あらすじ
優しい夫、よき子供に恵まれ、女は理想の家庭を築き上げたことに満ち足りていた。が、娘の病気見舞いを終えてバクダードからイギリスへ帰る途中で出会った友人との会話から、それまでの親子関係、夫婦の愛情に疑問を抱きはじめる……女の愛の迷いを冷たく見すえ、繊細かつ流麗に描いたロマンチック・サスペンス。
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Posted by ブクログ
面白かった。
序盤からの違和感がどんどん積み重なっていって、主人公のヤバさがじわじわ伝わってくるところが静かだけどスリリングでした。
読みながら何度も主人公夫妻につっこんでて、翻弄されっぱなしでした。
ラストも含めて、主人公に対してものすごく冷たい書き方をしているのが、ミステリー作家だから容赦ないなと思いました。
1944年の作品で戦時中にこういう作品が発表されていたということに驚く。
Posted by ブクログ
主人公から見える世界の移り変わり、どんどん明らかになっていく新事実がすごく面白かった。続きが気になってどんどん読み進めた。
帰路イギリスが近づくにつれだんだん元の主人公に戻っていく様子もひしひしと伝わってきた。
結末の主人公の選択は少し残念だったけど、自分探しの旅⭐︎反省して家族にも謝って許してもらえてハッピーエンド⭐︎というのも拍子抜けなのでこの結末が物語としては一番余韻があって好きだと思った。
以下雑メモ
・ロドリーもロドリーでまるで聖人のように描かれているけど(ジョーンから見てそうならまぁいいんですが…)ジョーンに悪者役押し付けて子供に良い顔して、自分で物事決められなかった責任も転嫁して尻に敷かれたままウジウジ日和ってる浮気男じゃんともやっとした
・レスリーとアヴァリルがかっこよかった。
・前職のお局ババアがやたら家族と仲良し幸せアピールしてたけど実態こんな感じだったのかなと思いながら読んでいた。
と、ともに自分も家庭を持つにあたり気をつけないとなと思った。
Posted by ブクログ
ろくに事前情報を得ていなかったので、「家族のために尽くしてきた女性だが、実は家族はそれぞれ後ろ暗いものを抱えており、それに気づいた女性が家族から離れて自由になる」……そんな物語を予想していた。
が、蓋を開けてみると、まったくの正反対。悪意なき支配で家族を縛り、しかもそれを正当だと信じて疑わない愚かな女性と、そんな彼女に反抗できず、自らの自由を勝ち取る心意気も無い情けない夫の話だった。
強い思い込みを持ち、自己満足で行動し、挙句に己の過ちや不都合なことから目を背け続けるジョーン。何となく身内を思い浮かべると同時に、自分自身にもジョーンの片鱗があったのではないか?とも考え、これまでの内省とは比べ物にならない、本物の内省が始まった。
結局、ジョーンはやっと気づけたすべてのことを知らないフリする結末を選ぶが、人間はそう簡単には変わらないのだということが示唆され、やけに現実味がある。ジョーンは反省して更生しました、めでたしめでたし、で終わらないのがまた良い。
相手を理解しようとする愛、相手を自分の理想どおりではない他者として認める愛が、ジョーンには不足していたのだと思う。
本作は、重要なのは自分自身がそれを「愛」と考えるかどうかではなく、相手がそれを「愛」として受け取るかどうかなのではないかという、当たり前のことに気づかせてくれた。全人類に一度読んでもらいたい一冊だった。
Posted by ブクログ
自分の正しさを疑わず、回りの人間にもそれを押し付け、それにより他の人が悲しんだり怒ったりしていても、それを見ずに済ませ、簡単に忘れてしまう。
そんな人物がふとなんもない場所にポツンと取り残されてしまったとき、
初めて自分の真実と対峙する。
そして現実を受け入れ、赦しを乞う決意をするのだが。
ラストで視点が反転し、もう一方からの視点が入ることに、
今作の計り知れない深みがある。
誰かが悪くて、誰かが正しいとか、そんなシンプルなもんじゃない。
いわば倦怠夫婦ものと言っていいのか、
ものすごい読後感でした。
Posted by ブクログ
刺さりすぎた。なぜなら、私はエイヴラルの立場だから
毒親育ちじゃない人は夫に怒るを感じる人もいるって言われてるようだけど、夫に対してもっとしっかりしろなんて無理だよ
反論や意見を言う元気が失われるくらいに救いようがないんだから
Posted by ブクログ
ゆるやかな導入から、主人公の内省が深まっていくにつれて、怖くなってきてしまう。
心の奥底からジワジワと冷たい水が湧いてきて、冷たくて、いてもたってもいられない感じ…
ポッドキャスト「文学ラジオ空飛び猫たち」さんで紹介されて、積読になっていたことを思い出し。よいきっかけをいただきました。
ジョーンの発言に対して、家族から返ってくる言葉の数々。離れてみていれば、そのすれ違い加減がみえて、痛いし怖い。しかし渦中にいると全然見えてない。見ようとしていないのか。
生きていくためには見ないことも必要なのよって言われそうだけど、それってやっぱり無理があるかもなぁ。
時代も場所も違う、同じような状況でもない。
しかしこういうこと自分にも思い当たる節がある。
あなたのためを思ってという言葉って本当にあなたのためを思っているなら、そう簡単には言えない言葉。なのに、近しい人にほどつい言ってしまいそうになる言葉。
夫のロドニーも一見理解者っぽく見えて、実は結構なかなか…夫婦、家族、人間関係は鏡に映るようなものなのでしょうか。
Posted by ブクログ
【ジョーンの性格】
・押し付けがましい
・見栄っ張り
・プライドが高い
・物事を深く考えない
・一度決めたら譲らない→頑固というか柔軟性なし
・自己愛が強い
・自己憐憫に浸りがち
・俯瞰して物事を見られない
・下ネタや恋愛ネタ大嫌い
・不良や身分の低い人大嫌い
↑この辺は時代性も鑑みないといけないが
ほとんどがジョーンのひとり語りだけど、珍しく出てくる第三者が、インド人の給仕、ブランチ・ハガード、サーシャ公爵夫人。
彼らとジョーンの会話から、ジョーンの高慢さが女性かが匂い立つ。
(ブランチのようでなくってよかった、神様ありがとう)とお祈りしてしまう傲慢さ。
サーシャ夫人とは、会話を楽しむよりも引け目を感じてしまう、プライドの高さ。
子どもたちが小さかった頃を思い出すとき、なぜか服装ばかりが浮かぶジョーン。
どこに出しても恥ずかしくない服を着せなきゃ、ということばかりに気が向いて、子どもたちの気持ちには向き合っていなかったことがわかる。
ほぼ主人公のひとり語りなのに、これだけ主人公の情報を行間から伝えるアガサ・クリスティ、恐るべし。
Posted by ブクログ
アガサ・クリスティといえば『ミステリーの女王』として有名だが、この小説のジャンルは “Introspective novel” として分類されるらしい。直訳すると「内省的な小説」……意味はわかるが、絶妙にしっくりこない。とにかく自己の内面や感情、行動に焦点を当てた小説であり、アガサ・クリスティはこの作品を執筆するにあたり『ミステリーの女王』という先入観なしに正当な評価を得るため、あえて別名義で発表したという。
物語のほとんどは病気の娘を見舞った帰りに列車の不通に遭い、砂漠のど真ん中にあるゲストハウスで数日間を一人過ごさなければならなくなった主人公・ジョーンの徹底した内省(事実上の一人語り)によって展開する。持参した本も読み終え、英語もろくに通じない(この辺りに当時の英国人の特権的な文化的背景も感じ取れて大変香ばしい)現地人の使用人しか身近にいない中、彼女はこれまでの人生を振り返り、やがてある残酷な気づきを得る——
ジョーンには、よき母、よき妻として家族に尽くしてきたという強い自覚がある。農場を経営したいという夫の夢をたしなめて弁護士の道をすすめ、子どもたちには家の中で最も日当たりのいい部屋を与え、彼らが付き合う友人たちさえも「良かれと思って」選別してきた。しかし現実には、夫はやがて彼女から心理的に距離を置くようになり、子どもたちはジョーンを冷たくあしらうようになっていた。
夫の進みたい道を支えるのが愛なのか、それとも世間的評価の高い安定した道に進むよう導くのが愛なのか。この作品が恐ろしいのは、話し合い、分かり合おうと努力するという「第三の選択肢」を、他でもないジョーン自身が「家族のための正しい導き」という絶対的な正義感によって、無自覚のうちに潰してきたという事実を描いている点だ。
タイトルにもある Absent とは、英国から物理的に離れ、砂漠に取り残されたジョーンの「不在」を表すとともに、彼女の人生から決定的に欠落していた「愛情や共感の不在」も示している。とはいえ、ジョーンをそこまでの Absent 状態に追い込んだのには、話し合いを諦めてしまった夫にも責任があるだろう、と個人的には感じた(解説で書かれていたことに100%同意する)。ただこの辺りは読み手によって誰に感情移入するかで大きく印象が異なる部分かもしれない。
人間小説(Introspective novel を仮にそう表現する)には違いないのだが、随所にアガサ・クリスティの風味を感じる展開だった。それは、完璧な主婦であったはずのジョーンの回想を通して夫や子どもたちから見た「本当の彼女の生き様」がじょじょに明らかになってくる点や、彼女と家族の捉え方の決定的なズレ(信用できない語り手)に現れている。ジョーンが目を背けていた真実がだんだんと浮き彫りになっていくミステリーのような緊張感、そして英国へと戻るジョーンが自身の気づきを結局なかったことにしてしまう後味の悪さ(イヤミス)はまさに女王の筆致である。
また、孤独や恐怖の象徴といえば「夜」や「闇」というイメージが強いが、この作品が砂漠のど真ん中で「太陽の強い光に晒されること」を『孤独』の概念として表現している点も非常に印象的だった。
Introspection(内省)とは人間の内面、つまり常では外部に晒されないはずの領域である。誰もいない広大な砂漠で、誤魔化しの効かない太陽に灼かれることがあったとして、炙り出される私自身の Absent とは一体どんなものになるだろうか。そんなことを考えさせられる読書体験だった。
Posted by ブクログ
怖すぎた。独りよがりの自分の世界に閉じこもって、周囲の気持ちを汲まず、自分の理想通りに生きるとこうなるのか、と。終盤で自分の過ちに気づいて、夫に謝ろうとしたのに、結局自分の理想の世界を選んだのは恐怖だった。でも正直、自分もこうなりそうと思った節がある。わがままで傲慢なところを貫くと、家族を苦しめてしまい、最終的には独りぼっちになるということを、胸に留めて生きていきたい。折に触れて読むことになるのかも、というか忘れた頃に読んだ方がいいのかも、、、長年愛され続けてるだけある作品。
Posted by ブクログ
クソ刺さった。
刺さり過ぎて二度と読みたくないと思う一方で、人生に迷った時にまた読みたいとも思う。
ジョーンは最低なやつだが、ロドニーも、子どもたちも、結局同じなんだなと思った途端に、この作品の怖さを理解した。
Posted by ブクログ
幸せな家庭の主婦、ジョーン。バグダッドまで娘に会いに行っていたが、帰る時になって天候不順のため足止めをくらってしまう。有能な主婦としてあくせく生きてきたジョーンは、そこで自分の人生を振り返ってみると…
ジョーンがどんな人物か前情報を入れた上で買っていたんだけど、自分も子持ち主婦なので、読むのが怖くて積読してた。ちょっと気分が明るくなってきたところで読み始まったら、もう読むのが止められない。ジョーンには共感しないけど、自分も同じことやってんじゃないかと不安に襲われる。
そしてラストもすごい。もうさすがアガサ・クリスティー。みんな読むべき。
Posted by ブクログ
これほどまでに自分の家族とこれまでの人生について考えさせられた本は無かった。私は他人から見てどんな人間かしら、家族に幸せを与えられているかしら…忘れがちだからこそ、ふとした時に読み返したい。反面教師的な意味で、人生のバイブル。
Posted by ブクログ
娘を見舞う旅の帰りに、砂漠で足止めされた美しい主婦ジョーン。汽車を待つ間、やる事なくてヒマすぎていろいろ考え始めます…
怖すぎる話でした。
友達の言葉が引き金になって、無意識に自分が見ないようにしてきた様々な事象が次々頭に浮かんでしまう。それがパズルのピースようにカッチリはまって、今までの自分の「良かれ」が全否定されてしまいます。
その過程も怖いのですが一番はラスト。
「ああ〜〜〜(脱力)」ってなるけど、でもわからないでもない。
ロドニーを想うとやるせない。
そして「じゃ自分はどうなのか」と、もうずーっと怖いです。
Posted by ブクログ
面白いし、後からじわじわ色々考えさせられる。
読んだ後にどんな話だったかすぐに忘れてしまう作品も多いが、この本のテーマはずっと覚えているだろうと思った。
3人の子供を立派に育て、弁護士の夫に愛され、中年を過ぎてもまだ若々しく美しい容姿を保ち、自信満々の主人公「ジェーン」の一人称視点で、ほとんどの物語が語られる。
娘の見舞いのための一人旅の帰り道、砂漠で数日間立ち往生することになり、そこで自分の人生を顧みる時間を得たジェーンのお話。
自分は本当に夫に愛されてきたのか?、自分は夫の事も子供の事も本当は何も理解していなかったのではないか?という思考に引き釣り込まれていく。
誰もが自分を守るために、見て見ぬふりをしていることだったり、これ以上考えないようにしてしまうことがあるはず。
私も辛かった過去の時期や出来事ほど、自己防衛本能が働き、記憶から抹消されて、今はほとんど思い出せないことがある。
読んでいて、ジェーンのことを思慮に欠けて愚かだと思ってしまうが、それは自分自身の姿でもあると思った。ラストの展開まで完璧。
ミステリー小説ではないが、流石のアガサ・クリスティである。
Posted by ブクログ
「私は完璧な妻であり母」自認の主人公が、ある事情で自分の過去をつぶさに振り返り「自分は最低な妻、母、友人だった」となっていく作品。
ほぼ主人公の一人芝居であるにも関わらず内容は非常に面白いし、先が気になってどんどん読んでしまうにも関わらず、とにかく疲れる作品でした…
主人公は(おそらく意図的に)かなりの性悪女として描かれていて、自分もそんなに性格が良くないと自認している私でもさすがに彼女のことを擁護はできない。…けれど、この世界に他人への加害性が全くない人間はいないので、大なり小なりどんな人にも刺さる部分があるのではないかなと思う。私も所々「ゔ……ごめんなさい……」となりながら読んだ。
それなりの年数を生きていると「あのときあの人に酷いことをしてしまったなぁ」という人生の汚点のような出来事も、やっぱりある。当時はその加害性に気付いておらず、数年後に思い返して後悔することも。もう謝ることができないことも。私にもたくさん、ある。
自分の加害性を自覚すること。そのことに蓋をせずきちんと見つめ、適切に反省すること。忘れないこと。
こうやってすべての業を抱えながら生きていくしかないのかなと思う。
一般論として、人間は身近な家族、特に我が子に対しては自他境界が曖昧になりがちと思われるので、どんなときも相手の感情や意見に敬意を払うことを忘れてはいけないなと思った…
子供がまだ幼いうちに読むことができて本当に良かったと思える一冊でした。しかし、本当に疲れました…
Posted by ブクログ
幸せな家庭を築けたと信じる中年主婦が、旅を通じて自分を見つめ直し思考していく物語。さすがのクリスティで読みやすさ抜群、冒頭からの展開も面白く、若い頃ではなく主人公と同年代の今、読めて良かったです。人生は何が大事なのか、人生に正解はないのか、考えさせられます。
Posted by ブクログ
「春にして君を離れ」…なんて心惹かれる美しいタイトルなんだろう、と手に取って、ストーリーにグッサグサに突き刺された。
ジョーンを愚かで滑稽だと嗤うことは簡単だけど、自分の人生も離れたところから眺めてみたらこんな風に見えるのかもしれない。
ラストの展開も、後味は悪いけれど好み。
Posted by ブクログ
ミステリーじゃないクリスティ作品
夫婦の愛、親子関係って結局のところ
お互いの距離感が大事なのかもしれない
干渉しすぎても行けない
真実を真っ直ぐ伝えてしまっては
良い関係が崩れてしまう
相手への思いやりが愛情なんだ
Posted by ブクログ
アガサ・クリスティの著作を初めて読んだ。
何だろう、主人公のジョーンは平凡な主婦だが、彼女だけが悪いとはとても思えない。最後は、ああそっちにいってしまうんだ、と思ったが妙なリアリティある結末でもあった。
哀しいというか、やるせない。ジョーンはジョーンなりに夫や子どもたちを愛しているのに。ジョーンの現実的な決断や母親らしい役割もある意味必要なことだと思うし、やり方は間違っていたかもしれないが、糾弾する気にはとてもなれない。
自分がよかれと思ってした選択や決断も相手にとっては本当は嫌で、とっくに見限られているのでは?と読みながら自分自身にも突きつけられてくるようだった。
結局、人は他人の心の内は知ることができない、それは夫婦であっても。そういう人間の関わりの哀しさをも描いている。
Posted by ブクログ
あまりにも……あまりにも哀しい……ハァ。読後感は良くないです。解説の「ジョーンだけの責任ではない。ロドニーにも悪いところはある」旨の記述に私自身が救われた。
Posted by ブクログ
<あらすじ>
イギリスに住むジョーン。末娘が体調を壊したというので、嫁ぎ先のバグダッドへ。そこから帰る道中のジョーンの一人語り。思いがけず、帰る汽車が遅れ立ち止まりをくらう。そこであらゆることに思い沈むお話。なあなあな夫婦関係。家族関係の行く果ては……。
<ゾッとしたところ>
p309から始まる娘バーバラから父ロドニーへの手紙
このような会話が今までも家族間でなされていたのかと思うと、ゾッとする
<ジョーンの自己発見までの過程>
p22 ブランチの墜落ぶりこそ、まさに第一級の悲劇だ。
p57 わたしがあのとき賢く、上手に事をおさめたから、いいようなものの……
p71 「まさか、バーバラに限ってそんなこと! わたしたちのように幸せな家庭って、そうざらにあるものじゃないのに」
p124 このわたしが現実の人間ではないのかも知れない。玩具の妻、玩具の母親なのかも知れない。
p171 「自分のことばかりでなく、ひとのことを考えるように」だって。わたしはこれまでそうしてきた
p250 わたしがこれまで誰についても真相を知らずにすごしてきたのは、こうあってほしいと思うようなことを信じて、真実に直面する苦しみを避ける方が、ずっと楽だったからだ。
p251 彼女(ジョーン)はバーバラを愛していなかった。そればかりか、その心情を少しも理解してやらなかったのだ。
p268 よかれと思ってしたことだった。せめてわたしだけでも現実的な考えかたをしなければ、そう思ったからだ。何よりも子どもたちのことを考えなければならなかったし、利己的な動機からではまったくなかったのだ。
けれども激しく湧き起こった自己弁護の声は、たちまちにして掻き消された。
すべてはわたしの自分本位の考えからではなかったか、とジョーンは思い返していた。
p276 まったく、わたしは何とひとりよがりな女だったことか。
<ジョーンの周りの人たち>
p138 「こんなことをいうのは、ここだけの話だけれど、あなたには少々自己満足の気味があるからです。」ギルビー校長
p161 不手際だといつもお小言を頂戴し、うまくいったときにはお褒めの言葉もないーーこれでは情けなくなります。 メイド
<ジョーンの過干渉>
p199 若い人たちのつきあいには年配のちゃんとした人の介添えが必要だという考えが、最近ではまた復活してきているのよ。
<ロドニーの発言>
p182 プア・ジョーン
p190 突然ロドニーの声は、いいようもなく激しいものを帯びた。
「ぼくははっきりいっておく、エイヴラル、自分の望む仕事につけない男ーー自分の天職につけない男は、男であって男でないと。ぼくは確言する。」
<自分もそういうところあるだろうな>
p253 その気働きを厚く感謝される場面を想像し、何とお礼をいっていいかわからないと口々にいわれることを、半ば期待していたのだった。
<気になる発言>
p66 やれやれ、まったく東洋人ときたら。時間なんて、この人たちには何の意味ももっていないのだ。
<読後の最初の一言>
ロドニー、おまえもか。
自分に割り当てられた役割(p325)の中で生きている、独りよがりの女性の話
人のことをジャッジしまくる
「可哀そう」と思う
そんな私もこの女性をジャッジをしている
読んでいる最中は、雲をつかむような話(実体がなく、現実味がない話)と思う
読者の今いるステージや属性によっても、感想は変わると思う
どんな人におすすめかてんで思い浮かばない
Posted by ブクログ
ジョーンは娘の看病帰りに女学校時代の古き友人と出会い、その友人の落ちぶれた姿に愕然とする。
それと同時に自分の人生は良き家族に恵まれたと優越感に浸る。
だが果たして【良き家族】だったのだろうか?
遠征途中で足止めを受けることになり、砂漠の真ん中で1人過ごす日々。
その時に自分の人生を振り返り、家族のことを考え、そして後悔する。
自分のものさしで価値観を押し付け、家族の気持ちを考えなかったこと。ハッとする。子供達が頼るのは良き母親の自分ではなく父親だったこと。
優しい夫。優しさではなく諦めたということなのかと思うとゾッとする。
違和感はいつもあった。だがこの正体に気づけないと孤独が待ち受けることとなる。
この小説を読んでいると果たして自分は大丈夫なのだろうかと不安になる。自分も楽しくなると周りが見えなくなることがある。
人を蔑ろにしてないか?
自分も人の忠告を素直に受け入れられるのか?
あぁ、1人にはなりたくないなぁ、、
でも自分を変えるって難しいよね。
でもジョーンの最後の変わらない選択はジョーンらしくて好きかも。
結末は、これで良かったのかもしれないね。
過去は変えられないし。
登場人物全員がまるで実在の人物かのように思えてくる。
それだけでも読む価値があると思いました。
若い人に読んでほしい本ですね。ピントこないかもしれないけどね。
それにしても、クリスティは人物描写が巧みだね。
Posted by ブクログ
今までに読んだことのない本だった。子育てが終わった主婦の内省。ジョーンもロドニーも嫌。読後感は決して良くない、でもリアルでおもしろかった。
家庭における関係性と、自覚する己の人物像と他者から見た人物像の乖離、人間が変わることの難しさが怖かった。自分はどうだろう、と考えて怖くなる。
「自分のことを考える他、何もすることがなかったら、自分自身についてどんな新しい発見をするかしら」
ジョーンは主婦としての役割を果たしていることに自信を持ち、夫にとっても子どもたちにとっても最良の妻・母であったこと、素晴らしい家庭を築いたと自負している。
伯父の事務所に入らず、農業をしたいと話すロドニーの意見を真っ向から捻じ伏せたことを、素晴らしいことだったと自負する。娘の友達を指定しようとする、トニーが弁護士になることは義務という。
ブランチやレスリーを見下している。
ロドニーは自分の想いを全く聞き入れてくれない妻に、心が離れていったんだろう。ロドニーは妻を受け入れて優しく接してあげてると考えているようだが、自分の思いを主張しないことは自己責任だし、妻に指摘をしないことは無責任だと思う。そして倒れたのは過労ではなく、レスリーの死で傷心したことが理由。
周りの人は過労が原因と考えており、それでジョーンは子どもたちから責められていたのはジョーンに同情した。
父親・子どもvs母親の構図。子どもにとって不愉快な言葉を言わなければならないのはたいてい母、とジョーンは考えてるが、エイヴラルが駆け落ちしようとしたときはロドニーが冷静に論理的に諭した。つまりは言うときは言っていた。夫婦で価値観や教育方針を共有できていない、それ故に生じた分断。
ジョーンは自分の真の姿を自覚し、生まれ変わろうと決意したのも束の間。結局これまで通りのジョーンで有り続けた。
Posted by ブクログ
アガサクリスティーの中でもミステリーではないのですが、人として少し怖く、個人的には哀しくなるようなストーリーでした。
主人公であるジョーンの目線から語られるときは自意識の高いジョーンは完ぺきで家族のことも大切にしてこどもたちに対しても愛情深く育てあげたという自負がある。
夫にも愛されて何不自由ない生活をしている。
ただ、家族からの目線や、友人、出会ってきた人からの評価とは少しズレがある。
一人旅行の旅先で列車が止まり、何もすることがなくなってしまったジョーンは自分と向き合い始める中で、他者との考えのズレがあることや、実は自分は周りに好かれていないのでは。。?と気づき始めるが、列車が動き、無事に家に帰ることができたジョーンは元の生活に戻ると何事もなかったかのようにまた普通に生活をしている。
こういう人、いるよなあ。。
たまに「自分は悩みがないのが悩みです」という人を見るけど
そのたびに、あなたが悩んでない分、あなたのことで周りが悩んでる場合が多いよと思っていたのですが、まさにそれやなと思いながら読んでました。
さすがアガサクリスティー。人の謎までここまで緻密に描くのは本当にすごい作家さんだなと思いました。
Posted by ブクログ
回想のシーンがとても多かったことが印象的だ。
序盤は毅然とした自信家で魅力的な女性だと思っていたジョーンだがジョーンに対する見え方は物語が進むに連れて変わっていった。
自信家であるが故に自分の考えていることが正しいと信じて疑わず夫や子供たちから選択権を奪ってしまうことが多々あった。
その結果子供たちから冷遇されるとヒステリックを起こすといったなんとも厄介な母親へと見え方が変わっていった。
子供目線でヒステリックな母親を見る作品は何度か読んだことがあったが、ヒステリックな母親目線の作品は初めてだった。
主人公に感情移入することが多いが今回はなかなか感情移入することが出来なかった。
砂漠での自分自身の言動を振り返る時間を通して自分の過ちに気づくことができ、帰宅したら謝ろうとあれほど心に決めていたのに帰宅し夫に再開した瞬間謝らずに今まで通りの態度をとったラストシーンでは人間の弱い部分を感じた。
ジョーンと同様に多くの人は自分にとって都合の悪い自分自身の真相は気付かないふりをしたくなってしまうものだろう。
そのような真相を受け止められる強さを持ちたいと思った。
作中ではロドニーが誠実なイメージであったがロドニー目線のエピローグを読むとロドニーはロドニーでジョーンよりもレスリーを愛していることをジョーンから隠してることから誠実なイメージが崩れた。
砂漠で何もない生活に苦しむといった共通点があったことから砂の女に似たようなものを感じた。
Posted by ブクログ
これ、主人公を自分と重ねるか、自分の母親と重ね合わせるかでどう感じるかが全く変わりそうだと思った。
「毒親」という言葉にアンテナ高めな人は読んだ方がいいかもしれぬ、が、そういう環境で育った方にとってはだいぶしんどいこと請け合います。
ミステリー小説家としてのクリスティのイメージしかない人はぜひこちらも。
Posted by ブクログ
三児の母であるジョーンが旅の帰路にて自身の半生を振り返り、自分がどんな人間であるかを見つめ直す話。
ジョーンは自身を優れた母親だと考えているものの、周囲の人間のちょっとした言動であったり夫及び子供達が自分と接する際の態度に違和感を覚え始め、彼女の経験した過去と共に、無意識のうちにジョーンはその違和感の答えを探っていく。
自己批判が主題のように感じました。人は他人に対しても自分に対しても、望み通りではない辛い事実と相対することを避け、想像で尤もらしい理由付けをした上で自身が傷つかない勝手な結論を思い込むことで、精神を保護する傾向にあると思います。本作は、その思い込みという修正を軸に、正しい現実はどうなのか、またその自身にとって都合の悪い現実とどう折り合いをつけていくのかというお話だと解釈しています。
自我の研鑽は大事だというメッセージを感じる一冊でした。最後の夫の独白も含めて良い作品です。誰もがより他人を慮り、傷つく人間が少ない世界になるよう、全人類に一度読んでみていただきたい作品です。