新潮文庫作品一覧

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  • 世界の指揮者
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    フルトヴェングラーからアバドまで、20世紀の名指揮者28人をとりあげ、それぞれの演奏の魅力と特質を論じる。実演やレコードによって具体的に音楽の本質を浮き彫りにしながら、人間性そのものにまで迫る本格的指揮者論。単なる演奏評の枠を突き破って音楽の世界の深奥をさし示したこれらの批評は、日本人によって書かれた指揮者論の頂点と言えよう。
  • 人生の検証
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    「人生とは何であろうか。或る日小鳥がそんな問いを私の許へと運んできた。そこで私はしみじみと考えてみた……」食・恋・友・身・性・金・家・夷・悪・美・心・死。生きるために必要な12のテーマを追究した人生再発見の書。――自らの半生の体験をかえりみ、心の軌跡をたどり、文学者や古人の言葉にも触発されて、人の生のありようを深く省察する。第一回伊藤整文学賞受賞。
  • 日本の父へ
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    父親はわが子の教育の傍観者であってはならず、直接参加しなければならない。――在日四十余年、日本の教育現場をつぶさに見つめてきた元・栄光学園理事長が、自信を喪失した日本の父親たちと、これから親になる若者たちに語る家庭教育論。ありし日の父を回想した「父ありき」、教育者としての実体験を盛り込んだ「おやじさまざま」、結婚する若者に贈る「明日の父に」の三章からなる。
  • 聖母病院の友人たち
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    高度成長期を第一線の経済記者として歩んだ私は、厄年とともに、突然恐怖の宣言をうけた。「禁酒と安静を守らなければ、君は確実に死の道を歩む」……。そして半年間の入院。だが、そこでは酒と過労に責めさいなまれた“沈黙の臓器”の怒りを鎮め、乾ききった心をいやしてくれる数々の人々に出会うことができた。日本エッセイストクラブ賞を受賞した、小さなコミュニティの物語。
  • もめん随筆
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    精錬された教養と女性の優しい情感が、木綿の着物の肌ざわりのような懐かしい感触で漂う作者の随筆は、夜ごとの憩いのひとときに快く気持をくつろがせてくれる。作者の清潔な人柄のよさは随所にたゆたい、読者の魂は無言のうちに清く浄化されるのである。「東京の女・大阪の女」「芥川さんのこと」「七月廿四日」などの随筆46篇に、詩集「楊柳詩」より10篇を選んでこれに加えた。
  • 出孤島記
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    南海の孤島にたてこもり、ベニヤ板で作られた“自殺艇”による絶望的な特攻作戦に従事する若い指揮官と180名の部下たち。死の呪縛のなかで出撃命令を待つ彼らの一触即発の極限的な状況を、人間の生と死の本質を見据えつつ、緊迫した文体と重いリアリティで捉えた戦記文学の名作「出孤島記」他、「格子の眼」「砂嘴の丘にて」「朝影」「夜の匂い」「子之吉の舌」「むかで」「冬の宿り」「川にて」。島尾文学の傑作全9編を収録。
  • 天からやって来た猫
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    多忙にかまけて、人生を雑に生きてきた新聞記者の浦野は、ふとしたきっかけで一匹の仔猫を貰いうけた。名前はパイ。煤けたような灰色の毛と短い尻尾をして、外観・動作は心細く、普通の猫のような知恵も阿諛も示さなかったが、その天性の自然な生き方は、バラバラだった一家の心をひとつに結び、多くのかけがえのない真実を教えてくれた。無類の愛猫家が贈る、涙と笑いの長編小説。
  • ガン病棟の九十九日
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    ガン患者が感ずる死への恐れも生への希望も、自己不信も、医者・家族に対する疑惑も、すべてがここにはある――田中金脈追及でジャーナリストとしての力を見せ、将来を期待されながら急逝した著者が、ガン病棟で死と闘う自身の姿を、冷静な筆致で描き出した最後のルポルタージュ。表題作のほかに、絶筆となった「さるのこしかけ」、「闘病ノート」、正子夫人の「手記」を収録した。
  • 自註鹿鳴集
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    歴史、美術への深い造詣を背景に、奈良の古寺、古仏を愛してのびやかに“やまとくにはら”へのつきない憧憬を詠みつづけた自然人、会津八一。万葉調を近代化した新鮮、独自の歌に、自ら平明詳細な註を付したこの歌集は、歌と自身の長く豊かな交流を読む人に語りかけて、会津八一の“詩と真実”ともいうべき最晩年の偉業である。
  • 幻化
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    消え去った記憶を確かめようと南九州を旅する精神病の男を通して、二十数年間の心象風景を文学へと結晶させた、戦後文学屈指の名作「幻化」。ほかに「庭の眺め」「記憶」「仮象」「空の下」「突堤にて」「凡人凡語」の全7編を収録。一貫して戦後の繁栄の仮象の底に生の深淵を見つめ続けた梅崎春生の後期作品集。
  • 日本語 根ほり葉ほり
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    語源も分からない「けじめ」をつけろと言われても……?「そこをなんとか」のそことはどこ? なんとかとは何?「厳粛に受けとめて」「前向きに善処する」と言えばそれで一件落着? 物事を認識するために最も重要であるはずの言葉を軽視し、深く定義もせずに流通させ、言葉のバブル化を招いている現代日本人への警告の書。毎日使っている日本語を通して、日本人が見えてくる――。
  • シェイクスピア物語
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    ラム姉弟の「シェイクスピア物語」は、世に聞こえた名作である。原典は読まなくとも、1807年に刊行のこの本でシェイクスピア劇の筋とおもしろ味を知っている人は、欧米でも日本でも珍しくない。本書は「ハムレット」「真夏の夜の夢」「お気に召すまま」「ベニスの商人」「じゃじゃ馬ならし」「ロミオとジュリエット」「リヤ王」など12篇の、原典のせりふを生かし、シェイクスピアの時代の用語を巧みに駆使した物語を掲げる。年少の読者を考え、翻訳にも十分の考慮が払われている。
  • 出発は遂に訪れず
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    敵艦に体当りする瞬間に向けて生命のすべてを凝縮させながら、終戦の報によって突如その歩みを止められた特攻隊将校の特異な体験を緊迫した言葉で語る表題作。超現実的な夢の世界に人間の本質を探った画期的作品「夢の中での日常」ほか、「島の果て」「単独旅行者」「兆」「帰巣者の憂鬱」「廃址」「帰魂譚」「マヤと一緒に」など、現実と幻想の間を自在に行き交う文体で、痛切な私的体験を普遍へと昇華させた島尾文学の代表作、全9編。
  • 女の警察
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    銀座でクラブやバーを経営する暁興業に勤める篝正秋は、借金を踏み倒して逃げたホステスを、たとえ草の根をわけても探しだしてくることから〈女の警察〉とあだ名されている。彼は友人の死への疑惑から、その行動の跡をたどっていくうちに、意外な事件に遭遇する。夜の歓楽の巷を舞台に、山陽新幹線用地買収にからむ疑獄事件に立向う男の姿を描く、迫真のエロチック・ミステリー。
  • ベティさんの庭
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    「樹も草も鳥も風も空も、みんなみんな、わたしのものではない。どこを見廻してもわたしの肌にぴったり寄りそってくるものはない」……。異国に嫁いで二十年、日本の戦争花嫁〈ベティさん〉の切々たる望郷の念を描く芥川賞受賞の表題作をはじめ、『魔法』『わがままな幽霊』など、華麗なイメージと静謐なタッチで、独自の文学空間を築く話題の女流作家の傑作短編、ほかに『魔法』『雨の椅子』『老人の鴨』の3編を収録する。
  • 片恋・ファウスト
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    純真で、火のような熱情と、男を凌ぐ激しい気性をもちながら、妾腹の子という意識ゆえに歪んだ道をたどらねばならなかった女アーシャの生涯を、陰影ある精緻な筆で描いた『片恋』。完備した形式と安定した人生観照の目で、激しい愛欲とすぐれた知性との矛盾相剋に傷つきたおれたヴェーラの悲劇を追求した『ファウスト』。いずれもツルゲーネフの中期の円熟を示す佳作中篇である。
  • 田舎司祭の日記
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    モーリヤックが、真の信仰を失ってその形骸だけを守る人々の生活を綴ったのに対し、同じくフランス二十世紀前半の作家、ジョルジュ・ベルナノスは、信仰に真に生きようと努力する人々を真正面から描き出す。本篇は一田舎司祭の日記の形式を借りて、従来の小説に全く捕捉されなかった神の姿を司祭の中に見出し得たのである。神と悪魔の闘いに迫った作者の代表作。1936年作。
  • ピエールとジャン
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    医者のピエールと弁護士のジャンは、性格はまるで違うが、いたって仲のよい兄弟である。ある日、ジャンにだけ思いがけない方面から遺産が送られてき、兄ピエールは、弟は果して誰の子なのか、愛する母には何か秘密があったのではないかと、深い疑惑をいだきはじめる……。典型的な心理研究の文学で、漱石もこの作品を讃嘆している。1888年作。ほかに「小説について」を併録する。
  • 父子鷹(上)
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    名代の分限者・男谷家に生れ、四十俵余の小普請・勝家の養子となった剣豪・小吉は、男谷の父と兄の運動が功を奏して仕官の道がひらけたのも束の間、誤って卑劣な役人をその手で殺してしまう。しょせん、情実と賄賂のうずまく権勢にまっ向から抗して仕官を断念、わが子・麟太郎(海舟)にすべての夢を託して、清廉・直情、市井に生きる父と子と。菊池寛賞受賞のきっかけとなった傑作長編。
  • ドバラダ門
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    門を作った張本人、その名は山下啓次郎。おーまいごっど、オレのじいさんが建築家だと。ルーツ探しに旅行けば、出るぞ鹿児島、やっぱり西郷。山下清も乱入し、時空を越えた大騒ぎ。官軍、逆賊を叩っ斬れば、洋輔、ピアノを叩っ弾く。門を壊しちゃならねえと、反対門前コンサート。住民一気に盛り上がり、かつぎ出されたピアニスト――日本文壇をしゃばどびと震撼させた奇著を読め。
  • フロイト自伝
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    一八五六年、現在はチェコの東部、当時オーストリア領だったモラヴィアの田舎町フライベルクに生れたジークムント・フロイトは、長くウィーン大学で教鞭をとり、一九三八年にロンドンへ亡命した翌年、八十三年の生涯を閉じた。亡命を除けば、彼の生涯に外的な波瀾はないが、ユダヤ人の血のために苦悩した、その経験は、あの独創的な学説、人生観に、少なからぬ影響を及ぼしている。
  • 秋津温泉
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    この秋津の町へ私は十七の初夏、伯母に連れられはじめてやって来た……。自然豊かな秋津の温泉宿を舞台に繰り広げられる、激しくも切ない愛の日々を描ききった作品。1962年に岡田茉莉子と長門裕之が主演し、吉田喜重監督の手で映画化された永遠の名作。
  • 贅沢貧乏
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    著者の創作の舞台裏である愛猫とふたり(?)の珍妙なアパート暮しのようすを軽妙な筆致で、自由に綴る批評的自画像。見かけだけ贅沢で、実は、内容の寒々としている現代風の生活に、侮蔑をなげつけながら、奔放豪華な夢を描く連作長編「贅沢貧乏」。ほかに、著者の目にうつる文壇をその鋭い洞察力で捉え、パロディ化した「降誕祭パアティー」「文壇紳士たちと魔利」など全5編を収録。
  • 尻出し天使
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    「女」はヴィーナス、いたずらっぽい媚態で男を惑わす「天使」にも変身する。だから「男」は永遠に夢=欲望を追いかける。貧乏画家の主人公をめぐる、年上の妻と、若い二人の女。欲望にのみ突き動かされるように、愛人たちとの情事を繰り返す主人公にとって、いったい「天使」は誰? (1989年~90年「新潮45」掲載「女は海 男は船」改題)
  • 息子と恋人(上)
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    中産階級の出身で教養のあるガアトルウドは、性的に魅力のある炭鉱夫モレルと結婚した。いつしか夫への愛もさめたモレル夫人にとって、美しい息子たちが彼女の恋人的存在となっていた。長男ウィリアムの突然の死に打ちのめされた母親を慰めるのは、絵の上手な16歳の次男ポオルだった。
  • 好色覚え帳
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    「好色な小説家といわれる保坂庄助」の、好奇心あふれ、奇妙でいてしかも真剣な行動に託してくりひろげられる、現代風俗のカリカチュア。――“頓狂連”なる珍妙な仲間たちをひきいてとりおこなう赤線忌、寒詣りから、結婚相談所の見合い、近親相姦の村探訪記、乱交パーティの実地研究、女学校の運動会見物まで、黒メガネに映った虚実反転の世界を、諧謔諷刺まじえつつ描く連作長編。
  • てろてろ
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    糞便学者ビン、オナニスト新吉、そして酒乱の禅介。自分が何を憎み、何を愛するかも実感できず、それぞれの嗜好に耽溺していた自閉症三人組にも、あるとき殺意が芽ばえた。殺人こそは他者との対話の究極の形と信ずる〈心優しきテロリスト〉に変貌した彼らの、八方破れの心情と行動。――荒唐無稽の混沌の彼方に、現代文明や風俗に対する確かな批評感覚を浮び上らせた痛快テロ小説
  • 心中弁天島
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    チンピラやくざと紡績会社の女子工員との出会いから死に至る魂のふれ合いの中に、青春の持つ残酷さを、さわやかに、哀しく描いた表題作。ほとんど戦後日本史の原型ともいうべきものを捉え、焼跡闇市派文学の原点を示す佳品『くらい片隅』。家庭という場で展開されるすさまじい“反米闘争”の寓話『万婦如夜叉』。ほかに『銀座のタイコ』『呪われ児』『殺さないで』『展望塔』を収める。
  • 受胎旅行
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    型破りの文体と特異な美意識で、何人も触れなかった人間の愚かさ弱さだらしなさの底の底を、哀しくユーモラスに綴る“現代性風俗誌”。子供ほしさのノイローゼ妻の執拗な妊娠作戦に翻弄され、“種つけ馬”の心境にうちひしがれる男の滑稽さを描く『受胎旅行』、1本5円の“御開帳”のマッチに24歳の生命を焼きつくした女の悽惨、哀切きわまりない物語『マッチ売りの少女』ほか8編。
  • うつむく女
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    肉体的に男性失格者である春画家の妻小夜子、良人に背かれて愛情のさめてゆく平凡な勤人の妻珠子――肉体的心理的に良人に不満な二女性の、男を求めて燃えあがる感情の爆発! 結婚生活への不信と疑惑を前提として、奇怪な夫婦関係、悽惨な愛欲のエゴ、無軌道な性の悲劇を、すさまじい迫力で大胆に描破した大作。
  • 好色の魂
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    昭和初期、エロ・グロ・ナンセンス華やかなりし時、たび重なる発禁にも屈せず、女泣かせの極意書や春本をあっぱれ秘密刊行して、名声天下にかくれもない「好色出版の帝王」貝原北辰。その奔放無頼の生涯を、空前の言論の自由を謳歌する今日、相も変らぬ官憲の発禁処分に対して闘う現代の北辰、野坂昭如が、己れの自画像をも映し入れながら共感と敬意をこめて描き上げた異色長編。
  • 充たされた生活
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    身よりのない27歳の新劇女優朝倉じゅん子は、3年におよぶ結婚生活を清算する。死んだ兄の同級生である劇作家、アパートの隣室に住んでいる学生運動家、妻と死に別れた俳優など、さまざまな男性を遍歴するが、じゅん子は結局、右翼暴力団に襲われた劇作家に自分の全身をあずける……。60年安保闘争を背景に現代人にとっての充実した生とは何かを追求する書下ろし長編。
  • 大尉の娘
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    暴徒のため父母を惨殺されたマリーは、相思の将校グリニョーフに危難を救われるが、のちに嫌疑をかけられシベリア流刑に処せられた愛人の赦免を求め、ペテルブルクに行き女王に決死の嘆願をする。エカテリーナ二世の治世に起ったプガチョーフの反乱を背景とし、歴史小説と家庭小説が巧みに融合した、19世紀ロシア・リアリズム文学の先駆的作品であり、プーシキン芸術の最高峰と言われる。
  • 芸術論
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    「空想することと詩人」「小筺選びのモティーフ」「ミケランジェロのモーゼ」「『詩と真実』中の幼年時代の一記憶」「不気味なもの」「フモール(ユーモア)」「ドストエフスキーと父親殺し」の諸題より成る。精神分析学を文化領域にまで適用したフロイトが、作品を素材として芸術家の意図や感動や心的状況を分析した芸術論。
  • 燃え上る青春
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    パリの裕福な実業家の家に育った主人公アンドレ・モオヴァル。彼と若く美しいド・ナンセル夫人との情事と、彼の将来に期待をかけるモオヴァル家の人々の姿を、詩人でもあるレニエが、流麗かつ詩的に描きあげた、作者円熟期の傑作。本作品発表当時(1909年)の仏文壇では詩人が小説をかくことが流行し、それらの作品では物語に、作者の夢想や感情がもりこまれ、きわめて美術的な小説となっていた。本作品はその代表作であり、堀口大學の名訳で味わうことができる。
  • 勝負師語録
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    「バットは両腕の延長、だから執念さえあれば折れるはずがない」(長島茂雄)「あの挫折があったからこそ、三冠王になれた」(落合博満)「やられたら次にやりかえす。これが3番打者の極意だ」(秋山幸二)「相撲はイメージで取ります」(舞の海)「人生、楽ありゃ、苦もあるさあ」(武豊)。時代を超え、歳月をのりこえて、本当の言葉は胸の中に熱い感動を運んでくる。プロフェッショナル71人が勝負の世界の奥深さを語る名語録。
  • 快楽
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    1巻1,210円 (税込)
    たとえ女と交わっても覚楽してはならぬ。覚楽なければ不犯なり――厳しい戒律のなかでうろたえ、摸索する青春の魂。教団活動と左翼運動の境界に身を置く“赤い坊さん”柳は教団及び革命団体の分裂抗争に巻きこまれる……。集団悪の諸相、人間の業の深さを見据えて、戦慄すべき予言と稀有の洞察にあふれる本書は、巨人武田泰淳がそのすべてを投入した畢生の大作である。
  • 天上大風
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    1巻1,320円 (税込)
    南雲は、友人の会社に乗り込み、総務部長として「悪人」田所専務と対決しようとする。しかし肝心の友人が、世間体のみを気にする気の弱い金持ちの息子にすぎなかったため、会社の改革も一筋縄ではいかない状況に。恋の三角関係もからみつつ、南雲が選んだ結論とは……。独自のサラリーマン小説で一時代を画した著者の代表作。
  • 星祭りの町
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    両親を亡くし、江戸時代から続く七夕の町に疎開した三姉妹。次女・育子はそこで敗戦を迎え、進駐軍による町の変貌を目の当たりにする。私利私欲に走る軍人たち、米兵にぶら下がる厚化粧の女。日本はこのまま滅亡してしまうのか。それでも復興した七夕祭りに商店街は活気づき、賑わいが蘇る。自立の道を探しつつ、淡い恋に心ときめかす育子の青春の日々。著者の自伝的小説。
  • 繭子ひとり(上)
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    1~2巻440~550円 (税込)
    幼い繭子を残して去っていった母親と弟――過酷な境遇にじっと耐えながら、幸せを求めて強く生きる、純朴で多感な乙女繭子の遭遇する友情と愛を抒情ゆたかに描く青春のドラマ。
  • 燕のいる風景
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    1巻330円 (税込)
    光が逝き、影は動く。愛が滅ぶとき死者は扉を叩く……。戦中・戦後、私たちは絶え間なく死に、絶え間なく生きた。そして現在――この平穏で欺瞞的な日々がある。だが、そこには、生きられなかった過去が、層をなして張りついている。男女の別れの場に、都会の賑わいに、失われた時と空間を招き寄せ、現実と非現実を二重写しにしながら、未生の現在を照らし出す、柴田翔の新境地。
  • 冬の虹
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    親子三人の平穏な生活を送っていた家庭から、夫が莫大な借金を残して蒸発した。妻・暁子の前につぎつぎと明かされる、夫の知られざる過去、悪質サラ金業者の執拗な追及……。苛酷な現実にさらされながら、民芸店に勤めた暁子は、古い藍染めの布に出会い、その美しさと、しなやかな強さに惹かれていった。無我夢中で歩きまわっていた暗闇のかなたに見た、かすかな一条の光――。
  • 夢の虐殺
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    総合商社の中で、人間部分品として飼育されていることに、ある日突然気づかされたサラリーマンが、学生時代に生命を賭けた山に、もう一度挑戦することで、かつての自分をとりもどそうとする表題作。死体消去という方法で完全犯罪を企てる人間たちの愛憎劇「人間溶解」。ほかに「高燥の墳墓」「派閥抗争殺人事件」「侵略夫人」「殺意の造型」など、現代社会の檻にとじこめられた男たちの怒りがほとばしる、力作推理小説6編。
  • 鍵のかかる棺(上)
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    客数四千人・従業員三千人――あらゆる欲望を秘めて呼吸する、鉄と石の超高層の棺、東京ロイヤルホテル。利益追求の巨大な機構の陰で、次々と発生する殺人事件は、想像もつかないほどの国際的な奥深さをもって展開してゆく……。この錯綜した現代社会を象徴するかのように屹立するホテルを舞台に、著者自身のホテルマン生活十年の体験のすべてをそそぎ込んだ、力作長編推理小説。
  • 千輪の華
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    安易な同棲の果ての心中未遂……。男の裏切りによって痛切な恋の破局を経験した真野祥子は二十五歳のOL。放心の日々のなか、ふとしたことから女花火師・立花薫を知った。一筋縄では行かない職人たちを率いる男まさりの薫の生き方に惹かれた祥子は、下働きとして住み込み、汗と土にまみれながら新たな人生をひたむきに歩みはじめる。夜空を彩る一瞬の華麗なきらめきを夢見て――。
  • 愛をめぐる人生論
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    女は、つねに美しくあって欲しい。そして、優雅で、妖艶であって欲しい。女の愛のすがた、肉体の表情を古今の例証にもとめ、また生きた現実のなかにとらえる。――女が官能にめざめるとき、情事のなかの色と匂い、嫉妬と自尊心、恋愛の結晶作用、淫蕩と情事の表裏、性における意識と肉体の乖離……。当代きってのモラリスト=恋愛小説の名手が親しく語りかける鋭く新鮮な愛の読本。
  • 青の魔性
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    異様な才能と魅力を秘めた教え子の女生徒に強くひかれながらも、母親と肉体関係を結ぶ小学校教師。それを知った少女が自殺した時、教師は普通の女性を愛せなくなり、精神に異常をきたす(表題作)。老朽化した橋の爆破の陰で計画された殺人事件を暴く『枕に足音が聞える』ほか、『サギ・カンパニー』『獣の償い』『褥の病巣』『途中下車』『共犯の瞳』『禁じられた墓標』『鉄筋の猿類』の、斬新な着想で読者を圧倒する推理短編、全9話。
  • 冬のかたみに
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    どじょうや鮒を獲り、桑の実をつんだ幼少の一日、父の亡骸が帰ってきた。哀しみに凍った日々を、臨済の寺でひたすら禅の修業にうちこんだ少年時代。日韓混血の宿命を負って、いくたびか人生の岐路に立たされながら、厳しく自己を律した青年時代。父の自裁を、母の離反を、彼は超えられただろうか――。早世した著者が、自らの精神形成を端正な筆に刻んだ、感銘深い長編自伝小説。
  • 世阿彌
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    将軍・足利義満の威光の影として、見られる側の人間に徹し続け、そうすることで能を大成させた天才・世阿彌の半生を通し、自己が自己を獲得していく内面のドラマを見事に定着させた、戦後戯曲の最高達成を示す作品。
  • 幸福村
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    小さな島から上京し、カメラ店で働いていた景子が手にいれた幸せは、見せかけだけのものだった。――心身共に傷つきながらも新たな幸福への旅立ちを予感させる表題作。死化粧師という仕事を選んだ女性の変貌と自立を見つめる「天櫓」。一人息子に先立たれた老夫婦が息子の忘れ形見を探し出す「麦藁帽子」。身近な不幸を見据えながら、真の幸福を求め続ける女性たちを描いた中編三作。
  • 重い歳月
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    夫婦で同人雑誌に参加して文学に打ちこむ速水桂策と章子。書くために勤めを辞め、食べるためにまた働く夫。少女小説を書いて家計を支えながら住居問題、出産、育児に時間をとられ苛立つ妻。互いに相手への後ろめたさを感じながらも、自分は書きたいと思う業の深さ。生活の重みにあえぎつつ、文学に執念を燃やし、遂には一人の女流作家が誕生するまでを哀歓をこめて綴る自伝的長編。
  • 真知子
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    日本の社会と知識人の心を激しくゆさぶらずにはおかなかった、昭和初期のマルキシズム。その嵐の中を手さぐりでさまよう若い魂の群れ。美しい近代女性・曽根真知子は、退屈で滑稽な自分の親類仲間の俗物性を批判し、現実社会を動かしている力に虚偽を感じて、社会の救済を思念する。甘美なヒューマニズムを脱却して真摯な生き方をもとめる真知子の愛と思想を描く、記念碑的小説。
  • 恋愛名歌集
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    歌こそは、日本語が構成し得る最上の韻文である。日本語の特質である柔軟かつ自由な不定則韻を踏み、微妙な音楽を構成する。真の韻律的な詩的陶酔を欲するならば、伝統の和歌を読む外はない。――近代の虚無をくぐった郷愁の詩人・朔太郎が、万葉集、古今集、六代歌集、新古今集から、主として恋愛歌をとりあげ、その浪漫的抒情のなかに日本詩の美しさを発見し、新しく解説した名著。
  • 白百合の崖―山川登美子・歌と恋―
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    明治12年、福井県に生まれた山川登美子は与謝野鉄幹主宰の「明星」に参加、与謝野晶子と共に名花二輪と謳われる。登美子はその才能と美貌を“君が才をあまりに妬し”と晶子に詠ませながら、鉄幹への恋も、歌もあきらめ、親の定めた縁談に従う。――鉄幹・晶子の強烈な個性の陰でひっそりと散っていった登美子のあまりにも短い人生。同郷の歌人への深い共感を、愛惜をこめて綴る。
  • 愛慾・その妹
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    自分の眼となっている妹を手放すことに怯える貧しく盲目の作家広次が、世間からも人間からも疎外されていく悲劇を描いた「その妹」。兄と妻が通じたことで人間不信に陥る画家英次の苦悶の心理を描く「愛慾」。肉体へのコンプレックスが招く孤独と暗い運命に翻弄されながらも、そこからの密かな救済を暗示させる、作家の個性が光る2つの戯曲。
  • 真夜中のサーカス
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    晴やかに装っても振り返る者のない生活に失望し、兄の買ってくれた赤いミニで散ってゆく娘、老醜と整形したふくよかな乳房を花嫁衣裳に包み宣伝パレードに繰り出す老婆、夫のいわれのない嫉妬にいたたまれない気持になる女……。つましく生活する市井人の姿を架空の町・菜穂里を舞台に浮び上らせる。もの悲しい場内がスポットライトをあびる、サーカスの意匠に仮託した連作短編集。
  • 新編 坪田譲治童話集
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    独自の童話と昔話の発掘とで、新しい児童文学を確立した坪田譲治。本書には、なつかしい少年の日々を厳しい現実をふまえながら、鮮やかに描く“善太・三平”ものをはじめ、子供の目に映った老人の生活を通して、人間の生き方を見つめる「お馬」、キツネやタヌキが人を化かすことが信じられていた頃の話「狐狩り」など、人生の真実を、その清新な童心描写で捉えた33編を収める。
  • ドイル傑作集 失なわれた世界
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    ガゼット新聞記者マローンは愛人の理想の男性たらんとして、奇人チャレンジャ教授一行の南米探検隊に加わってアマゾン河上流の秘境に分け入る。同勢四人、未踏の森林地帯に入ればそこはダンテの地獄篇さながら、有史以前の怪獣奇獣たちが風を巻き起して人間どもに襲いかかってくる――ドイルの科学小説中の傑作である。
  • 紅い陽炎
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    子供をベビーホテルに預け、デリカテッセンで夕食の献立をそろえ、ジャズダンス、小説教室へと通う。そんな新しいライフ・スタイルを楽しむ34歳の主婦が殺された。捜査が進むにつれて、主婦たちの秘められた想いが明らかにされて行く……。欲望渦巻く都会の片隅で、翔ぼうとしても翔べない女たちの怨嗟が、陽炎のように燃え上がる。日常に潜む狂気を描き出す、異色のミステリー。
  • 風流滑稽譚(一)
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    「人間喜劇」の作者バルザックとしての名声があまりにも偉大なため、彼の戯作は余技のように見られがちだが、これはバルザックの百以上にものぼる作品のうち、いわゆる好色文学のレッテルを付されながら、天衣無縫の芸術作品と真に称しうるものの一つである。1832~1837年刊。「美姫インペリア」「仮初の咎」「王の愛妾」「悪魔の後嗣」「路易十一世瓢逸記」「大元帥夫人」「箱入娘」「金鉄の友」「衣手の風流」「当意即妙」の10篇収録。
  • 待ち伏せ街道―蓬莱屋帳外控―
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    器量ひとつで道を拓くが定め、通し飛脚。なまくら者を従え善光寺まで秘仏を届ける羽目になった、鶴吉。播磨より逐電した男女を追跡する、剣術遣いの吟二郎。そして、江戸留守居役の奥方を西国へ逃がすという禁制御法度、出女を請け負ったのは蓬莱屋の切り札、仙造だ。三人のゆくてに苦難が待つ。目を血走らせた敵が待つ。予想しえない結末が待つ。活劇、人情、志水辰夫に酔う三篇。
  • 歴史への感情旅行
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    歴史は、資料の積み重ねではない、むしろ一個の感情である。――著者は、古老の「むかし噺」に耳を傾けるように古今の文学を逍遥する。酒を慈しみ、愛犬を偲び、信念を述べ、精一杯生きて逝った人々に思いを馳せる。どんな短い一章にも、半世紀にわたる作家人生の精髄が刻み込まれ、暮しの下敷きである「過去」への、敬愛の念が込められている。我に返る時間を与えてくれる一冊。
  • 良友・悪友
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    ユーモラスなタッチで描く現代作家のうらおもて。――安岡章太郎は、名作「海辺の光景」で自己の文学世界をあざやかに形成したが、彼を支え、才能を開花させたものは、文学を志す仲間たちとの心暖まる交友であった。柴田錬三郎、吉行淳之介、遠藤周作、庄野潤三、小島信夫、三浦朱門、古山高麗雄、開高健ら、現文壇の第一線に活躍する先輩同輩を爼上にのせ、その素顔を軽妙に綴る。
  • 犬をえらばば
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    犬は飼い主に似るとか……。近藤啓太郎の「親切心」から紀州犬コンタを飼うことになった著者が、石坂洋次郎、丹羽文雄、坂口安吾、五味康祐、吉行淳之介、遠藤周作、江藤淳など、現代作家との交遊とその素顔を、それぞれの愛犬と飼い主との個性あふれる交わりを通して綴る。著者一流のオトボケの中に、エスプリの効いた文明批評が光る、楽しい連作エッセイ。
  • 花祭
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    中学生の「僕」は、成績不良のため、先生が住職をしているお寺に「入院」させられる。環境の変化に期待と緊張をつのらせる「僕」を、待っていたのは相変らず退屈な日常だった。倦怠の中で無気力な日々を送る「僕」。だが、その体に不思議な変化が訪れようとしていた――。性にめざめてゆく思春期の少年の、不安やとまどい、焦りや憧れを、独特のユーモアで描破した書下ろし長編。
  • 玉椿物語
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    近江の名門の家柄に生れながら、北辺の小国、若狭の武田元明に嫁いだ京極竜は、白玉椿にも比すべき匂うような美貌の持主であった。元明との生活は幸せだったが、しかし、群雄にはさまれた武田家の衰運はおおうべくもなく、ついには居城も領国も失った夫に従い、敵国の越前へ流浪する身となる……。若狭武田が亡び、一乗谷が落城する干戈騒乱の世に、愛といくさの怒濤を描く雄編。
  • 碑・テニヤンの末日
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    幕末から維新にかけての激動期に、剣の道ひとつに賭けた武士の人生の哀歓と誇りを描く「碑」。二人の若き軍医を主人公に、テニヤン島が敵襲を受けて陥落するまでの凄絶な日々を追う「テニヤンの末日」。異常性格で色気と欲気の餓鬼でありながら見事な厚物咲の菊作りに成功した後横死する老人と、その友人の堅気な人生とを対照させて描く芥川賞受賞作の「厚物咲」など7編。歳月の流れの中に浮沈する人間の運命を香気豊かに描く中山文学の代表作選。
  • 深夜の読書
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    21世紀を見通す先進的な企業集団西武セゾングループの総帥・堤清二のペンネームは辻井喬。詩人・小説家としても著名で、彼は一日の仕事を終えると、深夜書斎にこもり、創作の傍ら、好きな書物をひもとく。彼の魂が世界と向い合うのは、そんな時だ。西鶴やマルケスを論じる読書日記をはじめ、モーツァルトの音楽やクレーの絵画を鑑賞したエッセイ、自伝的小説等も収めた多彩な文集。
  • いつもと同じ春
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    1巻495円 (税込)
    百貨店の社長として烈しい競争の世界を疾駆し続ける〈私〉の胸に、ふと、引き裂くように自由への渇望がこみ上げる。そのような時にはまた、宿業を負った生い立ちから、理想に燃えて父に反逆した青年期が思い起こされる。――一族の血の重さに耐えつつ、ひたすらに事業を拡大し、なおしなやかな感性を保ち続けようとする生きざまを、驚くべき真率さで物語る。平林たい子文学賞受賞。
  • 人間ぎらい
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    夫の女ぐせの悪さに嫌気がさし家出した桐江は、連れ込み旅館で働いている。今は何が起ころうと無感動、寂しさも消え、なぜか安心して暮している桐江。それは、「人間ぎらい」(表題作)になったからなのか――。夫に裏切られる女、妻に踏みにじられる男。男と女の、相寄り相離れる感情の動きや不可思議な成り行きをユーモアの中に、ほんの少し人生のホロ苦さをミックスして描く9編。
  • 源氏紙風船
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    「源氏物語」は、何ゆえ千年にもわたって絶えることなく読みつがれ、語りつがれてきたのか――。光源氏と彼をとりまくあまたの女、物語を飾る着物、美術工芸品などなど、舞台背景となる宴について、作者・紫式部のこと……。それぞれのテーマごとに、「源氏狂い」「源氏酔い」を自認する著者が、思いがけない角度から限りない優しさをこめて語る、くめども尽きぬ〈愛の古典〉の魅力。
  • 春朧(上)
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    1~2巻550円 (税込)
    岐阜県・長良川河畔で老舗の旅館を営む日野家の嫁、沙衣子は、主婦業に専念していたが、夫が急死したため、素人同然の身で若女将となった。悩みの種は姑の松乃。伝統や格式にこだわり、客よりも旅館側の都合を優先する松乃の考え方は、沙衣子とは相反するものだった。やがて沙衣子は、理想のもてなしができる旅館を新たにつくろうと決意するが、その道のりは遠く険しかった……。
  • 運命峠(一)
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    暗い出生の秘密をもつ孤高の青年剣士・秋月六郎太は、豊臣秀頼の遺子・秀也を育てあげることに、己れの生きる目的を見いだす。秀也の高貴にして薄幸なる生母・桂宮蓮子、しきりに暗躍する徳川の忍者、そして豊臣の残党。無敵の夕陽剣を体得した六郎太と対決する宮本武蔵、柳生一門……。登場人物の顔ぶれも多彩に、九州から江戸へと舞台はうつり、奇想天外な時代絵巻を展開する。全四巻。
  • 剣は知っていた(一)
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    剣をとっては天下無双、美貌の眉殿喬之介の、憂愁をたたえながら、怨恨と名利を捨てて人間の真の幸福に生きようとする波乱の半生を、家康の娘鮎姫との清冽な恋をからませて描く。乱世を生きる剣客の凄絶な死闘と、戦国に輝く烈しく美しい人間性を描いた絶讃の時代小説の第一巻。
  • 江戸群盗伝
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    あがきのとりようとてない階級制度という檻の中で、一切の希望を放棄してしまった美貌の剣士・梅津長門、島破りの巾着切り三日月小僧、博徒の喜三郎、ヒョットコ三次らの御一党に、美女・雪姫や鉄火の遊女を色あざやかに配し、対する敵役には、奇怪な剣豪あり、密輸で富む幕府の重臣ありで、場面の変転も、もののみごとに、恋と欲と意地とに燃え狂う大江戸を痛快に活写した傑作。
  • 過越しの祭
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    ユダヤ系アメリカ人の作家と結婚した道子、2人の息子=15歳のジョンと13歳の脳障害のケン。南カリフォルニヤの真青な冬の空と海、3週間前に施設に入れたケンが帰宅した週末、行儀の良いケンとは対照的な夫婦喧嘩――「遠来の客」。13年ぶりのニューヨーク滞在。夫の一族再会と血族の聖なる儀式への彼女の憂鬱――「過越しの祭」。自由を求めて渡米した道子の予期せぬ戦いを描く。
  • 五味康祐 音楽巡礼
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    ドビュッシーのピアノ曲に霊感を得て執筆した小説が芥川賞を受賞した。剣豪作家として評価は高まっても、原稿料の大半は、レコードと高価なオーディオ機器に消えていった……。音楽への畏怖とあこがれを抱きつづけ、生涯、よりよい音で音楽を聴くことに情熱を傾けた一人の作家が、名曲について、名演奏について書き残した真情あふれる音楽エッセイ集。「バルトーク」「少年モーツァルト」「シベリウス」「ラヴェルとドビュッシー」「死と音楽」「日本のベートーヴェン」など19編。
  • 五味康祐 オーディオ遍歴
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    タンノイ、マランツ、マッキントッシュ――。世界の銘機も、使い方を誤れば音が悪くなる。生涯、理想の音を追求しつづけた著者にとって、よいオーディオ装置とは何だったか? スピーカーの逸品タンノイ・オートグラフへの愛を語り、真空管アンプの品位を称讃し、FMチューナー・マランツ10Bの性能向上に熱意を燃やしたスーパーマニアの、体験的オーディオ論19編を収める。
  • 世界でいちばん熱い島
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    街も人も変わりつづける東京から、逃れるように渡ってきた南の島。そこは昔のままの〈楽園〉ではなかった。副大統領の暗殺、秘密警察とゲリラの暗闘、うさん臭い日本人の来島……。一触即発の危機的状況のなか、外部との連絡は断たれた。だが、皮肉にもこのとき、理想の女性とふたりだけの、濃密で純粋な愛の時間が訪れる。南海の小国を舞台に展開するサスペンスフル・ストーリー。
  • 紳士同盟ふたたび(新潮文庫)
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    あのコン・ゲーム集団〈紳士同盟〉が帰ってきた! 暴力や殺人で金を奪おうとするのは、もう古い。今の世の中、頭脳こそ、腕力や凶器以上の武器なのだ。被害者に被害にあっていると思わせない機智と品格を備えた犯罪、それがコン・ゲームだ。今度の目標は二億三千万円、東京・NYを股にかけ、大胆かつ緻密なトリックをしかけるが……。スマートでユーモラスなコン・ゲーム小説。
  • 夢の砦
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    1巻1,870円 (税込)
    辰夫が編集する「パズラー」は成功をおさめ、編集室には同世代の才能ある人達が集まってくるようになった。そのうえ、目の上のコブだった“ゴム仮面”は会社を首になり、新しい雑誌の企画も持ち上がって、まさに順風満帆の辰夫だったが……。1960年代前半、オリンピック直前の東京を舞台に、あふれる野心とエネルギーを抱えた青年の姿を描いて、時代の空気を鮮かにとらえた長編。
  • 人生論・幸福論
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    昭和の激動期に、なお柔軟な感受性と強靱な思索の両面をもって人間を直視し続けた著者の、文字通り人生探求の書である。「宗教と文学」「二十世紀日本人の可能性」「日本の智慧」「西洋の智慧」「様々な感想」「人生の途上で」「恋愛美学」「断想」の諸編を収録し、人間と幸福、愛と信仰、日本と西洋、美と知性を語ることによって、精神の未来像への希望を積極的に示そうとしている。
  • フランドルの冬(上)
    -
    1~2巻440円 (税込)
    フランドル地方の精神病院に勤務する日本人留学生コバヤシは、無期懲役のごとき現実世界から脱出しようと蠢きもがく異国人たちと接触するうち、徐々に精神科医としての自己と患者との境界が消え去り、正気と狂気の間をさまように至る――。芸術選奨新人賞を受賞した人間の根元を抉る重厚な心理長編。
  • 夜と陽炎―耳の物語**
    -
    1巻385円 (税込)
    耳の奥に刻まれた《音》の記憶をもとに半生を再構築する。《音》は茫漠たる過去を鮮かに照らし出す。――ヴェトナムの戦場で体験した迫撃砲の轟音。家庭をかえりみない夫に対して妻と娘が浴びせかける罵声。アマゾンで聞いたベートーヴェン……。昭和29年にサントリーに入社し、芥川賞を得て作家となり現在に至るまでを、一人称「私」ぬきの文体で綴る野心作。日本文学大賞受賞。
  • 探偵事務所23
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    都心の一角に私立探偵事務所を構える田島英雄は、公安委員会から拳銃の所持を許された数少ない民間人のひとりだ。腕は極めつきだが、仕事のやり方は強引で荒っぽい。こんど警視庁捜査一課長からひそかに依頼されたのは、密輸業者たちの上前をはねている一味の組織に囮として潜入してくれ、というものだった。拳銃使用の黙認を条件に仕事を引きうけた田島は……。連作痛快譚6編。
  • 血まみれの野獣
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    世界で最も速い天才的二輪ライダーとして勇名を馳せた鶴田敏夫は、悪徳金融業者のために両親を奪われ、恋人にも裏切られ、レース界からも葬り去られた。法がやつを裁いてくれないのなら、俺が裁いてやる――再起と復讐を心に誓って姿を消した彼は、間もなく四輪レース界に甦る。華やかなオート・レースの世界を舞台に、怒りに燃えた一匹狼の非情な復讐を、ドラマティックに描く。
  • 血の罠
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    俺はかならず妻の仇をとってやる。熱く焦げた銃弾を、そいつにぶち込んでやる――妻を殺された元ボクサー田島君彦の怒りは青く燃える。彼は信頼する新田警部補と組んで非情な復讐を開始した。それが、汚職で警視庁を追われ、金もうけをたくらむ新田の仕組んだ罠であるとも知らずに……。暴力団同士の激しい抗争の続く港町を舞台に、闇に生きる男たちの凄絶な死闘をハードに描く。
  • 虹と修羅
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    敗戦直後、宗像滋子は子宮癌の手術を受け、女の機能を喪失する。再発を恐れる彼女に、打算で結婚した夫と、学業も投げやりにして歌舞伎役者になろうとする娘との、神経を磨り減らす生活が重くのしかかる。そんな日々の中、彼女は昔の恋人との交際に慰められ、小説を書くことに情熱を燃やすが……。一人の女性の理性と情念の相剋。『朱を奪うもの』『傷ある翼』に続く三部作の終局。
  • 傷ある翼
    -
    乳、子宮、歯と、女性としての機能を次々に喪失した主人公・宗像滋子は、生身の人間であることよりも、むしろ空想や観念の生活の豊かさを自覚し、文学表現のなかで女と性とを開花させようと決意する。厳格な家庭や、烈しい時代の流れのもとでの、プロレタリア演劇活動、恋愛、そして打算的な結婚を描いて、鮮烈な一少女像を刻む。――「朱を奪うもの」の第二部をなす。
  • 朱を奪うもの
    -
    朱の色を侵蝕する紫にも似た、女の成熟の秘密……。性のめざめから、冒険的恋愛の嵐たる青春をへて、見合い結婚の初夜にいたるひと筋の道程で、女の中に着実に形成されてゆく、妖しい美しさや恐ろしさを、あたかも肌に感じさせるかのように、明確な筆にとらえてゆく。冷然と凝視し、大胆で香り高い自伝的長編小説であり、発表されるや、ひときわ当時の文壇の注目を集めた作品。
  • 女面
    -
    栂尾三重子は息子の死後、若くして未亡人となった美しい嫁の泰子と一緒に、京都で暮している。その泰子は、伊吹と三瓶の二人から求愛されているのだが、三重子は、生前の自分の夫の仕打ちに対する深いうらみから、この二人の男に対して、手のこんだ復讐をたくらんだ……。女性のなかにひそむ、すさまじいまでの妄執を、鬼気迫る悪霊現象を通して、女の内面から描き出した傑作。
  • 妖

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    ある中年婦人の、倦怠した家庭生活と放恣な夢とを、敗戦後の市井が映し出された風俗の中に描いた名短編「妖」を中心に、「家のいのち」「くろい神」「虚空の赤んぼ」「男のほね」「殺す」「耳瓔珞」「妾腹」「水草色の壁」「二世の縁 拾遺」の、全十編を収録する。「女坂」によって野間文芸賞を得た女史の、さらに戦後社会における女の生活と感情をごく現実的に描く諸作で編まれた珠玉集。
  • 菊慈童
    -
    人が“老いて生きる”とは何なのだろうか。養女夫婦に家を追い出され、若い男に情愛を傾け死んでいった八十四歳の田之内せき。菊水を飲み、八百年美童の姿を保ったという「菊慈童」を八十歳を過ぎた今、最後の力で演じようとしている能役者桜内遊仙。七十半ばの女流作家香月滋乃の眼に映る様々な“老い”の姿を通して、老年の内部に潜む妖しい妄執を描き、芸術と官能の深奥を探る。
  • 水中花
    -
    梨絵は、今はなき画家竜崎と愛人である母とのあいだにうまれた、25歳の美貌の女性。速記者として母と妹の生活を支えている。ある日、妹が発作的に父の絵を切り裂いてしまった。その弁償のため梨絵は銀座のクラブでレディ・ドールとして働き始める……。二つの顔を持つ美しきヒロイン森下梨絵を取り巻く男達の野望と倦怠が渦巻く。大都会の夜を鮮かに描くネオ・シティ・ロマン。
  • 挑戦
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    傷ついた戦友自身の依頼により、その戦友の命を断った――消したくても消えることのない、重く暗い記憶。かくて主人公・伊崎は、戦争によって生の流れを中断されてしまった自分の存在に、それでも意味を見つけようと模索する。やがて国際資本の厳しい経済封鎖であえぐ“石油問題”の打開に己れの活路をも見出した彼は、狂気の沙汰と言うべきイラン原油買付けに命を賭けて挑む……。
  • 星と舵
    -
    海、空、風、雲、星……どこまでもはてしない海原をかきわけて、昼も夜もひた走る女体のようなヨットの、消え残る白い航跡。太平洋横断ヨットレースに全身全霊を賭けた一人の若者が、苦闘と孤独のはてに、ついに獲得した栄光とは? 鮮烈果敢な青春の冒険と爆発する性のうねりを活写して、海への浪漫的な陶酔と、ヨットへの文学的な讃歌とをひとつに結実させた、世評高い長編小説。
  • 行為と死
    -
    愛する女性ファリダのために、スエズ義勇軍に参加し、爆薬を抱えて夜の海を泳ぎきり、かけがえのない生命の燃焼の時間を持ち得た男、皆川。ところが東京に帰った皆川は、次から次とさまざまな女の肉体に惑溺し、バルトリン腺粘液の白い海に溺れて過ぎてゆく日々……。交錯するスエズと東京、純粋な愛とすさまじい性の営み、現代人にとっての“人間復権”を激しく追究した野心作。
  • 化石の森
    -
    現代という“化石の森”をさすらう主人公は、予期せざる危機に追い込まれる。ショッキングな結末が、そこにこめられている寓意の恐ろしさが、いっそう深い衝撃性をもって読者の胸に伝わってくる。劇薬《メディアチオン》による完全殺人、母親に対する嫌悪、荒廃した性愛、関わりのない他人への自己破滅的な献身。救い難い矛盾に引き裂かれた医学生・緋本治夫の戦慄の行動を通して、現代人の内部に暗く鬱積した怒りを白日のもとにさらし、他者とは何か、人間の存在とは何かを追求した、渾身の書下ろし長編。芸術選奨文部大臣賞。
  • 祭りの日―慶次郎縁側日記―
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    江戸の華やぎは悪への入り口か。表具師の親方に付いて仕事を学び、孤児の身の上から腕を磨いて、ついに憧れの江戸で働く機会を手にした亮太。目も眩むばかりの町の賑わいに心踊ったのもつかの間、大切な紹介状と財布のあり金が亮太から消えた。夢を食い物にする奴らから若者を守るため、僅かな手がかりを追って元同心・慶次郎は起つ。江戸の哀歓を今に伝える珠玉のシリーズ!
  • 前進力―自分と組織を強くする73のヒント―
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    ほんのちょっと視点を変えるだけで、成功への最短距離が見えてくる。能代工業高校バスケットボール部のコーチ・監督として30回もの全国制覇を遂げた名将が、結果を出すためのヒントを伝授。自分を見つけ、自分を育て、自分を生かすためには、どうすればいいのか。さらに組織全体を向上させ、現状から一歩前に進むには? 『努力が結果につながらない人に気づいてほしいこと』改題。

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