平川祐弘の一覧
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ユーザーレビュー
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ルネサンス初期に掲げられた、ヨーロッパにおける物語文学の最高傑作の一つ。下巻は8日目~10日目の30話。
第八日以降は話の様相がガラリと変わり、西洋文学史上の重要な位置を占める『デカメロン』が、単なる艶笑談の寄せ集めではないということを実感した。
第八日はイタズラや悪だくみがテーマとなり、笑えな
...続きを読むい悲惨な話や壮絶な復讐譚などが続く。ここで数話に渡って同じ三人組が登場するが、どれも気持ちのよくない話で読んでいる方も凹む。しかしその分、学びのある話ではある。第四話や第十話のように痛快な話もある。
第九日はテーマなしとなり、教訓のある話や笑い話などで十人の若者たちの空気は少しなごむ。そこで第十日は愛や善行についての、ハートフルな感動話に移っていく。この第八日でいったん落としてから盛り上げていく構成が、単なる短篇集とは異なる枠物語の面白さだと思った。特に第十日の第三話、第四話、第五話と次々に前話の感動を上回っていく話の流れは圧巻だった。本書の多くの部分であれほど情欲に溺れる人間の弱さを描いておきながら、今度はそれらを克服する人間の高潔さを示して感動を誘うのは極端にも思えるが。第十日第九話は最高に美しい話で、ここでキレイに終わればよかったのだが、次の最終話で物議を醸すような物語を例のディオーネが語り、本作がただならぬ深みを持つ作品であることを痛感させられた。
平川祐弘先生は過去の翻訳も参考にされており、ダンテとの関連、当時のイタリア周辺の政治的・文化的背景など、注釈が非常に詳しい。解説もこれだけで一冊の本にできるほど詳細だ。ゆえに今からデカメロンを読むなら本訳は外せないと思う。物語の内容だけ楽しむのみならず、ここからあらゆる方面へ知識と関心を広げていけることだろう。
Posted by ブクログ
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パンデミック下の14世紀イタリア。貴族の若者たちによる面白おかしい百物語。中巻は4日目~7日目の40話。
第四日はバッドエンドの昼ドラ、第五日はハッピーエンドの昼ドラ、第七日はドロドロな昼ドラ、といった感じで、恋愛のもつれやエロ話が出てくるわ出てくるわ。といっても下世話なだけではなく、切なさや勇敢
...続きを読むさ、機知に富んだ展開などもあり、そこに見られる男女の感情は700年も前に書かれた本とは思えないほどリアリティにあふれている。
この中にあって一息つかせるためなのか、第六日だけは雰囲気が異なる。「冷やかされても言い返し、すばやい返事や判断で、危険や身の破滅や世間の嘲笑をかわしおおせた人々について」というテーマが提示され、トンチの効いた切れ味の鮮やかな短い話が続き、本巻では非常に面白い部分だった。
ここまでで個人的には、本作で最も長いという第二日と、最も短いという第六日が好みだ。とはいえ、どの話も本当に面白い。ゴシップって、いつの時代も人を引きつけるのだなぁ。
Posted by ブクログ
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ペストが流行する14世紀のフィレンツェで、10人の紳士淑女が語る、18禁多めな百物語。上巻は30話まで。
1人1話ずつで1日に10話、10日で100話となる計算。
1日目は機知に富む話が多く、何となく日本昔ばなしを連想した。2日目以降はその日ごとにテーマが設けられ、お題に沿った話が語られるが、次第
...続きを読むに猥談味が濃くなっていく。3日目になるとほとんどの話にエロティックな要素がある。冒険譚や貴種流離譚などの内容も豊富で、どの話も面白い。海賊に捕まってどうこうというものも多く、アラビアンナイトなども連想されるが、ファンタジーな要素はない。
個人的なお気に入りは、運命の不思議を感じる第二日第六話、第七話、第八話、第九話。恋愛ミステリーな第三日第七話。とにかく本書を読んで強く感じたことは、淫靡なエロ話は度が過ぎると笑い話になり、さらに突き詰めると人生訓になるのだな、と。
ボッカッチョはダンテを敬ったことで有名で、本作にも影響が強く出ている。「神曲」の訳者である平川祐弘によって21世紀に入ってから翻訳された本書にはそのあたりの注釈が詳しく、他訳に対するアドバンテージがあるのでは(他訳は読んでないけど)。
Posted by ブクログ
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煉獄とはなんぞや?地獄行きを免れた死者が天国を目指し七つの大罪を浄める贖罪の山である。鬼滅の刃は知らん。
地獄篇のビジュアルが印象強い「神曲」だが、煉獄篇も非常に映像的。地下に降りていった前篇から、今度は山を登っていくという流れになり、雄大かつ峻烈な風景が描かれる。おどろおどろしさは薄れるものの、
...続きを読む罪を償うべく過酷な労働を強いられる著名人が続々登場し感情移入を誘う。ダンテの額に肉、ではなくて七つのP(罪)の文字が刻まれ、七つの大罪に対応した環道を通過するごとに一つひとつ消えていく、というのもマンガ的で面白い。
先生との別れの情緒と、ようやく出会えた夫人から受ける叱責の強烈さが見事なコントラストをなしていて、ここが煉獄篇最大の見どころなのかも。というかSMすぎてワロタ。ダンテくんがM男というよりSすぎるんですよあの方……。
終盤の、美女がたくさん登場し癒やされる光景は文字通り地上の楽園という感じで、ダンテと共に旅をしてきた読者をなごませる。このあたりは天使やら幻獣やらが登場し、どファンタジーな映像を堪能できるので読んできたかいがあるというもの。続く天国篇はいかなる世界か楽しみだ。
Posted by ブクログ
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ペストが蔓延する14世紀フィレンツェを舞台に
10人の若い男女が100話を物語るというお話です。
私が読んだ河出文庫は上・中・下の3冊構成で
大変ボリュームがありますが、100話の短編集なので
飽きずに読み続けることができます。
そして
話題がとても面白い。
若い男女が集まって話すことですから
巧み
...続きを読むに比喩を用いた男女の交わりの話や
優れたリーダー、お金、騙し騙され・・・・・
読み進めていくと
14世紀のイタリアで書かれた話とはいえ
現代の話しとして通用する話もちらほらあります。
時代が変わっても、同じ人間のすること
基本的には変わらないのだな、と感じます。
著者のボッカッチョは、ほぼ同時代に書かれた
ダンテ「神曲」を愛読していたとのこと。
本編の中にも影響を受けたとみられる箇所が
いくつもあるようです。
折角なので今度読んでみたいと思います。
ペスト禍、災難の中でも快活に生きようとする
イタリアの人々の風のようなものを
この「デカメロン」で感じることができました。
Posted by ブクログ
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