日本・香港・台湾の作家によるホラーミステリのリレー小説。箸を使ったおまじないの「おはしさま」。それはただの都市伝説なのか、それとも呪いなのか。なんともおぞましく恐ろしい作品、と思って戦々恐々の心地で読み始めましたが。
まず「おはしさま」。これは文句なく怖いです。嫌です。いや、好きなんだけど。一番短い
...続きを読むのに一番恐ろしさは強烈。さすが三津田さんです。
続く「珊瑚の骨」は、切ない青春小説のような読み心地だし。「呪網の魚」は都市伝説を用いたミステリ。「鰐の夢」では今までのあれやこれやが繋がってきた感があって、たしかにこれで完結してもよい気がしました。ならば続く最終章でこれはいったいどのように着地するのだろう、と思いながら最後の「魯魚亥豕」を読むと……うわー、何これ! まさかこんな楽しい物語になっちゃうだなんて! ホラーではあるのですが、少しばかりコミカルで、そして驚かされる物語でした。文さんが素敵だなあ。
とはいえ、本質はどれもホラーミステリなので。ホラーミステリ好きにとってはひとつの物語でこれほどまでに違うテイストを味わえるとは、と感激するばかりでした。どの物語もきちんと繋がっているけれど、それぞれ単独の作品としても読めそう。なんだかとってもお得な感じの一冊です。惜しむらくは中国の伝承や神話のようなものに馴染みがないところだけだけど。それも欠点になるほどではないかな。