野生の棕櫚

野生の棕櫚

1,430円 (税込)

7pt

4.0

「悲しみ(grief)と虚無(nothing)しかないのだとしたら、ぼくは悲しみのほうを取ろう。」

1937年――人妻シャーロットと恋に落ち、二人の世界を求めて彷徨する元医学生ウイルボーン。(「野生の棕櫚」)
1927年――ミシシピイ河の洪水対策のさなか、漂流したボートで妊婦を救助した囚人。(「オールド・マン」)
二組の男女/二つのドラマが強烈なコントラストで照射する、現代の愛と死。

アメリカ南部を舞台に、実験的かつ斬新な小説群を、生涯書き継いだ巨人、ウィリアム・フォークナー。
本作は、「一つの作品の中で異なる二つのストーリーを交互に展開する」という小説構成の先駆となったことで知られる。原著刊行(1939)の直後、ボルヘスによってスペイン語訳され(1940)、その断片的かつ非直線的な時間進行の物語構成により混沌とした現実を表現する手法は、コルタサル、ルルフォ、ガルシア=マルケス、バルガス=リョサなど、その後のラテンアメリカ文学に巨大な霊感を与えた。
他方、現代日本の小説にも、大江健三郎(『「雨の木」を聴く女たち』)や村上春樹(『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』)、叙述トリックを用いたサスペンス小説(連城三紀彦は本作を生涯の10冊に挙げている)など、本作の影響は数多見受けられる。
また、ゴダール(『勝手にしやがれ』)、ジャームッシュ(『ミステリー・トレイン』)における言及で本作を知る映画ファンも多いだろう。
その意味では、文学のみならず20世紀カルチャーにおいて最大級の方法的インパクトを与えた、世界文学史上の重要作にして必読の傑作だといえる。

その本作を、『八月の光』『サンクチュアリ』『兵士の報酬』などの名訳によって定評のある、加島祥造訳にて復刊する。

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野生の棕櫚 のユーザーレビュー

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感情タグBEST3

    Posted by ブクログ 2024年02月10日

    フォークナーの野生の棕櫚。ゴダールの『気狂いピエロ』だったと思うけど、映画の中でJ・P・ベルモンドが読んでいた小説。『Perfect days』で役所広司も読んでいた。野生の棕櫚とオールドマンが交互に配置されることでフォークナー自身が言うように独特の効果を発揮している。単に野生の棕櫚だけだったら普通...続きを読む

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    Posted by ブクログ 2024年02月17日

    小説におけるオールタイムベストに「八月の光」を挙げている私は、その著者フォークナーの文庫最新刊に当たる本作の発売を楽しみにしていた

    ミシシッピ州に属す架空の街(ヨクナパトーファ郡)を舞台に、様々な登場人物たちの人生が交錯するサーガ形式であったり、或いは、代表作「響きと怒り」に用いられた、言葉を持た...続きを読む

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    Posted by ブクログ 2023年12月31日

    交互に展開する二筋の物語は、読む人の人生観を浮き彫りにさせると思った。現実を忌避するようなふわふわとした逃避行の末に最悪の結末に至った二人は、一体何が足りず何を求めていたのか、私の中で答えに辿り着けていない。対する漂流する囚人と妊婦の力強い生命力。善悪も愛も悲しみも全て命あってこそなのに、命だけでは...続きを読む

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    ネタバレ

    Posted by ブクログ 2024年01月23日

    ・wikipediaに詳細なあらすじがあるので、参考になった。
    ・棕櫚(シュロ)で通じているが、実は椰子(ヤシ)らしい。
    ・スイカズラではないのだ。舞台もヨクナパトーファではない。
    ・中上健次「野生の火炎樹」はオマージュしているわけだが、たぶん内容は関係なく、タイトルだけだろう。
    ・ちょうど前に読ん...続きを読む

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