Posted by ブクログ
2011年06月26日
たしかに悪ってかっこわるいですね!賛成!
とクリスティに言いたくなる話だった。
<あらすじ>
考古学者マーク・イースターブルックは『蒼ざめた馬』という言葉が何人もの人の死と絡んでいることに気がつく。
それはマッチ・ディーピングという田舎町の古い家の名前で、
村で魔女と噂される3人の女が住む家だった...続きを読む。
一体彼女たちは何を知り、何をしているのか?
クリスティは冒険小説も数多くものしているけれど、
これもオカルト趣味的な面はあるけど基本的にマークが主人公の冒険ものと言っていいかもしれません。
強引にテーマを選ぶなら多分それは『悪の空疎』さでしょうか。
冒頭から、悪の魅力について何度も触れられています。
ですが話が進む中で、だんだんと悪の持つ不恰好さ、卑しさを解説していきます。
作中人物の一人で、『蒼ざめた馬』がある村の牧師夫人は
『悪が自分を必要以上に自慢するのは、その悪そのものが、目的の無いものだから。人に賞賛されなければ意味が無くなるものだから』
と言っています。
"悪事"の全てが無目的とは思わないけれど、確かに目的の無い、人に凄いと思われるためだけの悪には当てはまるかなあとおもいます。
自分に酔って客観性を失っているところは厨二病っぽいかも。
逆に、『本当の悪は絶対自慢しない』とも言われているし、
それについては言及されていません。
クリスティの作品にはときどき自分の頭の良さを証明したいが故に大規模かつ組織的な犯罪に手を染める人がいるけれど、本作で指している悪はそういう人なのでしょう。
クリスティの倫理観が現れているのかもしれません。
1961年の作品だそうですが、ビートニク世代の服装や生活習慣、核実験によるフォールアウトなど、当時の風潮が”おばあちゃんの目”で描写されているのも面白かったです。
どうでもいいけど、この牧師夫人、ミス・マープルものでも出てた気がします。ミステリアスでちょっと威圧的だけれど、悪に対する彼女の実際的な考えはなるほどと思わされました。