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優しい夫、よき子供に恵まれ、女は理想の家庭を築き上げたことに満ち足りていた。が、娘の病気見舞いを終えてバクダードからイギリスへ帰る途中で出会った友人との会話から、それまでの親子関係、夫婦の愛情に疑問を抱きはじめる……女の愛の迷いを冷たく見すえ、繊細かつ流麗に描いたロマンチック・サスペンス。
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Posted by ブクログ
アガサ・クリスティ、こんな小説も書くのですね。 どうか、どうか、ジョージに救いを、と読みながら切に願うのは、自分が「ジョージ」だからなのだろうか…。 ずっとドキドキしながら読み進んだ。 こんな小説の書き方あるのか…という驚きと展開の面白さ、謎解きのスリルに、読み始めたら止まらなかった。 こんな自...続きを読む分への気づきも確かにある。自分が自分の謎を解いていくミステリー。 そして、謎解きだけで終わらないラスト。 恐るべしアガサ・クリスティ。 人間観察の鋭さに脱帽。まともに読んでないクリスティのミステリー群を読み直したいとも思う。 あー、すごい小説ってまだまだたくさんあるのですね!
面白かった。 序盤からの違和感がどんどん積み重なっていって、主人公のヤバさがじわじわ伝わってくるところが静かだけどスリリングでした。 読みながら何度も主人公夫妻につっこんでて、翻弄されっぱなしでした。 ラストも含めて、主人公に対してものすごく冷たい書き方をしているのが、ミステリー作家だから容赦...続きを読むないなと思いました。 1944年の作品で戦時中にこういう作品が発表されていたということに驚く。
主人公から見える世界の移り変わり、どんどん明らかになっていく新事実がすごく面白かった。続きが気になってどんどん読み進めた。 帰路イギリスが近づくにつれだんだん元の主人公に戻っていく様子もひしひしと伝わってきた。 結末の主人公の選択は少し残念だったけど、自分探しの旅⭐︎反省して家族にも謝って許してもら...続きを読むえてハッピーエンド⭐︎というのも拍子抜けなのでこの結末が物語としては一番余韻があって好きだと思った。 以下雑メモ ・ロドリーもロドリーでまるで聖人のように描かれているけど(ジョーンから見てそうならまぁいいんですが…)ジョーンに悪者役押し付けて子供に良い顔して、自分で物事決められなかった責任も転嫁して尻に敷かれたままウジウジ日和ってる浮気男じゃんともやっとした ・レスリーとアヴァリルがかっこよかった。 ・前職のお局ババアがやたら家族と仲良し幸せアピールしてたけど実態こんな感じだったのかなと思いながら読んでいた。 と、ともに自分も家庭を持つにあたり気をつけないとなと思った。
おもしろいー!夢中で読んじゃった。最後の決断もリアル…。詩に詳しかったらもーっと楽しめたんだろうな。
自分の正しさを疑わず、回りの人間にもそれを押し付け、それにより他の人が悲しんだり怒ったりしていても、それを見ずに済ませ、簡単に忘れてしまう。 そんな人物がふとなんもない場所にポツンと取り残されてしまったとき、 初めて自分の真実と対峙する。 そして現実を受け入れ、赦しを乞う決意をするのだが。 ラス...続きを読むトで視点が反転し、もう一方からの視点が入ることに、 今作の計り知れない深みがある。 誰かが悪くて、誰かが正しいとか、そんなシンプルなもんじゃない。 いわば倦怠夫婦ものと言っていいのか、 ものすごい読後感でした。
ゆるやかな導入から、主人公の内省が深まっていくにつれて、怖くなってきてしまう。 心の奥底からジワジワと冷たい水が湧いてきて、冷たくて、いてもたってもいられない感じ… ポッドキャスト「文学ラジオ空飛び猫たち」さんで紹介されて、積読になっていたことを思い出し。よいきっかけをいただきました。 ジョーン...続きを読むの発言に対して、家族から返ってくる言葉の数々。離れてみていれば、そのすれ違い加減がみえて、痛いし怖い。しかし渦中にいると全然見えてない。見ようとしていないのか。 生きていくためには見ないことも必要なのよって言われそうだけど、それってやっぱり無理があるかもなぁ。 時代も場所も違う、同じような状況でもない。 しかしこういうこと自分にも思い当たる節がある。 あなたのためを思ってという言葉って本当にあなたのためを思っているなら、そう簡単には言えない言葉。なのに、近しい人にほどつい言ってしまいそうになる言葉。 夫のロドニーも一見理解者っぽく見えて、実は結構なかなか…夫婦、家族、人間関係は鏡に映るようなものなのでしょうか。
娘を見舞う旅の帰りに、砂漠で足止めされた美しい主婦ジョーン。汽車を待つ間、やる事なくてヒマすぎていろいろ考え始めます… 怖すぎる話でした。 友達の言葉が引き金になって、無意識に自分が見ないようにしてきた様々な事象が次々頭に浮かんでしまう。それがパズルのピースようにカッチリはまって、今までの自分の「良...続きを読むかれ」が全否定されてしまいます。 その過程も怖いのですが一番はラスト。 「ああ〜〜〜(脱力)」ってなるけど、でもわからないでもない。 ロドニーを想うとやるせない。 そして「じゃ自分はどうなのか」と、もうずーっと怖いです。
『春にして君を離れ』を読み終えてまず感じたのは、これはミステリーではなく、人間の自己認識を描いた物語だということだった。アガサ・クリスティーと聞くと、どうしても殺人事件や巧妙なトリックを期待してしまう。しかし本作には探偵もいなければ本格的な謎解きもない。それにもかかわらず、読み終えたあとに残る衝撃は...続きを読む非常に大きく、人間という存在の怖さをここまで静かに描いた作品があるのかと驚かされた。 主人公のジョーン・スカダモアは、世間から見れば理想的な人生を歩んできた女性だ。弁護士の夫を持ち、子どもにも恵まれ、自分自身も善良で常識的な人間だと信じている。物語の序盤では読者も自然とその認識を共有する。しかし旅先で足止めされ、一人きりの時間の中で過去を振り返り始めると、少しずつ違和感が積み重なっていく。夫との関係、子どもたちとの関係、友人たちとの関係。そのすべてが、ジョーンが思っていたものとは違う形で見え始める。 本作の面白さは、過去の出来事そのものが変わるわけではないことだ。同じ出来事を振り返っているだけなのに、見方が変わることで意味がまったく変わってしまう。ジョーンはずっと「相手のため」を思って行動してきたつもりだった。しかし読み進めるうちに、その善意の中には自分の価値観を押し付ける傲慢さがあったことが見えてくる。本人は愛情だと思っていた。親切だと思っていた。正しいことだと思っていた。ところが周囲から見れば、それは息苦しさや支配として受け取られていたかもしれない。そのズレが少しずつ明らかになっていく過程には、サスペンス作品にも負けない緊張感があった。 読んでいて特に印象的だったのは、ジョーンが決して悪人ではないことだ。むしろ世間にはジョーンのような人はたくさんいると思う。真面目で、善良で、家族のことを考えている。しかし人は、自分が善人だと信じているときほど、自分自身を客観視できなくなるのかもしれない。本作はそんな人間の弱さを容赦なく描いている。 そして何より衝撃だったのはラストだ。物語の途中でジョーンは、自分の人生の真実にかなり近いところまでたどり着く。読者としては、ここから彼女が変わっていくのだと思う。しかし本作はそんな単純な成長物語ではない。ジョーンは真実を理解しかけながら、最後には再び自分にとって都合の良い認識へと戻っていく。自分の過ちを認めるには、その真実はあまりにも重すぎたのだろう。 だから読後に残るのは爽快感ではない。むしろ不気味さだ。ジョーンは変われなかった。しかし読者は、ジョーンが見ようとしなかったものを見てしまった。その瞬間、この物語は他人事ではなくなる。自分もまた、気づかないうちに誰かを傷つけていないか。自分は本当に自分を理解できているのか。そんな問いが静かに残り続ける。 『春にして君を離れ』は、事件の真相を暴くミステリーではない。人間が自分自身について抱いている幻想を暴く物語だ。人は他人を誤解する以上に、自分自身を誤解して生きているのかもしれない。その事実をこれほど静かに、そして鋭く突きつけてくる作品はそう多くない。読み終えたあとも長く心に残り続ける一冊だった。 #2026年19冊目
面白いし、後からじわじわ色々考えさせられる。 読んだ後にどんな話だったかすぐに忘れてしまう作品も多いが、この本のテーマはずっと覚えているだろうと思った。 3人の子供を立派に育て、弁護士の夫に愛され、中年を過ぎてもまだ若々しく美しい容姿を保ち、自信満々の主人公「ジェーン」の一人称視点で、ほとんどの物...続きを読む語が語られる。 娘の見舞いのための一人旅の帰り道、砂漠で数日間立ち往生することになり、そこで自分の人生を顧みる時間を得たジェーンのお話。 自分は本当に夫に愛されてきたのか?、自分は夫の事も子供の事も本当は何も理解していなかったのではないか?という思考に引き釣り込まれていく。 誰もが自分を守るために、見て見ぬふりをしていることだったり、これ以上考えないようにしてしまうことがあるはず。 私も辛かった過去の時期や出来事ほど、自己防衛本能が働き、記憶から抹消されて、今はほとんど思い出せないことがある。 読んでいて、ジェーンのことを思慮に欠けて愚かだと思ってしまうが、それは自分自身の姿でもあると思った。ラストの展開まで完璧。 ミステリー小説ではないが、流石のアガサ・クリスティである。
幸せな家庭を築けたと信じる中年主婦が、旅を通じて自分を見つめ直し思考していく物語。さすがのクリスティで読みやすさ抜群、冒頭からの展開も面白く、若い頃ではなく主人公と同年代の今、読めて良かったです。人生は何が大事なのか、人生に正解はないのか、考えさせられます。
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春にして君を離れ
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アガサ・クリスティー
中村妙子
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