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初老の小企業社長・藤代と、その妻で十年間寝たきりのゆき、二人の娘・美佐子と香代子の、それぞれに苦悩多い人生――。忘却の河に流し得ぬような各様の過去が四人に暗影を投げかけており、痛切な愛の挫折、愛の不在がある。主人公は、終章で北陸の海辺にある賽の河原に罪のあがないを見出すのだが、宗教なき日本人の、愛と孤独への救いを追究した、密度の高い連作長編小説である。
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Posted by ブクログ
冥府の河の名前で、死者はこの水を飲んで知覚の記憶を忘れるという――。愛の挫折とそのないことに悩み、孤独な魂を抱えて苦しみを希求するまたの葛藤を描いた。
人は人が亡くなった時に、思い出すようにして愛を確かめる。人類の死は繰り返されてきたけど、愛する人の死は個人的に確かな「死」また「愛」として訪れる。そんなメッセージを僕は受け取りました。 生きるとは何か、愛とは何か、このありきたりな問いを新しい形で投げかけてくれる一冊です。
セピア色の、どこか寂しくて、だから純潔な心の在り方が、さらさらと水のように流れていく。確かに人の記憶は沈殿そのものだと思う。次第にそれ自体がその重みに耐えかねて、静かに沈んで忘れられてゆく。水面の震えに応じて、時々浮いてはまた沈んで。 心に残るフレーズも時折。大好きな小説。 蒼くて、深くて、涯がなく...続きを読むて。
とにかくすごい小説だった。 寂しくて哀しくて、過去と現在が入り乱れる、揺蕩うような物語。文章がひたすらに美しい。 忘れたまま生きていくということ。 父親のパートでの、こちらの文章が印象的だった。 「私が物語を選んだのではなく、物語の方が私を選んだのだ。」 作中ではサルトルの劇が演じられるが、まさにサ...続きを読むルトルのいう、「地獄とは他人である」という世界をこの小説で描こうとしたのかもしれない。 立体的に描かれていく家族の歪みと澱。生きることの罪。捨てていくこと。サルトルの「他者」。お見合い結婚の時代だからこそのままならない諸々のこと。秘密。賽の河原。愛と死。忘れるけど忘れないこと。死に近いから愛すること。 ーー登場人物、それぞれ皆好きになった。 なかでも、人妻でありながら出征前の青年と愛しあった母の過去についての話が好き。 「このまま死んでもいい」 と言って、人を愛する。それでも死なずに生きていかないといけない。 人は人を愛した瞬間に死ぬようにできていたらいいかもしれない。 そんなことを思った。 惜しむらくは、全体的に素晴らしいだけにラストが少々陳腐に感じてしまうところかなあ…。 しかし、素晴らしく言葉の美しい小説だった。
草の花から続けて読んだ、福永武彦作品。 藤代家の主人である「私」の独白に物語は始まり、語り口は彼の家族へ移りながら、ゆっくりと進行してゆく。 愛するということと、愛されていると感じること、其々に家族は苦悩を抱いており、日常と過去がシームレスに展開する中で、いつでも彼らは自分の心を探している。 福永武...続きを読む彦の巧みで独特のテンポ持つ文章はとても心地良く、酔いしれながらも読み進めてゆくと、作品を通して深い意識の中に潜っていってしまうような感覚があった。 綿密に練られた全七章からなるその構成は、これ以上無いくらいに読み易く、読後はとても爽やかな気分になれる。無人島に一冊もっていくなら、僕は迷わずこの一冊を選ぶ。現時点で、今まで読んだ本の中での最高傑作。
絶版になったと聞いて、散々捜し求め、やっと入手した本。 以前「草の花」を読んだ時、ひどく落ち込んだ気分になったので 恐る恐る最初のページをめくった。 前作からなんと10年の月日を隔てた288pに及ぶ長編とあって、 文体もかなり現代に近く、読みやすかった。(しかも回りくどくなくね(笑)) 著者の想いが...続きを読む伝わってきて、不思議とすらすらと一気に読めた。 藤代家の四人の家族と、周囲の人々のそれぞれの心の動きが 一編ずつ綴られていて、そのあまりにも切ない感情が、読んでいて ひどく辛かった。 主となる登場人物に、「彼」と「僕」、「彼女」と「私」 という微妙な隔たりがあるが、それを行き来するうちに、だんだんとそれらが融合されて 違和感なく一体化する。そんな不思議な文章だった。 藤代氏は過去の罪の深さに押しつぶされながら、生きてきた、いや、 生きながら死んでいたんじゃないかな。 そして妻の死後、自分の子供を身篭ったまま何も言わずに自殺した 最愛の彼女の古里へ行き、そこで冷たい河原の石を拾う。 彼はそして、彼の罪を捨てるため、彼女の許しを得るため、過去と別れを告げるために その石を、掘割へ捨てたんじゃないかと私は思う。 誰の心にもある、誰にもいえない罪。 彼らの幸せはどこにあったんだろう。 おそらく、日々の何気ないところに「幸せ」はあったのかもしれない。 ただ、それを彼らは幸せと感じていたかどうか・・・。 過去のどこで、どうしていれば幸せになっていたのだろう。 著者は後に、クリスチャンとなり、洗礼を受けたらしいが、 人はやはり、「許し」を得たいものなのだろう。 三浦綾子とよく似ている人のようだ。(2003.1.22)
悲劇をやさしく包み込む傑作。発想となったのは著者が旅行の途中で見た石見の国波根の海岸の風景なんだそうだ。 「この作品の全体にあの海岸の砂浜に響いていた波に弄ばれる小石の音が聞こえている筈である」 冷たい波に弄ばれて「恋しい、恋しい」と犇めく人たち。読み終わったばかりだがもう一度読みたい。
ストーリーだけの小説なんて読み返したくなるわけないですが、 この本は、人生であと4回は読み返したくなるでしょう。 思想がいい。哲学がいい。表現がいい。切り込み方がいい。
家族という集団の中で暮らしていながらも一人一人が単独の問題を抱えた存在でありその一人一人の物語が見事に絡み合ってひとつの救いの絵となりカタルシスを呼び起こしている。これほど重いテーマを面白いお話で読ませる手腕はさすがとしか。とにかく愛するものを失ったことに対する喪失感とそれに密接に結びついた罪の意識...続きを読むの描き込みが半端じゃない。何度も涙しつつも一気に読んでしまった。
あまりにも好きすぎて、読んでいる途中は一生読み終わらなければいいと思った。そのくらい小説世界に没頭し、心酔した。そんな小説。 福永武彦本人の人生観であるか、はたまた完璧なフィクションであるかは分かりませんが、全ての登場人物が抱えるそれぞれの孤独に共感する。愛の挫折ゆえに魂が死んでしまった人間が苦しむ...続きを読む様子はまるで作者自身の人生がそうであったかのように思わせる何かがあって、怖くなった。 お涙頂戴でも何でもないのに、涙がこぼれる。こんな読書体験、はじめて。ありがとう。
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