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Posted by ブクログ
序盤から不必要なほどキャラクターがわんさか出てくるが、たった数ページの会話でぞれぞれの特徴を捉えることができるので苦にならない。登場人物の書き分けが世界一上手いのではないだろうか。
【ネタバレ】
トリックに新規性はありませんし、この手法だとリスクが高すぎるので、ポアロがいうほど計画性の高い狡知に長けた(スリック)犯罪という印象は受けませんでした。共犯者の存在は当てられませんでしたが。
リゾート地という心理的に開放感のある心地よい舞台で人間関係が交錯していく物語の本筋にはのめり込むことができ、その点は『ナイルに死す』に匹敵するかも。バカンスの文化が羨ましいなあ…もっと真夏に読むべきだった。
Posted by ブクログ
ポアロシリーズ20作目。1941年の作品。
『白昼の悪魔』という邦題もなかなか渋いけれど、原題『Evil under the Sun』がかっこいい。
小さな島のリゾート地が舞台という夏に読むにはぴったりでした。事件が起こったのは8月25日。
朝起きたらバルコニーから海岸に降りてひと泳ぎ、ホテルのダイニングルームで朝食。あるいは遅くまで寝ていてベッドで朝食。
海辺で日光浴、ボート遊び、テニス、散策もしくはテラスで読書。
島はホテルの私有地なので、海岸は宿泊客のみのプライベートビーチ。
なんていう上流社会の夏の過ごし方がなんとも優雅。
(216ページ)
「ミセス・マーシャルはいつもベッドで朝食をとっていたんだね」
「はい、いつもです。いつもベッドでほんの少しだけ。紅茶とオレンジ・ジュースとトーストを一枚です。多くのご婦人方同様、太らないように気をつかっていらっしゃったのでしょう」
ミスリーディングや思わせぶりなセリフ、小道具が多すぎて、宿泊客全員怪しく思える。というか、ラスト40ページくらいまで誰が犯人でもおかしくない展開。ミステリーとしてはまったくフェアじゃないけど、夏のリゾート気分を味わえたので私は十分満足。
新訳版は田村義進。『ゴルフ場殺人事件』、『メソポタミヤの殺人』なども手がけており、全体的に上品で読みやすい。
ただ、いくつか、伏線回収されていなかったり、あれ、このセリフあったけ?みたいな箇所があるんだけど、これは原文のミスなのか。
ブティックのオーナーであり、ドレスデザイナーであるロザムンド・ダーンリーのモデルはあきらかにココ・シャネル。
彼女のつけている香水は「ガブリエルの8番」。この香水は架空のものですが、ココ・シャネルの本名はガブリエル・シャネルで、2017年に「ガブリエル シャネル」という香水が発売されています。
それを考えると、ラストの彼女の選択はいまいち不満である。
(37ページ)
「結婚して子供をつくるのは誰にでもできることです。あなたのように自分の力で地位と名声を勝ちえた女性は、百人──いや、千人にひとりいるかいないかですよ」
ロザムンドはにっこり笑った。「でも、やっぱりわたしは哀れなオールドミス。とにかく、今日はそんな気分なんです。どんな貧乏暮らしでも、夫がどんなに粗野で陰気な人でも、腕白坊主がぞろぞろあとを追いかけてきても、そのほうがずっと幸せなんだと思っています。そうじゃないでしょうか」
いくつか自分用注釈。
3ページに出てくるコーネリア・ロブスン、リネット・リッジウェイは『ナイルに死す』。
ウェストン州警察本部長と話しているセント・ルーの事件とは『邪悪の家』。
133ページの「ウォーレス」とは、1931年に妻を殺したとして有罪になり、その後、逆転無罪となったウィリアム・ハーバート・ウォレス事件のこと。
以下、引用。
12
「そうなんです、ムッシュ・ポアロ、あなたのお噂はコーネリア・ロブスンからいろいろとうかがっています。わたしたち、五月にはバーデンホフに滞在していましてね。そのとき、エジプトでリネット・リッジウェイが殺された事件の話を聞いたんです。」
Badenhof
14
「わたしが若いころには、せいぜい足首までしか見ることができませんでした。ふんわりしたペチコートがちらっと見えただけで、胸がドキドキしたものです。それがいまは、ふくよかなふくらはぎも、膝も、リボンがついたガーターまでも──」
21
「たしかにここは夢のような場所です。じつにのどかだ。陽は燦々と降り注ぎ、海はどこまでも青い。ですが、ミス・ブルースター、忘れちゃいけません。邪悪は陽の下のいたるところに潜んでいます」
35
「ええ、びっくりするくらいに。イギリスの田舎です。大きなあばら家。馬や犬。雨の歩道。薪ストーブ。リンゴ畑。つましい暮らし。古ぼけたツイードの服。来る年も来る年も同じイブニング・ドレス。荒れ放題のお庭。秋にはシオンが咲き乱れ……」
37
「結婚して子供をつくるのは誰にでもできることです。あなたのように自分の力で地位と名声を勝ちえた女性は、百人──いや、千人にひとりいるかいないかですよ」
ロザムンドはにっこり笑った。「でも、やっぱりわたしは哀れなオールドミス。とにかく、今日はそんな気分なんです。どんな貧乏暮らしでも、夫がどんなに粗野で陰気な人でも、腕白坊主がぞろぞろあとを追いかけてきても、そのほうがずっと幸せなんだと思っています。そうじゃないでしょうか」
44
ううん、ニキビじゃない。そう判断して、ほっとした。そして思った。十六歳なんてイヤ。本当にイヤ。
自分がどこにいるかわからない。子馬のように頼りなく、ハリネズミのように刺々しい。見苦しさや頼りなさが気になってならない。
46
時間の感覚をつかめないのは幼さのせいかもしれない。一年は永遠に思える。
69
70
74
ドーヴィル、ル・テュケ、ジュアン・レ・パン
ビアリッツ
マーゲイト
83
部屋を出て、廊下を進む。廊下のはずれのドアからバルコニーに出る。そこにある階段をおりていけば、ホテルの下の岩場に出る。その岩場には磯まで小さな鉄の梯子が取りつけられている。海水浴場へ行くより手間がかからないので、朝のひとときをそこで過ごす者は多い。
85
年上のクリスティーンとのあいだには微妙に共感しあえるものがある。それはどちらも同じ人物を憎んでいるという事実に根ざしているからにちがいない。
93
「さっきも主人に言ったばかりなんだけど、わたしたちもぜひダートムーアに行ってみたいと思ってますの。ここからはそう遠くないし、言い伝えからしてロマンチックなところのようだし。それからあの有名な監獄のあるところ、プリンスタウンていったしら。あそこへも行ってみたい。」
94
歯磨き粉の金属ケース
108
「こいつは驚いた!」と、州警察本部長のウェストンは言った。「こんなところできみに会えるとは!」
エルキュール・ポアロは愛想よく答えた。「これはお久しぶり。セント・ルーの事件以来ですな」
「いまでもよく覚えてるよ。あんなに驚いたことはない。いまだに納得がいかないのは、葬儀のときのきみの策士ぶりだ。普通じゃ考えられない。常軌を逸していた」
112
「マーシャル大尉がどんなふうに思い、何を考えているかはわかりません。感情を表に出さない御仁のようですから」
「でも、感情はあるはずだ」
エルキュール・ポアロはうなずいた。
「ええ。感情はあるはずです」
133
「なんとも言えません。感情を表に出さないので。証人台に立ったときの印象は間違いなく悪いものになるでしょうね。ある意味、気の毒な話です。どんなに傷ついていても、そんなふうには見えないのだから。ウォーレスも同じような調子だったので、陪審員の心証を害して、有罪判決を下されてしまいました。確たる証拠があったからじゃありません。妻を亡くして、あんなに冷静でいられるはずはないと思われたからです」
ウィリアム・ハーバート・ウォレス事件
149
「ある学者が記した論文によると、社交界で浮名を流した伊達男(ボー)ブランメルと生涯独身であったニュートンのような人物とでは、孤独の意味がまったくちがう。」
183
「サボイ・ホテルでブレスレットをなくしたときに来てくれた若い刑事さんは、そりゃもう、優しくて親切な人でした。」
210
聖書。古びたシェークスピアの戯曲。ハンフリー・ワード夫人の『ウィリアム・アッシュの結婚』、シャーロット・ヤングの『若い継母』、A.E.ハウスマンの『シュロップシャーの若者』、エリオットの『寺院の殺人』、バーナード・ショーの『聖女ジャンヌ・ダーク』、マーガレット・ミッチェルの『風と共に去りぬ』、ディクスン・カーの『火刑法廷』。
216
「ミセス・マーシャルはいつもベッドで朝食をとっていたんだね」
「はい、いつもです。いつもベッドでほんの少しだけ。紅茶とオレンジ・ジュースとトーストを一枚です。多くのご婦人方同様、太らないように気をつかっていらっしゃったのでしょう」
239
「聖書に出てくるイザベルやアホリバのような毒婦です。悪行のかぎりを尽くし、あげく鉄槌がくだされたのです」
260
すぐに返事はかえってこなかった。村人たちにじろじろ見られているのが気になるのだろう。指をさされこそしないまでも、それと同じことを目でされているのだ。
285
「無作法をお許しいただけるでしょうか、マドモアゼル」
「あなたが無作法なことをなさるとは思いませんけど」
「恐縮です。それでは言わせてください。あなたがいまお使いの香水はじつにいい。繊細で、深淵で、複雑です」手を振り動かし、それから感情のこもらない声になって、
「ガブリエルの八番ですね」
「よくおわかりですね。ええ、わたしはいつもこれをつけています」
294
「たしかにアリーナ・マーシャルは聖職者が淫らな女(スカーレット・ウーマン)と呼ぶにふさわしい人物です。」
366
若島正「明るい館の秘密 クリスティ『そして誰もいなくなった』を読む」
Posted by ブクログ
こ、これはわからん!と俺フィーのイラン戦の末次のようになった。方向性はそんなに間違ってなかったと思うのだが。
ポワロってデブチビ中年みたいなイメージなんだが浜辺の姿が想像できん。
以下、個人的な推理。
まず男の手による絞殺という前提があるので、逆に犯人は女で確定。そうなると明らかに怪しいのは浜辺に残ったレッドファーン夫で、犯人が女である=動機のある妻であることに気づいたから死因を偽造したのでは? と推定。この時代、扼殺痕がどれくらい偽造できるのかはわからんけど、たとえば死にたてホヤホヤなら偽造とかできんかな……? みたいなノリでの妄想推理。
ただレッドファーン夫は実際に犯罪現場を見たわけではないので、むしろ犯人は妻以外だろう。
マーシャルとロザムンドの証言は明らかに嘘だが、お互い無垢に庇いあっているのは明らかなのでシロ。このふたりの関係はレッドファーン夫婦のコピーになるはず(と思ったが、よくよく考えるとレッドファーン側は妻は夫のフォローしてないのでコピーにはならんのだよな。あとから考えると)。
そうすると素直に考えれば犯人は娘で、なんかこう……いいかんじに雑に殺したんだけどレッドファーン夫が勝手に勘違いして偽造してくれたぜ! みたいなことを途中まで想像。
ただ過去の事件の話が入ってきてわからなくなる。こうなると年齢的に明らかに犯人は娘ではない。うーむ。わからねぇ! で読み進めて終わり。
Posted by ブクログ
読みやすーい!
読書がちょっとマンネリ気味でもクリスティーはさくさく読めるし楽しい。でも今回は読書脳があまり働かず、登場人物の名前と特徴があまり一致しない状態で読み進めてしまって、クリスティーを読んでるときの楽しさはいくらか少なかった。もったいないことをした。
物語の展開も王道のポアロシリーズという感じで、さまざまな証拠や状況が散りばめられて一気に収斂されていく。
他の扼殺事件の話が出てきたときは、絶対関係あるんだよわかってる!!と思いながらも関連性は思いつかず…これわかる人いる…??
アリーナは男をたぶらかす悪魔のような女性だと思われていたが、最後に実はその逆で、アリーナが男に依存してしまう可哀想な女性だ、という表裏一体の性質を明らかにするのは、女性の視点ならではだな、と思う。
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