スペインの田舎町、レ・ミゼラブルを愛する刑事が富豪夫婦の殺害事件に挑むが… #テラ・アルタの憎悪
■あらすじ
スペインのテラアルタで発生した事件、村一番の富豪夫婦が拷問して殺害された。かつての投獄され、書籍『レ・ミゼラブル』と出会いによって刑事になった経緯があるメルチョールが捜査にあたる。
しかし
...続きを読む決め手となる証拠がでず、捜査が打ち切られようとしてた。彼は独断で捜査を進めようとするも、政治力によって試みが困難となっていき…
■きっと読みたくなるレビュー
不思議な魅力がある主人公と、スペインにある田舎町の暗部が見え隠れするミステリーです。
物語の筋としては大きく二つで、富豪夫婦の殺害事件の捜査と刑事メルチョールの過去を巡る回想。もちろん本筋は前者ではあるんですが、作品としての重心はむしろ後者にある感じですね。
過去犯罪に手を染めるも、『レ・ミゼラブル』と出会いから今まで持っていなかった価値観が芽生え、人生を切り開いていく。ただ人間としての気質は変わることはないのが魅力のポイント。心情描写もセリフも荒ぶることなく淡々と書かれているのがまた良くて、静かだけど強い存在感を残していくんです。
また警察の同僚たちや、友人や家族たちの描写もいかにも居そうな人たちばかりだし、じっくりと物語に浸ることができました。
事件の謎解き自体は想像したほど展開はしませんでしたが、終盤に語られる事件の真相や背景にはなかなかの戦慄が走る。昔にどこかの映画で見たようなシーンが目に浮かんできて、人間の「憎悪」が伝わってきました。
■ぜっさん推しポイント
人間がいかに自分中心の価値観で生きており、他人の都合を考えていないかを示唆してくれる。絶対の正義は存在せず、正義と悪には相対性があることを理解しないといけないですね。汲汲として疲弊している人ばかりの現代、色んな人に伝わってほしいと思いました。