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歴史小説に新しい時代を画した司馬遼太郎の発想の源泉は何か? 帝国陸軍が史上初の惨敗を喫したノモンハンの戦いを、太平洋戦争を戦車隊員として戦った自身の体験と重ね合わせながらふりかえり、敗戦に至る壮大な愚行に対する一つの視点を呈示するなど、時代の諸相を映し出す歴史の搏動をとらえつつ、積年のテーマ“権力とは”、“日本人とは”に迫る独自な発想と自在な思索の軌跡。
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Posted by ブクログ
合理性を追い求めた米露に対して、偏ったこだわり(見た目の美しさ、ディーゼルエンジン)で戦えない戦車を作らせた旧陸軍。 目的の達成のための理性的な判断よりも思想的・抽象的な考え方を好んだ軍司令部。 それらは今の社会にも連綿と受け継がれているという気がする。 無駄な資料、無駄な会議、狭いこだわり、属人化...続きを読むした仕事。 けれど一方で、合理性を追い求めるだけでは物足りないのもまた事実。目的を達成するための合理的判断と、付加価値としてのこだわりや理想の境を明確にし、本当に捨てられないもの(それは魂に通ずるかもしれない)の立場を明確にすることこそ必要なのではないか。 戦時中、軍の無茶な作戦に不満を漏らす者はいなかったという。それを絶望というよりは諦観だったと司馬遼太郎は振り返っている。 諦観。私が何をしてもこの人は変わらない、この組織は変わらない、この国は変わらない。そうして口を噤むのは、身に覚えがあった。 2023/06/15 戦車の話より
広範な資料を閲読した経験に裏付けられた作家にとっては、地図上の地名一つからでも、その地にまつわる人の物語を紡ぎ出すことができるのである。
司馬さんの考察が深い。 明治維新後の長州人と土佐人の身の振り方の違い。 それにしても昭和6~7年から20年までの怒涛のキチガイのような十数年がもったいない。
司馬遼太郎による表に出てこなかった歴史の数々を彼独自の視点で描く。なにより、彼自身が所属した戦車第十九連隊のことを描く「戦車・この憂鬱な乗物」は興味深く、実体のない戦略や兵站を直視せず、空気の支配による幻想を作り上げた日本陸軍についての考察は、今の僕らの活動にも非常に参考になった。気合いとマネジメン...続きを読むト。このどちらも必要である。
前半は筆者が戦車部隊にいた頃の回想、後半は調べた歴史に関する内容など。歴史に触れた編の時代や場所はまちまちで、雑記帳とあるとおり本になるまでには至らなかったものと思われる。下調べの結果をまとめているだけあり、それぞれ短編ながら面白い。 何となく文章からは好きだからやってるような印象を受けた。
司馬遼太郎さんの、エッセイ集。 電子書籍で読んだのですが、まず不満があって。それぞれの文章の初出がどこにも明記されていない。 まあ、良いのですけど、やっぱり良くない。気持ち悪い。明記して欲しいなあ、と思います。 # 僕は司馬遼太郎さんは好きなので。 エッセイや旅行記や対談本なども、基本、好きです...続きを読む。 そんなにハズレがありません。 その代わり、もう随分読んでいるので。新鮮味は特にありません。 それでも時折、司馬遼太郎さんの文章というか、言葉が読みたくなります。 # いろいろな文章が入っていますが、まあ、いちばん印象に残るのは、 司馬さん自身が第二次大戦の末期に陸軍兵、それも戦車の下士官として過ごした日々について、そして戦車について書かれた、「戦車・この憂鬱な乗り物」「戦車の壁の中で」「石鳥居の垢」の3篇だと思います。 司馬さんは文中、自分が乗った戦車の、言ってみれば自動車としての性能や機械としての努力を大いに認めながら、下記のように指摘します。 ”(日本軍の)この戦車の最大の欠陥は、戦争ができないことであった。敵の戦車に対する防御力も攻撃力もないにひとしかった” まあ、思わず笑ってしまう語り口。 以下、事実かどうかは僕は確かめるすべはありませんが。 とにかく物資がなくて、かつ、兵器の優劣の戦場でのリアリズム効果を見つめることができなかった昭和の陸軍。 そうしてできた戦車は、戦車ではあるものの、「戦車 vs.戦車」という戦闘になった場合は、あらゆる意味で、装甲や弾の破壊力で、物理的に勝負にならない代物だったということです。 そんな戦車で、本土決戦で敵の戦車と戦えと。 その際に、行軍で避難民が邪魔なら踏み潰して良いと。 そういう司馬さんの実体験を、司馬さんらしい、時に乾いたユーモアも交えながら冷静に語られるのですが。 この文章では、なんというか。 司馬さんがどろどろっとした感情、愚痴、恨みつらみ、そんなものをほとばしらせる感じがありました。 あふれちゃった。 そういう状況下で、二十歳前後で、「俺は死ぬんだ、死ぬんだ」と覚悟しなくてはならなかった青春。 と、言うものを想像しろと言われても、正直、できません。 そんな時代が「終わったもの」として葬られても、まだ生きている司馬さんにとっては、忘れられない、忘れてはいけない、2度とあんな世界を観たくない、あの責任を誰かに問いたい…。 そして、「またいつでも、ああいうことになるんぢゃないかと思う」という、悪夢に汗をかいて跳ね起きるような危機感があったんだなあ、と思いました。 # 昭和の陸軍に対して、肉体的と言って良いまでの恨みというか、反感を隠すことがなく。 一方で、明治時代の政府や軍事に対して、一定の好評価と、感情レベルでの好意を持っている。 そんな司馬さんの、論という以前の、体温、体臭みたいなものが、「受け付けない、気に入らない」、というヒトには、いちばん受け入れがたい本かも知れませんね。「歴史と視点」。 ####### 以下、備忘録。メモ。 ●大正生まれの「古老」 グアム島の密林から横井庄一さんという元軍曹が発見されたのが1972年。恐らくその年に書かれた文章。横井さんは30歳で終戦を迎えましたが、それを知らず、仲間2人とともに、「戦争は続いている」と思いながら28年間生活していました。 この事件から、「生きて虜囚の辱めを受けず」という考え方は明治以降であることとか、近代国家、軍隊という、個人にとって重苦しいものについて、とか。そして、戦争、戦争だけでなく集団熱狂みたいなものへの嫌悪など。 ●戦車・この憂鬱な乗物 ●戦車の壁の中で ●石鳥居の垢 ●豊後の尼御前 戦国時代、九州。大友宗麟の領内で、「おんな城主」がいた、というお話。攻め寄せる敵を相手に軍を率いて籠城戦、攻防戦の末、見事に打ち破った。 「へえ〜」と思って面白かった。2017年にNHK大河ドラマで「おんな城主」を放送するそうですが、あれは井伊のお話。 ただ、なんだか見せ場で言うと、この九州の「尼さん城主」の方が面白いんぢゃないかと思うくらい…。 ●見廻組のこと 佐々木只三郎さん、という幕末の幕臣の、まあ一代記。 幕末の京都で、「新選組」と同じように「見廻組」というのを作り上げた。見廻組は幕臣中心で、あまり統率も良くなくぱっとしなかった。なんだけど、佐々木さんは数人と共に、どうやら竜馬暗殺を実行したようです。 ●黒鍬者 幕末の「江原素六」というヒトのお話。 貧しい最下層の幕臣、「黒鍬者」から学問で身を立てて。一時期は「菜葉隊」という緑の羽織袴の幕臣部隊を率いて。 明治以降は静岡の徳川家で過ごし、教育者になったそう。 幕府瓦解の季節、土方歳三と一瞬、すれ違うような因縁があったそう。 ●長州人の山の神 幕末明治の動乱で、主に戦場指揮官として活躍した、「白井小助」のお話。大した才能は無かったらしく、栄達しなかった。だけど、栄達した伊藤博文や山県有朋らの先輩にあたる。なので、時折上京しては、からみ酒で困らせた、という挿話が楽しい。 ●権力の神聖装飾 明治初期に、「どうやったら天皇っていうのが神様っぽく、大きな権威を持ってるように、装飾できるのか」ということについて、伊藤博文とかが話し合った。その話し合いは、普通にテーブルで議論されて、そこには明治天皇も普通に意見交換に参加して、皇后さんがお茶を持ってきたりした、ということとか。 儀典・儀礼・儀式みたいなものを、どの時代も成功者は取り入れることで権力を支えてきましたよ、みたいな。 ●人間が神になる話 どうやら、昭和時代まで、山村などでは。 高貴なヒトが来たら、そのヒトが入浴した湯を飲んだりしてたらしい、という。 江戸時代まで、京都の天皇と貴族たちがどれだけ貧しかったか。 一方で、情報も無い時代に、貧しさと引き換えに神秘性があり、生きる神みたいな信仰があったとか。 でも、その信仰っていうのは、「そのために死にます!」みたいな強烈なものでは無かった、とか。そういうお話。
司馬遼太郎が思ったことを考察したエッセイ 内容が深く濃いため、よく調べてるなあと感心したけど、まあ当たり前だよね(笑) あまり聴いたことない戦中の戦車についてや、妙麟尼の殉教的精神、公家が以外にも質素で、天皇が神だとは信用されていなかったことなど なかなかに面白かった ただ少し細すぎて多少ついていけ...続きを読むない部分があった
司馬氏の人生にからめて雑多に歴史について書かれたエッセー。日本の戦車がいかに使えないものだったかを述べた章や、天皇を神だと思っていた日本人はいないのではないかと述べた章は痛快であった。
風変りな視点から時代を切り取るエッセイ集。戦車兵の目線から第二次大戦を考察したり、女だてらに城主代行を務めた尼僧の目線で戦国の世を考察したりする。明治政府の大官となった後輩たちをイビりまくる田舎の先輩白井小助の物語「長州人の山の神」も秀逸。
坂本竜馬の死因と話は本当に面白かったです。 一貫して、「日本」という国を浮き彫りにしていると感じました。変な言い方かもしれないけれど・・この人視点がとてもまともだなと思って読んでました。
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