あらすじ
優しい夫、よき子供に恵まれ、女は理想の家庭を築き上げたことに満ち足りていた。が、娘の病気見舞いを終えてバクダードからイギリスへ帰る途中で出会った友人との会話から、それまでの親子関係、夫婦の愛情に疑問を抱きはじめる……女の愛の迷いを冷たく見すえ、繊細かつ流麗に描いたロマンチック・サスペンス。
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Posted by ブクログ
ジョーンがせっかく非日常の中で見つめ直した自分の過ちを無かったことにしてしまうあたり、最高の皮肉を感じた。
ロドニーは事を荒立てたないことに重きを置いた結果、表面上の付き合いを続けていく覚悟が垣間見えた。
隠し事だらけだけど、こういう愛の形もあっていいんじゃないかな
Posted by ブクログ
前半から、この主人公の問題ありな部分が節々に感じられ、一体どういう話なんだろうと想像を膨らませながら読んでいた。
ついに自分の罪と向き合いながらも、やはり人は簡単には変われないという現実を突き付けられた感じがした。
推理小説ではなかったものの、感情を揺さぶられるような小説だった。売れたアガサクリスティーが別名義で書いたというのも納得。
生き方に迷ったときも読み返したい。
ライフイベントなどのタイミングで読み返すと、その時々で違った感情になるのかもしれないなと思った。
Posted by ブクログ
スマホも本も持たずに旅に出たら、ジョーンのように雷に打たれたような気づきがあるかもしれない。が、これもまたジョーンのように結局は日常に戻った瞬間にすべてを忘れて元の思考に戻ってしまうんだろうなぁ。年を重ねても自分を客観視できる人間でありたいと思った。
Posted by ブクログ
優秀な弁護士の旦那とそれぞれ結婚し巣立った3人の子供を育て上げた主人公のジョーン。
理想的な人生を歩んできたと盲信してきたジョーンが徐々に不都合な真実へ直面していく物語はシンプルだが面白い。
この作品の終盤帰りの車内で出会う人物にもうすぐ戦争が始まると告げられるシーンがある。僕の知識が乏しかっただけでもしかしらそれまでの場面でそういった伏線が散りばめられていたのかもしれないが、なにも知らずに呑気に読んでいた僕はそのセリフにどきりとした。なによりジョーンの自己認識という最もミクロな物語と戦争というマクロな物語を自然と接続させる表現力とセンスがとてつもないと感じた。
孤独の中で内省を深めたジョーンは家に帰ったら夫であるロドニーに謝り新たな人生を歩み始めると決意する。しかし、ジョーンは普段の日常に戻ると変わる必要なんてないのでは、或いはあの時辿り着いた真実はただの空虚な妄想だったのではないかと心変わりしてしまう。
ラストの章ではロドニー視点で物語が語られる。その中で彼はジョーンの幸せの為、真実を伏せて彼女に接する。
ロドニーは優しく聡明であり正しい大義と責任感を持っている。しかし、それ故にジョーンは生まれ変わることができない。真実に向き合うことができない。僕はここにある種の政治家像を重ねる。彼らもきっと国民に今までと変わらない豊かな生活を享受させる為に奮闘しているのだろう。物価が上がっても減税し、ホルムズ海峡が封鎖されてもガソリンの値段は財政出動により大きな変動はしない。世界情勢は刻々と変動しているが国民は今までと同じ生活が続くと信じ切っている。まさにヒトラーが戦争を起こすわけがないと信じ切っているジョーンのように。
奇しくも僕がこの作品を読み終えたのは8月16日だ。終戦記念日の1日後である。僕たちは改めて考えなければならない本当の勇気について。
Posted by ブクログ
ミステリーでもホラーでもないのに怖さを感じた小説だった。ただの主婦が自分の人生を振り返るだけなのに…
でも思い返せば自分もジョーンのようなことがあったような…当時は気付かないけど、あとから振り返ってみればあぁいうことだったのかな?!と穴があったら恥ずかしい気持ちになったことが。笑
自己肯定感が高すぎるのも考えものだなと思った。
そして結末はあまりにも救いようがないというか…残念な気持ちになったけど色々と考えさせられる本だった。
この題材でここまでのめり込ませてくれるアガサクリスティはすごい!
Posted by ブクログ
ミステリーかと思ってたけどアガサ・クリスティーはこういうのも書くんだと驚き。
ずっと場所が動かない、たまに人と会話するけどほとんどが主人公の回想だからそれが苦痛な人には合わないかも…
最後は2つの意味に取れる…
①もう誰も君を愛してないけど真実を知ると面倒くさいから気付かないでくれ
②愛してるからこのまま気付かないで幸せなまま生きてくれ
どっちだろ。でも愛してなかったら離婚するよなあ…
結局気付いたのに変わろうとしない妻
妻にちゃんと向き合わないで全てを諦めた夫
子供だけが可哀想…
あと何故かひらがな多くて読みづらいとこ多かった。
Posted by ブクログ
良妻賢母を自認して疑わない主人公ジョーンがバグダッドでの思わぬ足止めをきっかけに自分と向き合う。
ジョーンの自認と他者からの評価のズレが痛々しくてずーっと読むのが苦しい。身近な人物や自分自身の中にもジョーンを感じる部分があり、真綿で首どころか体全体を絞められるよう。
エピローグで夫サイドが語られ、ラスト1行の破壊力が、いい。夫は穏やかで人格者のように全編語られる(し、実際そうだろう)けど、ジョーンのダメさを分かったうえで利用していた狡猾さもあるのかな、とも思った。
「プアリトルジョーン」が優しい言葉とはとうてい思えない
Posted by ブクログ
たった一人の人間の心の葛藤だけで一冊の物語が作れてしまう、アガサ・クリスティーの文章力の高さにはすごい!という気持ちになるが、それ以上に恐ろしさを覚える本だった。
人間の醜い本心を冒頭から見せられているようで、ジェーンの自分を高く見積もるところが好きになれない、全部が全部間違っているとは言わないが、自分の価値観を人に押し付けるところもちょっとな…などと考えながら読んでいたが、途中でそのことを自覚し、変わるのかと思ったら…人間はそうは変われないということすら、生々しい。
彼女と通ずる部分があるからこそ、読むのが辛くなる。心に刺さってしまう。