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Posted by ブクログ
ミス・マープルは療養のためカリブ海のサントノーレ島のリゾートホテルにやってきた。常連客のパルグレイブ少佐は、誰彼構わず写真を見せてはそれに係る自分の過去の話、自分が知る殺人者の話をしている。虎狩りで…、象に乗って…、そういえば殺人者の写真を見せてあげよう。
だが紙入れから写真を取り出しかけたバルグレイブ少佐は慌てたように写真をしまって話題を変える。
翌朝、少佐は自室で死んでいるのが発見された。ミス・マープルは、彼が自分に見せようとした「殺人者の写真」を探そうとするが、それは紙入れからなくなっていた。さらに少佐の部屋には、彼が患ってはいない病気の薬瓶があったのだ。
これは写真の殺人者に口を封じられたのか?
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他のミス・マープル小説には無かったような、昔と今で性行為に対する考え方の違いだとか、女性のセクシーなスタイル描写だとか、ミス・マープルが若い頃にちょっと良いなと思ってすぐに幻滅した若者のこととかが語られていた。これはアガサ・クリスティーも晩年近くに書いたものだそうです。
今回の舞台はリゾート地なので、ミス・マープルの知り合いもいないし、彼女が名探偵だと知る人も、警察関係者もいない。さらに少佐の死が殺人と証明も困難だ。あまりにミス・マープルと遠すぎる事件なのでどうやって捜査を動かすんだろうと思いながら読んでいった。
本書でなかなか良い相棒になるのが、車椅子の富豪のラフィール氏。気難しく悪態をついて人当たりも悪く、金持ちで余命僅かである自分は何をしても許される、と思っている。しかし使用人はこき使うようだけど大金を与えているし、気の毒な相手には実はこっそり遺産を残す手はずも整えている(自分が死んでから驚かせるつもり)し、心遣いも見せる。
最初はミス・マープルに向かっても「わしは老婦人が嫌いだ。編み物しながら噂話ばかりでうんざりだ」と直接言うくらいだったが、次第にミス・マープルの感の鋭さと目の付け所の正しさ、判断力を見抜いて、二人で事件解決に向けて協力し合う。
足腰弱くなってるが推理力のあるミス・マープルと、車椅子で病気も患っているが使える人を持つラフィールの老・老探偵コンビがいいんですよ。
そして夜のベッドで考えながら謎を解いたミス・マープルが「ピンクのショールを羽織って顔を上気させてラフィール氏の寝室に駆け込み「すべて分かりましたわ!私達で次の殺人を止めましょう!私は殺された人たちのために復讐の女神になります!」と告げる。
これはなかなかの見せ場では・笑
Posted by ブクログ
クリスティ作品の中で最も完成度が高く、読んでいて心地よい作品。今作と「復讐の女神」は連作になっている。復讐の女神とは今作中において、大金持ちのラフィールがマープルから夜中に叩き起こされるシーンでマープル自身の形容について冗談の様に言った事なのだが、復讐の女神(メネシス)に似ても似つかない様がずっとラフィールの印象に残ったのだろう。次作のタイトルが「復讐の女神」である事も鳥肌物で、今作の完成度がずば抜けて凄いと感じてしまう要因の一つだ。
更に巻末を見て驚いたが、今作は三部作構成の計画があったという事だ。クリスティが亡くなり実現しなかったという事らしいが英題まで決まっていた様で物凄く残念だ。願わくば今の時代に生きる有名なミステリ作家がタイトルを引き継ぎチャレンジしてほしいが、きっと誰も納得しないんだろうなぁ。
普段はセント・メアリー・ミードから出る事がないマープルだが、甥のレイモンドの愛情により旅行にでている。マープルが何処かに出かける作品は意外に多く実は彼女はとても行動的なのだが、カリブ海はメキシコ湾の辺りの様で数少ないマープルの旅行物だ。ホテルの人達や滞在客は皆んな優しく過ごしやすい環境だが、ある日パルグレイヴ少佐の死亡をきっかけにマープルが疑問をもつ。彼は病死とされていたが、マープルに話しかけていた際にとある事件の犯人の写真を見せびらかそうとした際に、不意に何かに気づき話題を変えていたが、その事を不自然に感じ、マープルができる限りの調査を開始する。
今作の好きな所の一つ目は冒頭に挙げた次作のタイトルを見事に表現している部分なのだが、二つ目は探偵小説にありがちな矛盾を逆手にとっている事だ。そもそも素人探偵に警察が協力する訳が無く、数あるミステリではとにかくこの部分を誤魔化す訳だが、今作ではマープルは孤独を理解し、仲間を巻き込む所から始まり、最初は医者を利用し(彼は利用されたで良いだろう(笑))、その後、大金持ちのラフィールを味方につけ、彼の部下も巻き込み真相を解決している。少なからずマープルは探偵役としては欠点が多い訳だが、今作ではそれが大いなる魅力に変換され、作品の山場を見事に演出している。そして、根本には犯人の意外性や幾つもの殺人、伏線となる語られた過去の事件等は当然のごとく表現されている。
実は落ち着いてみると、クリスティのベストに入る作品なのでは。と今更ながらに思う。読み終えてから次に手に取るのは、言わずもがな、「復讐の女神」だ。
Posted by ブクログ
「復讐の女神」を読もうとして、冒頭でこれ続き物か!と気づきこちらに戻ってきた。読んだ覚えもなかったが(復讐の女神の方でも言及されていたところの)夜中に病人を襲撃するピンクのふわふわおばあちゃんだけうっすら記憶に残っていたので、たぶん20年前くらいに読んでいるのだと思う。おかげでなんとなく怪しいのこの人だった気がするーと目星をつけながら読んだ。
自分で動くよりは理解者に動いてもらうことが多い気がするミス・マープル、今作では結構自分で動くのが楽しい。協力者としてのラフィール氏とのコンビ、とてもよい。そしてやっぱりピンクのふわふわは名場面だった。かっこよかった。
Posted by ブクログ
75点。
マープルシリーズ長編。海外が舞台なのは初めてかな? マープルの周囲に力を貸してくれる馴染みのキャラクターがいないので、どのように事件を調査していくのかワクワクと読み進められた。本作でいちばん印象深いキャラクターは富豪のラフィール氏だろう。傲岸不遜ではあるが、いち早くマープルの能力に目をつけ、共同で推理をするような関係になるとは序盤を読んでいたときには想像もできなかった。事件の展開自体は、そこまで奇抜ではないかわりに、小ぢんまりとまとまってた(犯人が、自分の妻を精神的に追い込んで、「自分は精神に異常があるのではないか」と思い込ませようとするところとか、妻の親族に精神疾患をもった人がいることを利用しているあたり、えげつないことするなとおもった)。
「人生ってそれを失いそうになればなるほど、生き甲斐もててくるし興味も増すものです。(中略)若くて力もあり、健康で、洋々たる前途が開けているときは、生きることなんてそれほど重要ではありません。失恋の悲しみとか、ときには純粋な不安から、いとも簡単に自殺してしまうのは若い人に限られます。でも老人は生きることがいかに大切で興味深いものかということを知っていますわ」p224
Posted by ブクログ
マープルもの9作目。
本書はクリスティー74歳の時の作品だそうですが、さすがの円熟ぶりといいますか、「あっぱれ!」な完成度でございました。祝日に一気読みです〜。
転地療養のため、セント・メアリ・ミードを離れてカリブ海のリゾート地にやってきたマープル。
歳を重ねて頑固になる人は多いですが、甥の親切なおせっかいをありがたく受け入れ、「ほんとうの意味の若さの精神を発揮して、それほどおもしろいものなら自分もなんとかそれを好きになろうと努力しよう」(p31)という姿勢にはとても感心しました。
また、さまざまな人との会話の中で、時にかまをかけたり、ぐっと反論をこらえたり……次々繰り出される会話術にも脱帽。私もこんな聞き上手になりたい。
そして見知ったサー・ヘンリーもクラドック警部もいない中、バディとなるのはたいへんなお金持ちであるラフィール老人。
”死を目前にした剣闘士”同士のやりとりは、退官後戦場に戻ってくる老兵士のようなかっこよさがありました!
後の作品である「復讐の女神」が出てきましたが、これは続編にあたるとか……?うーん楽しみ!
本書のキーワードである”噂話”は、やはり誰しも気になってしまうもの。
旅先という特定の環境で、人々の口の端にのぼる噂話がいかに広まり、どんな人物像を形成していくか……。それをもとに人間を緻密に描いていくクリスティーの腕前は、やはりさすがの一言。
リゾート地には縁がないので、こちらはいつかドラマ版でも観てみたい作品です〜。
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