杉の柩

杉の柩

小説・文芸
1,320円 (税込)

6pt

婚約中のロディーとエリノアの前に現われた薔薇のごときメアリイ。ロディーが彼女に心変わりし、婚約は解消された。エリノアの心に激しい憎悪が湧き上がり、彼女の作った食事でメアリイが死んだ。犯人は私ではない! エリノアは否定するが……嫉妬に揺れる女心を、ポアロの調査が解き明かす。

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杉の柩 のユーザーレビュー

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感情タグBEST3

    Posted by ブクログ

    “心に描いただけの殺人はなんらの害を及ぼしません”

    ロード医師のことばが、クリスティー読者を安心させる。クリスティー自身への弁護にもなろう。

    “人は、長いこと殺人を心にあたためていると、かならず突然その暗黒の想いから脱け出し、何もかもが、なんかばかげていたような気になるものなんです”

    当時はクリスティーのことを「読者を殺人に駆り立てる可能性がある」と批評する声があったかもしれないし、クリスティー作品を読んでいると「人殺しの本ばかり読んで」と眉をしかめられたのかもしれない。それでなくとも、誰かのことを憎み、あの人がいなければいいのにと夢想することは、誰しも一度はあるんじゃなかろうか。そんな我々の後ろめたさを、ロード医師の言葉が肯定してくれるかのよう。確かに殺人のことを考えている方が、相手への憎悪を無理に押し込めておこうとするより健全な気がする。そしてミステリを読むことで、日々の鬱憤が晴れる面もあるだろう。クリスティー作品の素晴らしさが、この言葉でメタフィクション的に語られている気がする。

    ところで遺言状を、「まだ大丈夫」と先延ばしにして書かずじまい……というのは80年前も同じだったのだな。

    0
    2026年09月09日

    Posted by ブクログ

    1940年の作品。
    エルキュール・ポアロシリーズ長編18巻目。

    あらすじ
    大富豪の老女ローラ・ウェルマンの姪であるエリノア・カーライルは、親戚で幼なじみのロディ・ウェルマンを深く愛しており、2人は婚約していた。ウェルマン夫人の遺産を狙っている娘がいるとほのめかす匿名の手紙が届いたことがきっかけで、エリノアとロディは夫人の館を久しぶりに訪れる。館の門番の娘のメアリィ・ジェラードをウェルマン夫人は可愛がり、教育を受けさせたり面倒を見ていた。ロディは、美しいメアリィを一目見た瞬間、彼女に夢中になってしまい、それを知ったエリノアはロディとの婚約を解消する。その後、ウェルマン夫人が遺言を残さず亡くなり、唯一の肉親であったエリノアが莫大な遺産を相続する。さらにその後、メアリィジェラードがモルヒネにより毒殺された。警察は嫉妬による殺人と判断し、エリノアは容疑者として裁判にかけられる。エリノアを助けるためにロード医師が依頼したエルキュール・ポアロが真相に迫る…


    ポアロに珍しい法廷モノ。そして文句なしに面白い!何より構成が素晴らしい!
    なかなかポアロは出てこないんですが、感情を表に出さないエリノア・カーライルの心情が巧みに描かれていて、深く愛する男性が別の女性に恋に落ちてしまうことを知った彼女の切なさに胸が締め付けられます!
    そしてそんな彼女を一途に想うロード医師…。

    ポアロが優しい。恋のキューピッドさながら慈愛に満ちています。ヘイスティングス君やジャップが出てこないとポアロすごいいい奴に思えるw
    裁判のシーンは手に汗握る臨場感。伏線回収していく清々しさ!さらに、この伏線関係なかったんだ!とバラしていく巧みさも素晴らしい〜!!
    クリスティ作品の中でも大好きな作品の一つです。

    0
    2025年05月11日

    Posted by ブクログ

    これ面白い!トリック、動機、伏線回収どれもワクワクした。楽しかった。命懸けの殺人だったね。ポアロはやっぱり天才だ。

    0
    2024年10月24日

    Posted by ブクログ

    恋愛要素が強めのミステリー小説。
    恋愛のドキドキ感とその中で巻き起こる事件のドキドキ、両方のドキドキが味わえる一冊でした。

    0
    2024年07月27日

    Posted by ブクログ

    audibleにて。そろそろ朗読が残り少なくなってきて悲しい。クリスティーには珍しい、裁判から始まる物語。これは…逆転裁判だー!法廷ミステリってあまり読んだことないんだけどこんな感じなのかな。ポアロじゃなくてもよかったのでは?とも思うが、ここからどう逆転するんだ?という追い詰められっぷりからのひっくり返し方は鮮やか。遺言書が出てくるクリスティーの作品、犯人の動機はだいたい金である。
    素晴らしい女性がどう見てもダメ男にハマるパターンいい加減にしてほしい。
    あまり関係ないが時系列適当にシリーズを読み進めていると殺人即絞首刑の時代があったこと、途中でそれが変わっていることが分かるの興味深いな。イギリスは1998年に死刑廃止したらしい。

    0
    2026年07月18日

    Posted by ブクログ

    ポアロシリーズ。
    約半年ぶりのアガサ・クリスティーだったけど、この雰囲気…やっぱいいなぁ、としみじみ感じ入る。

    本作もクリスティー作品ではお馴染みの、裕福な美女を巡るロマンスが事件の軸となる。
    もう殆どエリノアが詰んでいて、もうこれ、どう見てもアカンくない??って感じなのに、その後の展開ったら!!やばっ!おもしろすぎ!

    今回もさすがのポアロさん。
    些細な疑問点から事件の真相に迫る。
    お見事でした。

    っていうか、三角関係を呈していたあの男がなんだかんだ言ってダメなんだと思う。
    この辺の恋愛感情のもつれ具合なんかも、著者が仕掛けたトリックの一つなのかな。

    0
    2026年06月12日

    Posted by ブクログ

    ポアロシリーズ18作め。1940年の作品。
    ちなみに『そして誰もいなくなった』は前年1939年の作品。

    原題は『Sad Cypress』。直訳すると「悲しいイトスギ」。
    杉も柩も出てこなかったよな?と思いましたが、冒頭に掲げられているシェークスピアの『十二夜』からの引用だそうです。

    私はクリスティー作品によく出てくる男女の三角関係が大好物なんですが、ここでは何角関係? エリノアをめぐる男性2人、ロディーをめぐる女性2人、メアリイをめぐる男性2人と三角関係が交差していて、さらにウエルマン夫人の過去のロマンスなんかもあったり。

    もちろん、三角関係にハーレクイン的なロマンチックなものを期待しているわけではなく、人間模様の中で描かれる心の機微だとか、醜さ、美しさ、悲しみだったりに惹かれるわけです。
    その点で『杉の柩』は、ミステリーというより、エリノアの悲しい恋を描いた恋愛小説のようで、私としては殺人事件など起こらず、このままこの複雑な三角関係を見ていたいと思えるおもしろさでした。

    エリノアが好きになるロディーがまたなんか憎めない男なんですよね。軽薄そうではあるけれど、エリノアからお金を受け取らない高潔さもある。ロディーが「騎士の精神を持っている」という証明に「出身校はどこですか」「イートンです」という尋問があるのが笑えます。イートン卒業生は紳士であるべきなんですね。

    エリノアは無罪か有罪かというのがストーリーの骨格で、ミステリーとしては大雑把で謎解きもやや強引。そのせいなのか、クリスティー作品の中ではあまり名前を聞かないのですが、クリスティーファンの間では人気も高いようです。

    (34ページ)
    「ね、ローラ叔母さま、本当のことを仰言って。恋って、いったい幸福なものでしょうか?」
    「エリノア、そうではない、多分、そうではないよ。ほかの人間を、激しく恋い慕うってことは、常に喜びよりも悲しみを意味するんだから。でも、それはともかく、そういう経験なしでは、人間、一人前じゃあない。本当に人を恋したことのない人間は、本当に人生を生きたとは言えないからね」


    以下、引用。

    14下
    恋愛とは、歓びの感情ではなかったのだろうか──こんな押しひしぐような苦痛である筈がない。

    29上
    「一番いいことをするつもりはあっても、さて、何が一番いいかってことは、これでなかなか判らないからね──何が一番正当なことかってことは。」

    33上
    「愛しすぎるってことは、賢いことではないからね。」

    34下
    「ね、ローラ叔母さま、本当のことを仰言って。恋って、いったい幸福なものでしょうか?」
    「エリノア、そうではない、多分、そうではないよ。ほかの人間を、激しく恋い慕うってことは、常に喜びよりも悲しみを意味するんだから。でも、それはともかく、そういう経験なしでは、人間、一人前じゃあない。本当に人を恋したことのない人間は、本当に人生を生きたとは言えないからね」

    36下
    「人間は、生きるという本能を持っているっていうことですよ。人は、理性が、生きろと命ずるから生きるのではないんです。よく『死んだ方がましだ』って言われてる連中は死にたがらず、あきらかに生きなければならない人達が、唯、闘い抜く気力がないために、好んでこの世から消えて行ってしまうんです」
    「たとえ、どう仰言ろうと、あなたは、本当は生きて行くことを望んでいる人の一人ですよ。そして、あなたの体が生きたがっているのに、あなたの頭がほかの部分を放り出そうとするのは良くありませんな」

    40上
    メアリイは美しい走りかたをする。優雅な動きをみせて。
    「アタランタみたいだ(ギリシャ神話の快足の美女)!」ロディーの声は甘くやさしい。

    42上
    「ね、先週、オールドアで、面白い映画を見たぜ。クラーク・ゲーブルのだ。百万長者の男が、細君をちっともかまってやらないっていう話でね。ところが、その細君が、不義をしでかしたようなふりをしてみせるんだ。そこにもう一人……」

    61上
    オブライエンのアイルランド人特有の作り話をする想像力がはたらき始めた。

    64下
    彼はモーニング・ルーム(朝の居間)にいた。

    74上
    マーナ・ロイの、新しい映画ごらんになった?

    76下
    先週、「大地」(パール・バックの作品の映画化されたもの)をみました。とても面白かったですわ。シナの女って、何もかも辛抱しなけりゃならないらしいようですよ。

    96下
    「ムッシュー・ポアロ、あなただけが頼みの綱です。スティリングフリートからあなたのことをうかがってました。ベネディクト・ファーレイ事件の件を。誰もかれもが自殺でかたづけていたのを、あなたが他殺だと証明したという話ですが」

    120下
    たちまち彼女とポアロ氏は、まことに面白い問題──ほかならぬ、エリザベス姫の未来の良人選びを話題に、たのしく話をつづけた。

    134上
    「きみ、いま、墓所(おくつき)にねむる、わがここは永久にかき暮れ、日の色もむなし」
    「ワーズワースです(一七七〇─一八五〇、英ロマン復興期の詩人。「ルーシィ」より)。よく読みますんでね。」

    191上
    「あなたはアイルランド人でしたね?」
    「さようです」
    「アイルランド人というのは、なかなか想像力がたくましいということになっているようですが」

    201下
    「あなたは騎士(ナイト)の精神をお持ちのようですな、ウエルマンさん」
    「どういうことですか、それは」
    「もし、レディがあなたに熱烈なる恋情を抱いており、あなたは愛情を感じないという場合、あなたはその事実を隠さないではおられないとい気持ちになられるのですか?」
    「そんなことはありません」
    「学校はどちらで、ウエルマンさん?」
    「イートンです」


    0
    2026年04月16日

    Posted by ブクログ

    動機と殺害可能な状況、という理由で、完全に犯人にされそうな状況のエリノア。エリノアを信じたいロード医師に頼まれてポアロは真実解明に乗り出す。ポアロがいろいろな点に着眼して裏取りの手回しをしているけど、最終的には裁判で明らかになる形になっている。

    この話は実はTVドラマでも見たが、ポアロは『味音痴のイギリス人が、サンドイッチの味の違いなんて分かるわけない』というようなことを言っている。イギリス人ではないポアロが軽くディスっている?小説にはそのシーンは無くて、テレビ用の脚色だったことに気づいた。あれ、面白かったんだけど…そうか、原作には無かったのか。

    0
    2025年12月16日

    Posted by ブクログ

    証拠集めではなく、会話から真実を探ってくのが読んでいて楽しい!同じ人物なのに、人によって全く違う印象だったり、少しずつ嘘をついていたり。犯人は、「そうか〜なるほど」でした。

    0
    2025年11月23日

    Posted by ブクログ

    シンプルな事件と思わせておいて、あれよあれよと見える視点がガラリと変わるテンポの良さがたまらない。自分も探偵と思って読んでいけば解けそうなくらい文章に真相がしっかりと描かれているのがすごい。いつもながらそこそこページあるのにあっという間に読んでしまう。

    0
    2025年09月09日

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