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夏の黄昏
南部の小さな町に育った十二歳の少女。背丈ばかりのびて、近所の子どもから仲間はずれになっている少女の夏の出来事。この少女の心の孤独感は、仲間はずれになったことのある誰の心にも消えがたく残っている。そして自分がどこかのグループに属したい、誰かに認められたいという願望も。この作品はこの深くて鋭い心情をとらえて、あますところがない。しかしその卓越している点は、空気さえ感ぜしめる描写の力だ。人は空気によって生きるように、この作品の三人――少女と少年と黒人女性――は作中の暑い夏の空気を呼吸して生きている。その空気は狭いキチンにいる三人の息遣いを伝え、その絶妙の会話を伝える。外で遊ぶ子供たちの叫び、ピアノの調律音、猿まわしの演奏するオルガンの音、照りつける街なかの白い光などを伝え、その脈搏によってこの作品を日常の次元よりも高い、不思議な雰囲気のものにしている(訳者あとがき)。「結婚式のメンバー」という訳書もあるマッカラーズの代表作。 -
クレアが死んでいる
カルヴァー街の本屋で暴漢が拳銃を乱射したとの通報をうけキャレラとクリングはただちに現場に向った。血に塗れた三人の男たち。第四の被害者を見たクリングは絶句した……それは、恋人クレアの惨死体だった。復讐の念に燃えた刑事たちの執拗な捜査活動をリアルな筆致で描く渾身の作。 -
そして誰もいなくなった〔コミック版〕
〈ミステリの女王〉による全世界1億部を発行した大ベストセラー小説がコミカライズ 孤島の邸に招かれた面識のない十人の男女。夕食の席上、彼らの過去の犯罪を暴く謎の声が響き、彼らは一人また一人と殺されて…… -
被害者の顔
被害者の名はアニイ・ブーン。胸に銃弾を撃ちこまれ、血にまみれて死んでいた女。が、捜査が洗いだしていったのは、彼女の複雑な顔だった。貞淑な妻、優しい母、インテリ女性、情婦、酔いどれ……。どの顔が残忍な殺人者を招いたのか? しかし、容疑者はいずれも堅固なアリバイを持っていた -
野生の棕櫚
「悲しみ(grief)と虚無(nothing)しかないのだとしたら、ぼくは悲しみのほうを取ろう。」 1937年――人妻シャーロットと恋に落ち、二人の世界を求めて彷徨する元医学生ウイルボーン。(「野生の棕櫚」) 1927年――ミシシピイ河の洪水対策のさなか、漂流したボートで妊婦を救助した囚人。(「オールド・マン」) 二組の男女/二つのドラマが強烈なコントラストで照射する、現代の愛と死。 アメリカ南部を舞台に、実験的かつ斬新な小説群を、生涯書き継いだ巨人、ウィリアム・フォークナー。 本作は、「一つの作品の中で異なる二つのストーリーを交互に展開する」という小説構成の先駆となったことで知られる。原著刊行(1939)の直後、ボルヘスによってスペイン語訳され(1940)、その断片的かつ非直線的な時間進行の物語構成により混沌とした現実を表現する手法は、コルタサル、ルルフォ、ガルシア=マルケス、バルガス=リョサなど、その後のラテンアメリカ文学に巨大な霊感を与えた。 他方、現代日本の小説にも、大江健三郎(『「雨の木」を聴く女たち』)や村上春樹(『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』)、叙述トリックを用いたサスペンス小説(連城三紀彦は本作を生涯の10冊に挙げている)など、本作の影響は数多見受けられる。 また、ゴダール(『勝手にしやがれ』)、ジャームッシュ(『ミステリー・トレイン』)における言及で本作を知る映画ファンも多いだろう。 その意味では、文学のみならず20世紀カルチャーにおいて最大級の方法的インパクトを与えた、世界文学史上の重要作にして必読の傑作だといえる。 その本作を、『八月の光』『サンクチュアリ』『兵士の報酬』などの名訳によって定評のある、加島祥造訳にて復刊する。 -
招かれざる客〔小説版〕
ミステリの女王の名作戯曲を小説化! 真犯人や真相に関する趣向はクリスティー作品史において前例はなく、まさに〈反ミステリ〉の新境地を開拓したのだ。小山正(本書解説より) 冷たい霧の中、電話を借りるため館を訪ねたマイケルが見たのは、当主が椅子にうずくまり、傍らでその夫人が拳銃を握る姿だった――11月の寒々とした晩。南ウェールズの霧深い田舎道で車が脱輪し、男は近くの大きな屋敷に助けを求めた。だが、そこには車椅子に座った屋敷の当主の射殺体が。そして傍らには当主の若く美しい妻が銃を握って立っていた。果たして妻が犯人なのか? どんでん返し連打の名作戯曲をチャールズ・オズボーンが小説化! 解説:小山正 今後の刊行予定2025年1月刊『蜘蛛の巣〔小説版〕』アガサ・クリスティー(チャールズ・オズボーン小説化)山本やよい訳 客間で見つけたのは夫の前妻と結婚した男の死体!? 傑作クライム・コメディ戯曲の小説化。 以下、続刊『白昼の悪魔〔新訳版〕』アガサ・クリスティー田村義進訳 地中海の避暑地の島に滞在中の元女優殺人事件。関係者のアリバイをポアロは崩せるか? 以上、クリスティー文庫 -
大いなる手がかり
街は降り続く三月の雨に煙っていた。パトロール警官のジェネロはバス停に置き忘れられた鞄を開けてみた時、思わず顔を歪め反射的に手を引いた。無理もない、なんと、手首から切断された巨大な人間の手が出てきたのだ! 果して被害者、そして加害者は? 手掛りを求め雨の街に散る刑事たち。 -
死が二人を
警察に日曜日はない。その日もキャレラは妹の花婿となるトミイの電話でたたき起された。出掛けていった彼がトミイの自宅で見たものは、なんと小箱にうずくまる猛毒の黒後家蜘蛛だった! 晴れの結婚式の当日に次々と起る忌わしい事件をセミドキュメンタルなタッチで描くシリーズの逸品。 -
ミス・マープルのご意見は?
セント・メアリ・ミード村で静かな暮らしを送るミス・マープルは、人のうわさ好き。どんな出来事にも興味をもち、好奇心旺盛で記憶力も抜群。編物をしながら、じっと話に耳を傾けている。ガーデニングも好きで、通りかかる人物にも注意を怠らない。そして驚くべき洞察力で、事件の謎を解いてしまう。ミス・マープルは長編「牧師館殺人事件」で初めて顔をみせ、 その後、多くの短編・長編で活躍した。「ミス・マープルの物語は、書いていてとても楽しかった。わたしは、自分が作ったこのおだやかなおばあさんが大好きになってしまいました。読者のみなさんにも好きになってほしいと心から願っています」作者はこう書いた。