スタンドバイミー、グリーンマイルを世に送った小説家スティーヴン・キングは自身の著作でこう語った。「文章とは言葉を使ったテレパシーである(要約)」と。
この言葉を真に受けるなら、このテレパスをプレヴェールほど上手く使いこなす人を私は見たことがない。
極限まで削ぎ取られた短い言葉に、ときに身も凍るような
...続きを読む冬風の冷たさが、ときに直の太陽を浴びるよりも燦々とした輝きが、そしてときに冷たさにたまらず熾したマッチひとつ分の仄かな温かさが、読み上げた端から頭の中に情景として広がっていくさまは見事としか言いようがない。
プレヴェールの言葉選びとそれをどう組み合わせれば自分が見た・想像した物と同じ物が相手の内にできるかという計算もさることながら、訳者もまたそのプレヴェールの意を汲み、さまざまな言の葉の中から洋服を組み合わせるかのようにぴったりな言葉同士を多種多様な日本語の内から選び出して、国や言葉を越えた感動をこうして私たちの前に提供していただけたことにひたすら平伏する他なく、陰ながらも決して無視できない職人技だ。