あらすじ
優しい夫、よき子供に恵まれ、女は理想の家庭を築き上げたことに満ち足りていた。が、娘の病気見舞いを終えてバクダードからイギリスへ帰る途中で出会った友人との会話から、それまでの親子関係、夫婦の愛情に疑問を抱きはじめる……女の愛の迷いを冷たく見すえ、繊細かつ流麗に描いたロマンチック・サスペンス。
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Posted by ブクログ
これは悲しみではなく明らかに哀しみ。読後ずっと今も胸の奥のモヤモヤが止まってくれない。今の年齢だからこそ分かることもあるなこれは。諦めるという言葉を考えるしロドニーを怖いとも思ったが様々な登場人物に思うところが出てきてしまう。
Posted by ブクログ
読み始めから主人公ジェーンが嫌いすぎた。傲慢さとか粗っぽさとかイキりを感じて。
夫のロドニーには全く嫌悪感がなかった。優秀で、真面目に仕事をし、子どもたちのことを想い、自分の人生を捧げていて。
夫は妻に向き合っていない、逃げている、という指摘に対して、家族を養うという社会的な責任を果たしているのに何を責められることがあるんだと思ってしまった。
私自身が、自分だけのために働いている人間なので、「ロドニーは妻に対して不誠実だ」という論調に嫌な気持ちになったのかも。
最後、ジェーンが変われず今まで通りの自分でいるための言葉を吐いた時、自分の慣れた土地に帰ったからだなと思った。あのまま砂漠でロドニーに対面していたら、ジェーンは変わっていたと思う。慣れた土地は、自分を怠慢にするよね。
Posted by ブクログ
翻訳文で読みづらかったけど、内容が恐ろしく、刺さったので星5。
せっかく自分の過ちに気づいたのに、結局変わることができなかったジョーン。人が心から変わることの難しさがよく分かった。自分の過ちに気づきかけても、最後には自分に甘えて気のせいだったかもってなってしまう。それが理解できてしまうのは自分も同じ経験があるから。
解説で気付かされたけど、ジョーンをそのままにしておいた、夫ロドリーにも責任がある。
周りに対して鈍感、自分の過ちに気づかないことの幸せさ。
Posted by ブクログ
ろくに事前情報を得ていなかったので、「家族のために尽くしてきた女性だが、実は家族はそれぞれ後ろ暗いものを抱えており、それに気づいた女性が家族から離れて自由になる」……そんな物語を予想していた。
が、蓋を開けてみると、まったくの正反対。悪意なき支配で家族を縛り、しかもそれを正当だと信じて疑わない愚かな女性と、そんな彼女に反抗できず、自らの自由を勝ち取る心意気も無い情けない夫の話だった。
強い思い込みを持ち、自己満足で行動し、挙句に己の過ちや不都合なことから目を背け続けるジョーン。何となく身内を思い浮かべると同時に、自分自身にもジョーンの片鱗があったのではないか?とも考え、これまでの内省とは比べ物にならない、本物の内省が始まった。
結局、ジョーンはやっと気づけたすべてのことを知らないフリする結末を選ぶが、人間はそう簡単には変わらないのだということが示唆され、やけに現実味がある。ジョーンは反省して更生しました、めでたしめでたし、で終わらないのがまた良い。
相手を理解しようとする愛、相手を自分の理想どおりではない他者として認める愛が、ジョーンには不足していたのだと思う。
本作は、重要なのは自分自身がそれを「愛」と考えるかどうかではなく、相手がそれを「愛」として受け取るかどうかなのではないかという、当たり前のことに気づかせてくれた。全人類に一度読んでもらいたい一冊だった。
Posted by ブクログ
刺さりすぎた。なぜなら、私はエイヴラルの立場だから
毒親育ちじゃない人は夫に怒るを感じる人もいるって言われてるようだけど、夫に対してもっとしっかりしろなんて無理だよ
反論や意見を言う元気が失われるくらいに救いようがないんだから
Posted by ブクログ
「私は完璧な妻であり母」自認の主人公が、ある事情で自分の過去をつぶさに振り返り「自分は最低な妻、母、友人だった」となっていく作品。
ほぼ主人公の一人芝居であるにも関わらず内容は非常に面白いし、先が気になってどんどん読んでしまうにも関わらず、とにかく疲れる作品でした…
主人公は(おそらく意図的に)かなりの性悪女として描かれていて、自分もそんなに性格が良くないと自認している私でもさすがに彼女のことを擁護はできない。…けれど、この世界に他人への加害性が全くない人間はいないので、大なり小なりどんな人にも刺さる部分があるのではないかなと思う。私も所々「ゔ……ごめんなさい……」となりながら読んだ。
それなりの年数を生きていると「あのときあの人に酷いことをしてしまったなぁ」という人生の汚点のような出来事も、やっぱりある。当時はその加害性に気付いておらず、数年後に思い返して後悔することも。もう謝ることができないことも。私にもたくさん、ある。
自分の加害性を自覚すること。そのことに蓋をせずきちんと見つめ、適切に反省すること。忘れないこと。
こうやってすべての業を抱えながら生きていくしかないのかなと思う。
一般論として、人間は身近な家族、特に我が子に対しては自他境界が曖昧になりがちと思われるので、どんなときも相手の感情や意見に敬意を払うことを忘れてはいけないなと思った…
子供がまだ幼いうちに読むことができて本当に良かったと思える一冊でした。しかし、本当に疲れました…
Posted by ブクログ
めちゃ面白かった!ちょっと人怖ホラーっぽいというか、主人公が「私は家族のために尽くしてきてよき家庭に恵まれた幸せな人」って言ってるのに、回想では夫や子供を自分の思う通りにコントロールしようとして疎んじられてるのが分かるし、本人もだんだんそれに気付いていく話。
でもこれは普遍的なテーマというか、舞台となってる場所や時代を変えたとしても完全に成立する話だなと思った。
ジョンの言う、貧しくて無謀な幸福か、理性的で現実的な生活か?という二者択一は、多かれ少なかれ人生の中で迫られ得るテーマなので、あらゆる人間の中にジョンとロドニーはいる、とも思う。
ジョンが、長女が20歳も上の既婚者と駆け落ちしようとするのを止めたり、夫が心からやりたいけど実入が少ない農場経営に乗り出そうとするのを止めたり、次女が鼻持ちならない嫌味な酒飲みに夢中になったりするのを止めるのも、まあ、分からなくはないというか…。
でもその過程で、ジョンが家族を愛してると言いつつ、相手のことを何もわかっておらず、「こうあったらいいな」の像を相手に押し付け続けてコントロールしようとし、反発されると被害者ぶるところとかは怖かった。令和の毒親ものに通じるというか。
ジョンは、砂漠で一時の悟りを得て真実に気づくも、帰りにロシア人の同室の人に言われた通り、聖人ではない彼女は家に帰るなり悟ったことを気のせいということにして無かったことにする。
そして元通り、他人への見下しと自己中心の激しい人間に戻ってしまい現状を変えることはないのだった…。
あと、本筋には関係ないけど、戦間期にはロンドンからバグダードまでを繋ぐ列車が走ってたんだな…。その後の戦争でめちゃくちゃになってしまった地域が当時は平和だったのを感じてしみじみする。もし今もこの路線が現役だったら絶対に乗りたかった。イスタンブール行きに乗り換えるアレッポの駅とか、シリアの内戦で見る影もなさそう
エピローグの夫視点。「ひとりぼっちのプアーリトルジョン。どうかそのことにずっと気づきませんように」
夫の心境ってどうなんだ。真実に気づかず、有能で必要な人間だと思い込んでる妻を見て「休暇は終わりか…」とがっかりする反面、ずっとこのままでいてくれと憐れんでる。ロドニー的には、ジョンにうんざりしてるし、心から愛してるのは故人のレスリーなわけだけど、ロドニーとしても不幸な現状維持を変える気はない…。ロドニーがもっと自己主張する人てジョンに正面から反発して言い争える人ならジョンもこんな哀しい怪物にならなかったんじゃないかなと思うけど、一緒に過ごす間に何言っても無駄だからせめて自分の妄想を信じて当たり障りなくやるのが一番コストが少なくていい、って対応になってったのかな。戦間期のイギリス中流階級、離婚とかにも厳しそうだし。ロドニーに、そもそもなんでジョンと結婚したのか聞いてみたい。
全体的に、人生ってこんなもんだよなと思いつつも結構ホラーな話だった。さすがミステリーの女王アガサ・クリスティ。事件なんて起こらなくとも、どこにでもある1人の人生こそがミステリーでサスペンスとなり得るって感じだった
Posted by ブクログ
アガサクリスティーの中でもミステリーではないのですが、人として少し怖く、個人的には哀しくなるようなストーリーでした。
主人公であるジョーンの目線から語られるときは自意識の高いジョーンは完ぺきで家族のことも大切にしてこどもたちに対しても愛情深く育てあげたという自負がある。
夫にも愛されて何不自由ない生活をしている。
ただ、家族からの目線や、友人、出会ってきた人からの評価とは少しズレがある。
一人旅行の旅先で列車が止まり、何もすることがなくなってしまったジョーンは自分と向き合い始める中で、他者との考えのズレがあることや、実は自分は周りに好かれていないのでは。。?と気づき始めるが、列車が動き、無事に家に帰ることができたジョーンは元の生活に戻ると何事もなかったかのようにまた普通に生活をしている。
こういう人、いるよなあ。。
たまに「自分は悩みがないのが悩みです」という人を見るけど
そのたびに、あなたが悩んでない分、あなたのことで周りが悩んでる場合が多いよと思っていたのですが、まさにそれやなと思いながら読んでました。
さすがアガサクリスティー。人の謎までここまで緻密に描くのは本当にすごい作家さんだなと思いました。