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優しい夫、よき子供に恵まれ、女は理想の家庭を築き上げたことに満ち足りていた。が、娘の病気見舞いを終えてバクダードからイギリスへ帰る途中で出会った友人との会話から、それまでの親子関係、夫婦の愛情に疑問を抱きはじめる……女の愛の迷いを冷たく見すえ、繊細かつ流麗に描いたロマンチック・サスペンス。
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Posted by ブクログ
さすが女王、アガサ・クリスティー! 誰も死ななくてもこの緊張感 人間心理の根元をひとつの家庭、一人の心の中の葛藤だけで物語を構成させるとは 虚栄心を砂漠の蜃気楼へのたとえ そしてラストの気持ちの迷い さすがに歴史に名を残す作家です。
人間の奥底にあるものを抉り出して曝け出したようなストーリーで、80年以上前出版されたものであっても、現代を生きる人間共通の悩みや広い意味での人間関係に起因する憤りがありありと描かれていて個人的には痛快というか、色々考えさせられます。特に夫婦関係とかですね...
湊かなえさんが「あの本読みました?」でオススメしていて読んだアガサ・クリスティ初作品。新しい扉を開けてもらった気がする。舞台は第二次世界大戦前のイギリスだが、21世紀にも通ずる思想だ。心の葛藤の描写にグイグイ引き込まれた。自分が知る自分と他人が思う自分。誰しも自分の見たいように自分を見る。自己評価と...続きを読むの乖離。栗本薫さんの解説に共感する。「それは最終的にはその当人の責任でしかない」「この小説は永遠に苦い切ないバイブルである」
【ネタバレあり】『春にして君を離れ』レビュー 読んだきっかけ 文芸評論家の三宅香帆さんがおすすめの一冊として挙げていたのがきっかけです。「平凡な主婦の話で、誰も死なない」という紹介に興味を惹かれました。アガサ・クリスティー作品は『そして誰もいなくなった』『オリエント急行の殺人』を読んだことがあり、も...続きを読むう一冊探していたタイミングだったため、別名義(メアリ・ウエストマコット)で書かれた本作を手に取りました。 あらすじと物語の背景 3人の子供に恵まれ、一見すると非常に幸せな家庭を築いてきた主人公のジョーン(名前はマザーグースの「ジャンプのジョーン」に由来)。彼女は娘の住む中東を訪ねた帰り道、砂漠のレストハウスで足止めされ、一人きりで自分の人生を振り返ることになります。 家族との思い出を辿るうち、「良き妻、良き母」という自己像は徐々に崩壊していきます。3人の子供たちは彼女を信用しておらず辛辣で、使用人たちも必要最低限の仕事をするだけで冷ややかです。夫のロドニーも、娘の元へ向かう駅でどこかあっさりと去っていきました。周囲の描写から、誰にとっても「ジョーンと一緒にいることが苦痛である」という事実が浮かび上がってきます。 なぜ家族にとってジョーンは「苦痛」なのか ジョーンは常に「あなたのため」と言いながら自分の価値観や正解を押し付け、無意識に自分にとって都合の良い人物像を演じさせていました。その結果、家族は「自分で自分の人生を決める」という人間として最も大切な本質を奪われていたのです。 夫・ロドニー: 本当は農家になりたかったものの、弁護士事務所の仕事を続けている。 子供たち: 本当に望む人生や愛する人との結婚を選ぶことができず、矛盾と生きづらさを抱えている。 周りの心が離れ、ジョーンが孤独であることが読み手にも、そしてジョーン自身にも次第に分かっていきます。 改心と結末の残酷さ 砂漠での内省の末、ジョーンは「自分は悪い妻であり母だった。夫に許しを請わなければならない」と気づき、改心を決意して帰宅します。 しかし家に着いた瞬間、「謝罪するか、何事もなかったように振る舞うか」で葛藤した彼女が口にしたのは、「ただいま、ロドニー」といういつも通りの一言でした。彼女は元の自分へと戻ってしまったのです。 夫のロドニーは、かつてレズリーという女性を愛していました。レズリーは外見こそ魅力的ではないものの、困難な人生を自身の信念で生き抜く勇敢な女性でした。ロドニーが惹かれたのは、彼女のその「生き方」だったのだと感じられます。しかし、結婚の誓い(健やかなるときも病めるときも添い遂げるという契約)を守り抜く倫理観を持つロドニーは、どれほど心が離れていてもジョーンと添い遂げる道を選びます。 物語のラストで離婚届が出されることはありません。ロドニーが心の中で呟く「かわいそうなリトル・ジョーン」という言葉には、彼女の心が永遠に満たされることがなく、真の意味で一人ぼっちであることを見抜いた残酷な冷ややかさが込められています。 感想と自分への問いかけ 外見上は恵まれた成功した人生に見えながら、その内実は非常に孤独で悲惨であるという描写に、深い衝撃を受けました。 一方で、変えられない現実の中で「結婚の誓い」を守り、最善の手を打ち続けて静かに耐えるロドニーの生き方にも考えさせられます。 自分自身の振る舞いを振り返り、「自分も知らず知らずのうちに、誰かにとってのジョーンになってはいないだろうか」と深く内省させられる、非常に味わい深い名作でした。
読み終わって、恐ってなった! アガサ・クリスティー作品ではあるが、 殺人事件とか何も起きて無いんだけどಠ_ಠ 家族の歪さをこれでもかと見せつけられた。 家族を、夫を心から愛していると信じるジョーン・スカダモアの有りようが哀しいし、虚しい。 本人は良き夫、良き子供たちに恵まれて理想的な家庭を手に入れ...続きを読むたと自負しているのに、「知らぬは当人ばかりなり」といった具合に事実は全くの逆。それを段々に鋭く描き出しているから凄まじい! 流石のクリスティーだな、と感嘆しました。 砂漠の只中で一人、自身の内面を省みることしかやる事が無くなっていく描写が寒々とこわかった… 汽車がやっと着いて、徐々に現実の生活に戻りながら利己的な自身をも取り戻していく様子も哀しい。人はそう簡単に変われやしないと分かってはいても。
最近人気のとある作家が「これを読まずしてしねない」みたいなことを言ってて手に取った。中々どうして、80年前の小説なのにしっかり心に刺さってくる。ジョーンはせっかく内省のチャンスを得て答えまで辿り着きながら、最後の最後で手放してしまうところが非常に人間味がありめちゃくちゃ共感してしまった。そう、自分の...続きを読む弱さに向き合い立ち向かう勇気を振り絞るのは、いうは易しなのである。分かりすぎる。 そしてオチは当然ながらでビックリはしなかったが、夫もとうに妻を見限っていて、虚しさを感じた。 個人的にこのようなネガティブな読後感、あと主人公が痛々しい系は面白さは感じてもハマりきれないところがある。それは自分も痛々しい系であることを分かっており、逃げ続けている人間であり、小説には逆のパターンを求めているからだ、ということも何となく分かっている。
終盤までは主婦版のスクルージのようだった。ところが、最後のロドニーの言葉でホラーに変わった。 自分の正しさを疑うことは必要ですね。
なんと言うか…アガサの時代から、男女、夫婦、家族って変わらないんだなぁ、って思った。お偉いスカダモア家の皆様はジョーンが鬱陶しくて仕方ないらしいけど、私はジョーンの気持ちがすごく分かる。 だって、私、間違ってないじゃない。 そりゃぁ、全てに大満足ではないけれど、子どもたちは皆、それぞれに独立し人さ...続きを読むまにご迷惑をかけずに暮らしている。 夫は仕事で成功している。 ねぇロドニー、いつだって私が家族のことをちゃんと判断できる女で良かったと思わない? ていうか、実際そうじゃん… 弁護士やりたくない、農場やりたい。良家の子女より不良と付き合いたい。したいことをしたい。そうしたいからそうする。なのにいつもお母様が邪魔をする!…って。 何なんだこの家族。 やってみなきゃ分からないこともあるけど、リスクを突きつける人がいなかったら、あんたたち家族全員、今頃路頭に迷ってたかもしれないよ?今、あなたたちがジョーンの悪口を言えるのは、ジョーンが不自由しないように切り盛りした結果、普通以上の暮らしができてるから。なのにジョーンの犠牲には誰も気づかないのね。 実際、次女のボーイフレンドはろくでなしだったし、旦那が買おうと思ってた農場は、結局抵当に入ってるじゃん(あんた、この農場はたまたま不運が重なっただけですぐ持ち直すって言ってたよね?)。ジョーンがロドニーに唯々諾々と従い、潰れかけの農場でその日暮らしになったとしても良かったの? ま、仮に農場経営にシフトしたとしても、ジョーンならうまく切り盛りして、結局繁盛させたと思うけどね! 今ならこんなのがSNSにでも上がれば「家族に搾取されてますよ!」「全力で逃げて!」「自分の人生を生きて!」って言われそう〜。
時代背景とか全然違うのに、なんかリアルで生々しく感じて、怖くもあり面白くもあった。 クリスティ作品のキャラクターは、いつも本当に 生きている人のような感じがする。
読み始めてすぐに「これって完全に義母じゃん!」ってなって、こんな風な考えのもとの言動だったのか、、と再確認した。ロドニーの役割をしていたのが義弟で早逝した。 人との境界線が無くて人をコントロールする事を正しいとする内省しない人間って、近くにいる人が崩れるか離れるかしかなくなる。 私にとってこの物語は...続きを読むリアルで救いがない。
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アガサ・クリスティー
中村妙子
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