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1990年、トルコ。イスタンブルの路地裏にあるごみ箱の中で、娼婦が息絶えようとしていた。死後も続く10分38秒間の意識の中で、彼女は、5人の友人とひとりの最愛の人と過ごした日々を思い出す。居場所のない街の片隅でみつけた、汚れなき瞬間を映し出した物語
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Posted by ブクログ
死ぬ時ってこうなのかな、とまだ見ぬ死に思いを馳せた。ファンタジーだけど、こうなるといいな、私はレイラみたいに寛容に生きてるかな、って反省した 90
10分38秒のあいだ— 心臓の動きが止まった後も意識は続くのだそう! そのわずかな時間に人は何を思うのだろう? 魅惑的な街イスタンブルの裏側で生きた一人の娼婦レイラの物語。5人の友達の物語でもある。1947〜1990 心を鷲づかみにされた 大人に服従するしかなかった少女時代 そして 喧騒にま...続きを読むみれた街の片隅で友情を育み 尊厳を保ちながら暮らすレイラの姿に 自分自身を知り、わが人生の主人になってみよう 心が軽くなっていく 青い尾ひれをゆらしながら泳ぐ闘魚(ベタ)に導かれ やっと自由を手にしたレイラの姿に テキーラ・レイラが息絶える最後の10分38秒を、一分ごとに記憶の糸を手繰り寄せる語り手法が見事。 1分、2分、3分 〜 10分. 10分20秒、10分30秒、残り8秒 あれ?10分10秒がない! もう一度読む やはりない 人を愛し、レイラが人生で一番幸せだった時・・ だから トルコの古都イスタンブル、歴史的背景、異文化の融合する街、光と影のある場所で暮らす人、人、人 長い映画を観た後のような放心状態が 今も続いている。
1度途中まで読んで、主人公の人生の悲惨さに耐えられず読むのを断念した本。再度チャレンジして読み終わると、読んで良かったと心から思えた。
友人たちとの熱い友情に強く胸を打たれました。 今まで読んできた本の中で断トツのNo.1作品。死ぬまで読書趣味でいる予定ですがこの本を超える作品に出会うことはないだろうと思っています。100点満点です。
1990年、トルコ。イスタンブルの路地裏にあるごみ箱の中で、殺害された1人の娼婦が息絶えようとしていた。 彼女の名前はレイラ。死後も続く10分38秒の意識の中で、彼女は、5人の友人と1人の最愛の人と過ごした日々を思い出す。 この小説の前提に、ひとつの事実がある。 2017年にカナダの集中治療室勤務...続きを読むの医師たちにより発表された「臨床死に至ったある患者が、生命維持装置を切ったその後も、10分38秒間、生者の熟睡中に得られるものと同種の脳波を発し続けた」という論文だ。作者はこの記事を読んで興味を持ち、この小説を書くに至ったという。 主人公のレイラはトルコの田舎町で生まれた。 厳格で理解のない父と、とある理由からぎくしゃくとした家庭で育てられ、レイラは高校生の時に家を出てイスタンブルへ向かう。そこで騙されて、娼婦としての人生が始まってしまう。 レイラをはじめ、5人の友人たちはみな「思い通りにならない人生」を必死で生きている。親や金銭に恵まれず、暴力をふるう配偶者から逃げてきた者や、性別を変えてトランスジェンダーとして生きる者や、小人症という生まれながらの病気を抱えた者などがいる。 レイラは愛する人と出逢い一度は娼館を出るものの、その後も辛い運命に巻き込まれてやはり「思い通りにならない人生」を生き続けることになる。 第1章の「心」はレイラが殺害されごみ箱に捨てられた場面から始まる。そして身体は死んでも脳と心が生き続けた10分38秒の間、レイラはこれまでの人生のあらゆることを回想する。 辛いことが多い中、5人の友人を回想する部分はとても温かい。家族に恵まれなかったレイラの人生で、友人に恵まれたことはとても誇りであったことが伺える。 そして第2章の「心」と「魂」はその友人5人が主役となり、レイラを深く思うからこその無謀な計画を立て、それを実行する。 思い通りの人生を生きられる人はおそらく多くはない。レイラたちはその極みにあって、死を選んでもおかしくないほどの苛酷な運命の中にあっても、とても力強く生きている。それだけに、どうしてこんな人生の閉じ方をしなければいけないのかと、物語なのに強い憤りを感じてしまう。 トルコでは物語同様、娼婦が狙われた連続殺人事件が起きた歴史があり、しかも被害者が娼婦だという理由で罪が軽く済んだという出来事が実際にあった(その後法改正された) 人は人を立場によって心の中で裁いたり、貴賤があると密かに思ったりしている。だけどどんな人にも様々な事情や背景があり、力強くまっすぐに生きている人がいることを忘れてはいけない。 それでもレイラの人生は悪いものではなかった、と思う。友人に恵まれ、一時ではあるけれど愛する人とともに過ごし、自分の人生をまっすぐに生き切った。苛酷な運命であっても、とても輝いて見える。 「生き方など選べなかった。それでも自由を探した」という帯にある言葉にすべてが詰まっている。 当時のトルコの時代背景も知ることが出来る、とても良質な小説だった。
2017年3月、医療系情報サイトにある驚くべき記事が掲載される。カナダの集中治療室勤務の医師らの報告だ。「臨床死に至ったある患者が生命維持装置を切ったその後も10分38秒間、生者の熟睡中に得られるものと同種の脳波を発し続けた」というものだ。医師らはこれが機器の誤作動ではないことを確認し医学誌に論文と...続きを読むして掲載した。この記事に興味を抱いて執筆されたのが、本書だそうだ。「人はわずかなその時間に何を思うのだろう?もし、人生を振り返るならどんなふうに?」 物語は1990年トルコのイスタンブルで暮らす娼婦レイラが、殺人事件の被害者となり、心停止となり呼吸もとまり、まさに死に瀕した状態であるにもかかわらず、意識があり、分きざみで自身の人生を回想するシーンから始まる。生い立ちからはじまり、出会った様々な人間との交わりの中で織り成されてゆく怒り、悲しみ、苦痛、後悔、恨み、嫉妬、、そしてかけがえのない友情。。10分38秒が終わるとき、第一章「心」が終わる。そして二章はレイラの友人たちによる物語「体」 だ。レイラの埋葬を巡り、友人五人の奮闘が時に胸にせまる切なさと、時にコミカルに友情を軸にして語られる。一章とは全く異なる色合いだ。そして締めくくりとなる第三章「魂」。レイラは海を漂いながらすべての負の感情を捨ててゆく。前述の怒りや悲しみ、苦痛、後悔、、、、。そして叫ぶ、魂。「free at last」ついに自由になった。 レイラ、貴方は過酷な人生を生きながら決して手放さなかった。他者への優しさ、寛容さ、忍耐、公平さ、高潔さ。その美徳が愛を手に入れ結婚に結び付き、死してなお貴方を敬い愛する友人たちを支え導いている。筆者は貴方を「青い闘魚」 と称する。美しく気高く自由な魂をもった闘う女性の象徴として。。帯には「生き方などえらべなかった」とあるが、個人的には選べなかったのは生まれ落ちた境遇であり、そこに派生する人生であって、生き方ではないと思う。生き方とは、職業や環境や性別には関係なく、人としての在り方を拠り所としてはたらく意識であり、それにもとづいて自己以外の世界とどう関わるかという行動全般をさすものだとおもうからだ。少なくともレイラとその夫、そして五人の友人に私は共通する「生き方」を感じたし、そこに輝きをみた。死とは?その根元的な問いと、それにまつわる怖れやイメージを傍らにいつも意識させながら、しかし、物語の核には力強い愛が貫かれている詩的で、彩りの豊かな、まさに文化色多彩なイスタンブルにふさわしい、そんな物語だと思った。 個人的な喪失の痛手を癒したくて、様々な物語を手にしてきた。がしかし、小説では癒せないと思い始めていた時に出会ったこの本は、私に慰めときっかけを与えてくれたと思う。もしも、同じようにうちひしがれている方がいるなら、ぜひ。 最後に本書からの三文を記そうと思う。一文はかの有名な科学者が親友の死に際してのべた言葉から。そして、もう二文は本書より。 「こうしてまた彼は少しばかりわたしに先んじて、この奇妙な世界に別れを告げました。ですが、嘆く必要はありません。われわれのような物理学に信を置く者にとって、過去、現在、未来における別離とは、固定観念による錯覚にほかならないのです。」 アルベルト アインシュタイン。 「悲しみはツバメと同じです。ある日目が覚めて、いなくなったと思っても、実は他の場所に渡って翼を温めているだけなんだ。遅かれ早かれ、また戻ってきて心のなかに止まるんです。」 「人ひとりが持てる友人の数は五人までだ。ひとりでもいれば、運がいい恵まれていれば、ふたりか三人、もし輝く星でいっぱいの空の下にうまれついたなら、五人、、、生涯でそれだけいれば、じゅうぶんすぎるほどだ。」 別れの悲しみと痛みを癒し、大切な人のいない現実を受け入れながら生きるのにこの3つが、道しるべとなった。 悲しみは癒えないけれど、それと共に生きてゆくしかないのだ。そう、レイラとその仲間達のように、寛容に、気高く、忍耐強く。死がいつどんな形でおとづれるかも、その時がどんなものかもわからないけれど、最後に残された意識の中で愛を回想し、そして、すべての負の感情を浄化して、free at lastと叫べる魂の存在を信じて、私は在りたいと思う。
イスタンブルで、殺されてゴミのように捨てられた娼婦のレイラが、かろうじて残る意識の中で自分の過去を回想する物語。古い因習に囚われた父、産みの母と育ての母の確執、そして性被害。家を飛び出し娼婦になってからのこと、それぞれが苦しみを抱えている大切な友人、そして巻き込まれた事件。後半はバディものになってい...続きを読むく!哀しさと可笑しさもある不思議な小説。筆者は人権活動家のトルコ人の女性作家であり、トルコでの女性のいきづらさを描いている、ようで、意外にイスタンブルという都市を、西洋の都市にならない、死の匂いが漂い、何事も諸行無常、留まらず流動し続ける街と描き、筆者の街への愛情を感じたのでした。ちょっと不思議な読書体験。こういうところ、外国文学はいいな。
面白かった。殺された娼婦レイラ。肉体は滅びたが、まだ意識がある。10分38秒、レイラの脳裏に走馬灯のようによぎる人生。レイラの回想に出てくる友人たちが、後半のメイン。
境遇だけ見ていたら、レイラはとても気の毒とかかわいそうとかそういう部類になっちゃうんだろうけれど、それでも彼女にはそういう同情や憐れみを寄せ付けない強さがある感じ。そして水族。血族に恵まれなくても素敵な水族を自分の手で作ることができる。いいな。
2017年、カナダの医師らは、臨床死に至った1人の患者が、10分38秒間、生きている人と同様の脳波を発し続けていたことを発見した。 少々奇妙な本書のタイトルは、このニュースに由来する。 心臓が止まった後、10分余り、人に意識があるのならば、その人は何を思い、何を考えるのだろうか。 主人公はレイラ。...続きを読むトルコ・イスタンブルに住む40歳代の娼婦である。 物語冒頭、彼女はすでに虫の息である。襲われ、サッカー場近くの大型ゴミ箱に捨てられた。心臓が止まる。カウントダウンが始まる。 1分。2分。3分。 薄れゆく意識の中で、彼女は自分の人生を振り返る。 生まれた日のこと。1人の父と2人の母がいる複雑な家庭であったこと。望まれていたのは男の子だったのに、女の子として生まれたこと。 4分。5分。6分。 人生の時々には、思い出深い匂いがあった。 時にはスイカの匂い。時にはヤギのシチューの匂い。時には薪ストーブの匂い。 寄る辺ない娼婦となるには理由があった。抑圧された少女時代。近親者による性暴力の被害者であったのに、彼女は声を上げることを許されなかった。丸め込まれることを是とせず、彼女は家を出た。単身、都会に出た彼女にはしかし、職業の選択肢は多くはなかった。 7分。8分。9分。10分。 楽な暮らしではなかったが、しかし、彼女にはかけがえのない友人がいた。 気の弱い幼馴染の男の子。性転換手術を受けたトランスジェンダー。イスラム教徒とキリスト教徒の間に生まれたソマリア人。122cmという低身長だが楽天家の占い師。メソポタミアのバラッドを歌う歌手。 生まれも育ちもばらばらで、どこか世の中からはみ出した彼らは、レイラと深い友情を結んだ。悲しい女を見たら、すぐそれと気づく、そんな美点が彼らにはあった。 10分10秒。20秒。30秒。残り8秒。 レイラにも美しい過去があった。 相思相愛の優しい恋人がいて、彼と、娼婦だった彼女は結婚する。 だが幸せな時は長くは続かなかった。 反体制派だった夫に連れられ、レイラはデモに出かける。そこで悲劇が起こる。 余命のカウントダウンとともに、描き出される彼女の、そして友人たちの人生の苛酷さに胸が痛む。だが、レイラは人生を闘い続ける。たとえ、勝てないことがわかっていても、闘うことを諦めてはいない。そのことを友人たちは知っている。 レイラの物語は、残念ながら終わりを告げる。彼女に奇跡は起こらない。 だが、悲しく葬られた彼女を、友人たちは放っておきはしない。 10分38秒の後、友人たちが物語を引き継ぐ。 終盤近くのボスポラス大橋から見る景色の美しさに息を呑む。 物語には、イスタンブルというもう1人の登場人物がずっと寄り添っていたのだ。猥雑で汚れていて複雑で、けれど紛れもない輝きを持つ大都会が。 表紙の絵の意味、そして章の間に挟まれた小さなマークの意味が、最後にわかる。 しなやかに人生を泳ぎ切った、レイラの魂に安らぎが訪れることを願う。 著者はトルコ人の両親を持つ。フランス生まれ、イギリス在住。母の仕事の関係で各国を転々とした経験がある。英語とトルコ語で執筆活動を行い、LGBTQの人権擁護者でもある。 さながら、多様性の旗手といったところか。 物語の大筋は悲惨だが、読後感は悪くない。著者のまなざしの温かさのゆえだろう。
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