新潮文庫作品一覧

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  • 咲見庵三姉妹の失恋(新潮文庫)
    3.5
    蔵の町、川越。くず餅が人気の和カフェ・咲見庵を営む美人の長女、花緒。ボーイッシュで夢見がちな次女、六花。そして、二人の姉とは母親の違う十六歳の三女、若葉。そんな高咲三姉妹が暮らす家に、父を亡くした少年、薫が居候することに。姉たちはそれぞれに恋の甘さと苦しみを味わい、同い年の若葉と薫は次第に心を通わせていくが――。めぐる季節の中、姉妹が織りなす優しく切ない恋愛模様。(解説・吉田伸子)
  • 不明解日本語辞典(新潮文庫)
    3.5
    「普通」って何? 「ちょっと」って何? 「っていうか」って何?……。毎日何気なく使っている日本語の意味を深くマジメに掘り進むと、摩訶不思議な言葉の作用に行き当たる。あまたの辞典類の頁をめくり、日本語の持つあいまいさ、難解さに真正面から果敢に挑む著者――時に茫然と立ち尽くしながらも、自ら選んだ32語を手掛かりに、言葉の海へと漕ぎ出して行く。ユニークな辞典風エッセイ。
  • あぶない叔父さん(新潮文庫)
    3.5
    寺の離れで「なんでも屋」を営む俺の叔父さん。家族には疎まれているが、高校生の俺は、そんな叔父さんが大好きだった。鬱々とした霧に覆われた町で、次々と発生する奇妙な殺人。事件の謎を持ちかけると、優しい叔父さんは、鮮やかな推理で真相を解き明かしてくれる――。精緻な論理と伏線の裏に秘された、あまりにも予想外な「犯人」に驚愕する。ミステリ史上に妖しく光り輝く圧倒的傑作。
  • 他者という病(新潮文庫)
    3.5
    原因不明の難病で入院中、三度も死にかけた私。さらに薬の副作用で人格まで変容し、自分を見失ってしまう。やがて仕事もなくし、鬱状態に陥り、ついに自殺未遂を起こすまでに……。激動の渦中に文章をつづり、当時の自分を客観的な目で振り返って考えた、「生」とは、「言葉」とは、そして「私」とは。極限体験に際した人間の脆さを凝視し、思いがけない強さを発見する、特異で壮絶な魂の手記。
  • 男たちのかいた絵(新潮文庫)
    3.5
    おくびょうで意気地なしでも、拳銃片手に怖いものなし――チンピラやくざの、カッコいい兄貴分へのあこがれが、屈折した心情に映し出される時、オナニズム、同性愛、エディプス・コンプレックス、多重人格などの持主を主人公にした、筒井康隆の強烈な世界が展開される。『夜も昼も』『星屑』『二人でお茶を』など、ジャズのスタンダード・ナンバーにのせておくる奇妙な味の連作小説集。
  • ポスドク!(新潮文庫)
    3.5
    1巻737円 (税込)
    瓶子貴宣(へいしたかのぶ)は、月収10万円の私大非常勤講師。博士号を持ち実力も抜群なのに、指導教官の不祥事で出世の道を閉ざされた。しかも姉が育児放棄した甥、誉(ほまれ)を養ってもいる。貧乏でも正規雇用を諦めない貴宣の前に、千載一遇のチャンスが。だが誉を引き取りに姉が現れ、家庭問題まで勃発――。奮闘するポスドクの未来はどうなる!? 痛快かつ心温まる、極上のエンタテインメント。『マル合の下僕』改題。
  • 日本の聖域 クライシス(新潮文庫)
    3.5
    世界中でその効果と安全性の認められている子宮頸癌ワクチンの接種が、日本ではほぼ止まったままなのはなぜか。宗教法人への課税を阻む勢力の正体は? 新国立競技場問題を迷走させた文科省の作為とは――。事実を歪曲し、権力にとって不都合な真実には沈黙する大メディアの報道では分からない諸問題の実相を明らかにする。書店では買えない会員制情報誌の名物連載第四弾。
  • 随想 春夏秋冬(新潮文庫)
    3.5
    音楽の道をあきらめ、文学を志した十代。大学では英文科に籍を置くもののフランスの詩に心惹かれた。稲垣達郎、小沼丹、新庄嘉章……錚々たる師の学恩に導かれるも道は険しく遠い。雑誌記者を経て、競馬で食いつなぎ、結婚後は、英語の私塾で糊口をしのぐ。クラシック音楽、古典文学、写真、陶器、書と様々な学びを得て二十数年、曙光が漸く身を照らし出した。著者の文学的軌跡を刻む傑作随想。
  • 美酒一代―鳥井信治郎伝―(新潮文庫)
    3.5
    世界に冠たる洋酒メーカー“サントリー”創業者・鳥井信治郎。優れた経営感覚と湧き出るアイディア、それらを実行する行動力と、「スコッチに負けないウイスキーを」という執念が数々の銘酒を生み出した。赤玉ポートワインから、サントリー・オールドへ、現代に通じる鳥井イズムを伝記文学の第一人者が生き生きと描き出す。大阪に生まれ、一介の奉公人から身を起こした男の物語。
  • 邪馬台国と黄泉の森―醍醐真司の博覧推理ファイル―(新潮文庫)
    3.5
    創作中に姿を消したホラーの鬼才を捜してほしい。その依頼が全ての始まりだった。邪馬台国最大の謎に挑み、最後の“女帝”漫画家を復活させる。映画マニアの少年を救い、忌まわしき過去の事件を陽光のもとに――。傍若無人にして博覧強記、編集者醍醐真司が迫りくる難題を知識と推理で怒濤のように解決してゆく。漫画界のカリスマにしか描けない、唯一無二のミステリ。『黄泉眠る森』改題。
  • 冷蔵庫を抱きしめて(新潮文庫)
    3.5
    1巻693円 (税込)
    幸せなはずの新婚生活で摂食障害がぶり返した。原因不明の病に、たった一人で向き合う直子を照らすのは(表題作)。DV男から幼い娘を守るため、平凡な母親がボクサーに。生きる力湧き上る大人のスポ根小説(「ヒット・アンド・アウェイ」)。短編小説の名手が、ありふれた日常に訪れる奇跡のような一瞬を描く。名付けようのない苦しみを抱えた現代人の心を解き放つ、花も実もある8つのエール。
  • 日本の聖域 アンタッチャブル(新潮文庫)
    3.5
    弱者のために、病める人のために、子どもたちのために、正義のために――。この国には、メディアが口をつぐみ、触れることが許されない黒々とした聖域が至る所に存在する。美名を隠れ蓑にして肥え太る者たちの正体とは? 25の組織や制度のタブーに挑む。新聞テレビのニュースだけでは飽き足らない読者に贈る、会員制情報誌の名物連載第二弾。『日本の聖域 偽装の国』改題。
  • 日本の聖域(新潮文庫)
    3.5
    国民は知らない。自分たちの財産を食いつぶす輩がいることを。新聞やテレビには報じられない闇があることを。しがらみにまみれ、権力、利権、欲望渦巻く日本の病巣──。中央官庁、司法、医療、教育など、国民生活に密接するこの国の中枢で何が行われているのか? 26の組織や制度のアンタッチャブルな裏面に迫り、その知られざる素顔を暴く。会員制情報誌「選択」の長期名物連載。
  • ボケずに元気に80歳!―名医が明かすその秘訣―(新潮文庫)
    3.5
    「本好きはボケに注意」「ボケないためには筋肉量が大事」の理由とは。「枯れるように逝きたいなら点滴するな」という根拠とは。認知症の母を介護した経験をもつ著者が、驚きの重要知識を明かします。手術後にボケるという危険、少々ボケてもできる趣味や習慣が大切、元気な80代の実例から学べること……。50代以上必読、健康に老いるための新常識。『死ぬならボケずにガンがいい』改題。
  • 特命金融捜査官(新潮文庫)
    3.5
    ひとりの男が失踪した。金融庁長官の特命を帯びた捜査官の伊地知耕介がマークしているベンチャー銀行の専務だった。銀行の急所を突く証拠と共に消えた金庫番を探し出し、伊地知は不正を暴くことができるのか。野望実現に驀進する会長の坂巻、銀行に巣くう闇の暴力組織。男たちは沖縄の離島へ飛ぶ……。金融界を熟知した著者が放つハードボイルド金融エンターテインメント! 『鬼忘島』改題。
  • 失格社員(新潮文庫)
    3.5
    1巻781円 (税込)
    嘘つき社員に傲慢部長、モーレツ執行役員にゴマスリ常務──不祥事の元凶がオフィスにはあふれている! サラリーマンが守るべき掟を「モーセの十戒」に擬えて、コミカルにシニカルに描く。秘かに転職を目論む銀行員の心の内は……「二神に仕えるなかれ」、セクハラ対策を担当していながら、生保の中堅幹部はなぜセクハラに陥ったのか……「汝、姦淫するなかれ」など、傑作十篇収録。
  • それは秘密の(新潮文庫)
    3.5
    美容に狂う前妻と彼女を奪っていった男、なぜ二人は俺に会いに来るのか? なぜこんなに友人の母親が気になるのか? 隣室で虚ろで奇妙な音を出し続けるのは何者か? どうしてあんなに不出来な部下に惹かれるのか? なぜ暗闇で出会って顔も見えない彼女がこんなにも愛おしいのか? なぜ、なぜ……。愛とも恋とも言えない、不思議な感情――。心理描写の洗練を極めた珠玉の短編九編を収録。
  • 生れて来た以上は、生きねばならぬ―漱石珠玉の言葉―(新潮文庫)
    3.5
    智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。兎角に人の世は住みにくい――。世間と自身の生き方との大きな隔たりに苦しんだ漱石。彼の残した言葉には、類稀な経験に育まれた深い叡智が込められている。漱石研究の第一人者・石原千秋が25作品から413の言葉を厳選、章末解説でそれらを鮮やかに読み解く。困難な時代を懸命に生き抜く私達迷える子(ストレイシープ)に寄り添う決定版名言集。
  • さよなら、母娘ストレス(新潮文庫)
    3.5
    「あなたを生んだのは、この私」何かにつけ、印籠を見せるようにそう言い放つ母親たち。かたやその言い分にぐうの音も出ない娘たち……。心底憎らしいのにどうしても嫌いになれない、そんな矛盾に苦しむ女性はあなた1人ではありません。診察室を訪れた8名の娘たちのエピソードと著者の実体験を軸に綴る、母と娘の現実。娘(あなた)が幸せになるための6つの処方箋を収録。『怒り始めた娘たち』改題。
  • 首折り男のための協奏曲
    3.5
    被害者は一瞬で首を捻られ、殺された。殺し屋の名は、首折り男。テレビ番組の報道を見て、隣人の“彼”が犯人ではないか、と疑う老夫婦。いじめに遭う中学生は“彼”に助けられ、幹事が欠席した合コンの席では首折り殺人が話題に上る。一方で、泥棒・黒澤は恋路の調査に盗みの依頼と大忙し。二人の男を軸に物語は絡み、繋がり、やがて驚きへと至る! 伊坂幸太郎の神髄、ここにあり。
  • 神様が降りてくる
    3.5
    1巻924円 (税込)
    「フィル・トムスをご存知ですね」収監された過去を持つ孤高の作家・榊の前に現れたのは、囚人仲間フィルの娘、里奈だった。親と子ほど年の離れた二人は強く惹かれ合い、フィルが残した謎を探るべく、共に沖縄へと向かう。そこで待ち受けていたのは、葬られた戦後沖縄の真実と、当時を生きた若者たちの哀しき物語だった。全身全霊を捧げた愛。壮絶な運命。白川ロマン、ここに極まる。
  • 芽吹長屋仕合せ帖 ご縁の糸
    3.5
    不貞を疑われて妻の座を追われ、独り住むことになった日本橋の芽吹長屋で、おえんはふとしたことから男女の縁を取り持つことになる。嫁(い)き遅れた一人娘と絵の道をあきらめた男、ひどく毛深い侍と若い娘、老いらくの恋。遠慮のない長屋のつきあいにもなじむ頃、おえんの耳に息子の心配な噂が入ってくる……。人びとの悲しみと幸せを描く時代小説。『結び屋おえん 糸を手繰れば』改題。
  • 枯葉の中の青い炎
    3.5
    1巻605円 (税込)
    老いた名投手の悲願を叶えるため、災いが襲うことを承知で呪術を使う男の話「枯葉の中の青い炎」。一カ月だけ愛人と同棲したい、という夫の望みを聞き入れる妻が妖しい「ちょっと歪んだわたしのブローチ」。奇妙な匂いに誘われて妻の妹をレイプしてしまった男のモノローグ「水いらず」など、濃密な味わいを持つ六つの物語。
  • 水無月の墓
    3.5
    偶然通りかかった、阿久津との思い出の場所。そこで私たちは出会い、恋に落ちたのだ――。18年前に事故死した男との愛の日々を記憶によみがえらせたその日の晩、突然かかってきた電話の主は……。不思議で怖く、どこか懐かしい「異界」への扉を開く幻想小説8編。夢と現実、現在と過去、そして生と死があやなす小池真理子の妖しくも美しき世界へ、これからあなたをご案内いたします。
  • 切羽へ
    3.5
    かつて炭鉱で栄えた離島で、小学校の養護教諭であるセイは、画家の夫と暮らしている。奔放な同僚の女教師、島の主のような老婆、無邪気な子供たち。平穏で満ち足りた日々。ある日新任教師として赴任してきた石和の存在が、セイの心を揺さぶる。彼に惹かれていく──夫を愛しているのに。もうその先がない「切羽」へ向かって。直木賞を受賞した繊細で官能的な大人のための恋愛長編。
  • 闇夜の国から二人で舟を出す
    3.5
    学園紛争に揉まれながらひたすらに読書を愛した十代から、今日まで。「私は未だに、あのころの自分をそっくりそのまま引きずりながら、やみくもに舟を漕ぎ続けているような気もする」小池真理子が明かす、運命の瞬間、創作の秘密、小説と男への愛、人生への情熱。瑞々しい言葉の連鎖に浮かび上がる「生」の航跡が、静謐な輝きを放つエッセイ集。文庫化に際し「時の水脈」を収録。
  • ほろびぬ姫
    3.5
    両親を事故で失くしたみさきは19歳で美術教師の夫と結婚した。それから4年。あなたはあなたが連れてきた――嵐の晩、彼女の前にふたりの「あなた」があらわれる。夫が、長い間音信不通だった双子の弟を探してきたのだ。混乱するみさきに、僕はもうすぐ死ぬんだ、と告げる夫。衰弱していく兄になりかわるように、その存在感を徐々に増していく弟。眩惑的な文体で綴る愛のサスペンス。
  • 穂足のチカラ
    3.5
    三歳児が家族を、そして世界を変える! 父は安月給のダメ社員、母は深刻なパチンコ依存症。シングルマザーの娘に登校拒否の息子。そして痴呆気味の祖父。冴えない海野家の唯一の救いは、愛らしい三歳の孫、穂足だった。だがそんな穂足が事故に遭ったことをきっかけに、一家それぞれに不思議な力が芽生えて……。読めば希望が湧いてくる、小さな救世主とその家族をめぐる奇跡の物語。
  • ここだけの女の話
    3.5
    恋はどうして、いつも期待や望みを裏切って思いがけない方向へ転がっていくのだろう。そして人はどうして、そんなままならぬ恋から逃れられないのだろう――。なぜか手放せない想いに逆にからめ取られて、身動きできなくなってしまった男と女のデリケートな哀歓を、なめらかな大阪言葉にのせてしみじみと綴る。読むほどに人恋しさが募ってくる、恋愛小説ならではの情趣溢れる10篇。
  • 素顔の池波正太郎
    3.5
    春とは名ばかりの薄寒い日、池波正太郎に初めて会った。桜の花びらの絨毯が敷き詰められた池波邸に押しかけてから10年、書生として誰よりも間近に接し続けた。一晩中書斎に籠って、尋常ならざる量の原稿を執筆していたこと。遅刻を何より嫌ったこと。今この一食を大切にしていたこと……。人間をシビアに見つめ、粋を体現した「人生の達人」池波正太郎の知られざる真実の姿。
  • 夢のように日は過ぎて
    3.5
    会社勤めのデザイナーとしてキャリアを積んだ芦村タヨリさんは、今が娘盛り。日本酒で作った自家製化粧水でお肌はピカピカ、相手の男次第でハタチから三十五まで幅広く年齢のサバも読めます。ちょっぴり落ち込んだりしても、「アラヨッ」の掛け声もろとも、優雅に軽やかにピンチを乗りこえてしまう、その素敵に元気な独身生活の秘訣とは? ハイミスの魅力あふれる連作長編小説。
  • 変見自在 サダム・フセインは偉かった
    3.5
    イラクを救った英雄サダム・フセインをわざわざ倒し、再びアラブを混沌とさせたバカなアメリカ、ありもしない事件をでっちあげ、堂々と反日を推進する朝日新聞、日本から多大な恩恵を受けておきながら、それを何倍もの仇にして返す下劣な中国──。世にはびこるまやかしの「正義」とそれを持ち上げる無能なジャーナリズムを一刀両断する、「週刊新潮」の大人気辛口コラム。
  • 日本の危機
    3.5
    1~2巻770~814円 (税込)
    税制の歪み、教育現場の荒廃、人権を弄ぶ人権派の大罪、メディアの無軌道…。桜井よしこは日本社会の危機的状況を指弾する。各方面から激しい攻撃を受けつつも、彼女の信念には揺るぐところがない。なぜなら本書はすべて、丹念な取材に基づき集積された現場の声によって構成されたものだからだ。そして彼女は確信した。日本の「真の危機」はそれを自覚していないことだと―。
  • 生死の分水嶺・陸羽東線
    3.5
    父親らしき男とともに、なにかを探し求めて鳴子温泉を訪ね歩いていた若い女性。その死体が、一つの川の流れを日本海と太平洋に分かつ分水嶺の傍らで発見された。東京下町の名曲喫茶に勤める彼女には、六年前に殺人事件を起こし、逮捕されるという暗い過去があった。そして、喫茶店の同僚にも魔の手が――十津川警部が分水嶺に見た運命の分かれ道とは? 迫真のトラベルミステリー。
  • 幾松という女
    3.5
    「この人と一緒にいたい」京都随一の美妓・幾松が見初めたのは維新の志士・桂小五郎の颯爽たる姿だった。幕末の嵐を共に乗り越え、桂は新政府の参議・木戸孝允となり、幾松はその妻・松子となるが、結婚を境に二人の愛は姿を変える。国事に忙殺され次第に消耗する木戸。苛立ちと愛の渇きを、若い役者との「遊び」で紛らわす松子。――動乱期の女性の生きざまと、愛の軌跡を綴る。
  • 神戸震災日記
    3.5
    何かしろ、何ができる? ――愛着ある街の悲報に接して、作家は現地に駆け付けた。バイクに跨がり、水、下着、化粧品などを直接手渡す。そして見えてきたのは、マスコミや企業の偽善、被災者の心を汲みとれない知事や市長の体温の低さだった。その後もテント村や仮設住宅に通い続けて、何ひとつ震災前と変わらぬまま封印されてゆく現代日本の病巣までを焙り出し、作家から長野県知事へ転身させた根本的動機となる経験の、渾身のレポート。
  • 三島由紀夫の世界
    3.5
    破れた初恋が、その生涯に落した長い影。「假面」の創造と「他者」への転生の足跡。そして、死を賭してまで世に訴えたかったこと……。生前の深い交友を絶妙の通奏低音としつつ、創作や評論、ノート、書簡等、あたう限り三島由紀夫自身の言葉にもとづき、類いなき文学者の全体像を精緻に浮びあがらせる。スキャンダラスな曲解、伝説の数々を払拭、「三島論」の期を画した決定版評伝。
  • 書藪巡歴
    3.5
    軽妙洒脱なエッセイストとして名高い林望氏が、書誌学の一貧書生だった頃。ただ志のみを頼りに、書物の藪、学問修行の藪を、いかにして掻き分け進んだか。碩学の恩師との胸にしみる逸話、愛してやまぬ古書・稀覯本たちとの「書縁」ともいうべき邂逅、学問の階段を昇る途上の愉しみ、苦しみ――。切々と、飄々と、“本業”への思いをここに纏めた随筆集。親切な、ひとくち語釈付き。
  • 言葉の海へ
    3.5
    国語の統一こそ一国の独立の標識なのだ。日本が近代国家となるためにも、一日も早くこの辞書を完成しなければならぬ……。子を失い、妻に先立たれながら、17年間を費し、遂に明治24年、大槻文彦はわが国初の近代的国語辞書『言海』を完成させた。〈近代国家・日本〉の確立に献身した一人の明治人の姿を、激動の時代に重ね合せて感動的に描き出す。大佛次郎賞・亀井勝一郎賞受賞。
  • 小さな貴婦人
    3.5
    死んでしまった猫〈雲〉を愛惜する夢想的で自閉的な中年女性〈私〉、「猫の殺人」という童話を書く年老いた女流詩人G、そして優しくも威厳に満ちた猫たち――。悪意に満ちた外界に傷つけられる繊細な存在の交感を詩的散文に結晶させた、優雅で奇妙な連作小説集。「猫の殺人」「雲とトンガ」「赤い花を吐いた猫」「窓辺の雲」「小さな貴婦人」の5編を収める。表題作で芥川賞を受賞。
  • たかが江川されど江川
    3.5
    人は「たかが野球」と言うかも知れない、だが僕にとっては「されど野球」だった――。かくも騒がれたあの「空白の一日」とは何だったのか。ユニークな父のこと、今も記憶に残るマウンドでの一球、そしてわが家族のこと……。不世出の投手江川卓が、その半生、短くも波瀾に満ちた九年のプロ野球生活を、華やかなスポットライトの届かなかった部分まで余すところなく語る。
  • 夢のなかの街
    3.5
    生れた街、KOOCHI市の紀行を、幼い頃の記憶の断片と重ね合せながら幻想的に綴った表題作。“亜依子”から“麻依子”へ、“麻依子”から“ミーコ”へと変貌する多重人格の女性がひき起す不可解な行動の渦を描く『亜依子たち』。一組の男女の会話を通して、作家とおぼしき女性の模糊とした像を浮びあがらせる『迷宮』。ほかに『解体』『マゾヒストM氏の肖像』など、全12編を収める。
  • 窓を開けますか?
    3.5
    私、岸森亜希子、三十二歳のOL。“極楽とんぼ”と言われながらも、自分のタイムテーブルに従って楽しく生きているうちに、自然にハイ・ミスとなってしまった。恋人はもちろんいるけれど、オトナの女ともなれば、すんなりゴールインとはいかぬ事情があるのだ……。結婚へのあこがれと不安が交錯する、さまざまな独身女性の心の窓の風景を、ペーソスとユーモアで描く長編小説。
  • TDLレストランぜんぶ食べたガイド 全土産店紹介付
    3.5
    ショー付きの豪華なレストランからポップコーン店まで、ディズニーランドの57軒の全レストラン・食物販売店のほぼ全メニューを自腹で食べまくって見えてきた真実。40店以上ある全ショップのすべての商品陳列棚をつぶさに観察して降りてきた叡智とは。東京ディズニーランドを20年間、調査員を率いて調べ続けた奇跡の男がお送りする、全レストラン&全ショップの渾身のガイド。
  • 四つの署名
    3.5
    ある日、ベーカー街を訪れた若く美しい婦人。父がインドの連隊から帰国したまま消息を断って十年になるが、この数年、きまった日に高価な真珠が送られてくるという……。ホームズ達が真珠の所有者を捜し当てた時、無限の富をもつこの男は殺され、そこには“四つの署名”が――インド王族秘蔵の宝石箱をめぐってテムズ河に繰り広げられる追跡劇! ホームズ物語の2作目にあたる長編。
  • マクベス
    3.5
    かねてから、心の底では王位を望んでいたスコットランドの武将マクベスは、荒野で出会った三人の魔女の奇怪な予言と激しく意志的な夫人の教唆により野心を実行に移していく。王ダンカンを自分の城で暗殺し王位を奪ったマクベスは、その王位を失うことへの不安から次々と血に染まった手で罪を重ねていく……。シェイクスピア四大悲劇中でも最も密度の高い凝集力をもつ作品である。
  • ジャイロスコープ
    3.5
    助言あります。スーパーの駐車場にて“相談屋”を営む稲垣さんの下で働くことになった浜田青年。人々のささいな相談事が、驚愕の結末に繋がる「浜田青年ホントスカ」。バスジャック事件の“もし、あの時……”を描く「if」。謎の生物が暴れる野心作「ギア」。洒脱な会話、軽快な文体、そして独特のユーモアが詰まった七つの伊坂ワールド。書下ろし短編「後ろの声がうるさい」収録。
  • 大人のための恋愛ドリル
    3.5
    妻子ある身で八人もの愛人を抱える性豪は一見地味な男だった。たった一回のキスで美容師に夢中になった45歳主婦の行く末。若い女性は男性に性格の良さを求めるのに、痛いアラフィフに限ってメンクイ率高し!? 恋愛の神様がアラサー、アラフォー、アラフィフから聞いたエピソードを鋭く分析。年を重ねても恋愛ベタなあなたへ贈る、27のケーススタディ集。※新潮文庫版に収録の対談は、電子版には収録しておりません。
  • マンボウ 最後の大バクチ
    3.5
    鬱病で寝込むこと十年、ようやく元気になったのはよかったが、いきおいあまって、人生最後の躁病を発症してしまったマンボウ氏。老いてなお盛んな躁病に、ギャンブル三昧の旅が始まった。「猛獣使い」の女性編集者、スーパー元気な娘を相棒に、上山競馬場、大井競馬場、平和島競艇とバクチ熱は急上昇、果ては韓国のカジノまで遠征することに。狂乱バブルのギャンブル紀行エッセイ。
  • 春告げ坂―小石川診療記―
    3.5
    たとえ治る見込みがなくとも、罪人であったとしても、その命はすべて尊い――。長い長い坂を登り切った先に位置する小石川養生所。身寄りがなく、弱い立場に置かれた人間が集まるこの場所で、医師・高橋淳之祐は日々奮闘していた。ある日入所した老人の秘められた人生が淳之祐の父の死の真相を明らかにするとき、彼の前に進むべき道が現れる。爽やかな感動を呼ぶ「赤ひげ」青春譚。
  • 隅の風景
    3.5
    ビールを楽しんだプラハ、巡礼者が行き交うスペイン、高所恐怖症と闘った韓国……。それぞれの土地に広がる、見たことのなかった風景たちを写真に収め、心に刻みながら、作家は新しい小説の予感を探す──。稀有な感性で捉えた情景を描き出す旅エッセイは、もう一つの恩田陸ワールド。さらに、過去の小説作品のヒントを得た舞台を明かす「ゲニウス=ロキ覚書」を収録。
  • 中庭の出来事
    3.5
    瀟洒なホテルの中庭で、気鋭の脚本家が謎の死を遂げた。容疑は、パーティ会場で発表予定だった『告白』の主演女優候補三人に掛かる。警察は女優三人に脚本家の変死をめぐる一人芝居『告白』を演じさせようとする――という設定の戯曲『中庭の出来事』を執筆中の劇作家がいて……。虚と実、内と外がめまぐるしく反転する眩惑の迷宮。芝居とミステリが見事に融合した山本周五郎賞受賞作。
  • 球形の季節
    3.5
    四つの高校が居並ぶ、東北のある町で奇妙な噂が広がった。「地歴研」のメンバーは、その出所を追跡調査する。やがて噂どおり、一人の女生徒が姿を消した。町なかでは金平糖のおまじないが流行り、生徒たちは新たな噂に身を震わせていた……。何かが起きていた。退屈な日常、管理された学校、眠った町。全てを裁こうとする超越的な力が、いま最後の噂を発信した! 新鋭の学園モダンホラー。
  • もののけ、ぞろり
    3.5
    宮本武蔵の弟子・伊織は亡き母を蘇らせる外法に失敗、弟が白狐と化してしまう。人間の姿に戻るべく、本物の外法使いを探す兄弟が辿り着いたのは、夏の陣に揺れる大坂城だった。妖術で徳川家康に応戦していた淀殿は、豊臣秀吉や織田信長を復活させ大騒動に。襲いかかる物の怪から弟を守るため、伊織は妖刀村雨でもののけたちをメッタ斬り! 愉快痛快、新感覚時代小説。
  • あの日の僕らにさよなら
    3.5
    桜川衛と都築祥子。共に17歳。互いに好意を抱きつつも、一歩踏み出せずにいた。ある夜、家族不在の桜川家を訪ねた祥子は偶然、衛の日記を目にする。綴られる愛情の重さにたじろいだ祥子。何も告げず逃げ帰り、その後一方的に衛を避け続け二人の関係は自然消滅に……。あれから11年。再会を果たした二人が出した答えとは──。交錯する運命を描く恋愛小説。『冥王星パーティ』改題。
  • 断崖、その冬の
    3.5
    西田枝美子は「北陽放送」の看板アナウンサー。「ミス北陽」と謳われた美人である。その枝美子も、今年で三十四歳。冷たく澱んだ北陸の冬は、身辺にも迫ってきた。ラジオへの転属をほのめかされ、孤独を味わう日々。が、そこへ一人の男が現れた。六歳年下のプロ野球選手の志村は、若く荒々しく甘美な情熱で枝美子を虜にする。その冬の終わり、男は枝美子の希望そのものであった。
  • 胡桃の家
    3.5
    正月に帰省した槇子は、生家が取壊され、テナントビルにされると聞かされた。胡桃の油で磨かれ黒光りする柱を眺め、柱に染みこんだ代々の女たちの思いを思うと、槇子は不意に自分の家を建てたい衝動にかられるのだった。女と家の共生関係を描いた表題作、学生時代の友人への複雑な感情を扱った「女ともだち」、煙草と男への拘りを語る「シガレット・ライフ」など4編を収めた短編集。
  • わたしが出会った殺人者たち
    3.5
    犯罪事件を取材して半世紀。幾多の殺人の真相を書き続けてきた作家が、古希を越えた今、これまでの取材を振り返り、殺人者との交流を回想する。拘置監で大粒の涙を見せた無期懲役囚、「自分を小説に書いてくれ」と資料を寄越した家族殺害犯、著者が喪主を務めた前科十犯の男――。昭和・平成を震撼させた凶悪犯18人の知られざる肉声や人間臭い横顔を描く、著者の集大成的な犯罪回顧録。
  • 史記の風景
    3.5
    古代中国二千年のドラマをたたえて読み継がれる『史記』。中国歴史小説屈指の名手が、そこに溢れる人間の英知を探り、高名な成句、熟語のルーツをたどりながら、斬新な解釈を提示する。この大古典は日本においても、清少納言、織田信長、水戸光圀、坂本龍馬にと、大きな影響を与えていたことに驚愕させられる。世のしがらみに立ち向かった先人の苦闘が甦る101章。
  • リオ―警視庁強行犯係・樋口顕―
    3.5
    1~3巻825~935円 (税込)
    「彼女が容疑者だとは、思えない」警視庁捜査一課強行犯第三係を率いる樋口警部補は、荻窪で起きた殺人事件を追っていた。デートクラブオーナーが殺害され、現場から逃げ去る美少女が目撃される。第二、第三の殺人が都内で起こり、そこにも彼女の姿が。捜査本部は、少女=リオが犯人であろうという説に傾く。しかし、樋口の刑事の直感は、“否”と告げた。名手が描く本格警察小説。
  • 悪魔の羽根
    3.5
    日本の銀行マンと結婚したフィリピン女性が転勤で、九州から新潟へ移った途端に経験した、雪国という未知の空間。ふさいだ気分が周囲への憎悪に変わる様子を描いた表題作「悪魔の羽根」。早春、恋愛中の女性が突然、姿を消した謎に季節特有の悩みを絡めた「はなの便り」など、四季の風景を織りまぜながら、男女の心模様、友人同士の心のズレを浮き彫りにする。ちょっぴり恐い7つの物語。
  • 好きだけど嫌い
    3.5
    悪戯電話をしてきた男性に説教した思い出、女優・鶴田真由を銭湯の名前と聞き違えて笑われたこと、五百円玉を貯めて50万の借金を返した日々、美容院の対応に立腹しても文句を言えない自分、「諦めないで書くんだよ」とタクシー運転手に励まされ苦笑したこと――あの頃の私はキリキリ舞いさせられながらも、精一杯生きていた。三十代の女性へ真摯に語りかける、本音のエッセイ23篇。
  • 行きつ戻りつ
    3.5
    どこの家庭でもありそうな、でも他人には言えない妻の悩み――夫との冷え切った関係、姑との対立、病死した一人息子への想い、受験生を抱えるつらさ、あるいは生活費の工面や、男友達との密会だったり……。それぞれに事情を抱えた妻たちは、何かを変えたくて旅に出た。新鮮な風景と語らいが、少しずつ彼女の強張った心を解きほぐす。切ないけど温かい、家族を見つめた物語集。
  • 団欒
    3.5
    なぜ自分にこの親、この兄弟姉妹なのか。いつもやたらとベタベタしているのに、実はバラバラだったりする。「家族」って、よくよく考えてみれば、ヘンなものだと思いませんか? この本には、なかでもきわめつけのヘンな家族が登場します。深夜、息子がいきなり彼女の死体を連れて帰ってきたり、夫婦の寝室に「ママ」がいたり……。これに比べれば、お宅はまだまだ大丈夫でしょう?
  • 再生の朝
    3.5
    十月七日午後五時三十分。萩行きの夜行高速バスが品川のバスターミナルを出発した。乗客乗務員は十二人。約十四時間で目的地到着の予定だったのだが……。深夜に乗務員が殺害され、バスは殺人者とともに、何処とも知れぬ闇の中に放り出される。台風接近で風雨も激しさを増し──。それぞれの人生を背負って乗り合わせた登場人物たちの多視点から恐怖の一夜を描く、異色のサスペンス。
  • 幸福な朝食
    3.5
    女優を目指して上京した少女は、運命の悪戯に全ての夢を打ち砕かれ、孤独のうちに歳月を過ごしてきた。だがその男との出会いを境に、心の底に凍てついた狂気がゆっくりと溶けはじめる。……なぜ忘れていたのだろう。あの夏から、私は妊娠しているのだ。そう、何年も、何年も、この子は待っていてくれたのよ……。濃密な心理描写が絶賛された直木賞作家のデビュー作。
  • 女刑事音道貴子 未練
    3.5
    ふと入ったカレー屋で音道は、男が店主に「こいつは俺の女房を殺した」と怒鳴る場面に遭遇する――男同士の絆が無惨に引き裂かれてゆく様子を描いた表題作。公園の砂場で保育園児が殺害され、その容疑者の素性に慄然とする音道……「聖夜」。監禁・猟奇殺人・幼児虐待など、人々の底知れぬ憎悪が音道を苛立たせる。はたして彼女は立ち直れるのか? 好評の音道シリーズ短編集第二弾!
  • 女という病
    3.5
    ツーショットダイヤルで命を落としたエリート医師の妻、我が子の局部を切断した母親、親友をバラバラにした内気な看護師……。殺した女、殺された女。際限ない欲望、ついに訪れた破滅。彼女たちは焼けるような焦りに憑かれて「本当の私」を追い求め、狂い、堕ちた。女性が主役を演じた13事件の闇に迫る圧倒的ドキュメント! 女の自意識は、それ自体、病である。これは、あなたの物語。
  • 心に狂いが生じるとき―精神科医の症例報告―
    3.5
    最初は心の小さな狂いでも、それをきっかけに、普通の人間が精神全体を蝕まれてしまうことがあり、ときには取り返しのつかない行動をとることがある。しかし、正常な精神と狂気の境目はごく淡く、我々の社会はアルコール依存、統合失調症、人格障害、うつ病など様々な精神疾患とともにある。人は、いつ、いかにして心を病むのか。現役の臨床医師が、虚説を排して実態を報告する。
  • 月明かり―慶次郎縁側日記―
    3.5
    月明かりに淡く浮かんだのは蹲る父と、鼻の脇に大きなほくろのある男。あのときは、幼子の見間違いと誰も相手にしなかったが……。建具職人の弥兵衛はなぜ刺し殺され、敵はなぜ逃げおおせたのか。月夜の晩から十一年後、敵は江戸に舞い戻る。惨劇の記憶が弥兵衛をめぐる人々の消せない過去をあぶり出し、娘を殺された慶次郎の古傷もうずく。シリーズ初長篇。
  • 夢のなか―慶次郎縁側日記―
    3.5
    女に食わせてもらう甲斐性なしと笑われるあの人も、私にはいつだって優しい。たとえ夢のなかでさえも……。職に就かない優男を針仕事で支える娘にも、良縁話を笑顔で断る縹緻よしにも、胸に秘めた思いがある。失くした恋の哀しみが、思わぬ悪事に人を走らすこともある。理詰めじゃ解けぬ江戸の男女の心のもつれを、隠居を楽しむ慶次郎が慈愛で解きほぐす、哀歓溢れる八篇。
  • 脇役―慶次郎覚書―
    3.5
    元定町廻り同心、我らが森口慶次郎に心底惚れ込み、陰に日なたにその活躍を支え続ける「縁側日記」の登場人物たち。岡っ引の辰吉に吉次、飯炊きの佐七や嫁の皐月……こみ入った過去を背負い、一筋縄ではいかぬへそ曲がりもいるけれど、他人の涙を見過ごせない心根の出来のよさなら慶次郎にも負けやしない。いつも脇役、今日は主役の彼らが語る粋で優しい八つの江戸人情譚!
  • 家族場面
    3.5
    気がつけば、おれは石川五右衛門だった…。神出鬼没に時空を飛ぶ作家一家。読者を物語のブラックホールに突き落とし、ねじれた迷宮へと誘う表題作。被害者の遺族が死刑囚の刑を執行するという狂気の設定で、獄中で執筆し続けた囚人作家の断末魔を描く『天の一角』。長年の忍従に暴発した作家夫人の怒濤の糾弾を活写する法廷劇『妻の惑星』等、表現への熱い慟哭が刻まれた傑作7編。
  • 真夜中の五分前―five minutes to tomorrow side-A―
    3.5
    1~2巻440~484円 (税込)
    少し遅れた時計を好んで使った恋人が、六年前に死んだ。いま、小さな広告代理店に勤める僕の時間は、あの日からずっと五分ズレたままだ。そんな僕の前に突然現れた、一卵性双生児のかすみ。彼女が秘密の恋を打ち明けたとき、現実は思いもよらぬ世界へ僕を押しやった。洒落た語りも魅力的な、side-Aから始まる新感覚の恋愛小説。偶然の出会いが運命の環を廻し、愛の奇蹟を奏で出す。
  • 蜩―慶次郎縁側日記―
    3.5
    「あの吉次親分が、所帯をお持ちなすった」驚いたのは慶次郎だけではない。小柄で貧相、意地の悪さは江戸で一、二の岡っ引・吉次に惚れるとは、どんな女だい? 一方に出現したのは“吉次の義弟”を名乗る不審な男。こいつはどうやら裏がありそうだ…。慶次郎、辰吉、晃之助らお馴染みの面々を巻き込んだひと夏の騒動を描いた「蜩」ほか全十二篇。江戸情緒溢れる好評シリーズ第五弾。
  • さざなみ軍記・ジョン万次郎漂流記
    3.5
    都を落ちのびて瀬戸内海を転戦する平家一門の衰亡を、戦陣にあって心身ともに成長して行くなま若い公達の日記形式で描出した「さざなみ軍記」。土佐沖で遭難後、異人船に救助され、アメリカ本土で新知識を身につけて幕末の日米交渉に活躍する少年漁夫の数奇な生涯「ジョン万次郎漂流記」。他にSFタイムスリップ小説の先駆とも言うべき「二つの話」を収める著者会心の歴史名作集。直木賞受賞。
  • 夕暮まで
    3.5
    若い男女のパーティに、幾人かの中年男が招かれる。その一人佐々は会場で22歳の杉子をホテルへ誘う。処女だという彼女は、決して脚を開かせない代りに、オリーブオイルを滴らせた股間の交接、フェラチオ、クニリングスは少しも厭わない。こうして中年男と若い娘の奇妙な愛は展開していく。しかし事の結末は呆気なくおとずれる。人間の性の秘密を細密に描き上げた一幅の騙し絵(トロンプ・ルイ)。野間文芸賞受賞。
  • 風濤
    3.5
    日本征服の野望を持つ元の世祖フビライは、隣国の高麗に多数の兵と船と食料の調達を命じた。高麗を完全に自己の版図におさめ、その犠牲において日本を侵攻するというのがフビライの考えであった。高麗は全土が元の兵站基地と化し、国民は疲弊の極に達する……。大国元の苛斂誅求に苦しむ弱小国高麗の悲惨な運命を辿り、〈元寇〉を高麗・元の側の歴史に即して描く。
  • 舞姫通信
    3.5
    1巻649円 (税込)
    ラストシーンは、もう始まっているのかもしれない。人は、誰でも、気づかないうちに人生のラストシーンを始めている。17歳で死んだ〈自殺 志願〉のタレント城真吾にとっては、16歳は晩年だった。城真吾は教えてくれた。人は死ねる。いつ。いつか。いつでも――。でも、僕は思う。僕の教え子の君たちの「いつか」が、ずっとずっと、遠い日でありますように。教師と、生徒と、生と死の物語。
  • これからの出来事
    3.5
    悪夢だと思いたい、信じられないような出来事。特殊な能力をもった青年の巧妙なビジネス。絶体絶命の危機から目覚めさせてくれる救いの声。満開の桜の季節に出会った秘密好きの美しい女――想像もつかないことが現実となってしまう未来社会を、あなたものぞいてみませんか? 技術と文明がもたらす21世紀社会のゆがみを見通して、痛烈な風刺で描きだしたショートショート21編。
  • どんぐり民話館
    3.5
    引き抜かれたカカシのあとに生えた草の葉っぱ、雲母(うんも)のようにキラキラする竜のウロコ、字の書かれた小さな石ころ――そんな奇妙なものばかりがあるというどんぐり民話館。そのどんぐり民話館を探しに、都会から一人の青年がやってきたが……。いつまでも語りつがれる民話のような味わいで、さまざまな人生の喜怒哀楽を描いた31編。ショートショート1001編を達成した記念の作品集。
  • 禁猟区
    3.5
    ホストにいれあげている中年女・若山直子の資金源は、ホストクラブで借金がかさみ、身動きのとれなくなった少女たちだった。経営者を脅して得た顧客情報から、未成年者の親に当たり、「解決してやる」とカネを要求する。直子の職業は、警察官だった──。犯罪に手を染めた警察官を捜査する組織、警視庁警務部人事一課調査二係。女性監察官沼尻いくみの活躍を描く傑作警察小説四編。
  • 母の影
    3.5
    1巻484円 (税込)
    青山にある大病院の娘に生れ、斎藤茂吉と結婚した輝子。お嬢様として育ち気丈で破天荒な性格の彼女と、癇癪もちでワンマンな茂吉が、夫婦として折り合うはずもない。家にはいつも嵐が吹き荒れ、四人の子らは右往左往。そんな斎藤家の次男である著者が幼少時代の記憶を辿り、文学にめざめた頃を反芻しつつ、母への愛惜、父への尊敬、そして二人の死を綴る。追慕溢れる自伝的小説。
  • 縦糸横糸
    3.5
    酒鬼薔薇聖斗、和歌山カレー事件、オウム真理教、新潟少女監禁事件、自殺者の増加、引きこもり──日本人の生活は豊かに、快適になったが、〈心〉はその変化に対応できず、多くの問題が生じてしまった。効率を追い、結論のみを急ぐ現代社会は、育児や教育には不向きだ。欲望を満たしても幸せにはなれない。ではどうすればいいのか。〈心〉の専門家から、困難な時代を生きる私たちへの提言。
  • おみそれ社会
    3.5
    1巻649円 (税込)
    二号は一見本妻風、模範警官がギャング……。ひと皮むくと、なにがでてくるかわからない複雑な現代社会を鋭く描く表題作など全11編。
  • 絶叫城殺人事件
    3.5
    「NIGHT PROWLER(夜、うろつく者)」と記された小さな紙片を、口の中に押し込まれ、次々と殺害される若い女。残酷な無差別殺人事件の陰には、カルトなホラー・ゲームに登場するヴァーチャルな怪物が――。暗鬱の「絶叫城」に展開する表題作ほか、「黒鳥亭」「壺中庵」「月宮殿」「雪華楼」「紅雨荘」と、底知れぬ恐怖を孕んで闇に聳える六つの迷宮の謎に、火村とアリスのコンビが挑む。

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  • 沖縄学―ウチナーンチュ丸裸―
    3.5
    おおらかなのかいい加減なのかビミョーな「テーゲー主義」、5分歩くのも嫌な「なんぎー文化」、台風で屋根が飛んでも落ち込まない「ナンクル気質」など灼熱南風の島に充満するナマの沖縄カルチャーを様々な角度から分析する、抱腹絶倒のウチナー白書。ここで質問。「モアイ」と聞いてイースター島を思い浮かべるのはヤマトンチュ(本土の人)。沖縄ではどんな意味でしょう?

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  • 彰義隊
    3.5
    皇族でありながら、戊辰戦争で朝敵となった人物がいた──上野寛永寺山主・輪王寺宮能久親王は、鳥羽伏見での敗戦後、寛永寺で謹慎する徳川慶喜の恭順の意を朝廷に伝えるために奔走する。しかし、彰義隊に守護された宮は朝敵となり、さらには会津、米沢、仙台と諸国を落ちのびる。その数奇な人生を通して描かれる江戸時代の終焉。吉村文学が描いてきた幕末史の掉尾を飾る畢生の長篇。

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  • 俺俺
    3.5
    なりゆきでオレオレ詐欺をしてしまった俺は、気付いたら別の俺になっていた。上司も俺だし母親も俺、俺ではない俺、俺たち俺俺。俺でありすぎて、もう何が何だかわからない。増殖していく俺に耐えきれず右往左往する俺同士はやがて――。他人との違いが消えた100%の単一世界から、同調圧力が充満するストレスフルな現代社会を笑う、戦慄の「俺」小説! 大江健三郎賞受賞作。

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  • 冬の派閥
    3.5
    御三家筆頭として幕末政治に絶大な影響力を持つ尾張藩の、勤王・佐幕の対立は、ついに藩士十四人を粛清する〈青松葉事件〉へと発展し、やがて明治新政府下、藩士の北海道移住という苦難の歴史へと続く。尾張藩の運命と不可分の、藩主徳川慶勝の「熟察」を旨とする生き方を、いとこ一橋慶喜の変り身の早い生き方と対比させつつ、転換期における指導者のありかたを問う雄大な歴史小説。

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  • にぎやかな部屋
    3.5
    1巻440円 (税込)
    マンションの一室。住んでいるのは高利貸しの亭主と占い師の夫人、そして一人娘。そこに金目当ての妙な男たちがやって来て、大騒動が持ち上がる。さらに、死後に人間にとりついてその出来事を皮肉に見守る霊魂たちもからんで……。詐欺師、強盗、霊魂たち――人間界と別次元が交錯する、軽妙なコメディー。会話主体でテンポよく展開、現代の世相と、人間の内面を映し出した異色作。
  • 時間の習俗
    3.5
    神奈川県の相模湖畔で交通関係の業界紙の社長が殺された。関係者の一人だが容疑者としては一番無色なタクシー会社の専務は、殺害の数時間後、遠く九州の和布刈(めかり)神社で行われた新年の神事を見物し、カメラに収めていたという完璧すぎるアリバイに不審を持たれる――『点と線』の名コンビ三原警部補と鳥飼老刑事が試行錯誤を繰返しながら巧妙なトリックを解明してゆく本格推理長編。
  • 佐渡流人行―傑作短編集(四)―
    3.5
    時代小説の第2集。誤解から役人の妻との過去を疑われた男が、逃れるすべのない絶海の孤島佐渡に送られ、金山の湧き水を汲み出す水替人足として想像を絶する地獄の苦しみを味わう「佐渡流人行」。下級役人の哀しい運命をたどる「甲府在番」。江戸っ子の意地を痛快に語る「左の腕」。ほかに「陰謀将軍」「腹中の敵」「秀頼走路」「戦国謀略」など戦国時代に取材した力作8編を収める。

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  • エスケイプ/アブセント
    3.5
    闘争と潜伏に明け暮れ、気がついたら二十年。活動家のおれも今や40歳。長い悪夢からようやく目覚めるが、まだ人生はたっぷり残っている。導かれるように向った京都で、おれは怪しげな神父・バンジャマンと出会い、長屋の教会に居候をはじめた。信じられるものは何もない。あるのは小さな自由だけ。あいつの不在を探しながら、おれは必死に生きてみる。共に響きあう二編を収めた傑作。

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  • 人情武士道
    3.5
    御用人の佐藤欽之助は、妻を通して琴の稽古友達だった女から、夫の仕官の世話を頼まれる。その女が、かつて縁談を申し込んで断られた和枝であることを知った欽之助は、思いがけない行動で依頼を果たす……。著者の鋭い人間観察眼を際立たせている表題作の他に、後年の“職人もの”の先駆をなす「しぐれ傘」や“滑稽もの”の「竜と虎」など、初期の傑作12編を収める。

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  • 髪かざり
    3.5
    太平洋戦争中から終戦直後にかけて、著者は〈日本婦道記〉と題した短編を発表し続けた。初期の代表作となったこのシリーズには、未曾有の非常時にあって、古来、戦場の男たちを陰で支え続けてきた日本の妻や母たちの、夫も気づかないところに表われる美質を掘起こしたいとの願いが込められていた。本書には、「忍緒」や「二粒の飴」など、文庫未収録の本シリーズ作品のすべて、17編を収録。

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  • 秘伝の声(上)
    3.5
    新宿角筈村に剣術道場を構える老剣客・日影一念は、臨終の床で、なぜか二人の内弟子、白根岩蔵と成子雪丸に、自分の遺体と共に秘伝の書を土中に埋めよと言い残す。だが、剣の極意を極めたい一心の岩蔵は、遺言にそむき、秘伝書を奪って出奔する。村人たちに頼まれて道場を継ぐことになった雪丸は、岩蔵の行方を探りつつ道場を守り立て、角筈村になくてはならない人物となるが……。
  • 谷中・首ふり坂
    3.5
    養子に入った武家の妻にへきえきしていた男が、初めて連れていかれた谷中の茶屋の女に魅せられ、武士の身分を捨ててしまう表題作。自堕落に暮らしていた息子が、濡れ衣を負って処刑された父の敵を討とうと決心した途端に人柄が変わってしまう「夢中男」。そのほか「尊徳雲がくれ」「へそ五郎騒動」「舞台うらの男」「かたきうち」「伊勢屋の黒助」など、全11編を収める傑作短編集。
  • 映画を見ると得をする
    3.5
    なぜ映画を見るのかといえば……人間はだれしも一つの人生しか経験できない。だから様々な人生を知りたくなる。しかも映画は、わずか2時間で隣の人を見るように人生を見られる。それ故、映画を見るとその人の世界が広がり、人間に幅ができ灰汁がぬけてくる。その逆に映画を見ようとしない人は……。シネマディクト(映画狂)の著者が映画の選び方から楽しみ方、効用を縦横に語りつくす。

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  • 切れた鎖
    3.5
    海峡の漁村・赤間関を、コンクリの町に変えた桜井の家。昔日の繁栄は去り、一人娘の梅代は、出戻った娘と孫娘の3人で日を過ごす。半島から流れついたようにいつの間にか隣地に建った教会を憎悪しながら……。因習に満ちた共同体の崩壊を描く表題作ほか、変態する甲虫に社会化される自己への懐疑を投影した「蛹」など、ゼロ年代を牽引する若き実力作家の川端賞・三島賞同時受賞作!

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