小笠原豊樹のレビュー一覧
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ネタバレレイ・ブラッドベリで最初に手に取ったのが「とうに夜半を過ぎて」で、それはうまく良さを掴みきれず挫折してしまったのですがこれは面白く読めました。
著者はこの作品がSFと言われるのは疑問だと序文で書いているとおり、火星を舞台にした哲学的なファンタジーと言われるとこの小説の雰囲気にしっくりくる。
でもこの幻想的で詩的な中に人間のリアリティがしっかりとある。宇宙旅行が自由になり人間たちは火星へそれぞれ色々な目的で旅行や移住するようになる。その結果、火星の元からあった文明はすべて破壊され、さらに地球では核戦争が起こり火星も地球をも壊してしまうという人間の悲しい罪深さが描かれている。
この小説の核となる7 -
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やはりチェーホフはおもしろい。
特になにか劇的なことが起きたりするわけではないけど、内面の描写がうまかったり、なぜだか心に残る場面が多かったりする。
「イオーヌイチ」は最初は男のほうが求婚してたのに何年か後には立場が逆転していく様や、良いと思っていたものが急に色褪せてみえてなにがよかったんだろうこんなもの……と思ってしまう様が実生活でもまぁあるよねと思えたし、人生の虚しさや呆気なさも感じられてよかった。
「往診中の出来事」は下記のリーザの台詞がとても印象に残った。
『孤独な人間は本をたくさん読みますけど、人と話したり、だれかの話を聞いたりすることは少ないから、人生が神秘的に見えます。孤独な -
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「とやかくいわないでください。知りたいとは思いませんから」って、この本の冒頭の作者自身のけっこう長い“まえがき”。
自分的には“童話的SF”または“SF的童話”なんだけど。
確かに、グリムもアンデルセンも擬人化してるんだから、火星を地球化したからといって“サイエンス・フィクション”であるかどうかが議論されることは、ナンセンスだよねって、思うし。
それにしても、長めも短め(たった1ページのもある)もごちゃごちゃなんだけど、なんとなく時系列であることがわかり、且つ、つながっているんだなぁって、感じる。
前半の火星人とのやりとりも良いけど、特に、この短編集のなかではやや長めの「月は今でも明るい -
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この詩集は、プレヴェールの主要著作のうちの四つから、60篇余りを訳者が選り抜いて訳したものです。
プレヴェールはシャンソンの名曲『枯葉』の作詞家で他にもシャンソンの名曲をいくつも出がけており、他方、『天井桟敷の人々』や『霧の波止場』などの古い映画で脚本を担当した人です。まったく知らなかったのですけど、フランスの国民的詩人だそう。1900年生まれ、1977年没(ついでながら言うと、僕が生まれた日の二日前に亡くなっていました)。読んでみて、わかるなあ、というタイプの詩はとてもおもしろかったです。
エンタメ的な柔らかくて甘い口当たりを期待してはいけません。とっつきやすい言葉が並んでいても、一文や -
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レイ・ブラッドベリ(1920~2012年)は、米イリノイ州生まれ、高校卒業後に新聞の販売をしていたときに書いた作品(共作)でプロ作家となったが、1950年の『火星年代記』で名声を得、1953年に代表作『華氏451度』を発表した。作品にはファンタジックな雰囲気の短編集が多く、幻想作家として不動の地位を築いた。
『火星年代記』は、米国のSF関連雑誌「ウィアード・テイルズ」等に発表された短編群に、書き下ろし作品を加えた、26の独立した短編を連ねて一つの長編とした作品である。年代記の題名の通り、1950年出版のものは、個々の短編に1999年1月から2026年10月までの年月が付され、その順の構成になっ -
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火星への移住を試み、実際に移住し、最終的に手放すまでの時代を生きた人達の心情に寄り添ったオムニバスストーリー。なんですが、本作の火星は呼吸もでき、地球からの物資持ち込みも容易な設定なので(設定というよりは当時はそういう場所として想像されていたんだと思いますが)、当時の欧米から見た、地球上にある未開の地との交流といった体で読んだ方が楽しめるかもしれません。
どれも詩的な表現に富んだ素晴らしい短編ばかりでしたが、中でもお気に入りは「第二のアッシャー邸」「火星の人」「長の年月」の3編。特に「火星の人」は居なくなった人を求める人間の心情を繊細に描きながら、ラストの「かんぬきをかけた」という言葉で締め -
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ブラッドベリ初読みでした〜。
地球から火星への植民という、作品全体を貫くひとつの設定。それを繰り広げられるSF連作短編集。
いちおうSFだけれど、人間模様や風景の描き方がかなり幻想的で詩的で叙情的。幻想小説といった方がしっくり来る。
火星人も出てくるのだけれど、そのイメージが序盤と終盤ではけっこう違う。後半では火星人は、エルフや何か人外の架空生物のよう。
年代を追うごとに火星や地球人を取り巻く状況が変化してゆくので、続きが気になりつい読んじゃう。
【ネタバレあり】
全体の大きな破滅の中にも一縷の希望があるという終わり方が『華氏451度』を彷彿とさせる。といっても、原作は未読で映画だけ観て -
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ネタバレ・あらすじ
2030年代の火星に地球から探検隊がやってくる。
地球からの移住者、火星人たちの文明と滅亡が書かれた火星が舞台の短編オムニバス小説。
・感想
海外SF小説が好きなYouTuberさんがレイブラッドベリを紹介した動画をみて興味を惹かれ購入。
超超有名なディストピア小説「華氏451度」はずっと読んでみたいと思いつつ未読なんだけど、この作品から読んでみようと思い手に取った。
あまり事前情報を仕入れずに読み始めたので「詩的な文章」という私がもっとも苦手とする表現が多く、抽象的というか想像力が必要な作品で序盤は雰囲気を掴むのにちょっと手こずってしまった。
でも「第3探検隊」からの「月は今 -
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ネタバレ一族の汚名を雪いだはいいものの、それによって歯車が大きく狂い、様々な苦悩を生んでしまう。
Ordeal by Innocence というタイトルがそれをよく表している。
レイチェルによって「人為的な方法によってつくられた」一家。レイチェル自身は本当の家族になれると信じて疑わなかったのだろう。でも、最後の各人のその後を見るに、やはりそれはうまくいかなかったということだと思う。
慈善事業と家族の在り方、児童虐待の根深さなど昨今の社会問題に通ずるテーマが盛り込まれている。
「そのくらいにしとかないとクリスティに殺されるよ」と多くの読者が思ったことだろう。正義を貫こうとするキャルガリが報われて何より。 -
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このところ国木田独歩とチェーホフの短編を読み返している。
すごいなあ、ぎゅっと圧縮された人生模様、到達感、達成感の文章。
両作者とも早世、独歩37歳(1908年)チェーホフ44歳(1904年)で、その晩年に円熟したとある。
だからなのか?
読み比べているのだが「いづれがあやめか、かきつばた」
晩年の作品集は、国木田よりチェーホフがすこしはやく亡くなっているので、発表も少し早かっただろうが、国木田に影響があったのかどうか?ロシア文学と日本の文学の夜明け、明治時代にそんなにも伝わるのが早かったとしたらすごいなあ。
ともかくも、人生の機微をもりあげ、解剖していく文章は、胸を撃つこと、なおそこに -
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都会小説と言われているようなのだけど、それがそれぞれのストーリーの舞台のことを言っているのかどうか…それとも都会小説=新しい視点的なこと?
あとでちゃんと調べてクリアにしたいところ。
とにかく時代を感じる(女性の扱われ方とか、本人たちの考え方も含めて)ストーリーが多かった印象。
ただ最後の作品には、現代にも通ずる“女性像”というか、フェミニズム的な要素と、女性自身の独立性、野心的なものを、確かに感じた気がします。
個人的には、ストロベリー・アイスクリーム・ソーダが1番好きかなぁ…ってよく考えたら、女性が唯一出てこない作品だった気がする。