の女』。主人公は未亡人の小寺ねね。珍しく炭野夫妻の謎解きは無く、主人公の小寺ねねが謎の真相を探り当てる。

小寺ねねが、炭野、吉住、郡司、須賀田の路線バス好きのメンバーと路線バスに乗り、千住の旧宿場町を巡っていると、夫が死ぬ間際に部下と話していた『みづなマリコ』という女性の名前を思い出す。

『第六章 お化けの正体』。今回も炭野夫妻の出番は無し。このシリーズは巻頭の登場人物リストに名前の無い人物がいきなり語り手となったり、謎解き役が主人公の炭野夫妻でなかったり、語り手が途中まで何者か解らなかったりと全くパターンが読めない。

須賀田により路線バス旅好きになった乙川が友人で暗渠好きの藤倉と路線バスと暗渠巡りを楽しむ。その途中、目にしたお化けジャングルジムと両面が入口の二世代住宅の謎にそれぞれの推理を展開する。

『第七章 追い掛けて、博多』。冒頭に描かれる高級魚のアラは一度だけ鍋で食べたことがある。当時、行き付けの居酒屋で数人の会食をお願いしたら、鍋が出て来た。また、タラ鍋かと皆が敬遠していた時、たまたま自分が食べてみるとタラの柔らかい身とは違い、しっかりした歯応えのある美味い味に驚いた。店主に聞いたら、間違えて仕入れの中にアラが一本混じっていたとの話で、得をした気分になったことがある。

『第二章 津軽を跳ぶ男』と似たよう話である。

元公安の飛崎が東京で須賀田に路線バス旅をコーディネートしてもらったことから、移住先の博多で東京から遊びに来る知人のために博多版の路線バス旅を検討する。妻とバス路線を巡っていると行く先々に同じ男が現れることが気になる。飛崎は元刑事の炭野に相談すると炭野の奥さんのが1つの仮説について話す。

『第八章 最期の旅』。表題作であるが、改めて見ると不穏なタイトルであることに気付く。誰の最期の旅なのか。これまで断片的に描かれていた伏線が全てつながる。

元警察の郡司、その後輩の枝波士、先輩の炭野、元不動産屋の吉住、路線バス旅コーディネーターの須賀田というフルメンバーが炭野の家で奥さんのまふると未亡人の小寺の手料理を堪能する。その中で出て来た話題が思わぬ方向へと向かう。

『終章』。『第八章 最期の旅』の解決編。驚愕の真相と悲しい幕切れ。まさかこういう深刻な結末が用意されていたなど全く知らずに読んでいた。

定価990円
★★★★

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2026年02月13日

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