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軽いめまい
郊外の住宅地にある築七年の中古マンションで、夏実は夫と小三と幼稚園児二人の息子と暮らしている。専業主婦の暮らしに何といって不満もなく、不自由があるわけでもない。けれど蛇口から流れる水を眺めているときなどに覚える、放心に似ためまい――。 1990年代の東京。「中産階級」の変わることのない日常? 2023年にポリー・バートンによって英訳され、ニューヨークタイムズやアトランティック誌で書評されるなど話題となった。 生活という日常を瑞々しく、シニカルに描いた傑作中編小説。 ケイト・ザンブレノ 「あまりに退屈で売春を始める主婦たちの話が気の利いた挿話として登場するように、たとえばブニュエルの、たとえばゴダールの、たとえばシャンタル・アケルマンの、売春する主婦たちについてのあらゆる映画への目配せがこの小説には見られるのだが、ただしこの小説の中では何も起こらず、退屈そのものがポイントで、じゃがいもの皮はただ剥かれ、皿はただ洗われ、けれど時々、ほんの時折、家事にまつわる瞑想的な瞬間、クラクラするような、あるいはぼうっとするような感覚がふと訪れることがあり、たとえば洗い物をしているとき、蛇口から紐のように絶え間なく流れ出す水や、流れていく水のきらめきに心を奪われてしまう、それこそがポリー・バートンによって「軽いめまい(ルビ:マイルド・ヴァーティゴ)」と訳出された感覚で、この言葉は小説の八番目のセクションのタイトルにもなっている。」 「解説」より -
ともだち めんどくさい奴らとのこと
歪んでたってズレてたって、 生きられる限り生きよう、好きな人たちと。 ゲラゲラ笑ってドキドキしてそして泣いて、 一気に読みました。 涙のあとに謎の力が湧いてきます。 吉本ばなな(小説家) 生きることの、苦しさ、切なさ、虚しさ。 それを乗り越えるエネルギー。 ゲッツさん。弱すぎて、強すぎます。 棚橋弘至(新日本プロレス代表取締役社長) 脳出血で2カ月意識を失ってのち、 退院したゲッツ板谷はようやく仕事復帰。 じわじわと復調を果たした2024年 還暦を迎えた今、 倒れて以後に見舞われた ジェットコースターの如き怒涛の日々を 仔細に綴ることにした。 強烈な出来事の連続ゆえ実名は避ける。 固有名詞を変えた形で、ほぼほぼ実話の形の 「小説」として書き上げた――。 爆笑エッセイで大人気を博していたライター 「スリム佐藤」。 脳出血から復帰を果たした彼は旅に出た。 ひょんなことからハマった讃岐うどん。 高松の名店をすべて網羅したうどんマップを 誰に頼まれたのでもなく完成させるためだ。 そこで突如ファンを自称する不思議な男と SNSを介して繋がったスリム。 なぜか波長合ったその男との珍道中が始まるが スリムはその男が抱えた重い病について知る。 突発的な言動や強烈な行動の背景にあったのは 実は……。 並行してスリムはかつて連発させていた 自身のベストセラー、爆笑エッセイに登場する 古くからの自身の仲間との関係を振り返る。 極端な個性の面々にも 様々な変化や別れが待っていた。 愛すべき濃い面々にも等しく訪れる経年変化。 30年超の関係でも一切気づかなかった とある「秘密」を知ることになる……。 「ともだち」って何だろう? グレーゾーンにいるって特別なことか? 爆笑して、泣いて、元気が出る。 ゲッツ板谷、超・長編小説で怪気炎!! -
光っていません
事故で2年間植物状態になっている恋人を見舞い続ける“私”の前に、分身を名乗る幽霊が現れる。自分そっくりな幽霊が一向に姿を消さないため、“私”は仕方なく一緒に暮らし始めるが……(「幽霊の心で」)。人間をクラゲにしてしまう、変種のクラゲが大量発生する。社会に動揺が走るなか、音楽活動をやめた“私”は、自らクラゲになりたがる人をサポートする仕事につき……(「光っていません」)。所属している劇団が行き詰まり、仕方なく役割代行サービスをしている駆け出し俳優の“あたし”。誰かに代わって別れを告げたりニセの恋人になったりしているうち、ある男から、「冬眠の準備を手伝ってほしい」という依頼があり……(「冬眠する男」)。閉塞感に満ちた日常に解放をもたらす、韓国発、8つの奇妙な物語!/【目次】幽霊の心で/光っていません/夏は水の光みたいに/見知らぬ夜に、私たちは/家に帰って寝なくちゃ/冬眠する男/アラスカではないけれど/カーテンコール、延長戦、ファイナルステージ/作家の言葉/解説=倉本さおり -
命みじかし恋せよ乙女 少年明智小五郎
大正八年、帝国新報の記者・可能勝郎は、東京市郊外の世田谷村にやってきた。村一番の富豪である守泉家が、「なかむら座」を招いて『番町皿屋敷』を上演するのを取材するためだ。守泉邸は上空から見ると「む」のような形をしていて、通称「むの字屋敷」と呼ばれている。勝郎は「なかむら座」の俳優・静禰や、屋敷に滞在していた伊藤晴雨のモデル・カネなどにも話を聞きながら上演日を待つことに。しかし、深夜に勝郎が女性の死体を発見するものの現場を離れたわずかな間に消失、上演後の打ち上げの席では衆人環視下の殺人まで巻き起こる! 売り出し中の“探偵小僧”明智少年と共に推理を巡らす勝郎だったが……。レジェンド辻真先が、本格ミステリの楽しみを随所に鏤めて贈る、最新長編。 -
未整理な人類
なぜ人は理屈でわりきれない事に熱中するのか?鋭い視点と笑いで人間社会の本質を斬るノンフィクション。 世界は「意味不明」でできている!? 路上の怪文書から不幸の手紙まで。なぜ人は理屈でわりきれない事に熱中するのか。鋭い観察眼とブラックな笑いで社会を斬る異色ノンフィクション。 「人間は一番のブラックボックスで、未整理なことだらけだ。となると、『止めたくても止められないもの』『なぜか分からないけど、そうなってしまったもの』『体が勝手に動いたもの』にこそ、人間の本質が現れるのではないか。 本書は、そんな人類の未整理な行動を突っついて、綺麗にまとめることもなく、放り投げてみようという試みである」(本文) 【目次】 まえがき 第1章 “不幸の手紙”コレクション 第2章 地蔵は服を着る 第3章 「欲しいもの」を持っているのは誰か 第4章 鉄柱詩に見る、芸術と犯罪と症状 第5章 破壊に吸い寄せられる 第6章 「チットGPTみたいなことを言うな!」 第7章 バーチャルに侵略される 第8章 脳内物質を求めて右往左往 第9章 孤独と犯罪に相関関係はあるのか? 第10章 寝顔の発見 第11章 「水槽学」的考 第12章 必ず逆を教える病気 第13章 それぞれの「生きのびる」問題 第14章 価値観の謎 第15章 人が姿を消すとき 第16章 猫で一攫千金 第17章 したたかなキョン 第18章 本物を凌駕する偽物 第19章 何者かになるための準備 あとがき 【著者】 インベカヲリ☆ 1980年生まれ。写真家、ノンフィクション作家。短大卒業後、独学で写真を始める。2018年伊奈信男賞、2019年日本写真協会新人賞を受賞。写真集に『やっぱ月帰るわ、私。』、『理想の猫じゃない』ほか。著書に『なぜ名前に☆があるのか?』、『家族不適応殺 新幹線無差別殺傷犯、小島一朗の実像』、『「死刑になりたくて、他人を殺しました」無差別殺傷犯の論理』、『私の顔は誰も知らない』、『伴走者は落ち着けない 精神科医斎藤学と治っても通いたい患者たち』ほか。 -
シグマフォース シリーズ⑯ ラッフルズの秘録 【上下合本版】
「悲しいかな、我々は自分たちの世界について ほとんど知らないということを学んでしまった。」 ──スタンフォード・ラッフルズ(シンガポール創設者) 一八一五年のタンボラ山の噴火── シンガポール創設者ラッフルズはそこで何を見、知ったのか? シグマフォースVS中国軍 インドネシア各地で起こる地震と火山噴火 自然界の力を軍事転用しようと目論む中国軍 それを阻止すべくシグマフォースが立ち向かう! 世界35カ国で翻訳、全世界累計2,000万部以上突破の ベストセラー・シリーズ最新作! 科学的事実から──地球外生命体は存在するのか? 「宇宙には我々しかいないのか?」 これは初めて夜空の星を見上げ、そこにも誰かがいるのだろうか、いるとすれば誰なのだろうかと思って以来ずっと、人類を悩ませ、そして人類が挑んできた疑問だ。二〇二一年十月、NASAの研究者グループがこの疑問を評価するための枠組みを提示し、地球外生命体を示す可能性のある「バイオシグネチャー(生命存在指標)」の存在を確かめるために必要な七つの厳密な手順を取りまとめた。彼らはこのリストを「生命体検出の信頼性」の尺度と命名した。これと似た動きとして、二〇二一年一月にCIAは、UFOやUAP(Unidentified Aerial Phenomenon:未確認空中現象)に関連した「ブラックボールト」として知られる三十万ページ近くの文書の機密扱いを解除した。米国国防総省も同様にその年の七月、二〇〇四年から二〇二一年にかけて軍の操縦士が証言したUAPの事案百四十四件に関する非機密報告書を作成した。 このところの相次ぐ機密解除、緩やかに続いているデータの漏洩、国防総省の高官を招いた二〇二二年の議会での聴聞会が、いずれも地球外生命体に関するものであることから、ある疑問が浮かんでくる。 「政府はすでに何を知っているのか?」そしてこれらの情報公開の急増からもう一つの疑問が生じる。「政府は我々を何に備えさせようとしているのか?」 その答えがこれから明らかになる。 〈あらすじ〉 ニュージーランド沖合での深海調査「タイタンプロジェクト」に参加した海洋生物学者のフィービー・リードは、新種と思われる巨大サンゴを発見する。しかし、プロジェクトは頻発する地震に悩まされていた。一方、香港滞在中に大地震に見舞われたシグマフォースのグレイ・ピアース隊長たちは、ペインター・クロウ司令官から中国の原子力潜水艦が行方不明になり、その場所が頻発する地震の震源が集中するトンガ海溝付近だと知らされる。グレイたちは中国の不審な動きを追うため、シンガポールの博物館に赴く。地震の調査のため深海探査艇でトンガ海溝に潜ったフィービーたちは、見たこともないような巨大なサンゴの森を目にする。だが、タイタンプロジェクトとグレイたちには地震とは別の危険が迫りつつあった。 -
カシュニッツ短編傑作選
非行の果てに死んだはずの養子に怯え、戸締まりを厳重にする妻。夫との会話から見えてくる真実とは……(「雪解け」)。知らぬ間に手脚に痣や傷が増えていく会社員の女性。親指の付け根を切ってしまっても気づかず、すねを拳骨で打ってもまったく痛みを感じない。自己観察を続ける彼女の生活は、どんどん異様になっていき……(「火中の足」)。広告塔に大きな写真が貼られ、新聞でも連日報道された、行方不明の少年を探すことに取り憑かれた女性は、その少年を見つけたのだが……(「幸せでいっぱい」)。町が消え、家も、学校も、図書館も、なにもかもがなくなる。みんないなくなり、あとは地を這う人間の残骸がいるだけ。――世界が滅亡するXデイが気がかりで、ある母親はその日に起こるはずのことについて詳細な手記を執筆する……(「ある晴れたXデイに」)。日常に忍びこむ幻想。悲劇と幸福が結びついた人生観。歪で奇妙な家族たち。戦後ドイツを代表する女性作家による、『その昔、N市では』に続く全15作の傑作短編集!/【目次】雪解け/ポップとミンゲル/太った子/火中の足/財産目録/幸せでいっぱい/作家/脱走兵/いつかあるとき/地滑り/トロワ・サパンへの執着/チューリップ男/ある晴れたXデイに/結婚式の客/旅立ち/訳者あとがき -
アリス、アリスと呼べば
〈 人が人への信頼を失ったら、その先には何が残るっていうの? 〉 ◉洗練された文体と神秘的なスタイルで注目される韓国文学の新鋭による短編集。 ◉夢と現実が交差する迷路のような物語は、私たちの目を世界の本質へと向ける。 ◉共生の感覚を回復させる魅惑的な8つの物語。 --------- 「わからないかな?これが普通なんだという確信、もしくはこれが普通であるべきだと信じて疑わないこと、それこそが本当の「悪」なんだよ」 マイノリティへの憎悪やネットヘイトに満ちた世界を生きる今。 「人が人を助けねば」という現代社会に求められる声に耳をすました小説集。 洗練された文体で描く幻想的な物語をとおして、良かれと思った〝優しさ〟が往々にして他者を傷つける〝独善〟になってしまうような、現実世界の複雑さを見つめていく。 --------- 【目次】 ・あなたのいた風景の神と眠らぬ巨人 ・アリス、アリスと呼べば ・海辺の迷路 ・夜の潜泳 ・チャンモ ・人が人を助けねば ・夜は輝く一つの石 ・メゾと近似 ・あとがき ・訳者あとがき -
別れの色彩
年齢を重ねた今だからわかる、あの日の別れへの後悔、そしてその本当の意味を――。男と女、親と子、友だち、隣人。『朗読者』で世界中の読者を魅了したドイツの人気作家が、「人生の秋」を迎えた自らの心象風景にも重ねて、さまざまな人々のあの日への思いを綴る。色調豊かな紅葉の山々を渡り歩くかのような味わいに包まれる短篇集。 -
彼女は水曜日に死んだ
ギャングの少年による殺人を目撃した女性は、報復を恐れて通報できず、苦悩する……(「ベイビー・キラー」)。1899年のフランス。8人の子供を殺して監獄に入れられた囚人と看守の、奇妙な交流の行方は……(「ボルドーの狼」)。メアリーローズは水曜日に死んだ。売人の家で麻薬を打った直後に死んだという。キャンベルは愛する人が死んだことで、世界の一部も死んでしまったような気がした……(「本能的溺水反応」)。メキシコとの国境地帯で大規模な山火事が起こる。密入国する途中で火事に巻き込まれたらしい親戚を探すという父親に連れられ、少年は荒野に足を踏み入れるが……(「灰になるまで」)。目撃者、看守、前科者、薬物中毒者、密入国者の親戚──。さまざまな形で犯罪に関わりを持ってしまった人々の孤独と希望を、美しく切なく真摯に描く。英国推理作家協会(CWA)賞最優秀短編賞受賞作ほか全10編収録の傑作短編集!/【目次】悪いときばかりじゃない/ベイビー・キラー/ボルドーの狼/万馬券クラブ/夕闇が迫る頃/本能的溺水反応/聖書外典/すべてのあとに/甘いささやき/灰になるまで/謝辞/解説=杉江松恋 -
故郷へ、友へ、恩師へ、 風の便り 山田風太郎書簡集
「サッパリ、書けん。」 悪友親友への便りに垣間見せる素顔の風太郎。 早くに両親を亡くして世話になった親戚への消息、恩師との交流。 最も気が合った高木彬光氏との合作の相談、横溝正史氏ともども家族ぐるみの付き合い。 江戸川乱歩をはじめ、角田喜久雄、鮎川哲也、中井英夫、色川武大、筒井康隆、髙峰秀子、安野光雅、横尾忠則、中島河太郎の各氏から届いた書簡、ドイツ文学者西義之氏との往復書簡もあわせて収録。 「医者より小説の方が小生の本性には合致している」 戦時中に単身上京して、軍需工場に勤めながら受験勉強を続けて医学専門学校に合格。1947年に「宝石」の短編懸賞に応募した「達磨峠の事件」が入選。50年に新制医科大学を卒業するも作家の道を選択し、忍法帖シリーズで大人気作家に。世相に対する鋭い批評から、気のおけない仲間に漏らす本音まで飾らない魅力が満載。 山田風太郎生誕一〇〇年記念 -
ムーミン谷のしあわせレシピ
※この商品はタブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。 「気持ちのいいものは、なんだっておなかにもいいのよ」(ムーミンママ) ムーミン谷のやさしさに包まれた、キャラクターたちにちなんだ楽しいメニューが満載。 名言と美しいさし絵入りで、85の北欧料理レシピをどうぞ! ●著者紹介 トーベ・ヤンソン 絵と引用文 画家・作家。1914年8月9日フィンランドの首都ヘルシンキに生まれる。父は彫刻家、母は画家という芸術一家に育ち、15歳のころには、挿絵画家としての仕事をはじめた。ストックホルムとパリで絵を学び、1948年に出版した『たのしいムーミン一家』が世界中で評判に。国際アンデルセン大賞、フィンランド国家文学賞受賞。おもな作品に「ムーミン童話」シリーズ(全9巻)のほか、『少女ソフィアの夏』『彫刻家の娘』などがある。2001年6月逝去。 末延弘子 訳 東海大学文学部北欧文学科卒業。フィンランド国立タンペレ大学フィンランド文学専攻修士課程修了。白百合女子大学非常勤講師。『清少納言を求めて、フィンランドから京都へ』など、フィンランド現代文学、児童書の訳書多数。2007年度フィンランド政府外国人翻訳家賞受賞。 ●主な内容 ムーミンママのロールキャベツ スナフキンのさすらい煮こみ ミムラのむすめのびっくりスープ ムーミンパパ流ヤンソンさんの誘惑 ちびのミイのさかさまこけももケーキ ムーミン谷の地下室のベリージャム など。 -
開化奇譚集 明治伏魔殿
歴史の大きな変わり目には、社会は流動化し、人間関係にも平時には起こりえず、想像もつかない変動が生じる。そんなときにひょっこり生まれる人びとの予想外の取り合わせは、貴重な“歴史の偶然”として現出するが、多くの場合たちまち短命に消え失せてしまい、人びとに記憶されず、ましてや記録として書き残されることもない。わたし筆者(わたし)がこれから書こうとしている物語は、ことによったら歴史の流れを異なる水路に導いたかもしれないひとつのエピソードである(「明治天皇の馭者」より)。 文明とは、ある可能性の粉砕であり、開化とは、挫折した夢と怨みの上に咲いた花である。新時代の到来に必然はない。ありえたかもしれない未来と希望のもつれを解きほぐす、5つのネオフィクションの試みが見せる光景とは? -
理不尽ゲーム
欧州最後の独裁国家ベラルーシ。その内実を、小説の力で暴く。群集事故によって昏睡状態に陥った高校生ツィスク。老いた祖母だけがその回復を信じ、病室で永遠のような時を過ごす一方、隣の大国に依存していた国家は、民が慕ったはずの大統領の手によって、少しずつ病んでいく。10年後の2009年、奇跡的に目覚めたツィスクが見たものは、ひとりの大統領にすべてを掌握された祖国、そして理不尽な状況に疑問をもつことも許されぬ人々の姿だった。時間制限付きのWi-Fi。嘘を吐く国営放送。生活の困窮による、女性の愛人ビジネス。荒唐無稽な大統領令と「理不尽ゲーム」。ジャーナリストの不審死。5年ごとの大統領選では、現職が異常な高得票率で再選される……。緊迫の続く、現在のベラルーシの姿へとつながる物語。 -
黒魚【クロウオ】都市
感染症〈ブレイクス〉が流行している北極圏の街クアナークでは、さまざまな事情を抱えた人々が暮らしていた。そこでなかば伝説として語り継がれるのは、シャチやホッキョクグマといった動物と意識を共有し一体になれる女の物語だった。キャンベル記念賞受賞作 -
遠藤周作短篇名作選
『沈黙』から『深い河』にいたる代表的純文学長篇小説の源泉ともいえる短篇の数々――遠藤周作には、代表的長篇小説が多くあるが、それぞれの長篇には、源泉となる短篇作品がある。その遠藤文学の核となる13の名短篇を集めた。「シラノ・ド・ベルジュラック」「パロディ」「イヤな奴」「あまりに碧い空」「その前日」「四十歳の男」「影法師」「」「母なるもの」「巡礼」「犀鳥」……遠藤周作の文学・人生・宗教観がすべてわかる短篇集。 ※本書は、『遠藤周作文学全集 第6~8巻』(1999年10~12月 新潮社刊)を底本としました。また『天国のいねむり男』は全集・文庫など未収録作品です。 -
工学的ストーリー創作入門
書けないのは、才能のせいではない! 直感に頼らず、物語に必須の要素から書き始める、 天才以外は必読の「工学的」創作入門。 【6つの要素】 コンセプト/人物/テーマ/構成/シーンの展開/文体 売れる物語を書くために必要な6つの要素はこれだ! ストーリー創作に必要な部品と技術がすべて揃った最強の「まとめ」本。 作品を生み出すための最適な経路をデザインする=工学的メソッドの画期的創作入門書! 小説・ストーリー創作術の最良の入門書にして、最終決定版がついに邦訳!! 世の中にたくさんあふれている小説のハウツー本を読んでもうまく小説が書けないのはなぜなのでしょうか。ハウツー本を読むと「心を込めなさい」「人生の旅を描け」「テンポと文体を磨こう」などというアドバイスが書かれています。しかし私たちが欲しいのは、このような抽象的な助言ではなく、もっと具体的な方法や手順のはずです。 売れるストーリーには原則があります。つまりストーリー創作には工学的な面があるということです。まずストーリーの要素を知り、そのうえで設計図を描くことが何より大事なのです。ストーリーの設計を「形式的」と毛嫌いする人がいるかもしれません。しかし、形式的と思うからそう見えるのであり、ストーリー作りの原則や要素を意識することとは違います。 ストーリー創作に際して知るべきことは山ほどありますが、本書ではそれらを6つのカテゴリーに大別することで、謎めいたものの本質を明確に提示しています。つまり、それが「6つのコア要素」と呼ばれるものです。「6つのコア要素」にはストーリーに必要な部品や技術が全て揃っています。書き手として知るべきことを集め、包括的に秩序立ててストーリーを作ることができます。 「紹介するモデル(作家として成功するための6つのコア要素)は僕がまとめたが、基本は誰もが知っていることだ。いわば真理で、僕の発明ではない。だが、この本のような「まとめ」は他になかったはずだ。」と著者がいうように、これまで断片的に語られてきたストーリー創作の秘訣が、網羅的に「まとめ」られているため、小説入門者が最初に読む本として最適の一冊となっています。 -
特捜部Q―吊された少女―
引退間際の警官からかかってきた一本の電話は、カールたちQのメンバーを十数年前に起きた異常な交通事故の捜査へと導くのだが……。デンマークの人気警察小説、第六弾! -
イエロー・バード
その春、戦争は自分らを殺そうとした。イラク、アル‐タファル。21歳の三年兵バートルは、18歳の初年兵マーフィーを無事に故郷に連れ帰ると約束していた。しかし、凄惨を極める戦闘を次々と経験していくうちに、二人は予期せぬ運命をたどることになる。イラクで戦うとはどういうことだったのか。元兵士が戦争に直面した若者たちの感情を、痛切に、瑞々しく描いたデビュー作。 兵士の鮮烈な成長譚でもあり、イラクの戦場で生き残ろうとする二人の青年の友情の物語でもあり、無垢の喪失と記憶の意味を語る哲学的な寓話でもある。並外れた作品だ。――ミチコ・カクタニ(《ニューヨーク・タイムズ》紙) 必読の書だ。イラク戦争をリアルに描いているからというだけではない。その不名誉と理解しがたい暴力から、弱々しくはあるが確かに生きている人間性の証を紡ぎだしているからだ。――《ガーディアン》紙 -
兵士たちの肉体
アフガニスタンに派兵されたイタリアの若者たちの孤独、性、葛藤を瑞々しい筆致で描きながら、現代の矛盾に鋭く迫る二十一世紀の戦争小説。世界的ベストセラー『素数たちの孤独』著者の最新長篇。 灼熱の大地の真ん中、アフガニスタンの紛争地域に派兵されたイタリア軍の若き兵士たち。危険ではあるが、たった数カ月の任務のはずだった。故郷から逃げだしてきた者、ひとりぼっちの母親を残してきた者、妊娠した女を残してきた者、オンライン上の仮想恋人に依存する者……それぞれの事情を抱え、孤独を噛みしめ、性をもてあます彼らの中には、愛情と憎しみが芽生えつつあった。そして、ようやく任地に慣れてきた頃、その後の人生を大きく変えることになる、忘れえぬ出来事が起こった――。 砂漠への強行軍にのぞんだ若者たちは、何を見たのか? 世界的ベストセラー『素数たちの孤独』の著者が紡ぐ、21世紀の新しい戦争文学。 -
詩人のラブレター
◆ふらんす堂ホームページ連載コラム、待望の書籍化! ―伝えたい言葉― ボードレールやランボー、マラルメ… 詩人たちからあなたへの素敵なラブレター ◆収録作品より そこ深い 池の鏡に 映る影、 その黒い柳に 風は泣き…… さあいまは、夢みる時。 (詩集『よい歌』 第六歌 渋沢孝輔訳 ポール・ヴェルレーヌ「(白い月)」より) ◆著者あとがきより 書いていくうちに大学で勉強したフランス語の詩人だけでなく、子供時代に知り、ずっと記憶に残っているフランス以外の歌やフレーズも抑えがたく浮かび上がってきました。「おおスザンナ」や「ソルヴェイグの歌」、「四つ葉のクローバー」など作者の名も知らないまま記憶の中に住み着いているのでした。正統派のフランス詩でも、ヴィヨンやネルヴァルなど、なぜ入れないのかと文句を言いに顕れた朝方の夢もありました。残念ですがまた別の機会まで待ってもらいましょう。 -
未だ本能寺にあり
魔王の首を探せ。 織田信長はどこへ消えたのか? 羽柴秀吉、信長を刺した明智兵、使用人の少女、阿弥陀寺の僧……。 「あの日」を巡る8人の証言が集まる時、 400年、誰も見たことのない〝答え″が、導き出される。 天正十年、本能寺の変が勃発。天下の主を失った日ノ本は混沌に陥った。そんな中、羽柴家家臣・駒井八右衛門は、秀吉からある密命を授かる。上様を探せ――。 逆賊・明智光秀を討った秀吉は、今や織田の後継と目されていた。だが、信長の遺骸は見つからずにいる。もし他者が先んじて遺骸を探し出し弔えば、その座が奪われかねない。まして信長が生きているとなれば、秀吉が描き始めた天下への絵図も霧散することになる。 一度見聞きした物事は忘れない異能を武器に、八右衛門は消えた天下人の行方を追う。織田方、明智方、そして影の目撃者……。関係者たちが語る「あの日」の真実とは? 日本史上最大の謎に挑む、超大作歴史ミステリー。 -
タイム・アフター・タイム
解像度の高い人物たちと情景描写に惹き込まれ、 どんなに遠くてもなお鮮やかな恋の記憶が立ち上る。 ――松任谷由実(シンガーソングライター) こんなに泣いたら、きっと人生が変わってしまう。そんな恐怖とともに読み終えました。 ――金原ひとみ(作家) 『国宝』の著者、待望の最新作にして、 作家デビュー30周年記念作品! 眩しい夏の初恋と、二十年後の再会―― あの日、二人は何を守り、何を手放したのか? 純粋なものに向き合ってみたいと思った。 眩しいくらい純粋なものに向き合った時、自分の心がまだちゃんと動くのか確かめてみたかった。 『タイム・アフター・タイム』は私なりの純粋なものをたくさん詰め込んだ小説です。 ――吉田修一 「取り返しのつかない間違いをした。 でも、大切な人のそばからは離れなかった」 建設会社に勤める尾崎颯は、土砂降りの雨のなか、高校の同級生だった久遠愛と再会する。二人は同じプロジェクトの担当者として再び言葉を交わすようになるが、建築家のデザイン盗用疑惑によって計画は暗転。さらに尾崎の家庭にはスキャンダルが迫り、久遠もまた、癒えない心の傷を抱えていた。 揺れ始める心はやがて、二十年数前の夏へと引き戻されていく。 青く輝く海と空に歓喜したあの頃と、眩しさを見つめ返せない今――東京と長崎、現在と過去を往還しながら、痛みも後悔も優しさも、すべてを抱きしめてあたためる長編大作。 -
春かずら
父の仇を十二年間追う侍と、仇の息子。 交わらないはずの二人を繋ぐのは、“侍”の矜持。 直木賞作家が初めて挑んだ、武家小説。 仇討ちとは、いったい何なのだ――。 十二年前に父が殺され、以来、仇討のために諸国を巡る清史郎。しかし、仇の手掛かりは見つからない。病死した母の弔いに故郷・安良藩に戻った清史郎は、ある少年を助け、彼に剣の手ほどきをすることに。しかしその少年・隼人は、仇の息子だった。出会うべきではなかったと思いつつ、見限ることのできない感情のもつれ。仇の行方、そして藩内政治――。清史郎が最後に下した決断とは。 江戸時代を生きる「人」を描いた、傑作ドラマ。 -
工房の季節
何度も作り直せばいい。器を焼くことは、心に明かりを灯すようなもの。 テレビ局の放送作家の仕事を突然辞めるはめになった30歳のジョンミンは、何ヵ月も抜け殻のようになり家に引きこもっていた。 ある日久しぶりに外に出て、歩いているうち、彼女はカフェと間違えて陶芸工房の扉を開ける。突然現れたジョンミンに、工房の主ジョヒは珈琲をふるまう。コーヒーのおいしさのわけは器にある、自分で作ってみない? というジョヒの誘いを受け、ジョンミンは陶芸教室に通い始める。 土の匂い、手を動かしてものを作る喜び、人懐こい猫、年代も悩みもさまざまな仲間たち。自分に向き合い、人生を見つけていくということ……。工房を舞台に繰り広げられる癒しと希望の物語。 手を動かすこと食べること。それが、力をくれる。 -
エステルの手紙教室
《みなさんの感情や意見には一切口出ししません。手紙の書き方、つまり文章の書き方を教えるのがわたしの役割です》北フランスのリールで書店を営むエステルは、亡くなった父を偲んで手紙教室を開くことにした。参加者を募る新聞広告を出すと、5人から応募があった。孤独な老婦人、重度の産後うつに苦しむ夫婦、仕事にやりがいを見いだせないビジネスマン、そして進路に悩む青年。性別も年齢も異なる参加者とエステルは、手紙のやりとりを通して新しい言葉との出会いに飛び込んでゆく。言葉の力を賛美した小説。"Le Prix Du Roman Qui Fait Du Bien"(癒やしの小説賞)を受賞。 -
動物城2333
長く人間に支配されていた動物たちは、人間と伍すだけの知能を得て独立した。 しかしかつての支配者である人間たちはそれを受け入れることができず、戦争を起こした。 長く続いた戦闘jの後、西暦2333年、動物と人間との間は冷戦状態にある。 動物王国の首都・動物城にある、街一番の探偵・ブレーメンのもとに、和平派・ワニのネロ将軍がやって来た。 人類から派遣された親善大使が殺害される殺人事件が発生したという。 いち早く真犯人を見つけ正しく公表しなければ戦争勃発につながりかねない。人間も動物も休戦の期間中も超兵器の開発に取り組んだため、今戦火を交えたら、世界は消え去ってしまう。 ブレーメンはネロ将軍ととともに調査に乗り出した! -
東京駅の建築家 辰野金吾伝
東京駅を作った人!―― 唐津藩の下級武士・辰野金吾は上京し、英国に留学。日本銀行や東京駅を手がけて、近代日本の魂をも作った! 見事な人間讃歌、書下ろし特別作品。 ● わが国近代建築のなかで、東京駅はおそらく最も多く小説に取り上げられてきたものであろう。とくに私の記憶に残っているのが、江戸川乱歩『怪人二十面相』である。 怪盗が帝都に跳梁する状況下、待ちに待った名探偵明智小五郎が帰朝し、颯爽と東京駅に降り立つ。この名探偵を外務省の役人に変装した二十面相がプラットホームで出迎え、二人はステーションホテルの一室で対決する。 「この駅はあたかも光線を放射する太陽のようなものだ。あらゆるものの中心となって、ここから光を四方八方に放ってほしい」と、開業の祝賀式で時の首相大隈重信が述べた言葉は、まさに以後の東京駅と近代日本の行く末を言い当てることになった。――(あとがき)
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