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“軍艦頭”と罵倒され、乞食女の捨て子として惨めな日々を送ってきた少年僧・慈念の、殺人にいたる鬱積した孤独な怨念の凝集を見詰める、直木賞受賞作『雁の寺』。竹の精のように美しい妻・玉枝と、彼女の上に亡き母の面影を見出し、母親としての愛情を求める竹細工師・喜助との、余りにもはかない愛の姿を、越前の竹林を背景に描く『越前竹人形』。水上文学の代表的名作2編。
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Posted by ブクログ
とても良かった。 人はみんな『想い』を抱えて生きている。 その想いが周りの環境にマッチする場合もあるし、 いちばん身近な愛する人にすら伝わらない場合もある。 伝えようとせずに殻に閉じ籠る場合もあるし、 伝えようとしてもうまく伝えられないもどかしさもある。 愛する人と想いを共有していると信じながらも、...続きを読む その信じている気持ちに対して懐疑的になったり、 相手を想うあまりに深読みして空回りしたりもする。 たまたま見つけた本だけど、読んで良かった。 時代背景も含めて、この湿度の高さは嫌いじゃない。
2編とも日本的な美や伝統の中で描かれる物語が谷崎に通ずる印象を受けた。実際谷崎は『越前〜』を高く評価したそうだ。心で深く通じ合った喜助と玉枝に深く感動した。
禅寺の小僧と僧の愛人の女、二人の出会いとそれぞれの悲しみを描いた「雁の寺」。越前の雪深い里で竹細工を作る男のもとへやってきた美しい女、清らかな愛の結晶ともいえる竹人形を軸に二人の運命を描いた「越前竹人形」。どちらも水上勉の傑作だ。
純粋な少年の目に映る、性愛に溺れる堕落した僧と愛人。その果てに待つ恐怖(『雁の寺』)。過度に性愛を遠ざける夫と、それに寂しさを覚える妻が迎える悲劇(『越前竹人形』)。溺れても遠ざけても性愛は哀しい。
両物語に共通する、母を知らぬ男の姿。また自身を仮の母の姿として重ねんともがく女たちの姿には肉情が纏わり付き、巧緻な描写と相まって極めて艷やかで情緒的な物語性を生み出している。水上自身の庫裏での経験に裏打ちされた力作。必読。
北陸と京都、著者の生きた土地に根ざした物語。「雁の寺」は、「金閣寺炎上」の修行僧を彷彿させる。醜い容姿、貧困、母性への思いが、ある事をきっかけに彼を破滅へと向かわせる。ミステリーの要素もある作品。「越前竹人形」でもコンプレックス、母性がキーワード。しかしこの作品の主人公は強い信念とたぐいまれな竹細工...続きを読むの才能を持ち、少年のように清らかな心で、亡き父の愛人を娶る。いびつな夫婦関係であることで、ある悲劇が起こるが、どこにも悪意がなく切ない。彼女が堕胎を決心したときに出会う船頭との場面は心を打つ。映像が浮かぶ。
少年僧の孤独と凄惨な情念のたぎりを描いて、直木賞に輝く「雁の寺」、哀しみを全身に秘めた独特の女性像をうちたてた「越前竹人形」。
最近福井県がブームとの事で、俺たちの水上勉さんをフィーチャーしてみました。 氏の作品は『飢餓海峡』のみでしたが、古い作品ながらも最高に面白かったですね。もちろんレビュー済。そして今回もよかった。私はこのような湿気を帯びた話が好きなんですね。湿気最高!でも梅雨は辛いぞ、糞! 先ず『鴈の寺』。エロ坊主...続きを読むが小僧に殺されるお話。しかも完全犯罪。コナン君だと直ぐ犯人を当ててしまうレベルだが、時代背景がそうさせない。小僧の生きる辛さが伝わってきます。慈念君、生き抜くんやでー。 『越前竹人形』。鴈の寺と同様に顏が残念で背が低いコミ障キャラが主人公。この時点で鬱屈とした物語が始まる予感がしましたが、最後の最後に感動したなあ、元遊女の玉枝の葛藤、そして死、大正時代だからこその生き辛さが見えました。これぞ純愛かと。南無・・・ って、どうしても気になってしょうがないのが1点。 舞台は福井県です。主人公の喜助は武生市在中、玉枝は芦原温泉勤め、玉枝はんはその前に京都の島原で働いていましたし、そもそも京都の方ですので、ゴリゴリの京都弁どすえ。しかし、喜助はんは武生市の方ですよ。でも何故か京都弁。ほんまはゴリゴリの福井便なんやぞ、おぇーっ。どういうこっちゃ?水上はん、ホンマに福井県の方でおますか?って、あゝ水上はんはおおい町出身でしたね。そこは完全に関西訛りなんですわ、福井弁が分かってなかったのか・・・・ 福井市出身のワテからしますと、舞台が京都かいな?と思いますわ。ほんま。これを読んだ方が福井市に来られると、余りにも違ってショックを受けるでしょうね。 この点がどうも引っかかったなあ(ストーリーには全く影響無し) 個人的には前職で向島、中書島に毎日おりましたので、舞台全てコンプリートしてほくそ笑んでおりました。 兎に角、皆さま念願の新幹線も開通したことですし、一度福井に遊びにきてやー。
若尾文子主演の映画「越前竹人形」を観て、その内容に惹かれ、原作が読んでみたくなった。ストーリー自体は極めて日本風でありながら、どこかしらギリシャ神話にも似た部分を感じさせるところが興味深い。娼妓に身を落としながら、変に擦れたりせず純な心を持ち続けた玉枝の生きる姿勢に胸を打たれた
作者自身の体験を元にしたとされる禅寺の生活描写はリアリティがあった。 物語としては細かい時間設定や、伏線、登場人物たちの心理描写が読んでいて飽きなかった
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雁の寺・越前竹人形
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水上勉
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