小笠原豊樹のレビュー一覧

  • 刺青の男
    『黒いカーニバル』からの『刺青の男』
    やっぱり(?)幻想的に不幸や切ない世界がある反面
    「ロケット」のような描かれた当時の夢と、
    素敵な「ささやかな人物」(解説より)の夢見る
    庶民の未来の世界もある。
    想像の世界の彩りと闇と現実の世界に潜む彩りと闇を
    (訳しているかたがたの努力があるとしても)
    不思...続きを読む
  • 太陽の黄金の林檎
    表題作、太陽の黄金の林檎は、物語としてはニ流。粗筋だけ聞かされてもなんのことやらだろう。
    ただし、表現と描写が卓越している。これはかなりの力業で、レイ・ブラッドペリだから書けた作品。なので、表題作なんだろう。

    はしばしから奇妙な味がする。

    頑固親父の主張が通る、という話が数編。結構面白くて中々痛...続きを読む
  • 太陽の黄金の林檎
    レイ・ブラッドベリって、寂しい話を書く人だなぁと思っていたけれども、掌編集を読んでみると、その方向性がより際立って感じられた。望むも望まざるにも関わらず、みんな孤独で諦念と焦燥で風邪をこじらせているような、そんな印象を持った。


    SFの抒情詩人と言われるけれども、多分それは今からするとかなり古典的...続きを読む
  • 虐げられた人びと
    ドストエフスキー版ラブコメと勝手に解釈。
    こんなポップなのも書くんだと意外な一面を見た感じ。
    まぁポップとは言っても後の大作群と比べてだが。

    一見、はたから見ると呆れると言うか、現代で繰り広げられたら
    勝手にやってくれといったナターシャとアリョーシャの恋だが、
    ところがどっこい、これはただの味付け...続きを読む
  • 刺青の男
     徒歩旅行中、全身に刺青のある男と出会い、一緒に野宿をすることとなるが、その夜に男の刺青の一つひとつが動き始め、短い物語を語り始める。男の刺青が語る十八の物語。
     火星人の話や、未来の装置の話など、幻想的な話が繰り広げられる。
     読み終えたあとに、なんとなく不安な感じになったり、なんとなく寂しい気持...続きを読む
  • 刺青の男
    ほんとうにまだまだ読んでいない名作がたくさんあるなあ、と痛感。ここで描かれる未来はそんなに明るく希望にあふれたものじゃなくて、むしろ良くないほうに進んでいるみたい。しかもそれが今の時代にすごく似ているように私には思える。ブラッドベリ、ちょっと怖い。
  • 虐げられた人びと
    面白いが、多作品に比べるとまとまりが今一つに感じる。

    途中の作者の吐露は結局どこに着地させればいいのか。
  • 虐げられた人びと
    初期ドストエフスキーによる代表的長編。白痴や悪霊といった代表作に備われる背景思想は存在しないが、今まで読んだドストエフスキー作品の中でも最も重厚感のある作品だった。サンクトペテルブルグを舞台に織り成される極限の人間描写…作品背景における無思想だからこそ一つ一つの人間描写が極限なまでに精密にリアルに描...続きを読む
  • かわいい女・犬を連れた奥さん
    演出家の妻になると夫と共に芝居について語り、材木商と結婚すれば会う人ごとに材木の話ばかり。獣医を恋人に持てば、恋人との別れと共に自分の意見まで失くしてしまう。一人ぼっちになった彼女が見つけた最後の生きがいとは──。

    チェーホフ晩年の短中編集を収めたもので、人間が懸命に生きようとするがゆえに生じる悲...続きを読む
  • 虐げられた人びと
    大江健三郎『キルプの軍団』の主人公、オーちゃんが読んでたので僕も読んでみました。オーちゃんの言うように、ディケンズと違って暗いです。でもオーちゃんの父が言うように、なんとなくすがすがしいというか、希望があるというか、そのへんうろ覚えですが、暗いだけの小説ではないのでした!
  • かわいい女・犬を連れた奥さん
    控えめに上品に適度な笑いをうまく絡ませ節度を忘れない人だったチェーホフ。そんな態度と「恋」というのは本来永遠に相容れない、はず。だから登場人物は途方に暮れる。その途方に暮れる感じがチェーホフ的。
  • 虐げられた人びと
    ネリーがあまりに素直で良い娘すぎた!!ワーニャとネリーって、手塚治虫の『ブラック・ジャック』で言うところのBJとピノコみたいな感じじゃない?(かんわゆ〜★)ワルコフスキー公爵のジャイアニズムというか俺様至上主義に笑った。「すべては私のためにあり、全世界は私のために創られた。」
    よくこんなセリフ吐ける...続きを読む
  • 無実はさいなむ
    アガサクリスティー。愛すべき未完全作。らしい。ちょっとおしい!っていう作品。でも、これは推理小説というよりも、心理小説。ということで、まぁ、良いとしよう。犯人の動機とか、ちょっといやだけど。もうちょっと犯人にびっくりさ加減がほしかった。まぁ、推理小説=エンターティメントな私にとってはOK
  • かわいい女・犬を連れた奥さん
    恋人、旦那によって自分がコロコロとかわる“かわいい女”。自分の周りにもいます。そしてもてます。やっぱりこういう女の人の方が“かわいい”のでしょうか?
  • とうに夜半を過ぎて
    悪くはないのだけれど、自分はやはりブラッドベリと言われると『10月はたそがれの国』、『火星年代記』辺りが好きなんだよなぁ。
    本書に収められたものもいいんだけれど、寄せ集め感が強く今ひとつのめり込めなかった。読んだ事あるものが多かった。
  • 火星年代記〔新版〕
    面白いと聞いて読んだが自分にとってはあまり響かなかった。ヒューマンドラマ系のものがあまり響かないのかもしれない。
  • 火星年代記〔新版〕
    シャーウッド・アンダーソンの『ワインズバーグ・オハイオ』はオハイオの架空の町、ワインズバーグのことを短編小説の連なりから、どんな町なのか浮かび上がってくるという作品だった。
    『火星年代記』は序文にも書かれている通り、レイ・ブラッドベリが『ワインズバーグ・オハイオ』から影響を受けて、そのやり方を踏襲、...続きを読む
  • 火星年代記〔新版〕
    ブラッドベリ3冊目。前作の林檎で感じた違和感を、この直前にイーガンを読んでいたからか、更に明確に感じる部分が多々あり、それが本作にハマりきれずにいた要因です...。一部いいなって思うエピソードも勿論あったし(「火星の人」「百万年ピクニック」)、好きな華氏を彷彿とさせるエピソードも良かったんだけどな(...続きを読む
  • 火星年代記〔新版〕
    タイトルから想像するような火星をテラフォーミングしていって、そこで色んな事件が起きていく・・・というような話ではない。
    どちらかというと、幻想小説であり科学的な描写は現代の視点から観ると殆どないと言ってよい。
    短編集だが、全ての話は火星が舞台で繋がりがある。全編を通して死の匂いが通底している。刊行当...続きを読む
  • 無実はさいなむ
    アイツが犯人だと思っていた頃に戻れたら。

    ある家族のもとにもたらされた知らせ。それは母を殺したのはジャックじゃない、というアリバイの成立。ジャックじゃないなら、誰なのか。疑心暗鬼に陥る一家、犯人を探そうとする者、隠そうとする者、庇おうとする者、確実に崩壊の足音がしていた。

    BSで一度ドラマを見た...続きを読む