小笠原豊樹のレビュー一覧
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ストーリーは5人もの養子をしたお金持ちの老婦人が殺された事件、養子の一人が逮捕有罪となり(獄死している)2年が過ぎたころ、その犯人養子のアリバイを証明する人が遺族たちの住む館に訪れて、終わったことなのにいまさらどうなのと、事件蒸し返しのさざなみが立つ。
ミステリー的には遺産相続をめぐってではない肩透かしはいいけれど、結局犯人も平凡のよう、しかしそこじゃなかった。相変わらずの人間観察力秀逸なクリスティーなのだった。
経済力の豊かな女性に、様々の劣悪な環境から救われて清潔で立派な住居、栄養の行き届いた食事、潤沢な教育環境など、何不自由なく育てられ、いまや大人になった養子たちの心理状況はどうあっ -
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ネタバレ読んだのが数年前なのでうろ覚えな部分もあるのですが…。
この作品が書かれた当時は、核兵器というものがともかく驚異(今もそれには変わりませんが)だったのだなという感想を読んだ当時は強く感じました。けれど、緊急事態宣言が出ている今は、火星人が絶滅した原因が感染症だったことの方が気になります。私達もSFの世界だけでなく、病原体を宇宙にばらまいているのかもしれません…。まさに、小松左京のあの小説のような驚異を、異星人に与えるかも。このSFの物語が現実になりませんよう。
また、火星人は悲しい最期を迎えてしまうのですが、彼らの文化がなんだか美しくて好きでした。 -
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1861年 40歳 第17作。
前半は読むのが辛く、期間を置きながら、途切れ途切れしか読んでいないので、非常に時間がかかった。
たぶん3カ月ぐらいかかったと思う。
なぜ辛かったかといえば、単純に、話が面白くなかったからである。
短編ならまだしも、長編小説で面白くなかったら、一気に読み通すことなどは、とても無理だ。
ところが第二部の第6章、本書のp250あたりの、登場人物がほぼ出そろい、語り手である主人公とナターシャが、前日訪れてきたワルコフスキー公爵が表面的な態度とは別になにかを企んでいることについて、相互に同意した場面ぐらいから、話はがぜん面白くなる。
熱に浮かされたような怒涛のス -
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岩波文庫赤
プレヴェール 詩集 小笠原豊樹 訳
対象や景色を細かく描写しているため、叙情詩というより 短編小説を読んでいる感じ。叙景詩というのだろうか?
詩から物語を想像しやすい。戦後の民衆の苦悩、資本主義への批判をイメージして 詩を詠んだ。「赤い血」という表現には驚いたが、ほとばしる生命 と解釈した
リフレイン や リズムに 法則性があり、言葉としても面白い。訳が上手い?
ことば
「くじら釣り」息子の自分、父親殺し、くじら=息子の自我?
「われらの父よ」この世のすべてのすばらしさは 地上にあります
「景色が変わる」二つある、一つは月、もう一つは太陽、貧乏人 労働者に この二つは -
ネタバレ 購入済み
散文ファンタジー
不意にSF小説が読みたくなり、おすすめをググった結果出会った一冊。散文形式と、あまりに科学考証が乏しいので、読み出してすぐにどうしたものかと悩みましたが、一応読破。そんな読者にとって、SFとはスペース・ファンタジーなのだと思い至らされた一冊でした。架空の世界で、書きたい主題を取り扱うのに、「考証」がどれだけ必要なのか? 必要ありませんよね。
人類に対する悲観的で、不信感をまとった話の運びのなかに、理由はないけど、ヒトはそれでも生き残るのだという、不思議な万能感を示した一冊。
イーロン・マスクは本当に火星を目指すのか?? -
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ネタバレ「中二階のある家」のリーダと画家の会話が面白い。貧しい労働者の支援に働いているリーダに対して、そんなことではなんの解決もできないと画家。人間の価値は精神活動をすることなのだから、労働に縛られる時間を大きく減らさなければだめで、要求事項や経費を増やすのは逆効果だと。
今の時代でも同じことと感じた。生活を質素にすればたくさん働かなくて済むと思うので。
「かわいい女」…タイトルに惹かれて読んでみた。なるほど、かわいい女というのは人に合わせる人で、合わせることが自分の自然なんだな。逆を考えるとかわいくない女は、自意識がしっかりしていて人の幸せと自分の幸せは別物と思うタイプだろうな。私は確実に後者(笑 -
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「かわいい女」、「犬を連れた奥さん」の題名は知っていたが、チェーホフだから、てっきり戯曲かと思ってた。
短編なので、基本主人公中心の物語なのが演劇と違う処。
「かわいい女」、「犬を連れた奥さん」は現代の日本でも成り立つような話。
その他の短編から立ち上がってくるのは、不労所得を得ている地主や工場主、虐げられている自覚もない貧困層、理想を口にするが、地に足のついてない高等遊民。
やや長めの作品「谷間」。谷間の小さな村を牛耳る業突く張りな商人とその家に嫁いだ三人の女性の物語。如何にも有りそうで、救いようのない話なんだが、昔のロシアの大地にじんわりと包まれていくような感触。
チェーホフが何のため -
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面白かったです。特に最後にナターシャが父親に許される場面がとても好き。ネリーのあまりにも救いのない悲惨な物語と、妻の怒りと、それまでの父と娘の苦しみ…これらから生まれた、必然的で無理のない、人間心理に即した許しだったと思います。
頑なさがなにを生むというのでしょう? 残酷さばかりが蔓延るこの世界で、どうしてわざわざ人間同士が傷付け合わなければならないのでしょうか? 我々人間は皆それぞれに必ず苦しんでいるというのに。泥と血に塗れ、胸に剣を刺され、折れて思う通りに動かない脚で、それでもどうにか立っているのは、言葉と心を持つ仲間同士が互いに支え合っているからではないのか…。娘を呪い、許しを与えぬまま -
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マヤコフスキー叢書4冊目にして、翻訳家・小笠原豊樹氏の生前最後に刊行された訳詩集。
全部で5部に分かれた長篇詩で、内容はタイトルのとおり「戦争と世界」について。詩人マヤコフスキーの頭の中で繰り広げられる第一次世界大戦と、世界の和解。詩を書いた当時、この強気な若者はまだ22歳。才気溢れ熱滾る詩人は、自分自身の大きさを世界と同じ位に捉えていたようだ。太陽、地球、俺、ぐらいに。だから彼は、戦争の痛みを自分一人で背負っている。
“ 大きな目で地球を見はるかす/男が一人。/男は成長し、/頭は山の高さに達した。/男の子は/新しい衣装を、/自分の自由という衣装を身にまとい/勿体ぶって、/プライドの高さは