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Posted by ブクログ
ストラウトの作品の中で最も好きな小説となった。
今まで読んだ本のベスト10にも入りそう。
なんて作家なんだろう!エリザベス・ストラウト。
ストラウトを好きな全ての人と語りたい気分になるほど。
まず、「標識」がいい。
いきなり持って行かれた。
それから、「妹」。
これは、また。
口紅をしたヴィッキー…。
ルーシー・バートンとその兄姉は、いわゆる「虐待」を受けていた兄妹なのだった。(3冊のルーシー本の中で、これを最後に読んだのだけれど)その影はずっとルーシーを語る上で欠かせないものではあった。でもそれをルーシーはとうに乗り越えて今の自分がいるわけで、具体的にどんなことが過去にあったのか、この本でようやく明らかになるのだ。
「虐待」と言っても、本人たちにはその自覚があるわけではなく、もちろん両親にもそんな自覚は無かっただろう。ただ、みんなが毎日を必死に生きてきただけだ。
いい思い出ももちろんあるし、親に愛情がないわけでもない。愛し方がわからないだけ、とも言えるだろう。
ただ、貧困と過剰な躾とネグレクトのようなものがあったということだ。今の言葉で、それは「虐待」と名付けられるものが。
それを自分の中に含み込んで三人はそれぞれの人生を生きてきた。
そうなのだ。三人はそれぞれ、過去を処理しながら今の自分になっていったのだ。
それらが出会う「妹」の掌編は、この小説の中で最も重要な一編だ。
そして、さらに大事なことは、そんな家族はどこにでもいる、ということだ。
ルーシーと少しでも関わった人々の人生の一片が語られる他の掌編で、彼ら彼女らが決して脇枠ではないことを読者は知ることとなる。
ルーシーと同じだけの重さを持つ人生を彼ら彼女らは歩んでいる。
要するに、世界はそういうもので重層的にできているということだ。
ストラウトの小説が我々をつかんで胸を揺さぶるのは、その切なさをる途方もなさを感じさせるからだ。
どんどん好きになる作家だ。
Posted by ブクログ
著者の前著「私の名前はルーシー・バートン」のスピンオフのような短編集で,ルーシー・バートンと何らかの繋がりがある人(あるいは,さらにそこから孫繋がりしている人)達9人それぞれが主人公の9つの短編からなる.
自分もそうなのだが「私の名前はルーシー・バートン」を読んでいなくても全く支障は無い.
この主人公達は,皆が心に何かを抱えている.それを丹念に,かつ,淡々と綴っているだけ,といえばそれだけなのだが,心を揺さぶられる.仕掛けの一つが,各短編の主人公達が必ず他の短編で少しだけ登場(といっても言及されるだけの場合が多いが)することで,二つの違った角度から「何か」を見ることによって,人物や出来事の造形に膨らみがでているように思う.
Posted by ブクログ
幸せな家庭も、不幸せな家庭も、はたから上っ面を見ても分からない。だから人の人生を羨むことも、比べることも意味などない。
まさにその通りなのだが、私の大事な人生だって同じことだよ、いいことなんて続きもしないし、辛く惨めな傷と記憶を抱え込んで、尽きることのない不安と苦労を受け止めていくのが人生だよ、みんな変わりはしないよ、この残酷ともいえる真実を達観したかのように受け止めて、人生なんてそんなもん、とうそぶく境地には、僕はまだまだ至れない。
本書では、短編ごとの登場人物が己と誰かを語り、また語られ、あちこちに顔を出す。そうやって多面的に描かれて一つの像を結ぶのかというと、そうではない。むしろ逆ではないだろうか。
これまた当たり前の話だが、人は一つの真実でできているわけではない。
昔見せてくれたふとした優しさも、誰にも曝け出せない秘密も、頭をよぎる底意地の悪い思いも、同じ人物のキャラクターだ。本書からは、そのことをまざまざと感じる。
エリザベス・ストラウトは、重荷を背負いながら生きていく人々が垣間みせる様々な瞬間を描く。簡単に人生を肯定したり、祝福したりはしない。いつか終わる日まで人生は進むし、それはきれいごとではない。
だが、だからこそ、人は辛いときにそっと心を温めるための何かを、もはや言った本人も忘れたかもしれない誰かの一言や、陽だまりに誰かと並んで見た景色なんかを、後生大事に抱えて生きていくのだろう。
そんな御守りなしに歩くには、人生は長すぎる。
季節が巡ると芽吹き、束の間の花期を迎える宿根草のように、ひとときの美しさを繊細に伝えててくれる。泥にまみれたような誰の人生にも、救いの瞬間はある。
エリザベス・ストラウトの本を読むと、そんなことが浮かんでくる。
“彼は手を引っ込めて「そうかもしれないな」と言った。ちょっとだけ付け足すように、本当のことも言った。「愛してるよ、シャーリー」それから天井に目を向けた。一瞬、ニ舜、妻の顔を見ていられなかった。”
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小説・文芸
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