小笠原豊樹のレビュー一覧

  • 虐げられた人びと
    何が好きかって、彼の作品のキャラは作者に踊らされていない
    それぞれの人の欲望や信念が丁寧に描かれている

    天才なんだなと思う。
    何故、女性の機微をここまで理解出来るのだろうか
    彼は時々、熱病そのものだったのではないかと勘繰ってしまう

    そしてドストエフスキーの作品における
    純粋無垢が故の悪漢
    中々に...続きを読む
  • 火星年代記〔新版〕
    最初どうしてもイメージできない描写がひたすらに続き、これ読み切れるかなと心配していたのだが年代が進むにつれて加速度的に読みやすくなる。でも文明のうつろいを描写で感じることになるとは……。
    「優しく雨ぞ降りしきる」のスピード感と「火の玉」における信仰対象への解釈の話がいっとう好き。こういう話、自分で思...続きを読む
  • 火星年代記〔新版〕
    火星がどんな風に侵略されたか、地球はどんな状況なのか、地球人は何を考え火星へやってきたか、それらをいくつもの短編を読んでいくことで把握できるようになっているのが面白かった。喉元にナイフを突きつけられたような恐怖を味わう話もあったし、心を押しつぶしてくるような話や、詩的で美しい話もある。
    目線が変われ...続きを読む
  • 無実はさいなむ
     無実はさいなむ
     女性資産家の殺人事件。逮捕されたのは養子の息子(ジャッコ)。息子は獄中で半年後に亡くなり、しかしアリバイを主張していたが、確認されなかった。二年後、事件の起きたアジール家にキャルガリという学者が訪れる。彼は二年前の事件当日、屋敷から離れた場所で逮捕されたジャッコを車に乗せた事実を...続きを読む
  • 火星年代記〔新版〕
    地球の人間が火星を訪れ、人間のための世界を作り、去っていく経過を描いた連作短編集。そしてブラッドベリやっぱりすごい、登場人物は皆生き生きと動き回り、情景がくっきり浮かんでくる語り口。時にファンタジー、時にホラー、時にコメディ。滑稽であったり、無常感を纏っていたり、とにかく生々しく感情の色々な部分を揺...続きを読む
  • プレヴェール詩集
    スタンドバイミー、グリーンマイルを世に送った小説家スティーヴン・キングは自身の著作でこう語った。「文章とは言葉を使ったテレパシーである(要約)」と。
    この言葉を真に受けるなら、このテレパスをプレヴェールほど上手く使いこなす人を私は見たことがない。
    極限まで削ぎ取られた短い言葉に、ときに身も凍るような...続きを読む
  • 太陽の黄金の林檎
    ブラッドベリ的とは

    SF小説は、未来や宇宙世界に対するワクワク感をもたらすものが多いが、この短編集はちょっと異質。
    グリムやアンデルセンが動物を擬人化したように、SF小説においては舞台を未来や宇宙に置いて、時には異星人をモチーフにして、かえって人間の愚かさや面白さを浮き出させている。
    収録作品には...続きを読む
  • 火星年代記〔新版〕
    話自体は他のSF作品に比べて地味だけど、表現力がすごくて読みやすいし想像しやすくて面白い。
    SFは目新しさが重要だと思ってたけど考えが少し変わった。
  • 火星年代記〔新版〕
    いろいろ寄り道しながらも、ここ最近でいちばん夢中になれた本。
    ラストが
    ラストが!
    なーるーほーどー!
    手法としてはもう在り来りなのかもしれないけど、怖〜。

    最初は、謎系のSF感がとても面白くて読ませます。星新一さんみたいに。

    なかなか火星から地球に帰ってこない地球人。だのに、翌月も、また夏にも...続きを読む
  • 無実はさいなむ
    友人に勧められて読んでみました。
    登場人物の心理描写が巧みに表現され引き込まれる作品でした。人に与えすぎる事が時として人の自由を奪うことにもなるという作者の痛烈なメッセージも感じられました。
  • 虐げられた人びと
    軽薄純情な青年アリョーシャと清純ヒステリックなナターシャの恋物語を中心とした人間ドラマ。冒頭から出てくる老人と犬(アゾルカ)がけっこう重要な役回りだったり、ネリーの意外な素性だったりと構成が巧みなように思う。語り手がドストエフスキー的な人物(デビュー作は当たってその後はうまくいっていない状態)という...続きを読む
  • 火星年代記〔新版〕
    これは……さすが名作、と言わざるを得ない。
    わたしが生まれるずっと前に書かれてたのか……。すごい。
    だけど地球人って平和ボケしてるというか何というか……歓迎されると信じ切ってるところがヌケてるというか。
    火星人の方が大分上手だ。
  • 太陽の黄金の林檎
    目次
    ・霧笛
    ・歩行者
    ・四月の魔女
    ・荒野
    ・鉢の底の果物
    ・目に見えぬ少年
    ・空飛ぶ機械
    ・人殺し
    ・金の凧、銀の風
    ・二度とみえない
    ・ぬいとり
    ・黒白対抗戦
    ・サウンド・オブ・サンダー(雷のような音)
    ・山のあなたに
    ・発電所
    ・夜の出来事
    ・日と影
    ・草地
    ・ごみ屋
    ・大火事
    ・歓迎と別離...続きを読む
  • プレヴェール詩集
    20世紀に活躍したフランスの詩人、ジャック・プレヴェールの詩集。
    シャンソン『枯葉』の作詞者であり、映画『天井桟敷の人々』の脚本家としても有名だけど、詩としては
    「三本のマッチ 一本ずつ擦る 夜のなかで」と始まる短い恋愛詩(『夜のパリ』)や、
    「天にましますわれらの父よ/天にとどまりたまえ/われらは...続きを読む
  • 太陽の黄金の林檎
    懐かしい作品やら、初めて読む作品やら。
    が、やっぱり、ブラッドベリは佳い。
    (出来うれば、新装版ではなく――つまり、中島梓以外の人が開設しているのを読みたかった(苦笑)
  • 火星年代記〔新版〕
    火星人と火星を訪れる様々な地球人とのかかわりを、年代に沿ってオムニバス形式で綴った物語。地球人が火星に到達し、次々と開拓していく一方、火星人は衰退の一途を辿る。
    事前に全く内容を調べないで読んでおり、地球人と火星人がお互いの利権を掛けてしのぎを削りあう様子を想像していた。それをいい意味で裏切られた感...続きを読む
  • 虐げられた人びと
    不幸な面は多々あったけど、後味が悪いという感じではない。
    タイトルからして嫌な終わり方で全部が終わってしまうのではと思ったが、そうじゃなかった。

    お前さえいなければ、何人もが救われただろう。そんな奴が出てくる。

    大人は頑固者だ。愛と憎しみは紙一重。

    繰り返される悲劇を子供がとめる。

    悪魔から...続きを読む
  • 火星年代記〔新版〕
    レイ・ブラッドベリの有名な本。出だしのロケットの夏の描写が美しい。
    火星人の話が前半にあって、これがなかなか読み進められなかった。地球人が火星にやってきて、定着してからは未知の世界で暮らしていく人々と先住民の話があったりして面白く読めた。
    移住してくるのがアメリカ人ばかり。地球で戦争が起こり、火星に...続きを読む
  • 火星年代記〔新版〕
    物語は2030年1月からはじまる。あらましを序盤、中盤、終盤にわけるなら、序盤はおもに火星人の視点での叙述となる。地球人の訪問と火星人の抵抗。中盤から視点は地球人に移り、ついに彼らの入植が完了する。そして終盤はふたたび火星人の、かつては地球人だった火星人の視点に戻る。およそ27年にわたる赤い星の記録...続きを読む
  • 虐げられた人びと
    ラスト30ページほどで、息を飲む謎が明かされる。幾重にも巡らされた入れ子構造。悪人、善人の描き方。金への執着。ネリーが登場してから、俄然物語は進み始めたが、やはり肝だったのだな。舞台装置もドラマチックだった。