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Posted by ブクログ
凄まじいある愛の形。
鉄管工の父を持つ保守党候補者ゲイブリエル、由緒ある貴族の末裔のイザベル。男と女、どこでどう惹かれるのか。肉体、精神、顔、声、それらが相まって関係は始まる。クリスティがここまで凄い恋愛観を持っていたとは。
時は第二次世界大戦、ドイツが降伏した後、日本が降伏するまでの間に始まった。一組の愛の物語の背景に、戦争、貴族社会の変容、イギリス社会の階級意識、政治へのひとつの考え、などを配する。親父が鉄管工だという労働者階級出身だが保守党候補者ゲイブリエル。政治家になるのは金のためと割り切っておりしょせん政治はそれだけのもの、庶民に小さな希望を持たせればいいと言う。が、金で貴族の称号を買ったとしても、それは貴族に生まれたのと同じではない、と言う。クリスティは中産階級側だと思っていたが、案外醒めた社会観が窺える。
1947発表
2004.6.15発行 217.5.25第2刷
Posted by ブクログ
読者の引き込み方がクリスティーらしいなぁ。小説の最後に、「それは結末じゃない、始まりだ」と言ったのは、私はポジディブな意味にとらえたけど、真意はどうなんだろう。
イザベラみたいに今だけを考えて、自分の輝きをずっと持っていられる人って特別だな。ゲイブリル、クセ強いなぁ。テレサは何事にも理解がある人って感じで描かれているけど、そんな人、本当にいるんだろうか。
幸せになることだけが人生の意義ではない、っていうのには共感する。世間的にみた不幸が、ある人にとっては一種の幸せでありうる。幸福が人生の意義であるとは限らないし。
不幸に生きながらえる人っているよなぁ。悪いわけではないし、無理に変える必要もないって思ってたけど、滑稽だし誰かを辟易させる。
誰のことも見ているつもりでも、ちゃんとその人のことは見えていない。自分の偏見から自由にはなれない、公平になんて見ることはできない。自分に対してですら、公正な目で見ることはできないんだから。
Posted by ブクログ
その人生を幸福と呼ぶか。
ヒュー・ノリーズの元にゲイブリエルが死にそうだと報せが来る。ノリーズはゲイブリエルを憎んでいた。イザベラを死なせたゲイブリエルを。ノリーズの語るゲイブリエルの物語。
一気に読ませる。メアリ・ウェストマコット名義の作品なのでいわゆるミステリではない。しかし最後に明かされる真相に向かって進み、最後の打撃に痺れるという点では実によくできたミステリ的。
軽薄で自己宣伝的な醜男ゲイブリエル。彼の根底に流れる高貴なものへの歪んだ感情。生まれながらに貴族というのが日本には(一応)ないので、ここら辺の大英帝国的な価値観を完璧に理解はできないけど、なんとなく感覚的にはわかる。自分がつまらない、みっともないものだと思わされてしまう存在がそこにいて、それを愛してしまう苦しみ。ゲイブリエルの吐露には活字なのに巻き込まれそうな勢いがある。
まっすぐなイザベラ。彼女は自分で決めたことしかしない。そんな彼女の前でゲイブリエルが襲われた。銃弾に貫かれたのはイザベラだった。それが意味するところとは。背表紙のあらすじを読むと(本当にこのあらすじが9割)キリスト教的博愛とは『塩狩峠』みたいなもので、この話はイザベラがゲイブリエルを愛していたという解釈ではないのかと思ったが。
ダメ男に次々と引っかかる感傷的な女性とか、大袈裟におせっかいを焼く高齢女性とか、悪人ではなく平凡なまとめ役とか、ズレていると思いきや放った不思議な一言が真実を指している芸術家とか、相変わらず登場人物の描き方が秀逸。カッコいいと思ったのは、大英帝国の大奥様を象徴するレディー・セント・ルーと、クールに周囲の観察をして如才なく立ち回る義姉テレサ。語り手のヒューには病んでいるように見えて、その根は健康な精神を持っていると感じた。
第二次世界大戦末期における大時代なイギリスの終焉が感じられるのも面白い。この先に『日の名残り』があるのだと感じる。
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