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サンデー毎日に連載された「夜の歌」の単行本化。まとめるにあたり大幅な加筆修正を行う。
本作品は、著者の咽頭がんが再発し、がんの穿孔による大量出血の危機が迫るなかで書き始められ、自らの人生と表現を集大成する「白鳥の歌」の重みを持つとなっている。
3つの時制からなる。病の進行におびえる現在と、著者が歌謡曲の作詩家として栄華を誇った70年代の芸能界と、著者の原体験とも言える満州での戦争と引き揚げの体験と。著者は『赤い月』などでは触れなかった、満州での人倫に背く自らの体験――自分が生き抜くために、他の日本人を犠牲にしたことなど――をも徹底して暴きながら、愛と官能に溢れた歌謡曲の名曲たちが、悪夢のような満州体験から生まれたものであることを初めて明らかにしていく。
70年代の芸能界における著者と安井かずみとの秘められた恋愛もこれまで語られたことがなく、本書のわかりやすい話題性になるだろう。
物語は、著者がレコード大賞二冠受賞の快挙をなしとげたまさにその時に、戦争の落とし子とでも言うべき極端な逸脱者である兄が、莫大な借金を著者に負わせるところで終幕を迎える。著者の戦後の華麗な日々にも、満州の不気味な闇が延々と続いていたのである。
Posted by ブクログ 2023年08月22日
なかにし礼の遺作。ガンの闘病中に死を予感する中、なかにし本人が謎の美女「ゴースト」と、創作の源を探るべく自分の半生を再体験する。若干ややこしいが、ご本人の歌詞と同じく「死」と「性(と言うかエロ)」の匂いに溢れていて引き込まれた。あと、「反応体」とは流石の言い回しだと思った。因みに私はなかにし礼自身の...続きを読む
Posted by ブクログ 2017年06月28日
筆者が忘れようと思っていた戦争を思い出すことで作詞家として成功し、兄に翻弄されつつも戦争を克服し、平成へと時代が変わって作家として成功した話。
ソ連侵攻後日本へ帰国する人たちへ笑顔で食べ物を10倍の値段で売る中国人。子どもを売ってくれという中国人。
人生を真剣に生きようとするものは過去をなんども反芻...続きを読む
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