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Posted by ブクログ
読み終わった後の感慨がすごくて戸惑っている。
何箇所か読み直したりしている。
原題は GIANT’S BREAD (巨人の糧)、邦題は 愛の旋律。読んだ感想としては、巨人の糧のほうがしっくりくる。愛の旋律が想像させる、優しい愛の物語ではない。
主人公ヴァーノンにまつわる2人の女性が出てくるが、私はジェーンというキャクターが本当に好きになってしまっている!しっかり自分の人生を生きてきた、1人でも生きていける強い女性。依存的ではないし、愛を与えて、尽きない。
もう一方のネルは、美人さんな上にネルなりに頑張っていて素敵。でもジェーンとは質が違う。ヴァーノンが救うのは最後にはネルで。でもそのためにジェーンを失うことになり、自分が心から愛していた人はジェーンと気づく。男性の心理として美しくてか弱い人は本能的に助けたいのだろうなぁ。死にゆくジェーンの気持ちになったりして、感情に浸ってしまう。読み終わるのが残念なくらいどっぷり浸かりました。
春にして君を離れ に続いて2作目のメアリ・ウェストマコット名義の作品。引き続き読んでいきます!
Posted by ブクログ
アガサ・クリスティが別名義で発表した、ミステリではない小説。
クリスティの人生に波乱が起きた後に書かれた長編で、ドラマチックで面白い。
渾身の出来に、さまざまな思いが浮かびます。
原題は「巨人の糧」で、天才はすべてを捧げつくすといった意味合いが主で、さらに二重の意味も‥
オペラ劇場で画期的な新作「巨人」が公演され、評判となるプロローグ。
さかのぼって、作曲家ヴァーノン・デイアの子供時代から。
幼いヴァーノンは内気で、空想の友達と遊んでいた。
みごとな邸宅でナースと女中達に囲まれ、裕福に育ったのだが。
実は父は邸宅を維持するために結婚し、母は留守がちな父をなじり、喧嘩が絶えない。
生命力豊かで美しいが夫を理解しない、やや愚かしい母親。この母のイメージがいささか強烈ですが、この後に出てくる人たちも皆どこかで、愛しても思うようにならない葛藤を抱えることになるのです。
奔放な従妹のジョーと、隣人のセバスチャン・レヴィンが親友となり、3人の長い付き合いが続くことになります。
幼馴染のネルが美しく成長し、社交界で結婚相手を探していました。ヴァーノンと恋に落ちますが、母は借金を抱えていて‥
ヴァーノンは就職しましたが、それでは自分の実家を維持する費用もないのです。
子供の頃は音楽が苦手だったヴァーノンは、実は天才だった。
すべてを得ようとして得られず悩む彼の前に、ジェーンという年上の女性が現れます。
自由な生き方をしている才能ある歌手なのですが、オペラを歌うには声が細く、喉をつぶす危険を冒していました。
裕福な相手とヴァーノンの間で迷うネル。
ネルとジェーンの間で揺れる運命となるヴァーノン。
そして、第一次世界大戦が‥
行方不明になったヴァーノンは‥?
評判のテレビドラマ「ダウントン・アビー」と近い時代なので、似たモチーフもあり、服装は大体ああいう格好ですね。
アガサ・クリスティは、家庭でユニークな母(ただし夫婦仲はよい)に教育を受け、内気な子供だったよう。オペラ歌手を目指していた時期もあり、天才を目の当たりに見た経験もあるのでしょう。
夫の愛人発覚、自身の一時的記憶喪失、離婚、再婚という波乱を経て、登場人物のいろいろな面に経験を生かしているようです。
ミステリでは描ききれなかった思いがほとばしるよう。
あるいは、作家としての成功が夫との亀裂を招いたという思いもあるのかも‥
(ハンサムな最初の夫とはあまり共通点がなく、クリスティの作品ではハンサムな男性はたいてい悪党なのはそのせいかもしれません?!)
めでたく再婚した年に発表された小説ですが、書かれたのはもっと前でしょう。
ハッピーエンドとは言い切れないのですが。オーケストラのように盛り上がる構成に、苦難を乗り越えて生きていく力強さも感じられます。
Posted by ブクログ
ノンシリーズ(メアリ・ウェストマコット編)。
本作品は、ヴァーノン・デイアという一人のだめんず・・もといw、若き気鋭の音楽家(作中ではまだ原石ですが)の愛と苦悩、そして彼をめぐる人々の波乱の人生を描いた、“ミステリではないクリスティー”でございます。
美しい屋敷(アボッツ・ピュイサン)で生まれ、空想に耽った繊細な幼少期から始まり、従妹のジョー、幼馴染のセバスチャンやネルと過ごした少年期。
音楽に目覚め、美しく成長したネルと恋に落ちる青年期、そして圧倒的な歌声を持つオペラ歌手・ジェーンとの出会い、さらに戦争の勃発・・と、ヴァーノンをメインに五人の男女が運命に翻弄されながら生きていく展開です。
主人公ヴァーノンは「純粋で芸術的才能はあるけれど、付き合うと絶対に苦労する男」で、彼の“夢見るお子ちゃま”っぷりにはイラッとさせられっぱなしでしたw
そんなヴァーノンを巡るネルとジェーンという二人の女性の対比が特に印象的でしたね。
前半はキラフワ系女子だったネルが、戦時中に病院で一生懸命に働く姿はとても健気で良かったのに、彼女の病院勤務を「看護なんて、きたない仕事じゃないか」と、否定して自分の理想ばかり押し付けるヴァーノンにまたイラつく私・・(-_-;)。
(で、ネルが不安になった絶妙なタイミングで金持ちおじ様・ジョージ登場という・・ま、これはミセス・ヴェリカーの策略だと思いますが・・)
一方、大人の魅力に溢れていたジェーンですが、終盤でネルに対してかなり意地悪な牙を剥いたりと、そんな女の執念というか、剥き出しのエゴの描き方にゾクゾクさせられました。
さらに、奔放で自らしんどい恋愛に走ってしまうジョー、冷静に時流読む眼を持ち事業で成功していながらもジョーへの切ない想いを抱き続けるセバスチャン・・。
といった、それぞれ悩みや葛藤を抱えた登場人物たちが織りなす物語に、つい引きこまれてしまった次第です。
かなりのヴォリュームでしたが、読み終わった瞬間、思わず深い吐息が漏れてしまうような・・そう、まるで一本の重厚な映画を見終えたかのような読後感を味わっております。
ということで、クリスティの天才的な人間描写の上手さが遺憾なく発揮された、濃厚な人間ドラマを堪能させて頂きました。
未読のクリスティー作品は、ノンシリーズ(と戯曲)のみなので、残りを少しづつ読んでいきたいですね~。
面白かった
ミステリーではないです。
クリスティの別名義の作品です。
みんな幸福をつかむチャンスはあったはずなのにね。
でもそうはしなかった。
望んで不幸になっているようにも見えるし。
まあ幸せなんて本人の思い込みなわけで
他人がとやかく言うものではないけれど。
ほんとうの幸いってあるのかな。
Posted by ブクログ
おもしろい。一気に読んでしまった。ミステリーではないが、5人の若い男女の織りなす愛の物語と、作曲に憑かれた男の創造意欲、そして第一次世界大戦をはさむ非常時に翻弄される運命が二転三転する様はまるでミステリーのようだ。
イギリスの何代も続くお屋敷に生まれたヴァーノン・ディア、従妹のジョー、隣に越してきたユダヤ人少年セバスチャン、そしてヴァーノンの幼友達ネル、オペラ歌手ジェーン。ヴァーノンとセバスチャンはケンブリッジ卒業後すぐに第一次世界大戦に召集なので、おそらくクリスティと同年代の設定。主人公ヴァーノンの音楽への創造意欲、友人セバスチャンの商売、奔放な愛に生きるジョー、男の経済力に頼るネル、声楽でも己の愛にも強い主張のある女性ジェーン、この5人すべてがクリスティの分身なのではないかと感じる。
冒頭の現代音楽とおぼしき音楽界の様子、「我々は戦争によって実に多くのものを失ったね」
一転、ヴァーノンが1歳の頃からのお屋敷での使用人との日々、折り合わぬ父と母、ひとり空想で遊ぶ日々が綴られる。けっこう長いのだが、これが主人公ヴァーノンという人物を理解する基礎となる。
長じてボーア戦争で戦死した父を残し実家近くに引っ越す母。息子が母を疎う気持がリアル。そして父のお屋敷の直系として屋敷を愛する気持ち。姻族とは所詮義理の関係なのだ、結局、人生の終盤には出自の血族に意識は戻るのか、といったあたり、還暦過ぎて読むとなかなかリアルだ。だがクリスティはこれを40歳の時に書いてるんだなあ。
1930発表
2004.2.15発行 2019.6.15第2刷
Posted by ブクログ
人が才能を持って生まれるのか、才能が人を選ぶのか。偉大な音楽の才能を持って生まれた主人公の青年が、たったひとつの道のためにほかの全てを失うまでの物語。あるいは人のエゴと自己愛、欺瞞、その醜さについての物語。
ずいぶんと救いようのない話だった。つまらなかったというのではない。読み始めれば劇的な展開もないうちから引き込まれ、分厚い本にも関わらず短期間で読み終えてしまった。面白く、人間の業が描かれていて、そして意地の悪い話だった。見たくないものをつきつけられるようなところがある。悲劇なのだが、悲劇に浸って気持ちよく涙を流せるというようなカタルシスではない、皮肉な話だった。
クリスティは「春にして君を離れ」に続いてまだ二冊目なのだけれど、「春にして~」と共通するテーマが根底にあるような気がした。人がいかにして自分を誤魔化し、正当化し、己の正義を信じるために多くのことに目をつぶるかということ。愛と名付けられたものの欺瞞。
Posted by ブクログ
「愛の旋律」……訳名つけた人、出てこい!!といいたくなりそうな題名ですね。
ミステリーじゃないクリスティです。もともと、アガサ・クリスティ名義ではなくて、メアリ・ウェストマコット名義で書いた作品だそうです。
展開は、ベタベタです。
2人の女性の間で揺れ動く、天才音楽家……みたいな。それを幼なじみたちを交えて、少年時代から書いていく。そしてもちろん(笑)、記憶喪失もあります。
もう、ここまでやるかというぐらいベタな展開なのですが、「マリンブルーの風に抱かれて」の時にも書いたのですが、クリスティや、矢沢 あいみたいな、話作りがうまい人がやると、すごい迫力になります。
若干、迫力過多な気もするぐらいです。
でも、650ページ弱、一気に読ませる小説です。
クリスティ文庫、表紙いいよな。うまいよな。……内容とは、あんまり関係なかったりするけれど。
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