邪悪の家は僕が初めて読んだクリスティ作品で思い出のある小説だ(読んだのはエンドハウスの怪事件、他社の翻訳だが)。物語の構成が単純でわかりやすく、フーダニットの面白さ、どんでん返しの魅力が詰まった作品であり、僕は最初にこの作品を読んだからこそクリスティの虜になり心酔していった経緯になる。また、エルキ
...続きを読むュール・ポアロを知るには最適な作品だと思うし、この作品はそれ程に彼の人間性が詰まった物語だと思う。
ポアロは探偵業を引退し、保養地のホテルにヘイスティングスと滞在している。彼の元には引退後も各国の主要な人物から探偵の依頼が届くがどこ吹く風、全く取り合わない。そんな中、ニックという若い女性と知り合い、彼女が三度も命の危険があった事をポアロに話す。そしてその話の最中にも、彼女は命を狙われる。ニックは気づかないが、ポアロは彼女の危険に気づき、彼女の住むエンドハウスを訪れる。
上記したようにポアロらしさがあふれた作品で、各国主要人物の依頼は受けないが一人の女性の危機には労を惜しまない(今回はそれが裏目に出る訳だが)。ヘイスティングスは相変わらずでストーリーを通じて読者の目線を誘導する役割を与えられている。
ポアロが推理の際にAからJまでで可能性を整理し、我々も犯人が誰であるかの推理をこの中から考えられる様に進むが、中々道筋が掴めない。一つの殺人をきっかけにどうしても噛み合わない問題点や、物語が進むと有名な冒険家の死や毒入りチョコレート、消えた遺言書、凶器のピストル、謎の人物、隠し部屋等様々な疑問が噴出していく。(クリスティの上手なところでこれだけの要素がありながら物語はシンプルに整理されている)
最後は堂々の大団円になり全ての要素が集約される。僕は初見の際は犯人の意外性に驚き、ミステリーとはこうだと基準になった作品であり、今回再読に至っては犯人を知っているからこそ、この物語の根幹の面白さを味わえたし、ポアロの道化役も楽しめる事ができた。
ポアロは終盤に「なんて事だ!!」と騒ぎたてて事件を解決する訳だが、ある意味でポアロの気づきが大きい作品程、後半から終盤にかけてのどんでん返しが起きやすくなったいる。従って彼が騒ぎ出す作品は何かしらの裏切りがあると期待してしまう。今作も例に漏れず驚きがあるが、正しくクリスティがポアロさえ騙そうとしているかの様な作品だった。読みやすくわかりやすい作品だが余りにも悪い奴が多いので(笑)もう少し要素が少ない方がミステリとしてはスッキリする様に思うが、違和感がある訳ではない。
非常に懐かしく楽しい時間だった。そろそろポアロシリーズを読み終えてしまいそうなので味わいながら楽しんでいこう。