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Posted by ブクログ
「私」が療養所で出会った青年、汐見茂思の死、死後「私」に遺された2冊のノートに記された手記を中心に展開される小説である。
読者はまず最初の数ページのうちに、濃縮され練り上げられた死生観に触れることになる。文字がぎっしりと並び、読み飛ばすことも容易ではない。特にハードルが高いと言うほどでもないが、一般的に読みやすいとは言い難いだろう。しかしその文字の薮の中をかき分けることにさえ慣れてしまえば、これほど貴重な小説もない。中盤になって一度穏やかになると見えた流れは終盤で再び勢いを盛り返してくる。作中それほどショッキングと言うべき事柄を扱うわけではないにも関わらず、読後感は凄絶の一言に尽きる。
一貫して反戦的立場が貫かれていることも特筆すべき点であるだろう。主人公はその中に基督教の立場を見ており、そういった意味でも興味深い作品であるといえる。
高い描写力も然ることながら、やはり主軸に据えたテーマが素晴らしい。一定以上の年齢の人々には必読と言って良いくらいにおすすめできる1冊である。
Posted by ブクログ
サナトリウム。
私が生まれた時にはもうなかった施設だから、何かの作品を通して知ったのだろうけれど、それが何だったかは思い出せない。
結核、消毒の匂い、死、孤独、別れ、見送る者と見送られる者。
避けたいものばかりのはずなのに、心の奥底に憧れの気持ちがあるのは何故だろう。
孤独と愛。
孤独への愛。
人は結局孤独なのだから、愛は全て独りよがりのもので。
それなのに人は人と繋がりたいと思ってしまうし、愛について深く考え込み、何がしかの他者への行動の理由に愛を据えてしまう。
人のもつ矛盾は全てここから来ているのではないかと思う。
この小説を読みながら、ずっとBUCK-TICKの櫻井さんのことを思っていた。
この小説を読まれたことはあったのかな、あったのではないかな、なくても、きっと読まれたらお好きだったのではないかな、と。
BUCK-TICK「堕天使」の中で櫻井さんは
「愛なんてそう幻想 ちょっと甘い香り」
と歌っていた。
結局、そういうものなのだと思う。
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