あらすじ
優しい夫、よき子供に恵まれ、女は理想の家庭を築き上げたことに満ち足りていた。が、娘の病気見舞いを終えてバクダードからイギリスへ帰る途中で出会った友人との会話から、それまでの親子関係、夫婦の愛情に疑問を抱きはじめる……女の愛の迷いを冷たく見すえ、繊細かつ流麗に描いたロマンチック・サスペンス。
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Posted by ブクログ
ろくに事前情報を得ていなかったので、「家族のために尽くしてきた女性だが、実は家族はそれぞれ後ろ暗いものを抱えており、それに気づいた女性が家族から離れて自由になる」……そんな物語を予想していた。
が、蓋を開けてみると、まったくの正反対。悪意なき支配で家族を縛り、しかもそれを正当だと信じて疑わない愚かな女性と、そんな彼女に反抗できず、自らの自由を勝ち取る心意気も無い情けない夫の話だった。
強い思い込みを持ち、自己満足で行動し、挙句に己の過ちや不都合なことから目を背け続けるジョーン。何となく身内を思い浮かべると同時に、自分自身にもジョーンの片鱗があったのではないか?とも考え、これまでの内省とは比べ物にならない、本物の内省が始まった。
結局、ジョーンはやっと気づけたすべてのことを知らないフリする結末を選ぶが、人間はそう簡単には変わらないのだということが示唆され、やけに現実味がある。ジョーンは反省して更生しました、めでたしめでたし、で終わらないのがまた良い。
相手を理解しようとする愛、相手を自分の理想どおりではない他者として認める愛が、ジョーンには不足していたのだと思う。
本作は、重要なのは自分自身がそれを「愛」と考えるかどうかではなく、相手がそれを「愛」として受け取るかどうかなのではないかという、当たり前のことに気づかせてくれた。全人類に一度読んでもらいたい一冊だった。
Posted by ブクログ
自分の正しさを疑わず、回りの人間にもそれを押し付け、それにより他の人が悲しんだり怒ったりしていても、それを見ずに済ませ、簡単に忘れてしまう。
そんな人物がふとなんもない場所にポツンと取り残されてしまったとき、
初めて自分の真実と対峙する。
そして現実を受け入れ、赦しを乞う決意をするのだが。
ラストで視点が反転し、もう一方からの視点が入ることに、
今作の計り知れない深みがある。
誰かが悪くて、誰かが正しいとか、そんなシンプルなもんじゃない。
いわば倦怠夫婦ものと言っていいのか、
ものすごい読後感でした。
Posted by ブクログ
刺さりすぎた。なぜなら、私はエイヴラルの立場だから
毒親育ちじゃない人は夫に怒るを感じる人もいるって言われてるようだけど、夫に対してもっとしっかりしろなんて無理だよ
反論や意見を言う元気が失われるくらいに救いようがないんだから
Posted by ブクログ
ゆるやかな導入から、主人公の内省が深まっていくにつれて、怖くなってきてしまう。
心の奥底からジワジワと冷たい水が湧いてきて、冷たくて、いてもたってもいられない感じ…
ポッドキャスト「文学ラジオ空飛び猫たち」さんで紹介されて、積読になっていたことを思い出し。よいきっかけをいただきました。
ジョーンの発言に対して、家族から返ってくる言葉の数々。離れてみていれば、そのすれ違い加減がみえて、痛いし怖い。しかし渦中にいると全然見えてない。見ようとしていないのか。
生きていくためには見ないことも必要なのよって言われそうだけど、それってやっぱり無理があるかもなぁ。
時代も場所も違う、同じような状況でもない。
しかしこういうこと自分にも思い当たる節がある。
あなたのためを思ってという言葉って本当にあなたのためを思っているなら、そう簡単には言えない言葉。なのに、近しい人にほどつい言ってしまいそうになる言葉。
夫のロドニーも一見理解者っぽく見えて、実は結構なかなか…夫婦、家族、人間関係は鏡に映るようなものなのでしょうか。
Posted by ブクログ
【ジョーンの性格】
・押し付けがましい
・見栄っ張り
・プライドが高い
・物事を深く考えない
・一度決めたら譲らない→頑固というか柔軟性なし
・自己愛が強い
・自己憐憫に浸りがち
・俯瞰して物事を見られない
・下ネタや恋愛ネタ大嫌い
・不良や身分の低い人大嫌い
↑この辺は時代性も鑑みないといけないが
ほとんどがジョーンのひとり語りだけど、珍しく出てくる第三者が、インド人の給仕、ブランチ・ハガード、サーシャ公爵夫人。
彼らとジョーンの会話から、ジョーンの高慢さが女性かが匂い立つ。
(ブランチのようでなくってよかった、神様ありがとう)とお祈りしてしまう傲慢さ。
サーシャ夫人とは、会話を楽しむよりも引け目を感じてしまう、プライドの高さ。
子どもたちが小さかった頃を思い出すとき、なぜか服装ばかりが浮かぶジョーン。
どこに出しても恥ずかしくない服を着せなきゃ、ということばかりに気が向いて、子どもたちの気持ちには向き合っていなかったことがわかる。
ほぼ主人公のひとり語りなのに、これだけ主人公の情報を行間から伝えるアガサ・クリスティ、恐るべし。
Posted by ブクログ
アガサ・クリスティといえば『ミステリーの女王』として有名だが、この小説のジャンルは “Introspective novel” として分類されるらしい。直訳すると「内省的な小説」……意味はわかるが、絶妙にしっくりこない。とにかく自己の内面や感情、行動に焦点を当てた小説であり、アガサ・クリスティはこの作品を執筆するにあたり『ミステリーの女王』という先入観なしに正当な評価を得るため、あえて別名義で発表したという。
物語のほとんどは病気の娘を見舞った帰りに列車の不通に遭い、砂漠のど真ん中にあるゲストハウスで数日間を一人過ごさなければならなくなった主人公・ジョーンの徹底した内省(事実上の一人語り)によって展開する。持参した本も読み終え、英語もろくに通じない(この辺りに当時の英国人の特権的な文化的背景も感じ取れて大変香ばしい)現地人の使用人しか身近にいない中、彼女はこれまでの人生を振り返り、やがてある残酷な気づきを得る——
ジョーンには、よき母、よき妻として家族に尽くしてきたという強い自覚がある。農場を経営したいという夫の夢をたしなめて弁護士の道をすすめ、子どもたちには家の中で最も日当たりのいい部屋を与え、彼らが付き合う友人たちさえも「良かれと思って」選別してきた。しかし現実には、夫はやがて彼女から心理的に距離を置くようになり、子どもたちはジョーンを冷たくあしらうようになっていた。
夫の進みたい道を支えるのが愛なのか、それとも世間的評価の高い安定した道に進むよう導くのが愛なのか。この作品が恐ろしいのは、話し合い、分かり合おうと努力するという「第三の選択肢」を、他でもないジョーン自身が「家族のための正しい導き」という絶対的な正義感によって、無自覚のうちに潰してきたという事実を描いている点だ。
タイトルにもある Absent とは、英国から物理的に離れ、砂漠に取り残されたジョーンの「不在」を表すとともに、彼女の人生から決定的に欠落していた「愛情や共感の不在」も示している。とはいえ、ジョーンをそこまでの Absent 状態に追い込んだのには、話し合いを諦めてしまった夫にも責任があるだろう、と個人的には感じた(解説で書かれていたことに100%同意する)。ただこの辺りは読み手によって誰に感情移入するかで大きく印象が異なる部分かもしれない。
人間小説(Introspective novel を仮にそう表現する)には違いないのだが、随所にアガサ・クリスティの風味を感じる展開だった。それは、完璧な主婦であったはずのジョーンの回想を通して夫や子どもたちから見た「本当の彼女の生き様」がじょじょに明らかになってくる点や、彼女と家族の捉え方の決定的なズレ(信用できない語り手)に現れている。ジョーンが目を背けていた真実がだんだんと浮き彫りになっていくミステリーのような緊張感、そして英国へと戻るジョーンが自身の気づきを結局なかったことにしてしまう後味の悪さ(イヤミス)はまさに女王の筆致である。
また、孤独や恐怖の象徴といえば「夜」や「闇」というイメージが強いが、この作品が砂漠のど真ん中で「太陽の強い光に晒されること」を『孤独』の概念として表現している点も非常に印象的だった。
Introspection(内省)とは人間の内面、つまり常では外部に晒されないはずの領域である。誰もいない広大な砂漠で、誤魔化しの効かない太陽に灼かれることがあったとして、炙り出される私自身の Absent とは一体どんなものになるだろうか。そんなことを考えさせられる読書体験だった。
Posted by ブクログ
怖すぎた。独りよがりの自分の世界に閉じこもって、周囲の気持ちを汲まず、自分の理想通りに生きるとこうなるのか、と。終盤で自分の過ちに気づいて、夫に謝ろうとしたのに、結局自分の理想の世界を選んだのは恐怖だった。でも正直、自分もこうなりそうと思った節がある。わがままで傲慢なところを貫くと、家族を苦しめてしまい、最終的には独りぼっちになるということを、胸に留めて生きていきたい。折に触れて読むことになるのかも、というか忘れた頃に読んだ方がいいのかも、、、長年愛され続けてるだけある作品。
Posted by ブクログ
クソ刺さった。
刺さり過ぎて二度と読みたくないと思う一方で、人生に迷った時にまた読みたいとも思う。
ジョーンは最低なやつだが、ロドニーも、子どもたちも、結局同じなんだなと思った途端に、この作品の怖さを理解した。
Posted by ブクログ
幸せな家庭の主婦、ジョーン。バグダッドまで娘に会いに行っていたが、帰る時になって天候不順のため足止めをくらってしまう。有能な主婦としてあくせく生きてきたジョーンは、そこで自分の人生を振り返ってみると…
ジョーンがどんな人物か前情報を入れた上で買っていたんだけど、自分も子持ち主婦なので、読むのが怖くて積読してた。ちょっと気分が明るくなってきたところで読み始まったら、もう読むのが止められない。ジョーンには共感しないけど、自分も同じことやってんじゃないかと不安に襲われる。
そしてラストもすごい。もうさすがアガサ・クリスティー。みんな読むべき。
Posted by ブクログ
これほどまでに自分の家族とこれまでの人生について考えさせられた本は無かった。私は他人から見てどんな人間かしら、家族に幸せを与えられているかしら…忘れがちだからこそ、ふとした時に読み返したい。反面教師的な意味で、人生のバイブル。
Posted by ブクログ
Poor little Joan...
改心しなかったか…旦那のロドニーがあまりにも気の毒だけど、彼が選んだ道とも言えるからな…
面白かった。
満ち足りていて、周りも自分のおかげで上手く言っていると信じて疑っていなかった主人公ジョーンが、バグダッドで1人立ち往生している間に自分と周りの人間の真意を見つめ直す話。自分が周りのこと(特に旦那と子供たち)を何もわかっていなかったことに気がついたのに、結局元の生活に戻ってしまうところまでが趣深い。
Posted by ブクログ
アヴァリルの駆け落ちを止めるための、話し合いのシーンが出色。
アヴァリルと二人だけで話したいと言うロドニーに、ジョーンにも同席してほしいと言うアヴァリル。「なるほど、怖いんだな」と言ったロドニーの言葉の意味が、その時点では分からなかったが、今なら分かる。父に筋の通った言葉で事の本質を言い当てられ、説得されるのが怖かったんだろう。訳の分からない母にまぜっかえしてもらい、話し合いをうやむやにしたかったのかも。
感情的にならず理路整然と冷静に諭すロドニーは、いかにも弁護士然としていて、自分の娘に対する態度とは思えない。父の経験と苦しみを知っている理知的なアヴァリルは、もはや反抗する術もない。心配が図星になったのだ。
彼女にしては感情的な捨て台詞を残し、部屋を去る。
二人の静かだけどヒリヒリするような応酬の意味を理解できないジョーンの憐れなこと。まさに「プア・リトル・ジョーン」だわ。
Posted by ブクログ
娘を見舞う旅の帰りに、砂漠で足止めされた美しい主婦ジョーン。汽車を待つ間、やる事なくてヒマすぎていろいろ考え始めます…
怖すぎる話でした。
友達の言葉が引き金になって、無意識に自分が見ないようにしてきた様々な事象が次々頭に浮かんでしまう。それがパズルのピースようにカッチリはまって、今までの自分の「良かれ」が全否定されてしまいます。
その過程も怖いのですが一番はラスト。
「ああ〜〜〜(脱力)」ってなるけど、でもわからないでもない。
ロドニーを想うとやるせない。
そして「じゃ自分はどうなのか」と、もうずーっと怖いです。
Posted by ブクログ
幸せな家庭を築けたと信じる中年主婦が、旅を通じて自分を見つめ直し思考していく物語。さすがのクリスティで読みやすさ抜群、冒頭からの展開も面白く、若い頃ではなく主人公と同年代の今、読めて良かったです。人生は何が大事なのか、人生に正解はないのか、考えさせられます。
Posted by ブクログ
「春にして君を離れ」…なんて心惹かれる美しいタイトルなんだろう、と手に取って、ストーリーにグッサグサに突き刺された。
ジョーンを愚かで滑稽だと嗤うことは簡単だけど、自分の人生も離れたところから眺めてみたらこんな風に見えるのかもしれない。
ラストの展開も、後味は悪いけれど好み。
Posted by ブクログ
ミステリーじゃないクリスティ作品
夫婦の愛、親子関係って結局のところ
お互いの距離感が大事なのかもしれない
干渉しすぎても行けない
真実を真っ直ぐ伝えてしまっては
良い関係が崩れてしまう
相手への思いやりが愛情なんだ
Posted by ブクログ
アガサ・クリスティの著作を初めて読んだ。
何だろう、主人公のジョーンは平凡な主婦だが、彼女だけが悪いとはとても思えない。最後は、ああそっちにいってしまうんだ、と思ったが妙なリアリティある結末でもあった。
哀しいというか、やるせない。ジョーンはジョーンなりに夫や子どもたちを愛しているのに。ジョーンの現実的な決断や母親らしい役割もある意味必要なことだと思うし、やり方は間違っていたかもしれないが、糾弾する気にはとてもなれない。
自分がよかれと思ってした選択や決断も相手にとっては本当は嫌で、とっくに見限られているのでは?と読みながら自分自身にも突きつけられてくるようだった。
結局、人は他人の心の内は知ることができない、それは夫婦であっても。そういう人間の関わりの哀しさをも描いている。
Posted by ブクログ
あまりにも……あまりにも哀しい……ハァ。読後感は良くないです。解説の「ジョーンだけの責任ではない。ロドニーにも悪いところはある」旨の記述に私自身が救われた。
Posted by ブクログ
<あらすじ>
イギリスに住むジョーン。末娘が体調を壊したというので、嫁ぎ先のバグダッドへ。そこから帰る道中のジョーンの一人語り。思いがけず、帰る汽車が遅れ立ち止まりをくらう。そこであらゆることに思い沈むお話。なあなあな夫婦関係。家族関係の行く果ては……。
<ゾッとしたところ>
p309から始まる娘バーバラから父ロドニーへの手紙
このような会話が今までも家族間でなされていたのかと思うと、ゾッとする
<ジョーンの自己発見までの過程>
p22 ブランチの墜落ぶりこそ、まさに第一級の悲劇だ。
p57 わたしがあのとき賢く、上手に事をおさめたから、いいようなものの……
p71 「まさか、バーバラに限ってそんなこと! わたしたちのように幸せな家庭って、そうざらにあるものじゃないのに」
p124 このわたしが現実の人間ではないのかも知れない。玩具の妻、玩具の母親なのかも知れない。
p171 「自分のことばかりでなく、ひとのことを考えるように」だって。わたしはこれまでそうしてきた
p250 わたしがこれまで誰についても真相を知らずにすごしてきたのは、こうあってほしいと思うようなことを信じて、真実に直面する苦しみを避ける方が、ずっと楽だったからだ。
p251 彼女(ジョーン)はバーバラを愛していなかった。そればかりか、その心情を少しも理解してやらなかったのだ。
p268 よかれと思ってしたことだった。せめてわたしだけでも現実的な考えかたをしなければ、そう思ったからだ。何よりも子どもたちのことを考えなければならなかったし、利己的な動機からではまったくなかったのだ。
けれども激しく湧き起こった自己弁護の声は、たちまちにして掻き消された。
すべてはわたしの自分本位の考えからではなかったか、とジョーンは思い返していた。
p276 まったく、わたしは何とひとりよがりな女だったことか。
<ジョーンの周りの人たち>
p138 「こんなことをいうのは、ここだけの話だけれど、あなたには少々自己満足の気味があるからです。」ギルビー校長
p161 不手際だといつもお小言を頂戴し、うまくいったときにはお褒めの言葉もないーーこれでは情けなくなります。 メイド
<ジョーンの過干渉>
p199 若い人たちのつきあいには年配のちゃんとした人の介添えが必要だという考えが、最近ではまた復活してきているのよ。
<ロドニーの発言>
p182 プア・ジョーン
p190 突然ロドニーの声は、いいようもなく激しいものを帯びた。
「ぼくははっきりいっておく、エイヴラル、自分の望む仕事につけない男ーー自分の天職につけない男は、男であって男でないと。ぼくは確言する。」
<自分もそういうところあるだろうな>
p253 その気働きを厚く感謝される場面を想像し、何とお礼をいっていいかわからないと口々にいわれることを、半ば期待していたのだった。
<気になる発言>
p66 やれやれ、まったく東洋人ときたら。時間なんて、この人たちには何の意味ももっていないのだ。
<読後の最初の一言>
ロドニー、おまえもか。
自分に割り当てられた役割(p325)の中で生きている、独りよがりの女性の話
人のことをジャッジしまくる
「可哀そう」と思う
そんな私もこの女性をジャッジをしている
読んでいる最中は、雲をつかむような話(実体がなく、現実味がない話)と思う
読者の今いるステージや属性によっても、感想は変わると思う
どんな人におすすめかてんで思い浮かばない
Posted by ブクログ
読み進めていくうちにどんどん背筋が凍る。
ジョーン、、なんて女なんだ、、と思ったが人間って多かれ少なかれこういうところがありそうだとも思った。
正義だと思っているものが本当に人のためになっているのか、自分のためではないのか、振りかざす前に落ち着いて考えたいと思わされる。特に家族に対して境界線を履き違えるなんてよくある話だし気をつけたい。
結末は人は簡単には変わらないという示唆なのか。
「ただいま」ではなく「許して」って勢いづいて言えていたらジョーンも変われたのかもなと思うがそれもかえってリアル。
Posted by ブクログ
アガサクリスティは初めて読んだ。
違和感なくすんなり読めた。
一生すれ違い続ける夫婦の話。
人間同士だからそりゃ相手の心の中は全てわからないよね、いくら夫婦でも。
なんか切ないような恐ろしいようなお話。
Posted by ブクログ
10年くらい積んでいて、しかもダブって買っていて2冊も持っていたこの本。
何度も冒頭で挫折していたのだが、今回読み始めたら驚くほどサクサク読めた。たぶん自分の年齢が主人公に近づいてきたからで、気づかぬうちに自分も己の人生に迷ったり悩んだり怖がったりするようになったからかもしれない。
ジョーンの言動に苛立ちながら読んでいたけど、知らず知らずのうちに自分でもやっちゃってるかもな…と心配になった。
あと、ロドニーは良い人だけどこの人も結構ずるい人間だよなと思った。
お互いに嫌なことに目をつぶって老いていくのは昔も今も変わらないところか…。
人間って愚かで儚いなぁ。
Posted by ブクログ
人が死なないクリスティーは初めて読んだけどこれも悪くない。大きな事件が起きるわけではないのに、次々に浮かぶ疑惑と繋がっていく記憶の断片が頭に流れ込んでくるようで、この疾走感はさすがクリスティーだなと思った。
主人公は女の悪いところ詰め込みまくり。それに途中で気づくところまでは良かったんだけど、結局無かったことにして見て見ぬふりするところはさすが女って感じでますます女が嫌いになった。自分も女だけど。
結末は、これで良かったのかもしれないね。
過去は変えられないし。
登場人物全員がまるで実在の人物かのように思えてくる。
それだけでも読む価値があると思いました。
若い人に読んでほしい本ですね。ピントこないかもしれないけどね。
それにしても、クリスティは人物描写が巧みだね。
Posted by ブクログ
これ、主人公を自分と重ねるか、自分の母親と重ね合わせるかでどう感じるかが全く変わりそうだと思った。
「毒親」という言葉にアンテナ高めな人は読んだ方がいいかもしれぬ、が、そういう環境で育った方にとってはだいぶしんどいこと請け合います。
ミステリー小説家としてのクリスティのイメージしかない人はぜひこちらも。
Posted by ブクログ
三児の母であるジョーンが旅の帰路にて自身の半生を振り返り、自分がどんな人間であるかを見つめ直す話。
ジョーンは自身を優れた母親だと考えているものの、周囲の人間のちょっとした言動であったり夫及び子供達が自分と接する際の態度に違和感を覚え始め、彼女の経験した過去と共に、無意識のうちにジョーンはその違和感の答えを探っていく。
自己批判が主題のように感じました。人は他人に対しても自分に対しても、望み通りではない辛い事実と相対することを避け、想像で尤もらしい理由付けをした上で自身が傷つかない勝手な結論を思い込むことで、精神を保護する傾向にあると思います。本作は、その思い込みという修正を軸に、正しい現実はどうなのか、またその自身にとって都合の悪い現実とどう折り合いをつけていくのかというお話だと解釈しています。
自我の研鑽は大事だというメッセージを感じる一冊でした。最後の夫の独白も含めて良い作品です。誰もがより他人を慮り、傷つく人間が少ない世界になるよう、全人類に一度読んでみていただきたい作品です。
Posted by ブクログ
日頃の忙しなさの中で、うすうす気づいていても目を背けていること。知らないふりをし続けないと、自分の過去も現在も崩れてしまいそうなこと。強制的に足止めされた旅先の砂漠の駅で、安定した暮らしと愛する家族に恵まれた幸せな人生を送ってきた主婦ジョーンは、自分自身にも秘めてきた内面のぼんやりとした不安感と否応なしに向き合い始める。
「安定した暮らし」は、誰の犠牲の上に築かれているのか。「愛する家族」は、彼女を愛しているのか。惨めだと憐れんだ昔の友人や近所の主婦の、自身を貫く生き様は本当に惨めなものだったのか。
勇気を持って自分自身と向き合い、蓋をしてきた辛い現実を直視したジョーンは、しかし、動き始めた汽車でロンドンに戻ると、その勇気を貫くことなく、再び「愛する家族」との「安定した暮らし」のぬるま湯に沈んでゆく。
開けた蓋を閉めるのはたやすく、愛する者に後悔を告げ生活を変えようという決断を貫き通すのは難しい。人は弱く、一瞬の勇気はなかなか維持できない。それでも、気づいた真理はなかったことにはならず、彼女はおそらくずっと、心の奥底で自身の欺瞞に対する薄ら寒い感覚を持ち続けることになる。それでもなお、ジョーンはそこから目を背け、「幸せな人生」を築き上げた完璧な主婦として生きていくのだろう。あるいはそのうち、「聖人ではない」彼女は砂漠での回心体験を幻として捨て去り、自分を包む「幸せ」を真実のものとして強く信じて生きていくのかもしれない。
そんなジョーンに哀れさも感じつつ、一方で、被害者のように見える夫ロドニーの、すべてを心のうちで妻のせいにして自らを憐れんでいる姿も、一つの罪深い生き方と感じられた。視点を変えれば、ジョーンがあのような妻・母でいることを許容し、諦めて身を引くことで彼女が家族や周囲の人々との関係を再構築する機会を奪っているという点で、ロドニーは加害者でもあるのではないか。
真理を習慣が埋めてゆくリアリティがしんしんと恐怖を残すと同時に、伝え合うことを放棄した果てにたどり着く深い断絶と、伝える・変わる勇気を持ち続けることの絶望的な難しさを、決してドラマティックではない、静かな文章で突き付けてくる作品だった。
Posted by ブクログ
⭐️3.2
旅から戻ったらまたいつもの日常に戻ってしまうものなんだろうか。気が付かないフリをしているだけなんだろうか。
ふと自分も立ち止まって人生を見つめ直してみても良いなと思った。